その着物文化を紐解くと、古きよき時代の日本人の姿が見えてきますよね。
一つの反物からできあがる、一枚の着物――。
古来より日本人が尊んできた精神性にも触れることができます。
それは海外においても同じこと。現地に根付く布文化から、その土地の知られざる魅力に出会ってみませんか。
異国の布文化を巡るvol.1~インドネシアの更紗「バティック」の魅力
本来の製法としては、すべて手作業。熟練の職人がひとつひとつ丁寧に手描きし、染めているものなのです。
バティックは、日本でいう着物のように、インドネシアの正装・伝統衣装に欠かせないものです。頭巾、肩掛け、胸布、腰布などに用いられていますよ。
もともとは、王宮御用達の高級品
古代の王宮文化が栄えたヒンドゥ・ジャワ文明では、王族やの一部貴族のみ着用が認められていた、特別なものだったそう。製法もまた特別なもので、王宮内の貴族の子女のみに許される格調高い技芸でした。
当時は特定の階級しか身につけられない「禁制模様」もあるほど、王宮御用達の高級品とされていたのです。バティックにはどこか風格が漂いますが、こうした背景によって、高度なデザインや技術を求め続けた為といえるでしょう。
バティックの美しい模様・色彩
美しい花鳥風月の模様が印象的ですが、その模様のルーツにおいては、いまだ解明されていません。ただ、インドネシア独自のものではないということが分かっています。
長い歴史の間に、遥かに長い染織の歴史を持つインドの更紗をはじめ、昔渡来してきた中国人やアラブ人の影響、オランダ植民地支配によるによるヨーロッパ文化の影響、さらに第二次世界大戦下、日本の支配下におかれたことによる影響など・・・多くの文化のエッセンスを取り入れ、発展していったそう。
従来のバティックは、主に、茜(赤)、藍(青)、ソガ(茶)などの植物染料が用いられ、「赤い更紗」「青い更紗」「赤と青の更紗」「茶色の更紗」が中心となっていましたが、20世紀前半に合成染料が導入されると、より明るい色彩の、華やかな衣装が増えていきました。
実は、日本でも「ジャワ更紗」の名で昔から親しまれている布
バティックは、どのように作っているの?
布地に、デザインを下書き
バティック作りは木綿の布地を洗浄して、滑らかにすることろから始まります。そうして整えた生地に、鉛筆で下書きを書いていきます。
チャンティンによる手作業の蝋付け作業
こちらは蝋鍋。蝋を入れて溶かす時に使う道具です。ちなみに、透明な蝋を使うとどこに蝋をのせたか分からなくなってしまうため、あえて色をつけた蝋を使っているそうです。
チャップというスタンプを用いた蝋付け作業
こちらはバティック用のスタンプ、「チャップ」という金型の道具を用いた制作風景です。「チャンティン」による手描きでは2週間かかってやっと1枚作れるほどの蝋しか布地にのせられませんが、「チャップ」を使えば、1日に20枚分もの蝋をのせられるそう。
どちらにせよ手作業による職人の仕事は、神技ではないかと思わせる正確さです。
染色作業
染色しない部分の蝋付け作業を終えたら、布地を染料に浸して、染色します。染色は一度に一色しかできないため、色の数に応じて蝋置き→染色の作業を繰り返し、豊かな模様に仕上げます。
時には特定のモチーフを目立たせるために、ピンポイントで、筆を使って染色することも。蝋置きにしても、染色にしても地道な作業が繰り返されます。
日本の生活にも馴染むバティック製品
バティックは多文化の影響を受けているためか、日本で使っても不思議なほど違和感がないのも大きな魅力。おすすめのバティック製品の一例をご紹介します。
リビングに。
こちらはバティックを使用したクッション。伝統的なデザインですが、時を経ても色あせない美しさがあります。リビングのソファや寝室のベッドなどで素敵なアクセントになってくれますね。
食卓に。
色々な柄のコースター。テーブルを華やかにしてくれます。既製品もありますが、余り布でも簡単に作ることができます。
こちらは、オリエンタル感溢れるランチョンマット。モノトーンだと、またかっこいい雰囲気になりますね。普段使いにも、またはアジア料理をサーブする時にもいかがでしょう?
ちょっと特別なお出かけに。
現代のライフスタイルにあわせて、おしゃれなデザインに仕上げられています。こちらは子供用ワンピースですが、大人でも着こなしたくなりますね。
興味がわいてきたあなたへ。バティック製品を買うなら?
おすすめのショップを一つご紹介します。
LUCY'S BATIK(ルーシーズ・バティック) @バリ
最後に。
いかがでしたでしょうか。バティックの模様や肌触りは歴史の重さを感じさせますが、なぜか懐かしく、どこか親しみやすく感じるのは異⽂化の影響を受けながら繁栄してきたからではないでしょうか。
それにしてもバティックの伝統的制作⽅法には驚きを隠せません。もしインドネシアに⾏くことがあったら、ぜひ、バティックの⼯房を覗いてみてくださいね。産業⾰命以前にタイムスリップしたような、不思議な体験ができますよ。
花鳥風月を取り入れた繊細な柄模様、そして自然に寄り添う色合いが融合する、異国情緒豊かな「バティック」。インドネシアの伝統的製法で作られるろうけつ染めの布で、世界中の人々に愛されています。