今回は、カフェとして大切に使われ続けている、関東にある美しい建物をご案内します。見学だけでなく、その空間にゆったりと身を置くことができるカフェは、いつもと違う豊かな気持ちにしてくれることでしょう。
自由学園明日館＠東京・池袋
1921(大正10)年に創立した「自由学園明日館(みょうにちかん)」は、「家庭的雰囲気の中で子供たちにのびのびとした教育を与えたい」という創立者羽仁吉一・もと子夫妻の思いを、巨匠ランク・ロイド・ライトの設計によって形にしました。池袋駅から徒歩5分という立地とは思えない、緑が豊かでのんびりとした空気が流れている場所です。
中央棟の左右に東教室棟・西教室棟を配したシンメトリーな建物は、木造の漆喰塗です。1934年に自由学園が東久留米市に移転後は、卒業生の活動の場となっていました。その後、1997(平成9)年に国の重要文化財に指定されました。
明月館の顔ともいえる中央棟のホールにある、幾何学模様が美しい大きな窓。実は、ライトのアイディアで工事費を抑えるために、ステンドグラスではなく木製の窓枠や桟を幾何学的にしたのだそう。
ベージュの壁面にダークブラウンがリズミカルなアクセントを添えている食堂。天井から吊るされた装飾的な照明が印象的です。
建物のどの部分も、細部にまで気を配ってデザインされている自由学園明日館。他にも「大教室」「小教室」「会議室」「講堂」なども、見学や部屋を有料で借りることもできます。
有料の見学プランは、見学のみと喫茶付の2種類。せっかくならホールでお茶を飲みながら休憩できる見学プランに参加して、ゆっくりとホールでのひと時を味わって下さいね。結婚式などが入っている日は、見学ができないので、HPで確認してからお出かけ下さい。
トレイクルマーケット＆コーヒー＠千葉・館山
千葉県館山市にある可愛らしい白い洋館「TRAYCLE Market & Coffee」も、築100年の国の登録有形文化財です。大正初期に銀行として建てられ、現在の地に移築されました。
ハンドドリップで淹れたフェアトレードコーヒーと手作りのおからマフィンを頂けるカフェです。フェアトレードの雑貨も扱っていて、とってもおしゃれ。
日替わりでメニューが変わる「おからのマフィン」は、オーガニックフルーツを使ったスイーツ系の他、野菜やきのこを使ったおかず系もあります。「ランチセット」は、日替わりのスープにマフィン2つとドリンク付。
2階は、和室を改装したくつろげる空間にレトロな家具が素敵です。壁の塗装や床のタイル貼りなど、一部自分たちでリノベーションしたそう。
2階の窓からは“海”も見えますよ。
カフェ井政＠東京・神田
千代田区の有形文化財に指定されている井政「遠藤家旧店舗・住宅主屋」は、1927(昭和2)年に神田に建てられた建物がベースとなっています。その後、府中市に移築され、何度かの増改築を経て、2009(平成21)年に神田の地に戻ってきました。現在は、撮影などに使われたり、季節のイベントなどが開催されています。
「カフェ井政」は、ドリンクメニューが中心です。御茶ノ水駅から徒歩5分の神田明神のとなりにあり、都会の喧騒を離れた贅沢な時間が過ごせます。
手入れの行き届いたお庭には、テラス席もあります。神田明神と一緒にぜひ寄ってみてくださいね。
縁側カフェ＠東京・竹ノ塚
洋館付和風住宅の「昭和の家」は昭和14年に建設され、平成25（2013）年に国の登録文化財となりました。日本の伝統的な手仕事が生み出す繊細な建築美が感じられ、現在は撮影スタジオやレンタルスペース、カフェとして使われています。
縁側で、お庭を愛でながらまったりスイーツやコーヒーを楽しめます。和の雰囲気にぴったりの抹茶やあんみつもありますが、コーヒーや自家製ケーキなども揃っています。
綺麗に整備されたお庭が美しいですね。
日常を忘れ、静謐の中に身を置くと、昭和の時代にタイムスリップした気分になれそう。
橋本珈琲＠茨城・桜川
江戸時代末期に創業し、現在は国の登録文化財の指定を受けた昭和4年築の建物で営業を続けている「橋本旅館」。右手が「橋本旅館」の入口、左手が「橋本珈琲」の入口です。
「由緒ある伝統を大切に考えながら、大好きなコーヒーが楽しめる場を提供したい」との思いからカフェを新設。古い建物を生かしつつ、アンティークや北欧の家具が並べられた、洗練された空間のカフェは、「2013年グッドデザイン賞」を受賞しています。
自慢のコーヒーは、豆の個性を引立てる「ニコニコ珈琲」を使い、ネルドリップで淹れています。イタリア製のエスプレッソマシンを使ったカプチーノやラテも好評です。
明るいカウンター席は、1人でふらりと立ち寄って気軽に休憩できるようなアットホームな雰囲気。
空間だけでなく、美味しい食事も♪野菜がたっぷりでボリュームのあるランチは、満足感がありますよ。
富士屋ホテル オーキッド＠神奈川・箱根
1891(明治24)年にできた「本館」をはじめ、「西洋館」「花御殿」「別館 菊華荘」が、国の登録有形文化財となっている「富士屋ホテル」は、1878(明治11)年に創業し140年もの歴史があります。歴史に名を残している、海外からの著名人も多く滞在したホテルです。
1936(昭和11)年建造の花御殿をはじめ、ホテルの建物はどれも個性的。和洋折衷のクラシカルな雰囲気が海外からの観光客や若い世代からも人気を集めています。
窓と照明に挟まれたカフェ「オーキッド」は、まるで豪華列車のようなインテリアが素敵ですね。
山高帽にチョビ髭、そしてステッキとクツ…とっても可愛らしい「チャップリン プリンセット」。1932(昭和7)年に滞在した喜劇王チャールズ・チャップリンをモチーフにしています。チャップリンの母国イギリスの紅茶を使ったプリンとシフォンケーキだそうですよ。
一番人気のスイーツ「ホットアップルパイ」も味わいたい一品。リンゴがたっぷり詰まった伝統の味、一度食べてみたいですね。
文化財カフェで素敵なひとときを
関東にある文化財カフェをいくつかご案内しました。歴史や伝統のある建物の中で味わうコーヒーは、きっとあなたをホッと一息つかせてくれるはず。
文化財は、長い歴史を経て守られ育まれてきた貴重な国民的財産です。博物館や資料館のように一般に公開されている物も多く、訪れる機会もあります。そして、建物は使われてこそ、その存在価値を見出します。