猫に癒され、猫を知る
猫にまつわる小説
かのこちゃんとマドレーヌ夫人|万城目学(角川文庫)
小学1年生の女の子らしく天真爛漫なかのこちゃんと、気高く上品なマドレーヌ夫人が織りなすほっこりワールド。物語の多くは2人(1人と1匹)の視点で語られます。日本古来の猫又伝説を絡めて進む2人の冒険。変わらず優しく寄り添う玄三郎は、キーパーソンならぬキードッグ。こんな日があったなと懐かしく、こんな世界いいなと恋しくなるやわらかい物語です。
ブランケット・キャッツ|重松清(朝日文庫)
なじみの毛布にくるまっていればどこでも寝られる。そんな猫が店には7匹。猫らの仕事は、なじみの毛布とともに2泊3日レンタルされること。買い取りも延長もできず、料金も安くはないのに、ブランケット・キャッツを求める人が後を絶ちません。
いつか猫と暮らす日を夢見たマイホームを手放す家族、子作りを諦め猫との生活を考える夫婦など、ブランケット・キャッツを求める人々には少し切ない背景が。猫との関わりで癒やされたり現実を突きつけられたりしながら、新しい道を模索する人間模様が胸をうちます。ブランケット・キャッツの条件は”賢い”こと。もしかして猫が導いている?
モノレールねこ|加納朋子(文春文庫)
小学5年生のサトルが家の近くでよく見かけるブサイクな猫。いつもブサイクだなと思っていたところ、ある日首輪を見つけ飼い猫であることが判明します。驚いたサトルは、首輪に猫の名前を聞く手紙を隠しました。するとサトルの同級生らしいコウキから「モノレールねこ」という返事が。密かな文通が始まったものの、モノレールねこが事故で死んでしまい、文通は途絶えてしまいます。
表題の「モノレールねこ」をはじめ、生き物の存在を感じながら描かれる優しい短編集。どの物語も時折重い現実を挟みながらも、軽やかに穏やかに進んでいきます。短編なので空いた時間にぱっと手に取れますし、短い中にも胸が熱くなる要素が満載で満足感が高い1冊です。
きりこについて|西加奈子(角川文庫)
「きりこは、ぶすである」という衝撃的な一文で始まる物語。文中に何度も登場する「ぶす」を太字で書くほど、美醜をテーマにしています。癒やしの猫がいることで重くならないものの、美醜だけでなく性的なテーマまで踏み込んだ大人な本。やがて外へ出る決意をするきりこを、応援せずにはいられません。
ルドルフとイッパイアッテナ|斉藤洋(講談社)
映画化もされた大人気の児童文学。映画を見たことがある人もいるのではないでしょうか。野良猫として生きる術を教えてくれるイッパイアッテナのおかげで強く成長するルドルフ。でもいつだって、リエちゃんのところに帰りたい。かわいい猫たちが織りなす情熱の物語に、うるっとしてしまいますよ。
猫城|南篠竹則(東京書籍)
「吾輩は猫である」殺人事件|奥泉光(新潮文庫)
題名の通り、かの有名小説「吾輩は猫である」を好きな人におすすめの小説です。夏目漱石を彷彿とされる文体で、本当に「吾輩は~」の続きかのように楽しめますよ。小説好きの心をくすぐる要素は漱石にとどまらず、シャーロック・ホームズなどのミステリーキャラクターが登場するのも注目。猫とミステリーをいっぺんに楽しめる1冊です。
一人で歩いていった猫|大原まりこ(ハヤカワ文庫)
銀色の翼を持ち、直立二足歩行をする天使猫。体中に目があるトレボロ人や、龍と似ているラジェンドラ人など、7匹は流刑囚であり、地球へと送りこまれます。美しい地球にいながら文明の発展と没落を繰り返す地球種族を、果たして猫たちは導くことができるのでしょうか。
最後に紹介する1冊は、猫を擬人化した近未来のSF小説。猫とともに大宇宙の中を旅し模索するかのようで、読み応えたっぷり。世界観に飲み込まれるハードSFですが4つの短編からなるため、ちょうど良い達成感を味わいながら本を閉じることができます。愛しのかわいい猫は、人間に大切なメッセージを届けに来た天使かも?なんて、不思議な気持ちになります。
かのこちゃんは小学1年生。家には玄三郎というおじいちゃん犬がいます。ある日、玄三郎の犬小屋にアカトラの猫が迷い込みました。お母さんが焼くマドレーヌの色に似ていたので「マドレーヌ夫人」と名付けたかのこちゃん。ちょっと不思議で温かい、小さな冒険が始まります。