息を吸うと新鮮な空気が身体を満たし、気がつけば東京にいることを忘れてしまう──ここは明治神宮の近くにある花屋<The Little Shop of Flowers(リトル)>。神秘的な木々と鬱蒼とした植物に囲まれた佇まいは、さながら山小屋のよう。
お店を開いたのはフローリストの壱岐ゆかりさん。もともとは代々木上原で花屋を始め、この場所に引っ越してきて10年目。あるときはお店に並べる花を畑で育て、またあるときは廃棄する花を使ったプロジェクトにも挑戦。試行錯誤の末、大切な気づきがあったと話します。
「花や緑は生き物。彼らが生きているだけで訴えかけてくる美しさがあります。例えば花屋に置かれた花が20~30代のピチピチの状態だとして、朽ち始める40~50代は醜いのかというと、そうではない。味わいが生まれて奥行きが出ると思うんです。だから、店頭では畑で収穫をした花がどうやって今の姿になっているのか、朽ちていく花にどんな魅力があるのか、その時々の花の魅力をお客様に伝えられたならと思います」
自然が語りかけてくる美しさを体感しに……<The Little Shop of Flowers>へ。
お店を開いたのはフローリストの壱岐ゆかりさん。もともとは代々木上原で花屋を始め、この場所に引っ越してきて10年目。あるときはお店に並べる花を畑で育て、またあるときは廃棄する花を使ったプロジェクトにも挑戦。試行錯誤の末、大切な気づきがあったと話します。
「花や緑は生き物。彼らが生きているだけで訴えかけてくる美しさがあります。例えば花屋に置かれた花が20~30代のピチピチの状態だとして、朽ち始める40~50代は醜いのかというと、そうではない。味わいが生まれて奥行きが出ると思うんです。だから、店頭では畑で収穫をした花がどうやって今の姿になっているのか、朽ちていく花にどんな魅力があるのか、その時々の花の魅力をお客様に伝えられたならと思います」
自然が語りかけてくる美しさを体感しに……<The Little Shop of Flowers>へ。
戦後の東京を見守ってきた木々
平日も人で溢れる表参道を1本裏に入り、木々に囲まれた小道を進むと見えてくる趣のある古民家。1950年代に建てられたものだそうで、この中の一角に壱岐さんのお店があります。
「もともとは大家さんが生まれ育った場所でして、開発で土地を手放すこともなく守り続けてきたみたいなんです。戦後はここで青空市など行われていたようで、珍しいものから日用品まで売り買いする風景があった。その当時から残っている木々は、東京のさまざまな歴史を見守ってきたんでしょうね」
「もともとは大家さんが生まれ育った場所でして、開発で土地を手放すこともなく守り続けてきたみたいなんです。戦後はここで青空市など行われていたようで、珍しいものから日用品まで売り買いする風景があった。その当時から残っている木々は、東京のさまざまな歴史を見守ってきたんでしょうね」
畑で収穫した個性的な花
夏の終わりに訪れた店内にはヒマワリやヘリクリサム(写真上)が咲いていました。真っ直ぐな花もあったり、自由に曲がっていたり、同じ種類でもその個性はさまざま。
「市場で仕入れる均整の取れた花と、知り合いの畑で収穫している個性的に曲がった花を一緒に並べています。1本1本の個性を尊重しながら、花も多様性を意識して選んでいる。市場に出回るような品質良く安定供給できる花が引き立つのって、意外と自由で個性的な花がいるからなんだと思います(笑)」
「市場で仕入れる均整の取れた花と、知り合いの畑で収穫している個性的に曲がった花を一緒に並べています。1本1本の個性を尊重しながら、花も多様性を意識して選んでいる。市場に出回るような品質良く安定供給できる花が引き立つのって、意外と自由で個性的な花がいるからなんだと思います(笑)」
最近は、温暖化による環境変化や、コロナや戦争の影響で、仕入れていた花が輸入ができなくなるということが多いのだそう。「その状況でお店の個性を出すには、品種にとらわれないことも大事にしています」と壱岐さん。
花も見た目じゃない
店頭では色鮮やかな草木染めの小物や洋服を販売中。お店で廃棄する花を染料に変えるプロジェクト「colors by flower waste」も精力的に行なっています。
「コロナの時期にお店で廃棄する花を使ってボタニカルダイや草木染を始めました。見た目は黄色の花なのに、青色の染料になったりと驚きの連続!人間も見た目じゃないけどさ、花もそうなんだなって。私の知らない魅力がまだまだたくさんあります」
「コロナの時期にお店で廃棄する花を使ってボタニカルダイや草木染を始めました。見た目は黄色の花なのに、青色の染料になったりと驚きの連続!人間も見た目じゃないけどさ、花もそうなんだなって。私の知らない魅力がまだまだたくさんあります」
お店でバンドルダイという花びらを押し付けて染めるワークショップも行う。
自然の力を感じるブーケ
自然をダイレクトに感じることができる壱岐さんのブーケ。花屋を始めたときから大切にしている、ブーケを編むときに意識していることを教えてくれました。
「ブーケの中に自然の雰囲気をどうやったら出すことができるのか。例えば手入れをしていない庭みたいに、たまたまそうなった自然な感じを、なんでも綺麗に作りすぎちゃう人間の手でやってみようとすると難しい。でも、それが面白くて。そういう自然な状態を作ることで、もらった人が家に飾ったときにパワーをもらえると思うんです」
「ブーケの中に自然の雰囲気をどうやったら出すことができるのか。例えば手入れをしていない庭みたいに、たまたまそうなった自然な感じを、なんでも綺麗に作りすぎちゃう人間の手でやってみようとすると難しい。でも、それが面白くて。そういう自然な状態を作ることで、もらった人が家に飾ったときにパワーをもらえると思うんです」
夏の終わりの花々を使ったブーケをオーダー。選ぶのはダリア、ルドベキア、アンティークレースフラワーなど。
大胆にしなるグリーンが印象的なブーケの完成。こちらで8,000円+税。
SHOP DATA
The Little Shop of Flowers│リトル
東京都渋谷区神宮前6丁目31-10
☎︎03-5778-3052
営業時間:12〜19時/木曜休み
店内ではブーケはもちろん、花を1本から購入可能。ブーケは店頭オーダー、電話、HPでの注文ができ、全国配送も対応している(季節によって一部地域には送れない可能性があります)。渋谷パルコの1階では、日中はフラワーショップ、夜はワインスタンドの<The Little Bar of Flowers>も営業している。
東京都渋谷区神宮前6丁目31-10
☎︎03-5778-3052
営業時間:12〜19時/木曜休み
店内ではブーケはもちろん、花を1本から購入可能。ブーケは店頭オーダー、電話、HPでの注文ができ、全国配送も対応している(季節によって一部地域には送れない可能性があります)。渋谷パルコの1階では、日中はフラワーショップ、夜はワインスタンドの<The Little Bar of Flowers>も営業している。
<The Little Shop of Flowers>を訪ねて
木々に囲まれていて、お店に近づくと涼しさを感じる<The Little Shop of Flowers>は、私もよく仕事帰りにお花を買って帰るお店です。晴れていると店先が木漏れ日でいっぱいになり、気持ちの良い場所だなと訪れるたびに思います。自然の中で生き生きと飾られているお花たちを、ついつい多めに手に取ってしまいます。
写真:石田真澄
編集・文:恩田栄佑
編集・文:恩田栄佑
「最近、お店の裏で大きな建設工事が始まって、ここの植物の育ち方が変わってきているんです。彼らもいろいろと感じることがあるんじゃないかな」(壱岐さん)