本をひらいて、ゆったりとした時間を過ごそう
子どもの頃に読んだ本 もう一度読み返すと新たな発見が
『赤毛のアン』/L.M. モンゴメリ(著),松本 侑子(翻訳)/文藝春秋
プリンス・エドワード島の美しい風景の中、マリラとマシューの元で成長していく夢見がちな少女アンの物語。大人も楽しめる心豊かな文学作品『赤毛のアン』。旧訳が全面的に改稿された新訳です。
『たのしいムーミン一家 復刻版』/トーベ・ヤンソン(著)/山室 静(翻訳)/講談社
丸っこくて愛嬌のあるムーミン。子どもの頃、アニメや絵本で見た記憶があります。大人になって読み返してみると、それぞれに味わいのあるキャラクターに、さらに愛着が湧きます。ムーミンママの細やかなやさしさやふところの深さ、孤独を愛するスナフキンを温かく見守り、大事に思うムーミン……。じんわり温かな気持ちになります。
長年、多くの人々に愛され続けている、ムーミンの世界。講談社がムーミン出版70周年に復刻した『たのしいムーミン一家』(1965年版)は昔ながらの函入りで、読後、部屋に飾っておきたくなる装丁です。
ゆったり、穏やかに、旅気分を味わう
『旅のつばくろ』/沢木 耕太郎/新潮社
日本を旅するエッセイが41編、おさめられています。旅の途中での小さなエピソードや、さまざまな人との「心」のふれあいを、穏やかでゆったりとした視点で書き留めています。旅で悪天候に見舞われても、それを楽しめる考え方が素敵です。軽やかで心地よい文章。のんびり一人旅気分が楽しめる一冊です。
沢木耕太郎氏、初の「国内旅エッセイ」。JR東日本の新幹線車内誌「トランヴェール」の連載が待望の単行本化!つばめのように軽やかに、旅したいですね。
『路(ルウ)』/吉田 修一/文藝春秋
「仕事」「人間関係」「恋愛」「病い」「人の弱さ・美しさ」など、さまざまなテーマが重厚に折り重なっていて、とても読み応えがあります。登場人物も多く、それぞれにドラマがあり胸が熱くなります。読後はなぜかとてもさわやかですっきりしている。台湾の風景が目に鮮やかに浮かんでくる、元気がもらえる一冊です。
1999年、台湾新幹線の着工にともない、商社員の多田春香は現地への出向が決まった。春香は学生時代に台湾を旅した思い出を忘れられずにいた……。日本と台湾それぞれの地で、人々の濃密なドラマがあり、人間の心の絆が感じられる作品です。
文学作品にふれ、美しい言葉と出会う
『風の歌を聴け』/村上 春樹/講談社
村上春樹氏のデビュー作。言葉の選び方や比喩がきれいで、当時の文学少女は皆胸に村上氏の本を抱いていました。夏の風景と若者たちの青春の日々がみずみずしく描かれています。それぞれの年代で読み返してみると、違った感情が生まれるのでは。時を経て何度も読み返したくなります。
群像新人賞を受賞したデビュー作。1970年の夏、海辺の街に帰省した<僕>と、友人と女の子との物語。ものうく、ほろ苦く、日々は退屈に過ぎ去ってゆく――。
『えーえんとくちから』/笹井 宏之/PARCO出版
ひらがなのやさしさが伝わる31文字(みそひともじ)短歌の本。題名にもなっている“えーえんとくちからえーえんとくちから永遠解く力を下さい”は、「永遠と口から」と「永遠解く力」のバランスが、ひらがな表記で絶妙ですよね。呪文のように頭をめぐります。他にも“拾ったら手紙のようで開いたらあなたのようでもう見れません”など、言葉を紡いでみたくなる魅力的な短歌がたくさん!やさしいひらがなにいやされます。
2009年、26歳の若さでこの世を去った天才歌人の笹井宏之氏、没後初となる作品集。短歌というジャンルを越えて楽しめる作品たちが凝縮された一冊です。
人と人、心のふれあいを考える
『カラフル』/森 絵都/文藝春秋
“この世があまりにもカラフルだから、ぼくらはいつも迷ってる。どれがほんとの色だかわからなくて。どれが自分の色だかわからなくて”――それぞれの人に「色」があって、影響し合って生きています。でも、それは自分の心の持ちようで変えられるんですよね。人間の不完全さが愛おしいと思えてきます。読後の爽快感が魅力の本。
<ぼく>の魂は輪廻のサイクルから外されたが、再挑戦のチャンスを得た。自殺を図った少年、小林真の体に入って真として過ごす中で<ぼく>が感じたこととは?死をテーマにしながらも軽妙な文体が心地いい。
『ツバキ文具店』/小川 糸/幻冬舎
手紙の代書請け負いという、他人の秘密や心の内を垣間見る仕事。相手を想って、インクの色や紙、文字の書き方も工夫する……。それぞれのエピソードも興味深く、やさしく温かいです。文房具好きにはたまらない、こだわりの品々も登場するので、楽しみながら読み進めることができます。
鎌倉にある小さな古い文房具屋さん「ツバキ文具店」。店主の鳩子が手紙の代書を請け負います。離婚をお知らせする手紙やラブレター、断り状など手紙の内容はさまざま。伝えられなかった大切なあの人への想い、ありませんか?
「ふつう」「ありのまま」の大切さを思う
『【日本語版】HAPPINESS IS... 幸せを感じる500のこと』/リサ・スウェーリング,ラルフ・レザー(著)/文響社
文章を読むのに疲れたら、可愛いイラストと短い言葉でほっとひといき。とびっきり特別ではないけれど、私たちの身のまわりは小さなしあわせであふれている……。そんな気付きを与えてくれる本です。枕元に置いて、何度も読み返したくなります。
『HAPPINESS IS...』の日本語訳版。可愛らしいイラストで多くのファンを持つイラストレーターの夫妻が、世界中の人から「幸せを感じる瞬間」を募りました。特別ドラマチックなことばかりではないけれど、ページをめくるたび笑顔になれますよ。
『私は私のままで生きることにした』/キム スヒョン(著),吉川 南(翻訳)/ワニブックス
生き辛さを感じるとき、心を軽くしてくれる本。ありのままの自分を大切にすることで、他の人も大切にできるのだと気付かされます。子どもの頃のように、自分に正直に、生きることを楽しみましょう。
幅広い世代の人々が共感した韓国のベストセラー・エッセイ。自分を大切に生きるために忘れないでほしい、心に留めておきたくなる70のメッセージ。他の誰かと自分を比べなくてもいい、あなた自身の気持ちを大事にしてみませんか。
子どもの頃、夢中で読んだ『赤毛のアン』。詳細なストーリーはおぼろげですが、美しいグリーン・ゲイブルズの風景と、アンの多感でみずみずしい感性に、心ときめかせた思い出は鮮明です。新訳も出ているので、大人になった視点でじっくり読み返してみるのもいいかもしれません。