出典: 周山街道と清滝川、嵐山-高雄パークウェイがちょうど交わる「高雄(たかお)」は、世界遺産「神護寺」と、紅葉の名所で知られる地。
出典:
“三尾(さんび)”とは、「高雄(高尾)」と、そこから北に連なる「栂尾(とがのお)」、「槇尾(まきのお)」の三つの地域を合わせた総称です。
(三尾の“尾”とは、山の裾野が細く伸びた部分のこと。)
出典: 高雄の紅葉は有名でも、“三尾”全体の認知度は、残念ながらあまり高いとは言えません。
SNSの発達により京都の魅力は様々に紹介されている現在では、京都の観光スポットは、古来の名所に縛られることなく、実に多彩で多様です。
また京都郊外や山間部においても、貴船や鞍馬、嵐山や嵯峨、大原や伏見等に人気が集まり、高雄を含む“三尾”は、紅葉時は混雑しても、他の季節の注目度は今ひとつです。
出典: けれども、“三尾”は、古くから知られる観光名所の一つ。
いわば、京都の隠れた観光スポットです。他所では味わえない格別の魅力があります。
出典:
三尾観光の魅力は、“ゆったりと”世界遺産の名刹を周りながら、“心静かに”京都北山の自然を満喫出来ることです。
出典: “三尾”は、古からの霊地です。
緑深い三山には、それぞれ「高雄山 神護寺(じんごじ)」、「槇尾山 西明寺(さいみょうじ)」、「栂尾山 高山寺(こうんざんじ)」と、由緒ある寺院が在しています。
出典: 三尾の代表名所は、何と言っても世界遺産に登録されている「神護寺」と「高山寺」。
「神護寺」は、日本の仏教史上において重要な役割を果たした寺院として名高く、また両寺院ともに美術史上欠かせぬ絵画や仏像、建築物など、多くの宝物を擁している古刹として有名です。
出典: 険しい石段や木立の参道を進み、山中の堂宇や伽藍を巡り歩けば、名刹の森厳な雰囲気、深甚なる文化遺産を味わいならがら、涼やかな森林浴や、渓谷と山々が織り成す絶景が楽しめます。
三尾を流れる「清滝川(きよたきがわ)」は、ゲンジボタルの生息地として知られる清流。京都北山を水源とし、桂川(保津川)へと注ぎ込む一級河川です。
清流と木々が織りなす景色は爽快で美しく、その中でも、落合から清滝、清滝から高雄までは、それぞれ「金鈴峡(きんれいきょう)」、「錦雲峡(きんうんけい」と称され、近畿圏の景勝地として有名です。
出典: 特に晩秋の景色は一際鮮やかで、色付いた木々が水面に映る様は、溜息が出る程の美しさです。例年多くの人々が、当地へと足を運びますが、清滝渓谷は紅葉寺ばかりでなく、四季折々に素晴らしい景色が広がります。
雪木立の冬景色も、墨画のような味わいで、初夏から秋にかけては、木々が青々と美しく、川面も陽射しを受けて光り輝き、その眺めは、爽快で実に涼やかです。
出典: 出典: 【清滝川に沿いの東海自然歩道(京都一周トレイル/北山コース)】
“三尾”観光は、当地へと至る「高雄パークウェイ」や「周山街道」、「東海自然歩道」も魅力の一つです。
出典: 「嵐山-高雄パークウェイ」は、嵐山と高雄を繋ぐ全長10.7kmのドライブウェイです。
山間部を走るパークウェイは、四季折々に花々が咲き乱れ、緑豊か。一般の高速道路と異なり、パークウェイ内には、保津峡のダイナミックなパノラマを見渡せる展望台の他、バーベキュー場やドックラン、釣り場等などの様々なレジャー施設が散在し、また三尾散策に便利な「高大雄駐車場」もあるので、ドライブがてら、思い思いに楽しむことが出来ます。
出典: 【「嵐山-高雄パークウェイ内の「保津峡展望台」からの保津峡の眺め。鉄橋を渡るのは、トロッコ列車。】
清滝川沿いを北上する「周山街道(しゅうざんかいどう)」は、日本海と都を繋ぐ”鯖街道”の一つ。国道162号線と重なりますが、仁和寺前の福王子から福井県小浜市までの区間を指して、周山街道と呼んでいます。御室川の谷を上り、“三尾(さんび)”周辺から清滝川の渓谷を北へと進み、丹波高原が連なる京北町周山へと至ります。
出典: 北山の谷間を縫うように走る「周山街道」は、北山杉の美林、牧歌的な集落の風景が楽しめる国道として人気で、関西圏では、定番のドライブコース、ツーリングコースです。紅葉時や大型連休等のハイシーズン中は、渋滞することが多々ありますが、他の季節や平日なら、パークウェイ、周山街道を利用した三尾観光もお勧めです。
出典: 【三尾周辺「東海自然歩道」では、北山杉の美林も楽しめます。北山杉は、床柱で使う良質な杉で、栂尾の先、中川の名産。】
京都市街は、暑さ厳しい盆地気候。初夏から初秋かけては、市街から足を伸ばして、清滝の渓谷を歩いて、爽やかな汗をかくのも一興です。
清滝川沿いには、遊歩道や休憩所が整備されているので、気軽にハイキングやウォーキングが楽しめます。
紅葉時が特に素晴らしいですが、新緑から深緑の頃は、木陰も広く、涼やか。三尾から歩くのなら、清滝、鳥居本を経て、嵐山へと抜けるのがお勧めです。道案内も親切で歩きやすい遊歩道です。
出典: 三尾の渓谷沿いや寺院参道には、川床料理店や茶屋が点在しています。
店内に腰を下ろせば、清滝川渓谷や三尾の景色を眺めながら、鮎や山菜等、地元の食材を用いた美味しいランチや名物の甘味が味わえます。
出典: 深緑も、清流も、世界遺産も楽しめる“三尾”を訪ねましょう。
本記事では、モデルコースに沿って、“三尾”の代表名所、高山寺・西明寺・神護寺を案内しながら、周辺のスポットやお勧めの飲食店を紹介します。そして、京都北山の豊かな自然を感じる、高雄から嵐山方面へのハイキングコース(東海自然歩道/京都トレイル)についても合わせて解説します。
出典: =本記事の目次=
“三尾”へのアクセス&モデルコース
1.栂尾 高山寺
1-1.高山寺の必見!国宝「石水院」
1-1-1.光と緑と陰。庇の間&南縁
1-1-2.高山寺の国宝 『鳥獣人物戯画』と『明恵上人樹上坐禅像』
1-1-3.国宝・石水院で、一服。
1-2.高山寺(栂ノ尾バス停周辺)~西明寺周辺でランチ!
とが乃茶屋・高雄錦水亭・瓦そば 松右衛門
2.槇尾山 西明寺
2-1.自然豊かな槇尾山に抱かれた「西明寺」
3.高雄山 神護寺
3-1.険しくも美しい。石段の参道&茶店
3-1-1.参道の茶店で、ちょっと休憩。
高雄茶屋・硯石亭
3-2.山岳寺院ならではの風情と景色
3-3.空海と最澄が活躍。日本密教発祥の地「神護寺」
3-4.「神護寺」宝物の数々。
3-5.神護寺周辺でランチなら。
もみぢ家別館 川の庵・山本食堂
4.軽快にハイキング&ウォーキング。「東海道自然歩道」&「京都一周トレイル」
4-1.歩いてみよう!(所要時間)
4-2.荷物・足元に気をつけて!
旅のInformation
旅のおわりに
周山街道やパークウェイを利用してドライブがてら訪れるのも良いですが、旅行者なら京都駅からバスを利用して当地を訪れ、徒歩で周るのがお勧めです。駐車場に戻る必要もなく便利。気が向いたら、嵐山方面へと歩み進むことも出来ます。
以下のモデルコースは、「栂尾高山寺」から「槇尾山西明寺」を周り、「高雄山神護寺」を周るコースです。
出典: 【京都駅・JRバス乗り場。三尾方面へは、1時間に付き2~4本運行便があり、アクセス良好です。】
京都駅JRバス停→約50分→◆栂ノ尾バス停⇒(徒歩5分)⇒
★1.高山寺⇒徒歩12分⇒★2.西明寺⇒徒歩20分⇒
★3.神護寺⇒徒歩20分⇒◆山城高雄バス停→約50分→京都駅
※◆~◆の所要時間:約3~4時間(京都駅からのバス往復時間、食事、休憩含まず)
出典: 出典: 高山寺は、古から山岳修行で知られる栂尾(とがのお)山の中腹に在する、世界遺産登録の寺院。
奈良期に創建、平安期に神護寺の別院となり、鎌倉期において、名僧・明恵上人によって中興開山された名刹です。明恵上人は、華厳宗と密教、学問研究と実践修行の統一を図った名僧として知られ、その人柄は無欲無私にして清廉だったと伝わります。
出典: また「高山寺」は、国宝『鳥獣人物戯画』をはじめとする名品の数々を擁する寺院としても名高く、また日本最古の茶園が残る寺院としてもよく知られています。
出典: 広大な境内には、重文「金堂」や、国宝「石水院」といった、由緒ある堂宇や茶室等が散在しています。
それぞれを結ぶ敷石や石段の参道は、杉や楓、松といった老木が、天を貫かんばかりに生い茂り、猛暑の時分でも涼やかです。参道を周り歩けば、古刹ならではの神聖なる雰囲気とともに、快適な森林浴も楽しめます。
出典: 【明恵は、栄西禅師から贈られた茶の実を山内に植え育て、茶の普及の発展に貢献したことでも良く知られています。画像は、木立の中にある高台寺の茶園。現在でも例年5月になると、茶摘みが行われています。栄西は、日本に初めて茶種と喫茶法を伝え、日本最古の茶書『喫茶養生記』を著した人物としても知られる名僧です。】
周山街道から金堂までは、表参道と裏参道の二本の道が続いています。JR栂ノ尾バス停、高山寺駐車場からなら「裏街道」を歩いて境内を周り、金堂から「表参道(金堂道)」を通って周山街道へと抜けましょう。
栂ノ尾バス停→(裏街道)→★「国宝 石水院」→(裏街道)→日本最古の茶園→明恵上人御廟→佛足石→「金堂」→(表参道)→周山街道
出典: 出典: 高山寺で見逃せないのは、何と言っても裏参道入口傍らの、国宝「石水院」です。
「石水院」は、後鳥羽上皇の御学問所を下賜されたと伝わり、五所堂とも呼ばれています。
明恵の再興した後の「高山寺」は、兵火によって失っているため、寺内における明恵時代の遺構はこの「石水院」のみ。入母屋造の住宅風建築を拝殿風に改めた建物は、移築と改造を繰り返し、明治中期になって現在の場所に移されました。
出典: 【石水院「庇の間」は、光と陰の対比と、そのあわいの幽玄な雰囲気が魅力の空間です。】
改築されてはいますが、「石水院」は、鎌倉初期の優れた傑作です。建物のハイライトは「庇の間」と「南縁」。「庇の間」は、石水院の西正面で、かつて拝殿であった空間です。
出典: 【『善財童子像』と鉄斎筆『石水院』の額。「善財童子」は、裕福な家庭に生まれ育ちながらも、文殊菩薩のお導きによって苦難の旅に出て悟りを開いたと伝わります。】
緑と光が溢れる外部と、“庇”に遮られた陰りの内部を、吊り上げの蔀戸や菱格子などでおぼろげに繋いでいます。落板敷の真ん中には、明恵が敬愛した「善財童子(ぜんざいどうじ)」の愛らしい像が置かれ、欄間には、富岡鉄斎筆の横額が掲げられています。
出典: 「南縁」は、南面に位置し、広縁が周った空間です。緑深い山々が連なる眺望は素晴らしく、縁から下がって室内から眺めれば、柱や蔀戸によって一幅の画のように景色が切り取られます。
出典: 1-1-2.高山寺の国宝 『鳥獣人物戯画』と『明恵上人樹上坐禅像』
「高山寺」は、先述した通り、日本美術史上の傑作を多く蔵している寺院です。
仏像や仏画、絵画や彫刻等など、国宝、重文指定の文化財は数多く、建造物以外の指定文化財の大方は、東京国立博物館と京都国立博物館に寄託されています。
出典: 【石水院の室内。床の間に掛かるのは、『明恵上人樹上坐禅像』。右隅にあるのは、運慶作・重文『木彫りの狗児』。
欄間に掛かるのは、寺号の由来ともなった「日出先照高山の寺」の勅額。“日が昇り、まず先に照らされるのは、高き山の頂上である”という意味。】
高山寺所蔵の文化財の中で有名なのは、『鳥獣人物戯画』と『明恵上人樹上坐禅像』です。
『鳥獣人物戯画』は、日本美術史上に輝く傑作、貴重な文化財という位置づけであるばかりでなく、日本の漫画文化のルーツとしても名高いものです。絵巻の実物は、甲と丙巻が東京国立博物館、乙と丁巻が京都国立博物館に寄託され、「石水院」では、絵巻の写しが通常展示されています。
出典: 甲・乙・丙・丁の全四巻からなる絵巻『鳥獣人物戯画』は、鳥羽僧正覚猷(かくゆう)の筆とされていますが確証はなく、正式には作者未詳とされ、甲と乙は、平安末期、丙と丁は、鎌倉期の作画と推定されています。
絵巻の中で、特に著名なのは甲巻。
小賢しさや愚かさといった、人々が繰り広げる悲喜劇を、猿や蛙、菟や狐等などの動物たちを擬人化して、ユーモラスに描いた傑作です。この絵巻が描かれたのは、武士が台頭してきた激動の時代。人間模様の洞察力や風刺精神、躍動感のある筆さばきは、当時代に呼応するかの如く、実に旺盛で自由闊達です。
『明恵上人樹上坐禅像』は、明恵の弟子である成忍(じょうにん)の筆による*頂相で、13世紀前半の作と伝わります。日本美術史上において、特異で秀抜な作品としてよく知られるものです。
(*禅宗において「頂相(ちんぞう」とは、賛の入った師の肖像画のことで、極めて大切なもの。)
『明恵上人樹上坐禅像』は、一般的な肖像画としては人物が小さく、樹木(松林)が大きく描写された画面構成で、人物描写も、他の定型的で理想的な肖像から脱した似絵(にせえ)風に描かれています。
また、松林を仔細に観れば、小鳥が群れ、リスも生息し、樹木も自由闊達に生き生きと描かれています。自然と一体となり調和する明恵の人となり、成忍の師への愛慕、崇敬の念が、鑑賞者にしみじみと伝わってくる名画です。
出典: 先述した通り「高山寺」には、栄西禅師から明恵上人へと贈られた茶種から始まる「日本最古之茶園」があります。石水院の客殿では、美味しい抹茶を頂くことができます。【抹茶が頂ける石水院・客殿の座敷】
出典: 国宝の座敷で、銘茶を頂きながら、美味しい和菓子を頂くのは、実に贅沢。ゆったりと味わって帰りましょう。
出典: 抹茶は、鳥獣戯画のパッケージも魅力的な、下鴨の和菓子店・宝泉堂の「栂の月」付き。丁寧に炊かれた小豆を、寒天で固めた和菓子は、上品な味わい。抹茶によく合うと評判。
1-2.高山寺(栂ノ尾バス停周辺)~西明寺周辺でランチ!
川がせせらぎぐ音は、リラックス効果があることで知られています。三尾周辺の清滝川沿いには、川にせり出すように設えた川床料理の店や茶屋が数々あります。涼やかな景色と音、ランチを楽しみながら、心身をリフレッシュしましょう。
出典: 高山寺裏参道、駐車場近くにある食事処「とが乃茶屋」。清滝川に面した座敷では、栂尾の豊かな緑、清流を眺めながら、食事が頂けます。
出典: メニューは、定食や麺類、甘味など。人気は、キノコや野菜、若鶏が入った陶板焼きの「若鶏すき焼き」。夏なら「鮎の塩焼き」、秋なら「にしんぞば」や「松茸ご飯」等。【画像は、サクッと揚げたての天麩羅が美味しいと評判の「天ざるそば」。】
出典: 「高雄 錦水亭」は、周山街道沿いにある料理旅館。川床料理で良く知られ、夏はもちろん、晩秋の頃も清流と紅葉の景色を眺めながら、山菜や川魚といった地場の食材や京野菜を用いた京会席が味わえます。
出典: 人気は、ランチ限定の「ミニ会席」や「京湯どう腐」。夏場なら、鮎の塩焼き付きの「松花堂弁当」がお勧め。
【画像は、源氏ぼたる観賞と川床料理が楽しめるコースの一部。錦水亭では、季節折々に様々なプランが用意されています。予算や季節に合わせて選びましょう。詳細は公式HPへ。】
出典: 「瓦そば 松右衛門」は、周山街道から渓谷へと降りる小径の先。
ガラス戸と柱の店内は、涼やかで開放的。テーブルは全て清滝川側に並べられ、どの席からも清流の素晴らしい景色が楽しめます。
出典: 看板通りに、料理は「瓦そば」のみ。
「瓦そば」は、熱した瓦の上に、茶そばをのせ、牛肉、錦糸卵、九條ねぎ、海苔等を盛り付けたもの。香り高い茶そばは、所々おこげも出来て、食感も風味も抜群です。
出典: 「瓦そば」は、特製の温かい汁に浸して頂きますが、添えられたレモンや、もみじおろしの薬味を入れれば、味の変化も楽しめます。「瓦そば」は、山口県発祥の料理ですが、高山寺で紹介した通り、栂尾は茶の発祥地です。三尾を訪れたのなら、一度は味わいたいご当地料理です。
「松右衛門」では、珈琲やビール等のドリンク類の他、季節限定の特製「かき氷」も頂けます。
出典:
高山寺から西明寺、神護寺へと至るのなら、以下のルートをたどるのがお勧めです。
周山街道→(高雄神護寺前を右折)→指月橋→西明寺表門・鐘楼→本堂→清滝川沿い→高尾橋
出典: 2-1.四季折々に美しい槇尾山に抱かれた「西明寺」
西明寺は、丹塗の鮮やかな指月橋を渡った先。春は躑躅や山桜、夏は深緑、秋は紅葉、冬は雪景色と四季折々に美しい槇尾山の中腹に佇む小寺です。
出典: 【本堂左手にある槇の木は、樹齢700年を数え、現存する日本最古のもの。】
元々は、空海の十大弟子の一人、智泉大徳が天長年間(824-834)に創建した神護寺の別院。
西明寺はその後、神護寺から独立、兵火による再合併等の紆余曲折を経て、慶長7(1602)年に明忍(みょうにん)により再興、現在の本堂は、第五代将軍・徳川綱吉の実母、桂昌院の寄進によるもので、重要文化財に指定されています。
出典: 西明寺で必見なのは、“槇ノ尾”の地名の由来にもなっている槇(まき)の大木と、本堂内の仏像です。
出典: 本堂内には、清涼寺式木造の運慶作「釈迦如来立像」や平安期の「木造千手観音立像」(共に重文指定)が安置されています。特に見逃せないのは、生前の釈迦の姿を表した「釈迦如来立像」で、三尾でも必見の仏像一つです。
出典: 西明寺でお土産を買うのなら、コレ!お財布に入れておくと、お金が倍になって戻ってくるという「倍がえりの御守」です。
【画像は、「客殿」。紅葉の頃は開放され、お茶を頂きながら庭を観賞できます。】
出典: 西明寺の本堂から、清滝川沿いの眺めを楽しみながら、高尾橋へと進めば、三尾観光のフィナーレ「神護寺」に到着です。
(西明寺)→清滝川沿い→高尾橋→石段の参道(☆茶店:高雄茶屋、硯石亭)→仁王門(楼門)→本坊・宝蔵・和気公霊廟・鐘楼・明王堂→★金堂→★多宝塔→★地蔵院(かわらけ投げ受付)・展望台→五大堂・毘沙門堂→もみぢ橋
(★は必見!)
出典:
清滝川のほとりから続く、急勾配の石段を登りきると、最上段には、威風堂々たる楼門が参拝者を出迎え、その先に深い緑と静寂に包まれた境内が広がります。
乱れ積みの石段と楼門の景色は、神護寺の象徴とも呼べるもの。緑に包まれた山岳寺院らしい風情と風格は、市街から足を伸ばさなければ出逢えない光景です。
出典: 出典: 【神護寺参道にある「硯石亭」。“ひやしあめ”は、京都の夏の甘味。】
拝観の入口である楼門まで、長く険しい石段の参道を上りますが、参道の途中には、二軒の茶屋がありますのでご安心を。どちらも眺めの良く、味も評判の老舗店です。
出典: 参道入口の石段を上り、先にあるのが「高雄茶屋」です。高雄山の豊かな木立の中で、食事や甘味が頂けます。
出典: 茶屋ながらも、メニューは豊富。にしんそばや鍋焼きうどん等の麺類や、親子丼、ぜんざいといった甘味等など。人気は、出汁がしっかりと効いた京風のうどんです。【画像は、生麩やしいたけ、山菜が入った「もみじうどん」。】
出典: 名物は、「みたらしだんご」。団子は、焼き立てでモチモチ。焦げ目がついて香ばしく、餡もしっかりとした味わいで美味しいと評判です。うどんも、団子も、すべて自家製手作りです。
出典: 「硯石亭(すずりいしてい)」は、高雄茶屋の先。緑豊かな高雄の自然が満喫できる人気の茶店です。
出典: メニューは、うどんや蕎麦、湯豆腐、ひやしあめやぜんざいといった甘味など。名物は、自家製小倉餡で道明寺餅を包んだ「もみじ餅」。あっさりとした味わいで美味しいと人気。【画像は「にしんそば」と名物の「もみじ餅」】
出典: 神護寺は参道ばかりでなく、境内にも石段があり、脚力を要します。エネルギーチャージ、糖分補給をしてから、歩みを進めましょう。【紅葉時の「硯石亭」】
出典: 【神護寺・仁王門は、元和9(1623)年の建立。】
別名“紅葉寺”とも呼ばれる程に、紅葉で有名な「神護寺」は、日本の仏教、美術史上において、重要な役割を果たした古刹です。紅葉時ばかりでなく、桜の春も、新緑から深緑の頃も、雪木立の冬も素晴らしく、一年を通じて素晴らしい景色が楽しめる寺院です。
出典: 【画像手前が「五大堂」。奥が、かつての本堂「毘沙門堂」。本尊「薬師如来立像」もここに安置されていました。五大堂、毘沙門堂共に元和9年(1623)の建立。】
「神護寺」は、和気公霊廟や五大堂、毘沙門堂や大師堂、金堂等などの堂宇、伽藍が建ち並ぶ大寺。
仁王門までの参道を含め、境内は緑豊か。松や楓、紅葉や桜の古木を背景にした諸堂の景色は、秀逸。山岳寺院ならではの眺めです。神気に満ちた雰囲気も魅力です。
出典: 【「昭和10(1935)年に、実業家山口玄洞の寄進により建てられた「金堂」。】
ここ神護寺で見逃せないのは、国宝の仏像が安置されている「金堂(本堂)」と「多宝塔」。そして、「地蔵院」の庭に広がる一大パノラマです。
出典: 地蔵院の庭からは、連なる山々と高雄の名勝「錦雲渓」のダイナミックな景色を楽しめます。
出典: 「地蔵院」まで上ったら、“かわらけ投げ”で厄除けしましょう。かわらけ投げは、神護寺が発祥地です。
【「かわらけ」とは素焼きの皿のこと。地蔵院では二枚単位で販売しています。】
3-3.空海と最澄が活躍。日本密教発祥の地「神護寺」
出典: 【五大堂と毘沙門堂の石段の上に建つ「金堂」。一段一段と上る度に景色が変わるのも、神護寺ならではの魅力。】
神護寺は、東寺、高野山金剛峯寺(こんごうぶじ)と並び称される、真言宗の寺院。最澄(伝教大師)、空海(弘法大師)によって日本の密教が誕生した地として知られ、正式な寺号は「神護国祚真言寺(じんごこくそしんごんじ)」と称します。
寺院の歴史は深く、創建は天長元(824)年。
和気氏の氏寺「高雄山寺」と、和気清麻呂建立の「河内神願寺」が合併したことにより、「神護国祚真言寺(略して神護寺)」が誕生しました。
出典: 【仁王門を入り右側、書院の奥にある「和気公霊廟(わけこうれいびょう)」。昭和初期建立。ここは、かつて和気清麻呂公を祀っていた「護王神社」の跡地。「護王神社」は、京都御所傍らに移築されています。】
最澄と空海が入山したのは、合併前の高雄山寺時代のことです。
唐から帰朝したばかりの最澄により、日本初の*灌頂壇が開かれ、その数年後に、空海による金剛界の灌頂壇、わが国初の鎮護国家の*密教修法が行われました。それ以後は、和気一族から大きな信頼を得た空海が、大同4(809)年から14年間にわたって高雄山寺の住持(じゅうじ)として一切を任され、清麻呂創建の「河内神護寺」と「高雄山寺」の寺地を交換し、「神護国祚真言寺(神護寺)」と寺号を改めました。
*灌頂(かんじょう)とは、菩薩から仏に成る時に、諸仏が水を頭に水を注ぎ、仏の位に達したことを表した儀式で、密教においては、頭頂に水を灌いで(そそいで)、諸仏や曼荼羅と縁を結んで、正当な継承者とする儀式のこと。
*修法(しゅほう)とは、密教で行う加持祈祷などの法。祈願の目的によって様々な法がある。
出典: 【空海の住房後に建つ「太子堂」。仁安3(1168)年に再建、桃山期に改築。入母屋造・柿葺の住宅風の建築。本尊として祀られている「板彫弘法大師像」は、鎌倉彫刻の傑作。】
*密教(みっきょう)とは、秘密の(非公開の)呪法の伝授、習得によって悟りを開こうとする仏教のことで、読んで字のごとく“秘密の教え”であり、秘密仏教の略称と云われています。
この密教に対するものとして、言語によって明らかに説き示された(公開された)仏教のことを、“顕教(けんぎょう)”と言います。空海は、文字や言葉では真理を全て伝えられないものとして、密教の優位性を説いています。
日本における密教は、空海が伝えた真言宗系の東密(とうみつ)と、最澄による天台宗系の台密(たいみつ)があります。
出典: 【空海の硯となったと伝わる「硯石」。空海が、この石ですった墨を筆に含ませ、天空に字を描くと、飛び散った墨が、遥か彼方の金剛定寺へと届き、門額の文字として現れたという伝説があります。】
空海と最澄は、高雄山寺を中心にして親交が続きましたが、経典を重視しない空海と、文献重視の最澄は、経典借覧についての悶着や、法流の違いから袂を分かち、空海は当山と、高野山、東寺を主な舞台として密教を広め、真言宗の開祖として活躍し、一方の最澄は、比叡山延暦寺の基礎を築き、天台宗の開祖となっています。
出典: 空海が高野山へと入った後は、高弟・眞済が後を継いで伽藍を造営し、神護寺は、鎮護国家の道場となりましたが、その後火災で荒廃し、平安末期になって、中興の祖と云われる文覚上人が、後白河法皇の勅許、源頼朝の寄進を得て、復興しました。
しかしそれもまた、応仁の乱、戦国期の戦火等によって諸堂は焼失。現在ある寺内の堂宇や伽藍は、江戸期以降になって再建、整備したものです。
「神護寺」には、国宝、重文指定の文化財、宝物が、数多くあります。
特に名高く必見なのは、国宝の「薬師如来立像」です。
高さ170cmもある「薬師如来立像」は、量感たっぷりで、迫りくるような力強さ。頭部から蓮肉まで榧(かや)の一木で彫られたもので、眼と唇以外には一切彩色を施さない素木造で、貞観時代(平安前期)を代表する傑作です。「日光・月光菩薩立像(重文)」を左右に従え、金堂に安置されています。
多宝塔に安置されている木造「五大虚空蔵菩薩坐像」も、真言密教彫刻の代表作として名高く、また和気公霊廟の奥にある「梵鐘」も、日本三名鐘の一つに数えられ、共に国宝に指定されています。(「多宝塔」の塔内は、通常非公開。御開帳は、一年を通じて6日間のみ。)
当代の仏像彫刻は、前代までの乾漆造や塑造、鋳造の仏像が影を潜め、一木造が主流となり、衣紋が波打つような“翻波式”と呼ばれる表現様式が多用されるが特徴です。
仏像の素木造への転換については、様々な理由が挙げられますが、山林修行が盛んだった当代の人々が山の木々にも、呪力や霊力を感じていたことによるものが大きいと云われています。
【画像は、神護寺尾本尊「木造薬師如来立像」頭部。】
「神護寺」の国宝は他に、藤原隆信筆といわれる似絵(肖像画)、絹本著色の『伝平重盛像』『伝源頼朝像』『伝藤原光能像』、現存する最古の大曼荼羅『紫綾金銀泥両界曼荼羅(高雄曼荼羅)』、“赤釈迦”の俗称で有名な、平安仏画の最高作『絹本著色釈迦如来像』などがあり、重文の文化財も多く擁していますが、実物は京博や東博などに寄託されています。
【画像は、足利直義像とする新説がある『伝源頼朝像』。レプリカが金堂内に飾られています。】
出典: 【元和9年(1623年)再建の「鐘楼」内部にある国宝の「梵鐘」は、貞観17(875)年の鋳造。
橘広相の序詞、菅原是善の撰銘、藤原敏行の書で、当代を代表する人物によるものだったため“三絶の鐘銘(さんぜつのしょうめい)”とも呼ばれています。日本三名鐘の一つ。】
出典: 「川の庵(かわのいおり)」は、明治40年創業の老舗旅館「もみぢ家」の別館。川床の客席は、専用の吊橋を渡った先。
出典: 川に沿って並ぶ座敷からは、高雄の素晴らしい景色が眺められ、川のせせらぎを耳にしながら、季節の料理が頂けます。
出典: 料理は、予算とお腹に合わせて選べる会席料理。春夏秋冬、季節折々に内容が変わります。プランやコースは様々です。詳細は、公式HPで確認してみましょう。
出典: 「山本食堂」は、JR山城高雄バス停近く。うどんや蕎麦、丼や定食がメインの食堂です。三尾界隈で手軽に食事をするなら、お勧めのお店です。
店内の座席からの眺めも良く、出汁がしっかり効いた丼や麺類は、美味しいと評判。観光地の食堂は、がっかりさせられることは多いものですが、ここは別格と人気です。
トロッコ保津峡 / 定食・食堂
- 住所
- 京都市右京区梅ヶ畑西ノ畑町8の2
- 営業時間
- 11:00~14:00
- 定休日
- 木曜日
- 平均予算
- ~¥999
データ提供: 4.軽快にハイキング&ウォーキング。「東海道自然歩道」&「京都一周トレイル」
高雄から、清滝・嵐山へは、清滝川の渓谷沿いに遊歩道が整備され、気軽にハイキングが楽しめます。この遊歩道は、東海自然歩道と京都一周トレイルが重なる区間です。
出典: 【東海自然歩道(京都一周トレイル)の途上の「潜没橋(下清滝橋)」】
紅葉時や大型連休のハイシーズン中は、周山街道が渋滞するため、往復をバスで移動するのは、貴重な旅の時間がとられてしまいます。健脚で歩くのが好きな方なら、ぜひ高雄から清流沿いの遊歩道を利用し、嵐山方面へ歩いてみましょう。
出典: 道の要所要所には、行く先と距離を標した道標があるので、道に迷う心配はありません。【画像は、東海自然歩道と京都一周トレイルの標識が出ている「清滝」と「落合」の間、“渡猿橋”地点。】
出典: 【六丁峠を過ぎて坂を下りきると、鳥居本に到着。画像は、鳥居本の鮎料理の老舗「鮎司・平野屋。】
以下で示した所要時間は、凡その目安です。清滝、落合、鳥居本にはバス停もあるので、体力に応じて終点を選びましょう。
高雄橋→(清滝川沿いのハイキングコース)→清滝 3.8km(徒歩約1時間)
清滝→(清滝川沿いのハイキングコース)→落合橋 (徒歩約35分)
落合橋→六丁峠(保津峡の眺め)→鳥居本(徒歩約45分)
鳥居本→嵐山公園→渡月橋 (徒歩30分)
出典: 落合橋からは、トロッコ保津峡駅(又は保津峡駅)も近いので、バスを利用せずに、嵯峨野トロッコ列車やJR山陰本線を利用して帰路につくのもお勧めです。
落合橋→トロッコ保津峡駅(徒歩12分)→JR保津峡駅(徒歩約15分)
【画像は「トロッコ保津峡駅」周辺の景色。嵯峨野トロッコ列車と保津川渓谷。】
出典: 三尾の名所は、すべて山中にあり、ハイキングコースも難所が多々あるので、手提げは避け、ナップサックやリュックサックで出掛けましょう。
出典: 川沿いの遊歩道は、濡れた岩場など、滑りやすい場所もあるため、ハイキング、ウォーキングに適した、“滑りにくい”靴を着用すること。
雨天時や天候が不安定の時は川が増水し、歩行するのに危険を伴うこともあります。歩く時は、天気予報を確認してから歩き、天候急変の折は、歩行を断念しましょう。
出典: ◆京都一周トレイルでは、西山コース(三尾・清滝~鳥居本~渡月橋~松尾山~上桂)のガイドブックを販売しています。販売場所は、京都府内の鉄道案内所や書店など。取扱店の一覧がサイトに掲載されています。
出典: 三尾への詳しいアクセス、散策マップ、モデルプラン、お得なフリー乗車券情報等など、三尾の情報をもっと欲しい方は、以下の「高雄保勝会」HPへ。
梢を揺らす風。飛沫をあげてせせらぐ川。
木々の間に零れる光。迫くる参道の石段。
朱塗りの須弥壇。如来の波打つ衣紋。射すくめる眼。
出典: 平安貴族が遊興し、隠遁した、嵐山や宇治とは異なり、
ここ「三尾」は、霊験あらたかな、古からの山林修行の地。
仏像にも、諸堂にも、境内にも、渓谷にも、連なる山々にも。
空海の独創的な活躍や、薬師如来の存在感が示すような、溢れんばかりの活気があります。
出典: そして、『明恵上人樹上坐禅像』が、教え伝えるように、
人を含めた天地万物のすべてが、生き生きと調和しています。
森羅万象の調和から生じる“真の力”。
そうした力を肌で感じられるのが、「三尾」の魅力です。
出典: 「三尾」を歩いて、爽快な汗を流せば、
眠っていた自身の“力”が輝き出し、
全てと繋がるような、穏やかな心持ちになるかも知れません。
蒸し暑い時分は、身も心も滞り、精彩に欠ける頃。
ぜひ「三尾」へと足を運び、“真の力”に目覚め、心休まる一時をお過ごし下さい。
【高雄山 神護寺「地蔵院」からの眺め】