“ZINE(ジン)”とは?
身近な存在になった“ZINE”
好きなことを好きなだけ表現できる
今や自由に自分を表現できる場所はたくさんありますが、例えばSNSなどははネット上にしか存在せず“形には残らないもの”。比べてZINEは自分の好きなことを好きなように表現ができて、それを“形として残す”ことができます。ネットにはない、“モノ”としていろんな人の手に渡るリアルな面白さが今の流行に繋がっているのかもしれません。
PC・プリンター・紙・ホチキスがあれば作れる
でも、作り方わからないし難しいでしょ…?と、どこかで諦めてしまっている方はきっと多いはず。ZINEは、PC・プリンター・紙・ホチキスさえあれば作ることができちゃいます!とは言っても、作る過程がわからない…。では、そんな方に向けてZINEの作り方を5つのステップで簡単にご紹介します。最初はこだわり過ぎないことも重要です!
【ZINEの作り方】5ステップ
1.台割を考える
台割とは、各ページに何を掲載したいかの割り振りを簡単に書くものです。制作に入る前に、まず自分が持っているイメージを簡単に紙に書き出してみましょう。ページの見開きの枠線を書いて、各ページにどんなテーマを載せるか、写真をどこに置いて文章をどれだけ書くのかなど、大まかなイメージを書いていきます。まだ何もテーマが決まらないのであれば、スマホに入っているカメラロールやSNS、日記などを見返してみるのもおすすめです。
2.自由に作る
もう作るの!?と思うかもしれませんが、実際に手を動かしていくことが大事です!何を使って作るかは人それぞれですが、初心者の方におすすめなのは「パワーポイント」。学生時代に少し触っていた方は何となく使い方がわかるはずです。綴じ方によってページの振り方が異なりますが、「中綴じ」なら1枚のパワーポイントを見開き1ページと見て半分のところに線を入れます。それぞれのページに写真やテキストを挿入しながらページを作り上げていきます。
3.印刷する
自宅にプリンターがある方は、自分で印刷した方が値段をおさえることができますよ。簡単に印刷ができますし、何より入稿作業が省けるので気楽!でも、自宅やコンビニのプリンターは色が綺麗に乗らないものが多いので(その荒さを良さに変えるのも◎)、質を上げたいのであれば業者に頼む方がいいかもしれません。
4.裁断する
業者に頼むと「裁断」と「製本」も請け負ってくれます。入稿する時に、紙質、印刷方法、製本方法などを業者に依頼すれば、あとは完成を待つのみ!自分で印刷した方は、どんな大きさ・形で製本するのか決めて、自分自身で紙をカットする必要があります。
カッターでカットすることもできますが、何枚も一気に真っ直ぐカットできる「ペーパーカッター」があると便利!なかなか自宅にないアイテムですが、1台持っておくと役立ちますよ。
5.製本する
最後のステップは、切った紙を本の形にする製本です。これも業者に頼むと請け負ってくれる工程ですが、自分で製本を行うならホチキスで留めるのが一番手軽な方法です。
真ん中のページでホチキス留めをする「中綴じ」にする場合、普通のホッチキスだと綴じるのが難しいですが、製本に最適なホッチキスがあるのでご安心を。2箇所をガシャンと留めれば、ついにZINEの完成です!
ZINEのお悩み【Q&A】
Q)PCを持ってない人は?
A)
パワーポイントやAdobeソフト(InDesign、Illustratorなど)などのツールを持っていない方でも大丈夫!切って貼る「スクラップ」で作ってみるのもおすすめ。写真やイラストを印刷して好きなように紙に貼る。もしくは、紙に直接書いて冊子にするのも立派なZINEです。ZINEを作ることのハードルがグッと低くなったような気がしませんか?
Q)おすすめの印刷会社は?
A)
ちゃんとした印刷紙や自分で選んだ紙を使いたい、色を綺麗に出したい方は、印刷会社に依頼しましょう!都内の大型文具店でZINEのイメージに合う紙選びからこだわると、作品の印象や質も大きく違ってきます。入稿データを整えて業者に納品しなければいけないのは少し手間ですが、その分クオリティの高いZINEが完成します。各業者で入稿方法やルールなどが違うので、確認してから依頼するようにご注意を。
おすすめ印刷会社はこちら!
Q)ZINEを作った後って?
都内最大級アートブックイベント『TOKYO ART BOOK FAIR』
都内だけでも数多く開催されているZINEイベント。その中でも、都内最大級のアートブックフェア『TOKYO ART BOOK FAIR(TABF)』をご紹介します。日本で初めてアートに特化したブックフェアで、ぜひ、ZINEに興味のある方には訪れてほしいイベントです。
2019年度の開催では、アートブックやZINEなどを作るアーティストや出版社らが国内外から約300組参加。数多くのアーティストが作りだす個性的で独特な作品はどれも刺激的です。イベントの予定については、公式SNSなどでチェックしてみてくださいね◎
TABFでみつけたクリエイター&ZINEアイデア
No1. やまもとまな『PRESSED FLOWERS』
古書に押し花のコラージュが印字されているやまもとまなさんのZINE『PRESSED FLOWERS』。「書籍に挟まれていつの日か完成する押し花の存在をそのままZINEに落とし込んだ」と言う本作品。テキストの意味合いも考慮しながら選書した洋書に、さまざまな押し花のコラージュをのせた、大胆でありながらも繊細さを感じる美しいZINEです。
「日頃からあたまの中に溜まっているものを一気に形にするものが、わたしにとってのZINEだと思っています」。ZINE作成の際は、”即興性”を大切にしていると言うやまもとさん。モチーフの花のセレクトやページの構成はスピード感を持って行ったのだそう。「押し花の存在の疑似体験として、切り抜いたクローバーのコラージュをZINEに挟んで販売をしました」。ZINEであり、アートブックとも言える一冊。実際に手にとって、その押し花の表現に触れてみてほしいZINEです。
No2. フクナガコウジ『Sanuki Udon』
「昨年、香川県の丸亀や高松で一日に何枚も讃岐うどんを食べた思い出と、小豆島に渡るフェリーが巻き起こす瀬戸内海の波のイメージを一冊にした」と言う、フクナガコウジさんの『Sanuki Udon』。普段からスカルプチュア感のあるZINEを作ることが多い中で、この作品はより一層一冊の強さにこだわったのだと言います。
「その日は一日にうどんを4杯(中華そばも2杯)食べました。合間に満腹を解消するために仮眠を取っていて、その夢の中でもうどんが押し寄せてくるようなイメージにしたいと思い、表紙も含め全てのページをうどんの海にしました」という裏話も。”PARA BOOK PRESS”というご自身のZINEレーベルで、前記したやまもとまなさんと共に、様々なZINEを手がけるフクナガさん。どれも印象に強く、そして優しく残るものばかりです。
No3. きくちゆみこ『わたしがぜんぶ思い出してあげる』
詩、エッセイ、格言、写真で構成されたささやかなZINE『わたしがぜんぶ思い出してあげる』。翻訳業をしながら、文章を書かれているきくちゆみこさんの作品です。「あるふたつの事件を通じて、喪失感・哀しみ・敵対の心・人との出会い・そして親密さについてぐるぐる考えた、宣言のような、祈りの言葉のような、それじたいがひとつの詩であるような小さな本です」
「さまざまな分断がある世界で、わたしたちが互いに親しみを感じるために、何かできることはないかと思って作りました。伝わる範囲は限られていたとしても、ものを書いたり、ZNEをつくることが一番ぴったりなやり方みたいです」と教えてくださったきくちさん。過去にTumblrにあげた文章をもとにZINEを作るのが多いのだそう。他の作品も含め、ページをめくるたびにいろいろな感情が沸き起こるZINEです。
No4. 日刊タイポ
毎週出される1つのお題を各曜日ごとの担当デザイナーが日替わりで作字し、SNSにて毎日更新するという「日刊タイポ」。今回のZINEは、2019年1月1日の創刊日から約半年分の作字を1冊にまとめたもの。1つのお題を、7人がそれぞれどう表現するのか、7者7様のデザインを楽しめるZINEです。
「きっかけは、TOKYO ART BOOK FAIRへの参加が決まったことが大きいですが、日刊タイポ結成当初から、いつかZINEを作りたいとメンバー間で話していました。それも意識して、紙をイメージさせる『日刊』という言葉を企画名に使っている部分もあります」。手製本のため制作に時間がかかったという『日刊タイポ』。業界や会社の垣根を超えて集まったメンバーが作りだすタイポグラフィは、表現方法の新たな発見があります。
No5. 松㟢翔平『LES VENTES SOMBRES』
モデルや俳優としても活躍する松㟢翔平(まつざきしょうへい)さんによる、台北についてのZINE。おすすめのお店リストや魯肉飯のレシピや台北の思い出話などが綴られています。
きっかけは、TOKYO ART BOOK FAIRに出店が決まったから。渋谷にあるギャラリースペース付き立ち飲みバー「DAITOKAI」の小さな出版部門「DAITOKAI BOOKS」から出展したのだそうです。キンコーズで印刷をし、製本は自分で行ったという松㟢さんのZINEは、カジュアルでZINEらしいZINEです。
No6. へきち『Buhin』
アート/デザイン/印刷/造本の活動を行う「へきち」。その一人であるMasatoshi TabuchiさんによるZINE『Buhin』。ネジ、釘等の小さな「部品」を拡大して精密に描いた作品集です。実物よりも大きく描くことで線の密度を高め、道具の持つ美しい形を探求した作品なのだそう。
40点ほど描き上げた段階で一冊の本にまとめたという本作品。もともとは、2012年に制作したもので、その年に売り切ってしまい、長らく絶版だったと言います。「ずっと取り組んでいる作風でもあるため、多くの方に観ていただきたくて、今年3rd Editionを制作販売しました。Editionごとに少しずつ仕様を変え、今回の3rd Editionはリソグラフで印刷しました」。普段はフォーカスしない部品を美しく魅せる技術に脱帽する一冊です。
ZINEでもっと”自由”になろう
【おまけ】新人クリエイターZINE紹介!
『ちょっといい、ちょうどいい』
『ムダムダうるさい』
「いらない紙保存しちゃう」をテーマに、「ムダ」について考えたZINE。ムダに遊び、ムダにこだわった一冊。
製本方法:中綴じホチキス製本(自宅)
印刷方法:自宅のプリンター
紙:表紙 クラフト紙(竹尾見本帖)、その他 コピー用紙
近日開催のZINEイベント!
10/20(日) 『はしやすめ』
10月20日(日) 浅草の隣町である「田原町」で、小さなZINEイベント『はしやすめ』が開催されます。ZINE初心者含む約10人がそれぞれのZINEを出品します。もちろん購入もできますが、自主制作したZINEを持ち込めば交換も可能なんです。参加者の故郷のお菓子をモチーフにしたオリジナルお菓子やカジュアルに立てたお抹茶も提供するのだとか。参加者にZINEの作り方を聞いてみるチャンスにもなりそう!浅草や蔵前へ遊びに行くついでに、ふらっと寄ってみてはいかがでしょうか?
個人が作った印刷物や冊子のことを“ZINE”と言います。雑誌を意味する「MAGAZINE」の後ろ4文字をとってZINEと言われるようになったのだとか。テーマや印刷方法、製本方法など基本的にノールールなのがZINEの面白いところ!自分の「好き」を紙に落とし込んで本の形にすれば、もうそれはZINEなんです。そんなZINEについて、もう少し詳しく下でご紹介します!