推理小説ってむずかしい?
- 寒さに負けない体を目指す!ゆらぎがちな冬のご自愛ケアキナリノ編集部
ミステリーのこと
推理小説とミステリーの違い
コージーミステリとは?
コージーミステリと分類されるものもあり、推理小説ではありますが刑事や探偵が出てきて事件を解決するのではなくて、学校や喫茶店など日常慣れ親しんだ場所で起きる謎を一般人である主人公を通して解決していきます。
激しい暴力描写がなく、年齢関係なく読めることが特徴です。また、料理やコーヒーなどミステリ要素だけではない楽しみも与えてくれます。
ライトな推理小説「コージーミステリ」
晴れた日は図書館へいこう|緑川聖司|ポプラ社
【あらすじ】小学5年生のさおりは、大好きないとこの美弥子さんが司書として働いている図書館に通うことが日課。図書館では日々本にまつわる事件や謎が発生し、美弥子さんの力を借りながらしおりは不思議な事件や謎を解き明かしていく。本が大好きな小学生らしい、優しさや情緒あふれる作品です。
もともと児童書として出版されたため、シンプルながら丁寧な文章が特徴です。主人公のしおりちゃんは、ちょっと大人びた雰囲気を持っていますが年相応の可愛らしさもあって、クスッとします。美弥子さんの手助けを借りながら解決していく流れがとてもほのぼのして、読みやすいです。
美弥子さんとしおりちゃんは、仲良しでほっこりしますし、途中から同級生も一緒に事件や謎を解決するために奔走してくれます。推理小説要素の他にも、ファンタジー要素も兼ね備えているので子供だけじゃなくて大人が読んでも懐かしさやワクワクを感じられるんです。
思い出のとき修理します|谷瑞恵|集英社文庫
【あらすじ】仕事も恋愛にも疲れ果てた主人公が、幼い頃に少しだけ過ごしたことのある地方の商店街に引っ越します。そこで、時計店を営む飯田と出会うことによって、不思議な事件に巻き込まれます。事件が解決することで、それぞれが新しい人生を踏み出す一歩になる、優しい物語。
現在シリーズ4巻あり
巻数が増えていくにつれて、主人公と飯田の関係にも変化が起きたり、主人公が気持ちの面で成長していくなど、推理小説としてだけではなく人間の生き方や家族、恋愛のあり方なども考えさせてくれる作品です。不定期連載ですが、漫画でも読むことができますよ。
サンタクロースのせいにしよう|若竹七海|集英社文庫
【あらすじ】築25年の戸建てだけど料理さえ作ってくれたら家賃は0円、という怪しい誘いに乗った「私」はちょっと変わった銀子さんの家の居候になって…。引越し早々からびっくりな事件に巻き込まれていき、私の日常はどんどん不思議なものになっていくという物語。
7話構成となっていて、それぞれの話でピリッとした悪意を背後に感じられる作品。良い人だけど変わり者の銀子さんの家に越してきてからというもの、幽霊だ死体だと物騒な事件に巻き込まれていきますが、全てにおいて切なくて共感できる話になっています。
すっごく驚くような謎解きがあるわけではないですが、日常に潜んでいる謎や人間の奥深さを丹念に表現していて、一度ではなくて何度でも読みたくなりますよ。1999年の作品ですが、ルームシェアという今では普通に行われていることが題材なので、共感しやすいです。
ななつのこ|加納明子|集英社文庫
【あらすじ】美しい表紙の『ななつのこ』という本に出会った主人公の駒子は、あまりにも好きになってしまいファンレターを出すことにしました。その際、身近に起きたスイカジュース事件を書き添えたことをきっかけに、作者から謎解きの返信がやってきて、2人の文通が始まります。
冒頭から引き込まれるような文章の流れ、夏の香りが本から漂ってくるようなノスタルジックを感じられます。ファンレター越しに繰り返される謎解きや、だんだんと『ななつのこ』の作中作に描かれている登場人物と主人公がリンクしていく過程が、読んでいる側の心を掴み、「どうつながっていくのか?」と考えさせられるんです。
7話の連作短編として描かれていて、ラストの1話では謎解きがなされた後ももう一度「え!そうなの?」という深いオチを読むことができます。文章もだらだらしていないので、読みやすく、時間経ったらまた読みたいと思えるような作品です。
珈琲店タレーランの事件簿|岡崎琢磨|宝島社文庫
【あらすじ】京都の珈琲店に勤める女性バリスタの趣味は謎解き!恋人との揉め事を抱えた青年と出会うことによって、事件に巻き込まれていきます。日常の謎を次々解き明かしつつも、主人公や周囲の人が成長していくストーリでもあります。「その謎、たいへんよく挽けました」が決め台詞。
『このミステリーがすごい!大賞』の最終選考に残った本作は、受賞こそしませんでしたが圧倒的な内容の高さで出版されました。京都の町並みとコーヒーの描写は秀逸で、本当に隠れ家的カフェでコーヒーを飲みつつ謎解きを聞いているような気分に。何も意味がないと思われるようなシーンでも、トリックのヒントになっているなど「もう1回読んで確認してみよう」と感じます。
現在シリーズ6巻あり
テンポの良い作風が特徴で、それぞれのキャラも人気があるためシリーズが多いです。巻によって、本格的に謎を深掘りする内容だったり、連作短編だったり…とシリーズ化で引き起こりやすいマンネリのない作品だといえます。
じりじり、はらはら、先が気になる「本格ミステリ」
名探偵に薔薇を|城平京|創元推理文庫
【あらすじ】ある日、多数の新聞社・雑誌社に『メルヘン小人地獄』という童話が送られてきます。残酷な内容の童話通りに人が死に、猟奇殺人へと発展。不安に陥る一家に、名探偵・瀬川みゆきが華麗に事件を解決する…。メルヘン小人地獄事件から2年後、また犯人は現れて殺人事件を発生させます。
事件の始まりと一旦の解決を描いた『メルヘン小人地獄』と事件から2年後を描いた『毒杯パズル』の2部構成で描かれています。非常に骨太で読み応えのある内容ですが、謎解きも複雑なものではなくて読みやすく、日常の描写がしっかりしているので矛盾もありません。
1部の方が被害者数も多く、内容的にも濃いですが残酷描写もその分多いので、苦手な人もいるかもしれません。人間心理を上手に使っていて、気を抜いたら読み手も「あの時はそういうことだったのか」と気付きが出て、二度楽しめます。
2部も、1部との関連性によって怖さよりも悲しさが出てくる不思議な物語です。作品を通して、どんでん返しにびっくりするというよりも文章の構成力の高さでハラハラさせられます。
隻眼の少女|麻耶雄嵩|文春文庫
【あらすじ】山奥の寒村にスルガという一族を継承を得た琴折家の3姉妹が次々と殺害されていきます。そんな危機的状況を立ち向かうために、鋭い観察力を持ち左眼に碧の義眼をはめた17歳の少女探偵・御陵みかげが事件に乗り出します。事件の解決に向かうたびに、次々と覆される事実…。
ラストの展開が衝撃的すぎて賛否両論ある作品ですが、第64回日本推理作家協会賞、第11回本格ミステリ大賞をダブル受賞したほどの力がある小説です。みかげのイメージしやすいキャラ設定と2部構成からなる時間展開の分かりやすさで、本格ミステリー初心者でも気軽に読めます。
後半の伏線回収の鮮やかさもそうですが、単に事件を解決するだけではなくて、登場人物が背負っている「生まれながらにして人生の方向性が決まっている」ことへの苦しみも描かれています。読んでいるうちに「自分の人生をどう生きようか?」と考えさせられるような物語です。
そして誰も死ななかった|白井智之|KADOKAWA
【あらすじ】覆面推理作家・天城菖蒲から「天城館」に招待された5人の推理作家が、次々と非業の死を遂げていきます。残った作家達は脱出に向けて、推理合戦が始まります。
物語は、絶海の孤島なので「逃げられない状況」がハラハラドキドキ感を増長させます。招待された5人の推理作家は、すでにそれぞれ小説とは遠ざかっているけれど、ある関連性から孤島に招待されて全員が名探偵とも言えるくらいの推理を披露していくのです。無駄のない展開は「次はどうなるの?」と読む手が止まらなくなります。
推理小説でもどこか異世界に迷い込んだような、不思議な気持ちになりながら読むことができます。解決に進むごとに、読み手の期待感は良い意味で裏切られますし、しばらく読後感が残るんです。
シャドウ|道尾秀介|創元推理文庫
【あらすじ】母親が病死して数日後、友人の母親が自殺した…。悲しい出来事を皮切りに、次々と小学5年生の主人公が苦悩しながらも父親と一緒に幸せになるために行動していきます。
展開が二転三転していくので、すぐには気持ちがついていかないかもしれません。何度か前ページに戻り、もう一度読む、という作業を繰り返していくうちに、どんどん引き込まれていきます。セリフの1つ1つも見逃せないくらいに、ラストに向けてのワクワク感は推理小説の醍醐味ですよね。
本作は「人間の思い込み」を巧みに使っているので、読んでいる側も「そういえばそうだった」と後から気づかされることが非常に多いです。推理小説としても面白いですが、息子と父親の物語としてみても心にくるものがあります。
Nのために|湊かなえ|双葉文庫
【あらすじ】都内の高級マンション「スカイローズガーデン」48階で、野口夫妻が殺害されているところから物語は始まります。現場に居合わせた20代の男女4人は全員が、イニシャル・Nであり、証言をしながらそれぞれの思うNのために行動したり、嘘をついたりしていき…。
イヤミスの女王とも言われている、湊かなえさんの作品。2014年にはドラマ化もされて、本より先に映像で見た人も多いかもしれません。次の展開が読めないので、ページをめくる手が止まらないですし、ラストを見ないと終われない!とすら思います。
登場人物はみんな謎に包まれていて、「この人なんかありそう…」と感じます。杉下希美という女性を主軸に物語は進んでいきますが、殺人事件が解決に向かうと杉下希美や周辺の人達の闇や苦しみがまるで自分のことのように感じられて、読み終わった後もしばらく考察してしまうような作品です。
ミステリーというのは数多くある創作ジャンルの1つです。恋愛やホラーなど、広義な意味で存在しています。ミステリーでもほのぼのしている話もあれば、シリアスなものまであるので、読む作品によって印象が変わることが特徴です。
一方で推理小説の場合は、大なり小なり事件が起きて、解決に向けて動き出します。読者は、解決に進む様を見ながら一喜一憂する楽しさがあります。