vol.2の舞台は、知られざる名建築の宝庫・長野県
東京から離れ、自然豊かで落ち着いた環境の長野には、たくさんの建築家がその地の魅力に惹かれ、新旧様々な建築作品を残しています。その人気ぶりは、海外の建築家からも定評があるほど。
気候の良い初夏の時期は、ドライブでの遠出にぴったりの季節。また、電車や徒歩ではなかなか訪れられない“隠れた名建築”を巡るなら、車で訪れるのがベストな方法です◎
【長野県 東部】軽井沢エリア
石の教会・内村鑑三記念堂(1988年/ケンドリック・ケロッグ)
アーチ状の石板が、まるでドミノのように何枚も重なり合い、奥行きを生み出している不思議な光景――こちらの「石の教会・内村鑑三記念堂」は、明治・大正期のキリスト教指導者・内村鑑三氏の功績を讃え、建てられた教会です。
自然との調和を目指す「オーガニック建築」の専門家である、アメリカ人建築家、ケンドリック・ケロッグによる設計です。
この教会の祭壇上部には、石積みをつなぎ合わせるように、ガラスが使用されています。実は、彼の設計の中で、石は男性を、ガラスは女性を象徴しているのだそう。
教会という場の意味に結びつけられた、設計者の表現が感じられますね。
施設は開放されていますが、挙式が行われている場合は、内部へは入れない場合もありますのでご注意。
軽井沢千住博美術館(2011年/西沢立衛)
【長野県 西部】松本エリア
まつもと市民芸術館(2004年/伊東豊雄)
安曇野ちひろ美術館(1997年/内藤廣)
一歩中へ入ると、外観の印象よりも「ちょうどいい」心地よい広さの空間が広がります。木の温かみが、まるで家にいるかのような、優しくて穏やかな印象を感じさせます。
置かれている家具は、建築家でもある中村好文氏によるデザイン。建築を担当した内藤氏との共同作業で、家具を通して内部の空気感を作り出そうと試みたそう。
写真の「ちひろ椅子」は、大人と子供の中間の大きさに作られていて、大人が座るとなんだかかわいらしい雰囲気です。
【長野県 南部】諏訪エリア
茅野市民館(2005年/古谷誠章)
スロープ部分に併設されているのは、図書スペース。デスクやソファも充実しているので、電車の待ち時間や、読書の時間に、思わず長居してしまいそうな空間です。
本棚の高さは、子供でも手が届くように低く設定されているだけでなく、スロープを歩く人の視線が、図書スペース越しに、中庭へ抜けるようにする効果も。空間の開放感を生み出す作り手の計らいが感じられますね。
神長官守矢史料館(1991年/藤森照信)
木の上に刺さるようにして建つこの建築は、「高過庵」と呼ばれる茶室。
倒れてしまわないか、思わず不安になってしまうのも、そのはず。アメリカのTime誌で「世界でもっとも危険な建物トップ10」に選ばれたそうです。
どこからが木で、どこからが建築なのか、わからないほど、藤森氏の掲げる「自然と建築の融合」が実現している作品といえます。
*1921年に建てられた「軽井沢高原教会」