自分で勇気を持てない時は、言葉の力を借りよう
PART1:勇気を出す前に、まずは自分の心を軽くしよう
すべての存在はそこにあるだけで尊いもの
「求めない」で、背負い込みすぎている自分を楽に
■『求めない』加島祥造(小学館)
本書は、「求めない―すると…」という言葉から始まる詩で構成されています。作者の加島祥造さんは、決して求めることを否定しているわけではありません。むしろ「人間は求める存在」だからこそ、足りていることを知り、求めることを少しでも辞めてみたら、毎日が楽になるのではないかと提案してくれます。あれもこれも頑張る必要はなく、ほんとうに勇気が必要なことを見極めれば、あなたが本来持つ勇気がきちんと現れて、新しい可能性が開けるはず。そんな風に思わせてくれる1冊です。
自分がどうあるべきかを見つめ直したいあなたに
■『預言者』カリール・ジブラン 著、佐久間彪 訳(至光社)
作者のカリール・ジブランは、オスマン帝国末期(1883年)のレバノンに生まれた詩人。少年期にアメリカへ移り住み、英語を学んで詩を書き始めます。こちらは、そんな彼による散文集。預言者アルムスタファが、愛や働くこと、自由、苦しみ、自分を知ること、死…など26の普遍的なテーマについて、人間にとってのあるべき姿を語り掛けるという形で進みます。一貫して穏やかで美しい言葉でつづられる詩は、素直に心に沁み込んで、凝り固まった考え方をほぐしてくれるよう。いつもポケットに入れておきたくなる名作です。
PART2:自分の足で立つ力を分けてもらおう
何にも倚りかからないゆるぎなさに触れる
■『倚りかからず』茨木のり子(筑摩書房)
茨木のり子さんは、1926年に生まれた日本の詩人。19歳のころに終戦を経験し、最初は童話作家・脚本家として、のちに詩人として評価されるようになりました。本書の表題にもなっている詩「倚りかからず」の中では、「ながく生きて心底学んだのは、何にも寄りかかりたくないこと」と書かれています。この言葉に現れているように、彼女の詩は何も望まず、倚りかからずに自分の足で立つ、その姿勢から紡ぎ出されているよう。ぜひ手に取って、そのゆるぎなさを言葉から感じてみてください。
美しい写真と言葉であなたを支えてくれる
■『詩集 私を支えるもの』銀色夏生(KADOKAWA)
本書は、日本の詩人・銀色夏生さんによる写真詩集。「私を支えるもの」「思い違い」「寂しいあなたへ」などの書下ろしの詩を、撮り下ろしの写真と組み合わせた1冊です。分かりやすい言葉のひとつひとつと、繊細な言葉選びは、今を生きる私たちの心にやさしく寄り添ってくれるよう。空を見上げる写真や、道端の野の花を愛でる写真とともに、今あなたが感じている閉塞感を吹き飛ばし、自分の足で立つことを支えてくれるはずです。
いなくなった「私」から「あなた」へ贈る言葉
■『さよならのあとで』ヘンリー・スコット・ホランド 著、高橋和枝 絵(夏葉社)
大切な人を失った時、すぐに自分の足で立ち上がることはとても困難です。失ってしまったことをどうとらえたらよいのか。あの時もっとああしてあげればよかったのではないか。これから私はどうすればよいのか…そんな悲しみで胸が張り裂けそうなとき、眠れないときに、本書はひとつの優しい考え方を示してくれます。傷ついたあなたの心を癒し、時には希望になってくれる、宝物のような1冊です。
PART3:前向きな気持ちを思い出してみよう
あなたの近くにも、天使がいるかもしれない
■『天使のみつけかた』おーなり由子(新潮社)
いいことが起こった時、なぜだか面白くて仕方がない時など、楽しい瞬間がふと訪れることがあります。それを平然と、なんとなく流すのではなく、「実はそこに天使がいたのかも」と思わせてくれるのがこちらの1冊。本書は詩の形で、どんな天使がいるのか、どんな時に天使が見つけられるのかといった見つけ方のコツが書かれています。実は気づいていないだけで、身の回りにはたくさんの天使がいるのかもしれない。そんなあたたかい気持ちにしてくれます。
心がくつろぐ。世界のうつくしさを語る詩
■『世界はうつくしいと』長田弘(みすず書房)
詩人としてだけでなく、児童文学作家や文芸評論家、翻訳家としても活躍した長田弘さん。本書には、長田さんが6年をかけて季節ごとに一篇ずつ、その時見ている景色や感じていることをつづった、27篇の詩がおさめられています。その言葉のひとつひとつは、繊細で緩やか。日の光や雨粒、草木、行き交う人々など、日常の中にあるすべてのものを、指で触れて確かめているようです。忙しさや疲労で、周囲の環境や人間が辛く醜いものに見えている時、ぜひ手に取って世界のうつくしさを思い出してみてくださいね。
すべてをいつくしむ心から紡ぎ出される言葉たち
■『金子みすゞ名詩集』金子みすゞ (彩図社)
教科書や学校の授業などで、子どものころ誰もが一度は触れたことのある、金子みすゞ さんの詩。大人になった今、子どものころを思い出して、今一度その言葉に触れてみませんか?本書は「こだまでしょうか」といった有名な作品をはじめ、金子さんの詩を93編収録。どの作品にも、彼女ならではの視点や、自然や動物たちへの愛情のこもったまなざしが感じられ、やさしい言葉のひとつひとつが優しく心を揺らします。子どもと一緒に読むと、その感じ方の違いも楽しめるかもしれません。
PART4:あきらめない気持ちを取り戻そう
いつからだって、人生は始められる
■『くじけないで』柴田トヨ(飛鳥新社)
1911年に生まれ、92歳で作詩を始めた”100歳の詩人”として愛されてきた、柴田トヨさん。本書は、新聞などで掲載された柴田さんの詩を集めて刊行された、処女作品集です。彼女の生き方も、詩のひとつひとつも、「年齢なんて関係ない。いつだって人生を始められる」そんなことを語り掛けてくるよう。タイトルにもある「くじけないで」という言葉もまっすぐに心に突き刺さって、「また頑張ろう」という気持ちにさせてくれます。
女性として、私として道を進むために
■『ミルクとはちみつ』ルピ・クーア 著、野中モモ 訳(アダチプレス)
ルピ・クーアさんは、5歳のときに母から「あなたの心を描き出しなさい」と告げられ、絵を描くことを始めたイラストレーター兼詩人。現在ではインスタグラムで400万人以上ものフォロアーを持ち、自ら描いた絵と詩を投稿し続けています。本書は、2014年に刊行された彼女のデビュー作。愛や失うこと、癒されること、そして女性である自分という存在を、簡単な言葉で、しかし純粋で率直な思いでつづっています。ただ一本の芯を持って進むのではなく、傷つき、葛藤しながら歩んでいくような彼女の言葉に、きっと元気づけられるはずです。
戦後を生き抜いてきた、生命力あふれる詩
■『石垣りん詩集』石垣りん(岩波書店)
石垣りんさんは、1920年東京で生まれた日本の詩人。自分でお金を稼ぎ、詩を投稿したいという想いから、14歳の時銀行の事務員として就職。その後は定年まで、働いて家族の生活を一手に担う傍らで、詩を積極的に発表してきました。本書では、そんな彼女の作品のうち厳選した120篇を収録。家での暮らしや職場での仕事といった、ありふれた日常を徹底して描写しているのが魅力の、石垣さんの詩。戦後の時代を自分の力で生き抜いてきたその言葉には、強い生命力のようなものを感じます。
PART5:背中を押してもらって、一歩を踏み出そう
「もし、明日が来ないとしたら」を考えたくなる
■『最後だとわかっていたなら』ノーマ・コーネット・マレック 著、佐川睦 訳(サンクチュアリ出版)
2001年9月11日、アメリカで同時多発テロが発生しました。本書に収められている詩は、その後チェーンメールとして世界中に配信されたものです。当時は、「テロの救出作業中に命を落とした消防士の詩」として広まっていましたが、実際は翻訳者が連絡を取った時にはすでにガンで亡くなっていた、アメリカ人女性ものでした。彼女は亡くなった息子のために、この詩をつづっていたそうです。このことは、この詩がそれだけ傷ついた人々の心を動かし、前を向かせる力を持つことを示すものでもあるかもしれません。大切な人のために一歩を踏み出したい時、きっとあなたの心も動かしてくれるはずです。
力強い書で書かれた言葉が元気をくれる
■『生きていてよかった』相田みつを(KADOKAWA)
相田みつをさんの名前や有名な詩は知っていても、しっかりひとつの作品として読んだことはない、という方も多いのではないでしょうか。相田さんは、もともと書家として創作をスタートさせました。しかし当初から古い伝統を保ち続ける書道界に違和感を抱いており、書と詩を融合させることを目指すようになったそうです。そんな相田さんが「いちばん書きたかったことが、いちばん自由に書けた」と後に認めたのが本書。自分の言葉を、書を通してありのまま表現する相田さんの想いがダイレクトに伝わり、困難を乗り越えるための元気をもらえます。
新しい気持ちで毎日を見てみたくなる
■『吉野弘詩集』吉野弘(角川春樹事務所)
吉野弘さんは、1926年生まれの日本詩人。結婚式の祝辞としてよく贈られる詩「祝婚歌」の作者としても知られています。「祝婚歌」は、吉野さんが姪の結婚式に出られなかったため、代わりに書いて送ったものだそう。吉野さんの詩は、このように社会や暮らし、季節の移り変わりなど、人びとの毎日をまっすぐに愛情をもってとらえているものです。本書ではその代表作のほか、教科書にも掲載された「I was born」など、厳選された詩の数々を収録しています。読んでいると、吉野さんと一緒に喜び、悲しむような気持ちになり、新しい気持ちを吹き込んでくれます。
■『いわずにおれない』まど・みちお(集英社)
童謡「ぞうさん」「一年生になったら」などの詩で知られる、まど・みちおさん。幼い時、彼の詩が一度聴いたら耳から離れず、つい口ずさんでいたという方も多いのではないでしょうか。本書はまどさんの詩に加え、96歳の時に行ったインタビューを収録した1冊。ひらがなだけで作られる短い詩なのに、生物でも無生物でも、そこに在ることの尊さを感じるまどさんの作品。大人になった今、その詩がどんなまなざしから作られたのかを知り、改めて言葉として噛みしめてみてはいかがでしょうか。