隅田川沿いの通りから少し入ったところにある向島百花園。江戸時代に作られたこの庭園は、都内にある小石川後楽園や六義園にくらべるとこじんまりしていますが、庶民的な雰囲気が下町らしく、今でも1年を通して多くの観光客が訪れるスポットです。

秋のみどころは「萩のトンネル」。アーチ状になった萩のトンネルを通ると、竹の柵の隙間から入る陽射しが心地よく、都内にいることを忘れてしまいそう。鳥のさえずりや、虫の声も聞こえてゆったりとした時間が流れています。

開園時は梅の木を中心に植えられていたそうですが、現在は日本の古典に詠まれている有名な植物を集め、四季を通じて花が咲くようにしています。

都会で暮らしていると、四季の草花に触れる機会が少なくなってしまいますよね。季節の変化を感じながら、みずみずしい草花を鑑賞してみてはいかがでしょうか？

十五夜の頃に行われる「お月見の会」。庭園のあちこちには提灯の明かりが灯り、幻想的な雰囲気に包まれます。虫の音を聴きながら、秋の夜長を楽しむのもステキですね。

百花園から歩いて10分ほどのところにあるのが東武博物館。東向島の駅と直結しているので、アクセスも抜群です。東武鉄道の創立90周年を記念して、平成元年にオープンしました。

関東平野をイメージした横14m奥行き7mの大パノラマ。実物の運転台を操作して、選択した模型電車を自分で運転することができます。思わず童心にかえってしまいそう。

模型車両も数多く展示されているのが東武博物館の魅力。1898(明治31)年に製造された蒸気機関車や、日光・鬼怒川温泉行きのデラックスロマンスカー「けごん」など、電車に詳しくない方も楽しめます。

実際に触れて体験できる展示物が多いので、小さなお子さんから年配の方まで、幅広い世代に親しまれているんですよ。

百花園近くでランチをしたいなら「鳩屋」がおすすめ。百花園から5分ほど歩いた住宅街にあります。飾らない雰囲気のお店ですが、実は創業100年を超える老舗レストラン。3代目にあたる先代オーナーは“エビフライの神様”と呼ばれるほどの有名人。現在は、娘さんがその技を受け継いでいます。

創業は大正時代ですが、向島に移転したのは昭和25年だそう。オーナーの温かい人柄が伝わるような清潔感で明るい店内は、ランチ時はいつも大勢のお客さんでにぎわっています。

名物「ハトヤランチ」。ぴんと尻尾の立ったエビフライは先代譲りの技が活かされているそう。ハンバーグはふわふわでほろりと崩れるほどの柔らかさ。大人のお子さまランチのようでうれしくなりますね。「ランチ」ですが、ディナータイムも注文できますよ。

昔は屋台で売られていたというきびだんご。ビー玉ぐらいの大きさのきびだんごにたっぷりの黄な粉を絡めていただきます。無添加でやさしい味は、初めてなのにどこか懐かしい気持ちになります。

お土産用だけでなく、その場で食べることもできますよ。

よもぎの緑がキレイな草餅は、一つひとつ手作り。1年を通して生のよもぎを使っていて、その香りは格別です。お餅の食感や風味、香りを味わうために、賞味期限は当日中というこだわりよう。

駅前は大型スーパーや高層マンションが建ち並んでいますが、少し離れると閑静な雰囲気がある向島。入り組んだ路地に入ると、戦前から残っている建物を見つけたり、のんびりくつろぐ猫に出会うことも。

喧噪から少し離れてリラックスしたい時は、ぜひ向島を歩いてみませんか？初めて訪れた方も、子どもの頃に戻ったような懐かしい気持ちになれるかも知れませんよ。