読書の秋に読みたい、”食”の本。
かもめ食堂(群ようこ)
何て事のない普通の会話や、のんびりとした時間の流れは、私たちが普段忙しい日常で忘れかけているものを思い出させてくれます。ちょっと疲れた時、一息つきたい時などにぴったりの一冊です*
食堂かたつむり(小川糸)
インド人の恋人に突然逃げられた上、ほとんど全ての財産を持ち去られてしまった倫子。あまりのことに声も出なくなってしまった彼女に残されていたのは、祖母の形見のぬか床だけでした。
倫子が向かった先は山あいのふるさと。前日までにお客様と面接をして当日のメニューを決める"食堂かたつむり"を始めます。料理に対する倫子の姿勢が印象的で、命を頂くとはどういうことかを思い出させてくれる一冊です。
あつあつを召し上がれ(小川糸)
こちらも小川糸さんの作品。短編集の「あつあつを召し上がれ」です。認知症のおばあちゃんにかき氷を食べさせる「バーバのかき氷」、中華街で一番汚い店でぶたばら飯を食べ、恋人からプロポーズをされる「親父のぶたばら飯」、お嫁に行くまで毎日父にお味噌汁を作り続けた「こーちゃんのおみそ汁」など、食べ物にまつわる7つのお話が描かれています。
注文の多い料理小説集
タイトルの通り、料理をテーマにした7人の作家によるアンソロジー。柚木麻子さん、 伊吹有喜さん、井上荒野さん、坂井希久子さん、中村航 さん、深緑野分さん、柴田よしきさんという凄腕シェフたちの美味しい話を一度に堪能できる欲張りな一冊です!
今まで読んだ事のなかった作家の作品に出会えるのも、アンソロジーの良いところ。それぞれ個性の光るお話ばかりで、これを機に好きな作家さんが増えるかもしれません♪
食堂のおばちゃん(山口恵以子)
佃にある"はじめ食堂"が舞台の小説「食堂のおばちゃん」。昼は定食屋、夜は居酒屋となる"はじめ食堂"は、美味しい食事を求めるお客さんで毎日賑やか。姑の一子と嫁の二三が仲良く切り盛りし、読めば元気になる事間違いなしの作品です*
「食堂のおばちゃん」はシリーズになっていて、すでに続編も多数出ています♪登場人物たちの変化が楽しく、ページをめくる度に自分も"はじめ食堂"のお客さんになったような気分が味わえます。また、シリーズ全てに著者のレシピ付き。これを参考にごはんを作るのも楽しいですよ*
キャベツ炒めに捧ぐ(井上荒野)
東京私鉄沿線の商店街にあるお惣菜屋さん「ここ家」を舞台にした小説。ここで働くのは、江子、麻津子、郁子の3人で、皆60歳を超えています。それぞれに"おとなの事情"を抱えた主人公たちが、少しずつ前に進んでいく様子を明るいタッチで描く物語です。
「豆ごはん」「あさりフライ」「キャベツ炒め」など、人生の大切な思い出となって誰かの背中を後押ししてきた美味しいものたちが、各章で登場します。等身大の彼女たちの人生は、笑いあり、涙あり。ぜひ「ここ家」のお惣菜を思い浮かべながら読んでみてください。
泣き終わったらごはんにしよう(武内昌美)
少女マンガ編集者として働く社会人4年目の中原温人。料理をするのが好きで、恋人のたんぽぽさんと一緒に食事をするのが喜び。この小説の中では、悩みを抱えるきょうだい、友人、マンガ作家に、温人が彼らにぴったりの食事を作って振舞います。
肉じゃが、きのこパスタ、卵焼き、カレーなどなど…。気持ちを込めて作った料理は、食べる人の心をじんわりほぐしていきます。大切な人にごはんを作りたくなる一冊です。
旅行者の朝食(米原万里)
ロシア語通訳者だった著者が描く、食べ物にまつわる薀蓄たっぷりのエッセイ。民話や自身の経験などから語られる食べ物についての考察がとても面白く、好奇心を刺激される一冊です。
ロシアの面白い食べ物が多数登場。食べたことのないものも、米原さんの文章によって「一体どんな食べ物なのか?」と引き込まれ、最終的には「私もいつか食べてみたい」と思わせてくれます。つい人に話したくなる話が満載です*
忙しい日でも、おなかは空く。(平松洋子)
フードジャーナリスト、エッセイストの平松洋子さんによるレシピ付きエッセイ集。もう何をする気力もない…!という時にも好きなところからサクッと読めて、読んだ後には料理したくなってしまう不思議な一冊です。
例えば半月に切るのが当たり前のかまぼこ。それを平松さんは手でちぎって食べると言います。そうする事で、かまぼこの弾力が歯に伝わり、全く違う味わいに感じるのだそうです。身の回りの食材や道具が、この本を読めばちょっぴり違って見えてくるかもしれません*
映画化もされた群ようこさんの「かもめ食堂」。日本人女性のサチエは、フィンランドで"かもめ食堂"という食堂を開きます。そこへワケありでフィンランドにやってきたミドリとマサコも店に加わることになり、それぞれの人生やお客さんとの交流が描かれていきます。