写真家・石田真澄の『花屋図鑑』 vol.6
海の街で愛される小さな花屋。
神奈川・逗子の〈橘〉のカバー画像

海の街で愛される小さな花屋。
神奈川・逗子の〈橘〉へ

花屋は店主のセンスが詰まった、季節の移り変わりを感じられる場所──人気写真家・石田真澄さんと巡る連載『花屋図鑑』。第6回目は東京から飛び出し、神奈川県は逗子の<橘(たちばな)>へ。真夏に咲く花々を石田さんがフィルムに焼き付けます。

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2022年07月12日作成
海の街で愛される小さな花屋。
神奈川・逗子の〈橘〉へ
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神奈川・逗子の〈橘〉へ
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いつもは都内のお店を訪れていた花屋図鑑ですが、今回は神奈川県の逗子へ。真夏の日照りと海の気配を感じさせるJR逗子駅を下車して向かうのは花屋<橘(たちばな)>です。

お店がオープンしたのは2020年の10月のこと。オーナーの橘優子さんは広告制作会社でプランナーとして働いた後、表参道の花屋<DILIGENCE PARLOUR>で5年間勤め、出産を機に独立しました。お店に訪れてみると、お客さんが橘さんに花にまつわる悩みや相談をし、親身に答える場面に遭遇しました。笑顔が絶えない会話から、街の人からも愛されているということが伝わってきます。この場所に根付いてもうすぐ2年、橘さんにお店の魅力をたずねてみました。

「飾り方の疑問や世話の仕方だったり気軽に対話してもらいながら花の魅力を届けられる場所でありたいですね。そのために、前職での“伝える”技術をお店でも活かして、生活にどうやって花を取り入れるのか、身近に植物を感じてもらうために具体的にどうすればいいのか、常にスタッフたちと話し合い新しい試みを挑戦しています」

今日はちょっぴり旅行気分で、海の街に佇む花屋<橘>の扉を開いてみましょう。
海の街で愛される小さな花屋。
神奈川・逗子の〈橘〉へ
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無駄のない空間の魅力

海の街で愛される小さな花屋。
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白を貴重としたわずか25平米の店内は、みずみずしい花々とグリーンで溢れています。無駄を感じさせないコンパクトで見やすいレイアウトも印象的。
「店内の配置はオープンしてからずっと改善を繰り返し、自分たちで考えるようにしています。どうすればお客さまの視線の導線に発見を作れるか、どうやれば“いつ来ても楽しい空間”になるか、ディスプレイや棚の位置を工夫し変え続けています。花の買い方だったり、植物の育て方だったり、そういう提案をわかりやすく伝達する、花を広告するような気持ちで日々営業していますね」
海の街で愛される小さな花屋。
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オランダやベルギー製の色鮮やかな花瓶も販売。「意外とどんな花にも合うのでオススメです。重みがあるので倒れにくく、使いやすいんですよ」と橘さん。

オランダやベルギー製の色鮮やかな花瓶も販売。「意外とどんな花にも合うのでオススメです。重みがあるので倒れにくく、使いやすいんですよ」と橘さん。

海の街で愛される小さな花屋。
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(写真右上)お店に置かれたコスメブランド<UDAKAM>の除菌ジェル。花とコスメのセット販売も行っておりギフトにも最適。(写真下)オランダ製のガラスの一輪挿しも人気が高い。

(写真右上)お店に置かれたコスメブランド<UDAKAM>の除菌ジェル。花とコスメのセット販売も行っておりギフトにも最適。(写真下)オランダ製のガラスの一輪挿しも人気が高い。

花屋は鮮度が命

海の街で愛される小さな花屋。
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店頭に並ぶ花はどれも発色がよく、葉や茎が青々としています。花屋も魚屋と同じで新鮮で状態が良いことが大事だと橘さんは語ります。
「並べる花がお店のデザインやコンセプトを決定づける大事な要素なので、仕入れは最も大切にしています。切花における<橘>の“良いもの“の定義は”長く楽しめること”。本当に新鮮で状態の良いものはハッとするほど生命力があり、結局一番美しい。だから市場で花の状態を見極めることに一番神経を使っていますね」
海の街で愛される小さな花屋。
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(写真左上)シックなヒマワリはフロリスタン。(写真右上)しなりが美しい赤い花はレナンセラ。(写真下)取材時(5月下旬)には色鮮やかなガーベラやリモニューム、バラ、カンパニュラなどが並ぶ。

(写真左上)シックなヒマワリはフロリスタン。(写真右上)しなりが美しい赤い花はレナンセラ。(写真下)取材時(5月下旬)には色鮮やかなガーベラやリモニューム、バラ、カンパニュラなどが並ぶ。

町の人達とつながるグリーン

海の街で愛される小さな花屋。
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店先には鉢植えもずらりと並びます。逗子エリアには園芸をするご家庭も多く、<橘>が揃える珍しいグリーンの入荷を待ちわびる地域住民も多いのだとか。
「お店には珍しい種類の鉢植えも多いので、とくに年配の方が店を通ると声をかけてくれます。また、お店に鉢を持ってきていただいたら、そこに新しい植物を植え替えするサービスも行っているので気軽に相談に来てくれる人も多いです。私自身、自宅の庭を8年くらい手入れしているので、庭の話をきっかけに話が弾むことも多いですよ(笑)」
(写真左)春に成長する多肉植物の黒法師。(写真右)赤い葉が美しいフィットニアなどが並ぶ。

(写真左)春に成長する多肉植物の黒法師。(写真右)赤い葉が美しいフィットニアなどが並ぶ。

想像を超えていくブーケ

海の街で愛される小さな花屋。
神奈川・逗子の〈橘〉へ
橘さんが編むブーケは生命力あふれる仕上がり。ブーケを編むときに大切にしていることは「裏切ること」と橘さんは語ります。
「人って想像内のものには感動しないと思うんです。例えば役員の方へのプレゼントで“かっこいい感じが良い”と言われたら、単純に考えると例えば濃いワインレッドでまとめたり、シンビジウムなどの高級ランを使ったりすると思います。でも、役員の方はそういうブーケはもらい慣れていると思うので、<橘>だったらぜんぜん違う切り口で考えたいのです」
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神奈川・逗子の〈橘〉へ
今回は夏をテーマに橘優子さんにブーケを編んでもらった。選ぶのはジューンベリー、ヒマワリ、ウイキョウなど。束ねたブーケを片手に海岸へ。

今回は夏をテーマに橘優子さんにブーケを編んでもらった。選ぶのはジューンベリー、ヒマワリ、ウイキョウなど。束ねたブーケを片手に海岸へ。

海の街で愛される小さな花屋。
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夏の花をふんだんに使用したブーケが完成。こちらで5,500円(税込)。ブーケを片手に海まで散歩するのもいい。

夏の花をふんだんに使用したブーケが完成。こちらで5,500円(税込)。ブーケを片手に海まで散歩するのもいい。

SHOP DATA

橘│タチバナ
神奈川県逗子市逗子7-3-44-1F
☎︎046-815-1128
営業時間:10時~18時/不定休
店内ではブーケはもちろん、花を1本から購入可能。ブーケは店頭オーダー、電話、HPでの注文ができ、全国配送も対応している。HPには季節の花と花瓶やトレー、化粧品とのセットなどユニークなプランもある。
<橘>公式HP

<橘>を訪ねて

海の街で愛される小さな花屋。
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ガラス一面の大きな窓から見える<橘>の店内は色鮮やかな花が集まり、扉を開けた瞬間に幸せな気持ちになります。店先にも多くの植木が並べられていてだれかのお家のよう。抱えたら顔が隠れてしまいそうになるくらいの大きなブーケは、まとめられているというより一緒に集まっているような自由さと力強さがあり、持ち帰る道中も幸せに包まれていました。

この記事の監修者

石田真澄
写真家
石田真澄
1998年生まれ。埼玉県出身。個展『GINGER ALE』(2017年)が話題に。その後、5冊の写真集を刊行。また、雑誌や広告のフィールドでも活躍。POCARI SWEAT『ポカリ甲子園』や横浜DeNAベイスターズ『サマータイム ベイスターズ』などのCMを撮影。近著に夏帆の写真集『おとととい』、八木莉可子の写真集『Pitter-Patter』がある。
公式ホームページ
Instagram
写真:石田真澄
編集・文:恩田栄佑

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