形はひとつじゃない。小説・エッセイ…家族の在り方を考える15冊

形はひとつじゃない。小説・エッセイ…家族の在り方を考える15冊

親子、夫婦、兄弟姉妹……。一緒に暮らしていたり、離れて暮らしていたり。仲が良かったり、ちょっと疎遠になっていたり。家の数だけ家族の形があるのと同じように、誰もが無縁ではいられない家族の在り方を読み解く15冊をご紹介します。2020年03月18日作成

カテゴリ:
アート・カルチャー
キーワード
おうち時間小説家族漫画
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秘められた家族の世界を、本を通して覗き見る

家の数だけ家族の形がある。そう言っても言い過ぎではないほど、家族の関係性は多種多様です。言い換えれば、私たちは他所の家族のことなんて、本当には何も分かっていないのかもしれません。分からないからこそ、他所の家族への興味は尽きません。じっと観察したり、微に入り細に入り質問したりできない閉じた世界だからこそ、余計に知りたいと思うのは人間の性ではないでしょうか。知りたいけれど覗けない、他所の家をそっと上から覗き見るようなドキドキを、本を通じて味わってみませんか。

目次

①いい時も悪い時も同じ屋根の下。家族の成長物語

形はひとつじゃない。小説・エッセイ…家族の在り方を考える15冊
出典:stocksnap.io
けんかしても会いたくなくても、簡単には離れられない、それが家族。同じ屋根の下で暮らしているとなれば尚更です。逃げられない関係性の中で、それでも少しずつそれぞれの家族の形を模索していく、そんな家族の成長の物語。

辻村深月『家族シアター』(講談社)

家族シアター (講談社文庫)
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子育てよりも自分を優先したがる父親、孫に理想の子ども像を押し付ける祖父、外見ばかり気にして娘と分かり会えない母親……。そんな”折り合いのつかない”家族の短編集です。いえ、”折り合いがつかなかった”と言うべきでしょう。読みながらこちらが眉をひそめてしまうほどいびつだった家族の関係が、ささやかな事件を通してゆるやかに変化していく家族の成長の物語です。
どこにでもありそうな、でもどれも全く違う、それぞれの家族の物語全7篇。ただひとつ7つ目のお話には、事件も行き違いも起こりません。ただただ優しい『家族』への祝福の物語。ぜひ周りに人が居ないところでお読みください。

家族シアター (講談社文庫)
814円〜(税込)
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奥田英朗『我が家のヒミツ』(集英社)

我が家のヒミツ (集英社文庫)
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どうやら自分たち夫婦には子どもが出来そうにない、そう気づき始めたころ、憧れの人と再会し……(『虫歯とピアニスト』)。長年競い合ってきた同期のライバルとの昇進レースに破れた53歳の正雄が始めたのは……(『正雄の秋』)。妻が突然市議会議員に立候補すると言い出した!(『妻と選挙』)。
どこにでもいるような普通の家族の、ささやかでとびきりチャーミングな冒険の物語。心が気持ちよく揺り動かされる、愛おしい6組の家族の物語。

我が家のヒミツ (集英社文庫)
616円〜(税込)
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さくらももこ『もものかんづめ』(集英社)

もものかんづめ (集英社文庫)
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「ちびまるこちゃん」でおなじみのさくらももこさんが日常を綴ったエッセイ集。軽妙な語り口で綴られるエッセイには、父ヒロシやお母さん、お姉ちゃんなど漫画と変わらない家族も登場します。ああ、ちびまるこちゃんの世界そのまんま、と思いきや!漫画とは違う衝撃の真実が語られるのです。「祖父は全くろくでもないジジイであった」から始まるおじいちゃんのエピソードには驚きと爆笑が抑えられません。やっぱり家族ってどこか滑稽で、そして愛おしい。笑った後にはほっこり気持ちが温まる名エッセイです。

もものかんづめ (集英社文庫)
429円〜(税込)
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②さりげない絆に憧れる。兄弟の物語

それぞれ勝手に生きているように見える兄弟の、ふいに見せる深い繋がりに憧れる女性は多いはず。男児兄弟の育児に悩むお母さんにも!「なんだかんだ言って男兄弟っていいもんだなぁ」と思える3冊を、あなたに。

小山宙哉『宇宙兄弟』(講談社)

宇宙兄弟(1) (モーニング KC)
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幼い頃、共に宇宙への夢を語りあった兄と弟。一度は宇宙への道を諦めた兄のもとに、今なお宇宙を目指す弟から一通のメールが届く。そして、兄は再び宇宙を目指し……!兄・弟それぞれの熱い想いが胸を打つ、壮大な宇宙への旅がはじまります。
タイプが全く違いながらもどちらも魅力的な兄・六太(むった)と弟・日々人(ひびと)。周りの個性的な登場人物の活躍と共に、ふたりの挑戦からあなたも目が離せなくなることでしょう。

宇宙兄弟(1) (モーニング KC)
726円〜(税込)
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江國香織『間宮兄弟』(小学館)

間宮兄弟 (小学館文庫)
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弟はもてない。兄ももてない。兄は恋に失敗するとビールを飲み、弟は新幹線を見にいく。それぞれ個性的な兄弟のやりとりがじんわり面白く、価値観が違いながらもどこか繋がっている関係性に安らぎを感じます。
もてなくても幸福に暮らす兄と弟の日常に、ああ兄弟っていいなと憧れます。

間宮兄弟 (小学館文庫)
1,120円〜(税込)
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いせひでこ『にいさん』(偕成社)

にいさん
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「ひまわり」をはじめ多くの作品が日本でも愛されているゴッホ。ゴッホに弟がいたこと、その弟がゴッホの創作活動を支え続けたことをご存知でしょうか。オランダの小さな村に生まれたゴッホとテオ。兄の絵画への情熱に時に嫉妬を覚えながらも、テオは兄を、兄の芸術を、慕い続けました。
兄弟のお互いへの強い思いと、兄弟それぞれの芸術への愛が、テオの静かな語り口を通して綴られます。

にいさん
1,650円〜(税込)
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③そこにあるのは秘密か、日常か…。濃やかで瑞々しい姉妹の物語

形はひとつじゃない。小説・エッセイ…家族の在り方を考える15冊
家族であり、女同士。ライバルであり、親友。姉・妹との関係に悩むあなたにも、お姉ちゃん欲しかったなぁと憧れるあなたにも読んで欲しい、濃密な姉妹の物語。

谷崎潤一郎『細雪』(新潮社)

細雪(上) (新潮文庫)
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大阪の旧家を舞台に四姉妹の日常を描く、谷崎潤一郎の代表作。物語は姉妹のうち1番の美人、雪子の見合いから始まります。美人でありながらなぜか縁談がまとまらない三女雪子と世話を焼く姉達、そして奔放な妹が繰り広げる日常が、谷崎潤一郎の流れるような文章でとうとうと綴られます。丁寧な会話の描写とリズムのある大阪弁の取り合わせが絶妙で、そばで姉妹の会話を聞いているような親近感を覚えずにはいられません。

細雪(上) (新潮文庫)
605円〜(税込)
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阿佐ヶ谷姉妹『阿佐ヶ谷姉妹の のほほんふたり暮らし』(幻冬舎)

阿佐ヶ谷姉妹の のほほんふたり暮らし
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「姉妹」といえばこの二人を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。歌い踊る昭和な芸風と品の良い人柄で人気の二人組の芸人さん。実際は姉妹ではないのですが、長きにわたる二人暮らしを経て、まるで本当の姉妹のような仲の良さと遠慮のない間柄もお茶の間で好評です。現在は隣同士別々の部屋に住む二人が、二人暮らし時代にリレー形式で書いたこのエッセイ集。なんだかヘンテコリンで愛おしい二人の関係に頬がゆるみっぱなしなのでした。

阿佐ヶ谷姉妹の のほほんふたり暮らし
4,131円〜(税込)
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湊かなえ『豆の上で眠る』(新潮社)

豆の上で眠る (新潮文庫)
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大学生の結衣子と、2歳年上の姉・万佑子を中心に広がる、違和感の物語。結衣子が小学校一年生の時、姉・万佑子が失踪します。必死の捜索も虚しくそのまま姿を消した万佑子ですが、2年後、姉を名乗る少女が家族の前に現れます。大喜びで少女を迎え入れる家族の中で、少女が姉だと信じられず戸惑う結衣子……。戻ってきた姉に違和感を抱き続けながらも大学生になった結衣子ですが、夏休みに帰省した実家でのある出来事から姉への疑惑が決定的に深まります。やがてその疑惑は父に、母にと広がり、少しずつ家族の秘密が明らかになっていきます。
本物の姉とは?本当の家族とは?正解がひとつではない宿題を渡されたような、答えは自分で決めればいいんだよと許されたような、余韻の残る読後感は、湊かなえさんの真骨頂と言えるでしょう。

豆の上で眠る (新潮文庫)
736円〜(税込)
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④血縁以上、家族未満?”手に入れた”家族の物語

形はひとつじゃない。小説・エッセイ…家族の在り方を考える15冊
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家族ってなんだろう。血が繋がっていれば、家族?同じ家に住んでいれば、家族?家族の形は人それぞれ違うなら、これが家族の物語ではないと誰が言えるでしょう。血の繋がりはないけれど、共に過ごし心を寄せ合うことで絆を手に入れた3組の”家族”の物語。

本田孝好『チェーン・ポイズン』(講談社)

チェーン・ポイズン <新装版> (講談社文庫)
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「本当に死ぬ気なら、1年待ちませんか?」。誰にも必要とされず虚無感から未来を捨てようとしていた孤独な女性に、見ず知らずの人物から謎の契約が持ちかけられるところから物語は始まります。1年の期間限定で新しい生活に足を踏み出した彼女は、やがて児童養護施設でボランティアを始めます。死ぬまでの時間潰しにとはじめた好きでもないボランティアでしたが、やがて彼女は「人から必要とされている」自分に気がつくのです。周りの人を大切だと感じれば感じるほど、命の期限は近づいて来て…。
本作は、続きが気になって読む手が止められない極上のミステリーでありながら、親のない子どもと孤独な女性が家族の絆を獲得する様子を丁寧に描いた家族の物語でもあるのです。

チェーン・ポイズン <新装版> (講談社文庫)
924円〜(税込)
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羽海野チカ『3月のライオン』(白泉社)

3月のライオン (1) (ヤングアニマルコミックス)
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幼い頃に家族を事故で失った孤独な少年桐山零が、将棋を通して人と交わり、成長していく物語です。15歳にしてひとり暮らしの桐山少年は、ひょんなことから川向いに住む川本家の3姉妹と知り合います。他人と関わることを拒絶し心を閉ざしていた桐山ですが、親が無い境遇でありながら明るく強く生きる3姉妹に次第に心を許し、そこに居場所を求めるようになっていきます。作者は川本姉妹を「つらく厳しい闘いでも、終われば優しく迎え入れてくれる人がいるとまた頑張れる」、そういった希望として描いたといいます。共に食卓を囲み、泣き、笑う、そんな家庭の日常を糧に成長する姿が、私たちの胸を熱くします。

3月のライオン (1) (ヤングアニマルコミックス)
513円〜(税込)
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三浦しをん『小暮荘物語』(祥伝社)

木暮荘物語 (祥伝社文庫)
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都会の外れに、時代に取り残されたように立つオンボロアパート、小暮荘。大家さんと、ちょっと変わった店子さんたちが暮らすこのアパートでは、今日もささやかな事件が起こります。なんだかさえない日常にやるせない想いを募らせる時、支えてくれたのは安普請ゆえに無縁ではいられない隣人達の温もりでした。
今日も小暮荘では住民たちが付かず離れず家族のように暮らしている、そんな幸せな光景が目に浮かぶ、連作短編集です。

木暮荘物語 (祥伝社文庫)
660円〜(税込)
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⑤言葉が要らない時もある。愛が伝わる家族の写真集

形はひとつじゃない。小説・エッセイ…家族の在り方を考える15冊
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スマホの普及によって誰もが日常的に写真を撮る現代だからこそ、プロの写真家が家族の写真を撮ることには特別な決意がある。確かな技術があるからこそ伝わる、家族を題材とした写真集。

森友治『ダカフェ日記』(ホーム社)

ダカフェ日記
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夫婦ふたり、子どもふたりと犬1匹。どこにでもあるような日常を、温かなカメラワークで切り取ります。1日3万アクセスの人気ブログが写真集になりました。
飾らないのになんだかお洒落、日常なのに美しい、そんな一瞬を丁寧に切り取りました。

ダカフェ日記
2,420円〜(税込)
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浅田政志『浅田家』(赤々舎)

浅田家
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父、母、兄、そして写真家本人の4人家族が、消防士やラーメン屋など様々な職業に扮する家族写真の写真集です。演出の中にも家族の関係性が垣間見える写真の数々に、自然とにんまり。なんといっても、家族写真といっても全員大人!全員いい大人なんだけど、やっぱり親にとっては子どもで兄にとっては弟、そんな優しさが写真からしっかり伝わってくるのです。

浅田家
2,860円〜(税込)
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上田義彦『上田義彦写真集 at Home』(リトルモア)

上田義彦写真集 at Home
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サントリー烏龍茶、無印良品、資生堂など、広告写真を中心に活躍している写真家・上田義彦が自身の家族を13年間撮り続けた家族の記録を、一冊の写真集にまとめました。モデルである妻・桐島かれんとの結婚から、4人の子どもが生まれ6人家族になるまで、13年間の家族の歴史が確かな技術に裏打ちされた繊細な撮影で美しく記録されています。大切なものを、忘れたくないものを、一番いい姿で残したいという写真家の情熱に満ちた、宝箱のような写真集です。

上田義彦写真集 at Home
4,895円〜(税込)
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どんな家族も愛おしい

形はひとつじゃない。小説・エッセイ…家族の在り方を考える15冊
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様々な家族の物語、覗いてみたい家は見つかりましたか?どの本にも共通するのは、家族のありのままの姿を愛でる作者の視線です。様々な家族の形を堪能した後には、どこの家族もそれぞれ違ってそれでいい、そんなおおらかな優しい気持ちで自分の家族を見られるかもしれません。

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