冬は一年でもっとも星空が綺麗な季節
はじめに ~ どうして冬は星空が綺麗に見えるの?
星空を見るときの目印は「大三角」と「冬の大六角形」
神話から生まれた冬の星座たち
✵オリオン座
海神ポセイドンの息子であるオリオンは優れた狩人でしたが、気性が荒く、いつも「自分が一番強く、どんな獲物でも倒すことができる」と自慢していました。この驕りが神々の怒りを買い、オリオンの元に1匹のサソリが送られます。オリオンはこのサソリに刺されて亡くなってしまいますが、やがて天にあげられ星座になったと伝えられています。
ちなみに、その後オリオンを刺したサソリも天に上げられてさそり座になったため、オリオン座が冬の空に昇るのは、夏の空に嫌いなさそり座がいるからなのだそう。
✵おおいぬ座
おおいぬ座は、オリオンが狩りのときに連れていた猟犬だと言われています。主が星座になった後も傍にいたい思う、健気な気持ちに感動してしまいますよね。
また、おおいぬ座にはアテネ王・イカリオスが飼っていた忠犬メーラだという説、どんな獲物も決して逃さなかった猟師ケファリスの優れた猟犬レラプスなど様々な神話や伝説が伝わっています。これだけ沢山の神話が伝えられていることから、犬は古代から人間のよきパートナーとして愛されていたことがわかります。
✵こいぬ座
ある日50匹の猟犬を連れて鹿狩りに出かけたアクタイオンは、うっかり水浴びをする月と狩猟の女神アルテミスを見てしまいます。潔癖性として知られるアルテミスは恥ずかしさのあまり「女神の裸を見たと言いふらすことができるなら、言いふらすがいい!」という呪いの言葉と共にアクタイオンに一掬いの水を浴びせかけました。するとアクタイオンはたちまち1頭の鹿の姿に……。
突然現れた鹿にアクタイオンの猟犬たちは驚き、主人だとも知らずにかみ殺してしまいました。そしてその後、帰らぬ主人を求めて森中を探し続けました。この中の1匹メランポスが、こいぬ座になったと伝えられています。メランポスは、小柄ながら賢く、主人に忠実な犬だったそう。
✵おうし座
浮気者として知られ、数々の女性と関係を持ったゼウスですが、川の神イナコスの美しい娘イオもその1人。しかしながら、嫉妬深い妻であるヘラに気づかれて、イオは牛の姿に変えられてしまいます。イオは牛舎に閉じ込められ、ゼウスと会えないよう体中に100の目を持つアルゴスという怪物に監視されることに……。
ゼウスはイオの父親イナコスにイオを助け出すよう命じますが、牛舎には同じような牛ばかりがいて、どの牛がイオなのか分かりません。困っていると1頭の牝牛が近づいてきて、足で地面に「イオ」と書きました。しかし、100の目を持つアルゴスがいるので何もできません。
そこでゼウスは伝令神ヘルメスにイオを救い出すよう命じ、派遣されたヘルメスはアルゴスに「代わりに見張りをするからその間眠っていていい」と勧め、アルゴスは眠りにつきました。しかし、98の目は眠っても残りの2つは決して眠らないアルゴス。するとヘルメスは眠りの神ヒュプノスが作った、どんな者でも眠りにつかせてしまう眠りの笛を吹き、最後の2つの目も眠らせてしまいました。
こうしてイオはヘルメスに救い出され、おうしの姿のまま父イナコスの元に送り届けられ、美しい娘の姿に戻ることができました。この時の牛の姿がおうし座になったと言われています。
✵ふたご座
スパルタ王の美しい妻レダに惹かれたゼウスは白鳥に姿を変えてレダに近づき、まんまと思いを遂げます。その後レダは2つの卵を産み落とし(ゼウスが白鳥に姿を変えていただけに)、1つの卵からは双子の兄弟が、もう1つの卵からは双子の姉妹が生まれました。姉妹は美しく成長し、1人はトロイのヘレン、もう1人はトロイ戦争の時のギリシャの総大将・アガメムノンの妻になったクリュテムメストラとなります。
兄弟の名前はカストルとポルックス。双子とは言え、兄カストルはスパルタ王の血を引いた人間の子で、弟ポルックスはゼウスの血を引き、不死身の体を持っていたのです。やがて成長した2人は立派な勇士となり多くの武功を立てましたが、あるとき兄のカストルが矢を受けて死んでしまいます。
最愛の兄を失い、1人残されたポルックスは父ゼウスに自分の不死身を解いて兄カストルと一緒に死ねるように懇願しました。ゼウスはその深い兄弟愛に打たれ、2人を共に天に上げて星座にしたと伝えられています。白色の2等星がカストル、黄色い1等星がポルックスです。
いかがでしたか?
古代の人たちは、星々で神話の登場人物などを描き、物語を紡いできました。ご紹介した星座にまつわるお話は、現代に伝えられている代表的なもののうちの1つ。地域や時代によって様々な物語が生まれ、いまに伝えられています。
また、素敵な神話から生まれた冬の星座はまだまだ沢山あります。壮大な星空を見上げながら、そこに纏わる星々の物語に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。
寒いけれど、空気が澄み渡る冬は天体観察にぴったりな季節。ただ見上げるだけでも癒される星空ですが、星座にまつわる神話も知っていれば、古代の人たちが星々に感じた神秘的な世界も感じることができるはず。一番空気が澄んでいるこのシーズンに、素敵な神話を持つ冬の星座を知って星空を見上げてみませんか。