湯治（とうじ）について
「湯治」とは？
「温泉」との違いは？
温泉宿や日帰り温泉で浸かる「温泉」は、非日常を味わえるようなリフレッシュ感や、短期的な疲労回復を目的に行かれる方が多くいます。
しかし「湯治」は、古くから日本にある医学的に認められた医療法のひとつとなっており、自身に合った効能のある温泉に長期間浸かり、治療や療養を目的としているので、観光を目的とした一般的な温泉旅行とは異なっています。
「湯治」の効果は？
「湯治」は、温泉に浸かることで、身体をほぐして体温を上昇させ、人間が本来持っている自然治癒力や免疫力を高めると言われています。そして、目的に合った温泉の効能や泉質を知り、効果的に入浴することが基本。
温泉のその日の成分や温度、その人のライフスタイルなど様々な条件により、身体への効果が変わるので、必ずしも泉質・成分が、特定の症状に効くとは限りませんが、例えば、”硫黄泉”は殺菌効果が高くアトピー性皮膚炎に効いたり、炭酸ガスを多く含む”炭酸泉”では高血圧症や血糖値上昇を抑える働きがあるなど、泉質によってそれぞれに特化した効能が認められています。
寒さに負けない体を目指す！ゆらぎがちな冬のご自愛ケアキナリノ編集部
湯治の楽しみ方
宿で自炊しよう
湯治宿の多くは、共用の炊事場があることが多く、自炊が基本となっています。自炊することで、少しでも金銭的負担を和らげるためや食の偏りを防ぎ、また普段と同じ食事を摂ることで心身を落ち着かせる効果もあるそう。地元の食材を調達すれば、その土地の美味しいものを気軽に楽しめます。
源泉温度が高い場合は、蒸気熱を利用した“地獄蒸し”ができます。食材を釜に入れて10分程で、ミネラルたっぷりの美味しい蒸し料理の完成なのでとっても簡単。また、最近では、簡単な食事を提供する食事付湯治や、町の食堂程のリーズナブルなお食事処を備える宿もあります。
何も考えずのんびりしよう（観光を考えずに過ごす）
湯治宿は観光客用の宿ではないため、山間僻地の質素な温泉地であることが多く、観光施設や娯楽施設がなかったり、テレビや携帯電話の電波が届きにくかったりすることも。療養のために温泉にじっくり浸かり、宿では日常の喧噪から離れてゆったりとした時間を過ごしましょう。読書をしたり、考え事をしたり、お好みの時間を心ゆくまで。
気軽に体験するなら『プチ湯治』
「湯治」は本来、病気やケガの本格的な治療を目的として2～4週間程度の滞在が一般的ですが、最近では、生活習慣病の改善やストレス解消・疲労回復を目的とした『プチ湯治』が話題になっています。日帰りや1泊ではなく、週末などを利用して2～3日間温泉地に滞在し、体と心を豊かで健やかな状態に戻す効果があると言われ、「プチ湯治プラン」を売り出す宿も多くなっています。ここからは、『プチ湯治』のできる湯治宿をご紹介。
『プチ湯治』もできる。おすすめの湯治宿3選
《北海道》豊富温泉 川島旅館
酪農や湿原など、豊かな自然環境に恵まれた豊富町にある、日本最北端の温泉郷の豊富温泉。日本では珍しい石油系の温泉です。古くから「どんな傷も温泉で治る」と言われ、アトピーや乾癬など皮フ疾患に悩む方達が多く訪れることで有名です。中でもこちらの川島旅館は、スタイリッシュな北欧風の宿で、女性にも人気があります。
湯治客のためのリーズナブルな湯治プランは5泊から可能。洗面台・お手洗い共同のシングルルームが大半を占めています。暖炉のある広いロビーや様々なジャンルの本が置かれた本棚もあり、館内でも気ままにくつろぐことができますよ。
大地から湧き出る石油系の温泉は白濁色で、肌に優しくとろみがある泉質。アトピーや乾燥肌などの皮膚疾患に有効と言われ、油が浮いた湯の花を患部に付けるとより効果を実感するとのこと。メタケイ酸も含まれているので、肌の新陳代謝を促すエイジング効果や、身体を芯から温めるので冷え症にも効果的です。川島温泉の男湯女湯は毎日入れ替わり、露天風呂も楽しめます。
北海道内の食材を豊富に使ったお料理も魅力的。朝食は身体に優しい和食を中心としたプレートで、お皿の中心には、毎日日替わりで地元産のバターに道内の鮭や利尻昆布などの食材を混ぜ込んだオリジナルのバターが登場し、ご飯にのせていただきます。夕食も具だくさんの汁物に和洋中を織り交ぜたお料理で、連泊しても飽きのこないメニューになっています。
《宮城県》東鳴子温泉 旅館大沼
宮城県大崎市の鳴子温泉郷のひとつ東鳴子温泉。源泉かけ流しの風呂が多い、東北の湯治場として知られています。旅館大沼は、7つの内湯と庭園貸切露天風呂があり館内で湯めぐりができるお宿です。
建物は旅館本館と湯治館があり、こちらは湯治館のお部屋。洗面台やトイレは共用、炊事場もあります。湯治館宿泊であっても旅館宿泊の方と変わらず、すべてのお風呂を使えるので、とってもお得。
旅館大沼の源泉は、全国的にもめずらしい重曹成分が特出している純重曹泉の自家源泉と、東鳴子温泉の数軒で使われている含食塩・芒硝重曹泉の共同源泉の、2本の重曹泉（ナトリウム炭酸水素塩泉）からなっています。火傷や切り傷にも効きやすく、とろりとした肌触りのお湯は、体の芯から温めてくれますよ。
こちらは旅館大沼に来たらぜひ入りたい、庭園貸切露天風呂「母里の湯」。宿の裏山にあるため送迎車で2分程。30分1000円と別料金にはなりますが、木々に囲まれた露天風呂を贅沢にも貸切で堪能することができます。本館や湯治館には、女性専用の時間帯のある混浴の「千人風呂」や温泉熱を利用した浴衣のまま入れる「ふかし風呂」などがあり、お風呂の種類が豊富なのも魅力。
共同炊事場やイートスペースがあるので、自炊も可能ですが、食事付きなら玄米や野菜を中心のヘルシーな一汁三菜や一汁五菜などのメニューがおすすめ。食べ応えも十分で、出来立てで提供される食事は、美味しいと評判です。
《大分県》鉄輪温泉 サリーガーデンの宿 鉄輪柳屋
大分県別府市内に点在する別府八湯のひとつである鉄輪（かんなわ）温泉。共同浴場の数が多いので湯めぐりも楽しく、自炊湯治宿が多く残る美しい温泉地となっています。こちらは、明治の古民家をリノベーションしたモダンな旅館「サリーガーデンの宿 鉄輪柳屋」。レストランやケーキ屋さんも併設された、若い方も気軽に訪れることのできる人気の宿です。
旅館部と湯治部があり、こちらは洗面所とトイレが共同の湯治部のお部屋。素泊まりはリーズナブルな価格で宿泊可能です。本を読んだりできる共有スペースが広く、館内の居心地も抜群。22時までオープンのコワーキングスペースも併設されており、ワーケーションにもおすすめです。
鉄輪の代表的な泉質である塩化物泉は、お宿でも自家源泉から湧き出る100%掛け流しの新鮮なお湯で楽しめます。保湿効果が高く、湯上り後もしっとりしたもち肌になれるので「べっぴんの湯」とも言われ、湯冷めしにくいので、末梢循環障害や冷え性にも効果的。神経痛、筋肉痛、関節痛のある方にもおすすめです。内湯と露天風呂、スチームサウナがあり、男湯と女湯は入れ替え制で24時間自由に入ることができます。
高温の温泉を利用した、鉄輪温泉名物の「地獄蒸し」。お宿にも自由に使える地獄釜や調理器具、器一式を揃えた自炊室があるので、地獄蒸し自炊が体験できます。塩化物泉は上がってくる蒸気にもほんのり塩が混じっているので、味付けは不要。地元の食材を使って、ミネラルたっぷり、甘みの引き立つ美味しい蒸し料理を、気軽に楽しめます。
地獄釜で蒸し上げる、せいろ蒸しの飲茶朝食セット。朝食付きの宿泊の場合は、お宿併設のケーキ屋「サリーガーデン」にて提供されます。洋食、和食セットなどもあり、日替わりで朝食メニューが変わるのも魅力的。また、夜は「地獄イタリアン」が人気の併設レストラン「Otto e Sette Oita」にてちょっぴり豪華ディナーをするのもおすすめ。
気軽な『プチ湯治』で、心身ともに健康になろう
忙しい現代だからこそ、おすすめしたい『プチ湯治』。「湯治」は、日本人が昔から行ってきた自身を労わる旅＝バカンスとも言える贅沢な過ごし方です。豊かな自然環境の温泉地で、週末だけでも日常生活から離れてゆったりと温泉に浸かり、免疫力や自然治癒力を高めて、身も心もさらに健康に。明日への活力にしていきましょう。
温泉地に1週間以上滞在し、温泉の効能によって病気や怪我からの回復を試みる「湯治（とうじ）」。温泉に浸かって癒されるだけでなく、療法の一つとして昔から親しまれている方法です。しかし、現代では長期間休暇を取るのが難しいこともあり、ハードルが高いものでしたが、最近は2～3日の宿泊も可能な『プチ湯治』が増えてきているそうです。