家族にはいろいろなかたちがある
さまざまな家族の在り方を知ることは、わたしたちに新たな気づきを与えてくれます。「家族」という単位を構成する、さまざまな人々の暮らしに出会える本をご紹介していきます。
社会の常識とは違ったって、大丈夫!
1.主夫のトモロー
直木賞作家の朱川湊人さんが現代の子育てを描いた家族小説です。朱川さん自身の主夫としての実体験に基づいたフィクションであり、リアリティをもって、納得して読み進めていくことができます。
バリバリ働きたいみっちゃんと結婚したトモローは、主夫としてみっちゃんを支えつつ、小説家になる夢を追っています。二人の間には女の子も生まれ、育児に奮闘するトモローは、「男は外で働き、女は家を守る」という社会の常識とも戦うことになります。
パパとママがそれぞれの役割りを果たしながら、自分たちらしい幸せを探す。それは、とても素敵なことですよね。パパ、ママだけではなく、育児に携わるみんなに響く一冊です。
みんなで子育て!障害者だってママになれる
2.ママは身長100cm
骨形成不全症という障害を持って生まれた伊是名さん。二人の子供を帝王切開で出産し、元気に子育てされています。子どもを抱っこすることはできないけれど、家族みんなの愛に包まれて、素敵な日々を送っています。
障害者だからもちろんできないこともあります。伊是名さんのおうちには毎日十時間、十人のヘルパーさんが来て育児を手伝ってくれています。
ヘルパーさん、お友達、ボランティアとたくさんの人の助けを得て、みんなで子育てする。そういう生き方だってあるんだということが分かると、心がほんの少し軽くなるような気がします。
父が三人、母が二人。血が繋がらなくても、愛されている
3.そして、バトンは渡された
何度も離婚、再婚を繰り返す親たちの間をリレーされていく主人公。そのたびに、新しい親との出会いがあり、彼女は深く愛されていきます。血の繋がりだけが「家族」を作る要素ではないということが、よく分かるお話です。
一見すると辛く、悲しい物語のような設定ですが、複雑な家庭環境にある少女の成長が、軽やかに描かれています。子を持つ親であれば、共感できるシーンも多く、優しく、温かな読後感のある作品です。
生みの親と育ての親。それぞれの人生がある
4.朝が来る
長く不妊治療に挑んだ末、特別養子縁組を選んだ夫婦と中学生で望まぬ出産をし、子供を養子に出した母。幸せに暮らしていた親子のもとに、「子供を返してほしい」という電話が…。それぞれの人生と思いが交錯し、ラストシーンへと導かれていきます。
今、日本には特別養子縁組でご縁をいただいて幸せに暮らしている子供が大勢います。事情があって、子供を手放さざるを得なかった側と子供を授かることができなかった側、両方の視点を体感することができます。子供を通して、家族の在り方を深く考えるきっかけになる作品です。
パパが二人いる生活って特別なもの?
5.マチルダとふたりのパパ
パールの学校に転校してきたマチルダにはパパがふたりいます。パールはマチルダのおうちは自分のうちとは違うユニークななにかがあると期待します。でも、実際に行ってみると、自分のうちと変わらない「普通」の家でがっかり。
パパがふたりいる生活は「特別」なのかと思っていたパール。同性のパートナーと子供という家族も自分の家と同じ普通の家族だったという気づきに驚いてしまいます。多様な性の在り方が認められる世の中になってきた現代。子供と一緒に読みたい一冊です。
抜群の距離感で子供と関わる大人の存在
6.パパのカノジョは
パパの新しい彼女と出会った父子家庭に育つ少女。揺れるナイーブな少女の心がだんだんと彼女に惹かれていくのが分かるお話です。彼女はいつも自然体で、自分のことを考え、やりたいことをやりたいようにやり、少女のことを一人の人としてきちんと認めています。
親ではないけれど、とても身近で自分のことを正しく見つめてくれる大人という存在にはなかなか出会えるものではありません。離婚や未婚などでひとり親が増える中、多くの人の心に響く作品です。
幸せな家族の崩壊と再生の物語
7.明日死ぬかもしれない自分、そしてあなたたち
連れ子あり、バツイチ同士の再婚夫婦。二人の間には末娘も生まれ、平穏で幸せな家族の暮らしに、突然の長男の死というアクシデントが訪れます。「平均的な普通の幸せな家庭」は壊れ、徐々に歯車は狂っていきます。
大切な人を失った悲しみは家族それぞれに広がり、それぞれの想いに胸が打たれます。子供たちはアルコール依存に陥った母を見ながら成長していきます。
ラストで新たな一歩を踏み出す家族にエールを送りたくなるお話です。生と死、そして家族の愛とはなんなのか、子供たちの視点を通して深く考えさせられます。
それぞれが前に進んでいくために
家族のかたちはひとつではありません。理想の家族のかたちだってひとつではありません。多様性を大切に、みんながそれぞれの立場に寄り添い、思いやっていけたら、より良い明日を迎えられそうです。
気になった本はありましたか?ぜひ、機会をみつけて、手に取ってみてくださいね♪
会社で働くパパとおうちで家事をこなすママ、兄弟がたくさんいる子どもたち。こんな家族のかたちが当たり前だと思われていたのは、もう昔のこと。今は、「家族」のかたちはもっともっと広く、複雑になっていっています。