四季のうつろいを表す「季語」。もっと深く知ってみませんか?
旧暦が息づく俳句の世界
冬の季語
【冬】:立冬(11月7、8日ごろ)から立春(2月4、5日ごろ)の前日までをいう。
1月
【凍蝶(いてちょう)】幾日も止まったままの冬の蝶が、死んだかと思いきやふれると舞い上がったり、生きているかと思えば凍っていたりする様子をいいます。/【御降(おさがり)】元日に降る雨雪のこと。3が日に降る雨雪に言うという説も。/【雪】や【雪見】も1月の季語。
いざゆかん雪見にころぶ所まで 松尾芭蕉
春の季語
【春】:立春(2月4、5日)から立夏(5月6日)の前日までをいうのであるが、月でいう場合は2月・3月・4月を春とする。
2月
【冴返る(さえかえる)】光や音などがくっきりと澄むさま。また、立春を過ぎてから鋭い寒さがぶり返すことをいいます。同じ意味で【凍返る(いてかえる)】という季語も。残る寒さを表す季語として、他に【余寒(よかん)】【春寒(はるさむ)】などもあります。
柊にさえかへりたる月夜かな 内藤丈草
病牀の匂袋や浅き春 正岡子規
3月
【踏青(とうせい)】野に出て青々した草を踏み、野遊びをすること。いわゆるピクニック。【野遊(のあそび)】という季語も。/【摘草(つみくさ)】野原などで草花を摘むこと。食べられる草を摘むこともあります。万葉の時代から貴賤を問わず続く春の遊びのひとつ。
草摘みし今日の野いたみ夜雨来る 高濱虚子
【ものの芽】春に萌えるさまざまな植物の芽の総称です。/【北窓開く】寒さを防ぐため閉め切っていた北窓を春になって開けはなつこと。/【春炬燵(はるごたつ)】春になってもまだ使っているこたつのこと。
4月
【桜】俳句で【花】といえば桜のこと。/【花曇(はなぐもり)】桜の咲くころ、曇りがちなのをいいます。/【花冷(はなびえ)】桜の咲くころ、まだ寒い様子。/【日永(ひなが)】冬の後では春が一番日の長さを実感するため、俳句では日長といえば春とされます。
ちるさくら海あをければ海へちる 高屋窓秋
夏の季語
【夏】:立夏(5月6日)から立秋(8月8日)の前日に渡る期間である。月でいえば便宜上、5月・6月・7月を夏季とする。
5月
弟子達の弓の稽古や若楓 中村吉右衛門
6月
短夜や駅路の鈴の耳につく 松尾芭蕉
7月
月に柄をさしたらばよきうちはかな 山崎宗鑑
椅子涼し衣通る月に身じろがず 杉田久女
秋の季語
【秋】:立秋(8月8日)から立冬(11月7・8日)の前日までをいうのであるが、月でいえば8月・9月・10月の3月を秋とする。
8月
【初嵐】台風の先駆けのような風が秋のはじめに吹くのを、初嵐といいます。/【西瓜】意外なようではありますが、これも秋の季語です。/【新涼】秋になって初めて感じる涼しさのこと。
新涼や白きてのひらあしのうら 川端茅舎
9月
だまりゐし人話し居る夜長かな 高濱虚子
10月
朝寒の膝に日当る電車かな 柴田 宵曲
遠望をさへぎる紅葉一枝かな 野村 泊月
冬の季語
【冬】:立冬(11月7、8日ごろ)から立春(2月4、5日ごろ)の前日までをいう。
11月
【冬構(ふゆがまえ)】田畑や庭木の作物を囲ったり、雪囲いをしたり、寒冷をふせぐための工夫をすること。/【神の留守】旧暦10月には神々が出雲の国に旅立つという言い伝えから出ています。/【時雨(しぐれ)】初冬に降ったり止んだりする雨のこと。
しぐれつゝ留守守る神の銀杏かな 高濱虚子
【初霜】その年の初めて降りる霜。/【冬暖(ふゆあたたか)】冬とも思えないほど温かな日のこと。/【冬日和(ふゆびより)】晴れた冬の日のこと。/【北窓塞ぐ(きたまどふさぐ)】冷たいすきま風が吹き込むのを防ぐため、北窓を閉じたり目張りをしたりすることをいいます。
12月
【冬ざれ】草木が落葉し、人目も草も枯れ果てて寂寞としたようすのこと。/【日記果つ】年末になって、この1年つけてきた日記が残り少ないことをいいます。
【息白し(いきしろし)】朝夕などに、冷気にさらされた息が白く見えること。/【冬枯(ふゆがれ)】冬が深まり、草木が枯れ果てたようす。/【山眠る】冬枯れて山の彩りも失われ、深い眠りについているかのようなさま。【山笑ふ】と対のような季語ですね。
白き息はきつゝこちら振返る 中村草田男
短い音数の中に四季を織り込んだ、趣深い季語。小学校などで俳句や季語に習い親しんだ方も少なくないはず。しかし、日常生活で使わない言葉だと、意外と知らないものも…。もう少し深く、季語について知ってみませんか?