本を通して、冷静なまなざしで親子関係を見つめよう
PART1:親子関係の見方が変わる本
”毒親”という言葉を生み出した名著
脳科学から見る親子関係
■『親の脳を癒やせば子どもの脳は変わる』友田明美(NHK出版)
親の性格や考え方が子の心に影響を与えることは、感覚や経験から認識している方も多いと思います。しかし実際にどんな影響を与えるのかまでは分かりませんよね。本書では、脳科学の観点から親の影響を解説。「夫婦喧嘩を子どもの前でする」「きょうだいを比べたら、差別する」といったことをマルトリートメント(不適切な養育)といいますが、実はこの行為、子どもの脳を「物理的」に傷つけているそう。本書では、親の脳を「ポジティブ脳」に変えていくことで、マルトリートメントを防ぎ、子どもの脳を守る方法を紹介してくれています。
親の心の歪みが、子の心を曇らせる
■『子は親を救うために「心の病」になる』高橋和巳(筑摩書房)
精神科医の視点から、いくつかの実例をもとに親子関係をひもとく一冊です。子どもにとって、ある程度の段階まで親は世界のすべてです。親が好きだからこそ、親の精神が苦しんでいるとき、子は時に「心の病」になってしまうそうです。親子関係にトラブルが起こっている場合や、子が心の病で苦しんでいる場合、それは親が子を立て直さなければならない状態なのではなく、親が子に救われている状態なのかもしれません。親の立場でも子の立場でも、生きづらさを抱えている人は、ぜひ本書を親子関係を見直す手がかりにしてみてくださいね。
PART2:親子関係を通して自分を見つめ直す本
「私は私、親は親」と考えて、自分を幸せにする方法
■『私は私。母は母。〜あなたを苦しめる母親から自由になる本』加藤伊都子(すばる舎)
大人になって親をある程度理解できるようになっても、やっぱり親とは相いれない、と感じたことはありませんか?あなたはあなたであり、親は親なのですから、そこで「自分は冷たい子どもなのかな」と悩む必要はありません。むしろ苦しみが続いている時は、親から距離を取ることで、あなたの人生を好転させられる可能性があります。本書では母娘の関係に焦点を当て、母から解放された娘のエピソードを紹介しています。「自分を傷つけずに親と接する方法」「あなたを苦しめる母親との付き合い方」など、変えられない母を持つ娘が幸せをつかむヒントも必見です。
子どもにイライラする、親の心の状態とは?
■『泣いてる子どもにイライラするのはずっと「あなた」が泣きたかったから』福田花奈絵(サンマーク出版)
子どもが言うことを聞いてくれない時などに、親がイライラしてしまうのはよくあること。本当はイライラしたくないのに怒ってしまい、自己嫌悪に陥るという方も多いのではないでしょうか。その心の裏側には、「人に迷惑をかけるな」「わがままを言うな」「感情を表に出すのは悪いことだ」など、幼い頃から言い聞かせられ、刷り込まれてきた”親の聞こうとする心理”が隠されているかもしれません。本書ではイライラで悩むお母さん向けに、子どもではなくまずお母さんを幸せにするための、心のしくみを教えてくれます。イライラで苦しむ今を、人生や自分を変えるチャンスにしたい方に、ぜひ手にとっていただきたい1冊です。
心を縛り付ける共依存から抜け出そう
■『愛情という名の支配―家族を縛る共依存』信田さよ子(海竜社)
親子関係の中には、親が子をコントロールしようとすることを通して、共依存の関係ができあがってしまっている場合があります。「あなたのためを思って…」「私がいなければ」という考え方に覚えがある方は、特に要注意。本書では、共依存にとらわれる家族の例を挙げながら、それがどんなしくみで起こるのか、どうすれば解放されるのかまで解説しています。共依存は、代々引き継がれることもあるといいます。しかし親子関係は、生まれつきのものではなく育まれるもの。後からいくらで変えることができる、と著者は説きます。連鎖を断ち切り、自分の子どもに辛い想いをさせたくない方に、読んでほしい1冊です。
PART3:親の影響から抜け出したい時の本
親との対決を考えているあなたに
■『不幸にする親 人生を奪われる子供』ダン・ニューハース 著、玉置悟 訳(講談社)
現在に至るまで受けてきた親からの影響や、今も続く親のコントロールから抜け出したい時、どうしたら関係を変え、自分を取り戻すことができるのでしょうか。本書では、「支配を断つ方法」や「親を許すべきか、接触を断つべきか」といった、親に悩まされる方なら一度は考えたことのあるテーマについて解説しています。とはいえ決まった答えがあるわけではなく、大切なのはあなたがどうしたいか。対決する道も、距離を置く道もあると著者は示します。その上で、覚悟を決めた方向けに、親との対決についてもしっかり解説。対決を考える方の力になってくれるはずです。
自分自身を愛せるようになるために
■『毒親の棄て方: 娘のための自信回復マニュアル』スーザン フォワード 著、羽田詩津子 訳(新潮社)
最初にご紹介した「毒になる親」の著者による、母娘の問題に焦点を当てた解決方法を解説する1冊です。現在の夫婦関係や家族関係、仕事でのトラブルなどに悩まされている方は、もしかしたら自身の母との関係に原因があるかもしれません。本書では母娘の関係の実例と、それぞれの親の対処法を教えてくれます。「あのときの自分は悪くなかった」「自分は母のコントロール下にあった」という気付きを得て、「母親は無償で娘を愛してくれる」という幻想を砕き、母娘関係に決着をつけましょう。そして最後には、自分を愛せるようになる方法も知ることができますよ。
他者中心が、生きづらさの源?
■『「苦しい親子関係」から抜け出す方法』石原加受子(あさ出版)
「子どもに何かをしてあげている」「親のために、自分の気持ちや欲求を我慢してあげている」こんな他者中心の考えをしたことはありませんか?この他者中心が、あなたに生きづらさを感じさせているのかもしれません。本書は、なぜ親子関係を苦しいと感じるのかといった心のメカニズムから、現状を抜け出すための具体的なヒントまで解説しています。その鍵となるのが、他者中心から自分中心へと考え方を変えること。実際の親子の会話例なども織り混ぜられており、共感しながら関係を変える方法を学べます。
PART4:どんな親子関係にしたいかを見失っている時の本
とある六人家族の、当たり前の日常を描く
■『流しのしたの骨』江國香織(新潮社)
物語の舞台となるのは、六人家族の宮坂家。この家では20歳まで何をしてもいいことになっており、主人公である三女・こと子も、高校卒業後は進学も仕事もせず、夜の散歩を習慣としていました。真面目ですが少しどこか奇妙なところを持ち合わせている両親に、マイペースで頑固な長女・そよ、恋愛体質の次女・しま子、フィギュア作りが趣味で穏やかな性格の末の弟・律。そんな家族が繰り広げる何気ない日常が、淡々と静かに描かれます。家庭にはそれぞれ独自の雰囲気がありますが、本書は隣の家の雰囲気を、外側からこっそりのぞき込むめるような物語です。
”ダメダメ”な父とクールな娘の旅物語
■『キッドナップ・ツアー』角田光代(新潮社)
主人公の女の子・ハルは、5年生の夏休みに入った第1日目、突然車で”ユウカイ”されてしまいます。車を運転していたのは、訳あって2ヵ月前から姿を消していたお父さん。いつもふざけていて、母を困らせてばかり。だらしなくてお金もない、ちょっと情けないお父さんでです。2人は車に乗ったまま、お金もなく無計画にさすらいの旅を始めるのですが…。久しぶりに会ったせいでおかしくなった、お父さんとの距離感がリアル。旅が進むにつれて、ハルはだんだんと父を受け止めていきます。平易な文章で書かれており、子どもと一緒にも楽しめる物語です。
大人が読んでも面白い!子どものころを思い出す児童文学
■『両親をしつけよう!』ピート ジョンソン 著、岡本浜江 訳(文研出版)
お笑いタレントをめざしている少年・ルーイは、両親の仕事の都合で新しい学校へ転向してきました。そこは生徒の親も先生も、みんな勉強のことばかりの“ガリ勉村”。ルーイの両親はそんな環境に感化されてしまったのか、ルーイにも勉強をさせようとしてきます。”両親疲労症”になってしまったルーイは、そんな両親を元に戻すため「しつけ」をしよう!と決めるのですが…。読書感想文コンクールで、小学校高学年の課題図書にもなった児童文学です。小学生にも読みやすい内容ですが、中学生から大人まで楽しめる物語になっていますよ。
PART5:親としてできることは何?親子関係で大切なことを学ぶ本
実践的&具体的な、今すぐ使える子育てのコツ
■『子どもに伝わるスゴ技大全 カリスマ保育士てぃ先生の子育てで困ったら、これやってみ!』てぃ先生(ダイヤモンド社)
ツイッターで人気を博した保育士さんによる、育児アドバイスがびっしり詰まった1冊。どれも実践的で具体的なアドバイスばかりなので、「どうしよう?」と悩んですぐに答えを見つけ、実践することができます。テーマは「おしたく」「お片付け」「お食事」など日常に根差したもの。「いつも言い方がきつくなってしまう」「言うことを聞いてもらえない」と悩んでいて、子どもとの関わり方を見直したいという方は、ぜひ手に取ってみてください。
子どもが苦しんでいる時、親にできることとは?
■『コンプリメントで不登校は治り、子育ての悩みは解決する: 子どもの心を育て自信の水で満たす、愛情と承認の言葉がけ』森田直樹(小学館)
子どもが不登校になった時や、突然暴言を言うようになった時、親としてできることは何なのでしょうか。本書では、その答えをコンプリメントに求めています。コンプリメントとは、子どもの「いいところ」を認め、自信を取り戻してもらうための言葉がけ。具体的には「お母さん、うれしいよ」「あなたにはこんな力があるね」という言葉を使って、子どもに自分のいいところを気づいてもらう方法です。本書では実際のケースが収録されていて、立ち直った例、親に原因があった例などを紹介。子どもを上手に褒められていない時や、子どもが苦しんでいると知った時、親としての自分を見直すため手に取ってみてはいかがでしょうか。
子どもを育てる時、心にとめておきたい考え方のすべて
■『子どもの心の育てかた』佐々木正美(河出書房新社)
これから子育てをする方はもちろん、子どもとの関係がうまくいかない時や、ちょっと育児に疲れてしまったという時に、心強い味方になってくれるのが本書です。こちらは子どもの成長・発達に関して、時代を問わず変わらない大切な考え方や心の持ち方が書かれた1冊。やさしい言葉で、子育てに手遅れということはなく、何歳からでもやり直せると説きます。「子どもは愛されることで、いい子になるのです。」そう書かれた前書きから、ゆったり時間を取って読んでみてください。
■『毒になる親 一生苦しむ子供』スーザン・フォワード 著、玉置悟 訳(講談社)
こちらは”毒親”という言葉を生み出した、1989年に出版された名著です。本書では、親は不完全なものであり、時に子どもに大声をあげたり、コントロールしすぎたりしてしまうことはあり得て、それだけで親失格にはならないとしています。しかし毒親は自分が不十分であるように感じているために、子どもをコントロールする行動が続き、その人生を支配するまでになってしまうそう。どんな親が毒親になるのか、どうやって毒親から人生を取り戻せばよいのか、自分が毒親にならないためにはどうすればよいのか知りたい方は、ぜひ手に取ってみてください。