薄暗い雨の日に似合う、陰りのある物語
- 寒さに負けない体を目指す!ゆらぎがちな冬のご自愛ケアキナリノ編集部
ひっそりと綴られるダークストーリー9選
美しい筆致で描かれるダークな女流ミステリ
「ガーデン」近藤史恵|創元推理文庫
「私の男」桜庭一樹|文春文庫
花は10歳のときに、まだ年若かった淳悟に引き取られ、二人は親子となりました。花が成長し、結婚するところからこの物語は始まります。徐々に明かされていく養父と娘の禁忌の絆から目が離せない、重くて苦しい傑作です。
インモラルな後ろ暗さを心の底から味わいたいときには、この物語を。美しさと不快感が同居して、とびきり耽美な空気に浸れます。二人の間にあったものが愛なのかそうでないのか、ぜひ見極めてみてください。
「ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。」辻村深月|講談社文庫
家族仲がよかったチエミと、母親との確執を抱えていたみずほ。ある日チエミの母親が殺され、チエミは失踪します。みずほはチエミの行方を追いながら、聞き込み調査を続けます。「どうしてチエミが殺したの? 事件を起こすなら、私のほうだと思ってた」と思い続けながら。
母娘関係の重苦しさと愛を見事に書き切った一作。読みやすい語り口ですが緊張感があり、「次はどうなるの?」という展開が連続します。やるせなく切ない、一番重い種類の愛の話です。
ほの暗い、珠玉の短編集
「おとぎのかけら 新釈西洋童話集」千早茜|集英社文庫
泉鏡花文学賞受賞作家が紡ぐ、おとぎ話をモチーフにした短編集。シンデレラや白雪姫、ヘンゼルとグレーテル、マッチ売りの少女など、有名な西洋童話が現代日本に置き換えられて語られています。
思わず手に取ってしまう、表紙が美しい一冊。耽美で不気味な世界観に浸りたいときはこちらがおすすめです。一篇一篇が丁度よい長さで、映像が想像しやすい文体。忙しいときにも没頭できます。
「不思議の森のアリス」リチャード・バートン・マシスン 訳:仁賀克雄|論創社
リチャード・マシスンのデビュー作を含めた初期作品短編集。実写化された「二万フィートの悪夢」や水木しげるが漫画化した「血の末裔」など、16篇が収録されています。
ひとつひとつはあっさりと短いですが、薄暗い世界観にぞくぞくすること間違いなしの一作。迫力と凄みのある文章で、ダークファンタジーやSF、ミステリやホラーなどさまざまなテイストが楽しめます。どこか幻想的な薄暗さが雨の日にぴったりです。
「図書室の怪 四編の奇怪な物語」マイケル・ドズワース・クック 訳:山田順子|創元推理文庫
クラシックな雰囲気漂う英国怪奇幻想譚。ポオと怪奇小説の研究者である著者が描く、四篇の幽霊の話です。
じめっとしたホラーを味わいたい方におすすめの一冊。とくに表題作「図書室の怪」は、ゴシックな雰囲気とミステリの要素が融合していて、古典推理小説に漂う美しさを堪能できます。
「ゴシック&ロリータ幻想劇場」大槻ケンヂ|角川文庫
ファッション誌「ゴシック&ロリータバイブル」に掲載されていた短編の詰め合わせ。不条理や恋やロック、他さまざまなゴスロリの要素がロマンティックかつ幻想的に描かれています。
ぐっと心を刺して来るお話の数々。おしゃれで可愛くて毒々しくて、でも物悲しくて寂しい。どのお話も読後感がよいので、不安定な雰囲気に酔いつつも希望を感じて読み終わることができます。
青春の中にある痛々しい暗さ
「星か獣になる季節」最果タヒ|ちくま文庫
「ぼくの大好きな真実ちゃんがが殺人犯? 冤罪に決まっている!」地下アイドルの愛野真実が殺人犯だというニュースを聞いた主人公はそう奮い立ち、同じクラスの森下と真相を探り始めます。少年少女が「真実」を求めて駆け抜ける、ダークでポップな青春小説。
詩人の最果タヒさんの小説作品です。言葉のひとつひとつが美しく切れ味があります。一度読了したあとは、たとえばぱっとページを開いて切り取るような読み方をしても、その紡がれる物語に浸ることができるのが素晴らしかったです。
「麦の海に沈む果実」恩田陸|講談社文庫
「三月以外の転入生は破滅をもたらす」と言われる学園に、二月の終わりに転入してきた主人公。全寮制の学園の美しい日常と事件を描く、耽美でミステリアスな学園小説です。
終始薄暗い雰囲気が漂うこの一冊。主人公含め魅力的な登場人物が多く出てきます。事情のある子どもたちのやり取りには常に秘密が含まれていて、その悲しさや諦め、憤りの描写がとても美しかったです。
子どもと一緒に楽しむ、ちょっぴりダークな3冊
「魔女図鑑 魔女になるための11のレッスン」マルカム・バード 訳:岡部史|金の星社
大人も子どもも、魔女にあこがれる全ての人に読んでほしい絵本。悪い魔女の魔女のおしゃれのやり方や、魔法薬の作り方まで、魔女について網羅した一冊です。
細かく書かれたどことなく不気味な線のイラストですが、読み進めて馴染んでいくと、あれ、ちょっとおもしろいかも!? 詳細に作り上げられた世界観で、大人が読んでも楽しいです。
「ホーホーはらへりフクロウさまだ!」ショーン・テイラー 訳:木坂涼|BL出版
はらぺこのフクロウが「食ってやる!」と次々獲物に襲い掛かります。フクロウのターゲットは、ウサギ、ハト、それから……?
木坂涼さんの軽妙な日本語訳がすばらしい、とびきりドキドキする一冊です。ラストは思わず「キャー!」と叫んでしまうかも。
「すてきな三にんぐみ」トミー・アンゲラー 訳:いまえよしとも|偕成社
思いっきり暗くて不気味な雰囲気から始まるこの絵本。ちょっと怖い三にんぐみが容赦なく馬車を襲います。でも、その馬車の中にいたのは……?
ここから始まる展開に、最初は怖がっていたお子さんも、思わずにっこりしてしまうはず。ユーモアあふれる、すてきな一冊です。
暗く切ない物語で、心をデトックス
物語を読むことは心の活力に繋がります。外に行けない雨の日は、ぜひおうちで読書を楽しんで♪
同居する二人の女の子、真波と火夜の美しい描写から始まる物語。ある日突然火夜がいなくなり、真波宛てにエナメルを塗った火夜の小指が送られてきます。受け取った真波は探偵に火夜の捜索を依頼するのですが……。
ミステリですが少女小説の趣きを持つこちら。思春期のころ、死にたい、と思ったことがある人にぜひ読んでほしい一冊。少女から大人になるまでにかけての息苦しい悩みが、美しい言葉で描写されています。