疲れた心にじんわり染み入る、群ようこさんの作品たち
群ようこさんプロフィール
1954(昭和29)年、東京都生れ。六回の転職を経て、本の雑誌社勤務時代にエッセイを書き始め、1984年『午前零時の玄米パン』を刊行、独立する。『鞄に本だけつめこんで』『膝小僧の神様』『無印おまじない物語』『猫と海鞘(ほや)』『かつら・スカーフ・半ズボン』『またたび回覧板』『飢え』『ヤマダ一家の辛抱』『ビーの話』『おかめなふたり』『小美代姐さん花乱万丈』『きもの365日』『妖精と妖怪のあいだ 評伝・平林たい子』『かもめ食堂』『しいちゃん日記』『音の細道』『ぢぞうはみんな知っている』『おんなのるつぼ』『おとこのるつぼ』『うちのご近所さん』など著書多数。
PART1:癒されたい人へ
『パンとスープとネコ日和』
『しっぽちゃん』
群ようこさんを語るのに動物作品をはずすわけには参りません。ねこ、犬、セキセイインコ、ハムスター、亀からヤモリまで! 動物愛に満ちた短編集です。(注・ヤモリ以外)
いろんな問題を抱える人間たちに安らぎを与えてくれる動物たち。時にはつらい仕事を頑張るための原動力になり、人間同士が仲良く暮らすための仲介役になり、私たちにとってかけがえのない親友です。だからこそ、私たちは動物もこの作品も愛さずにいられないのでしょう。(注・ヤモリ以外)
PART2:日常を忘れたい人へ
『亜細亜ふむふむ紀行』
ひょんなことで行くことになった亜細亜の濃い~街。(※時代は1990年代です。)
『なるほどザ・ワールド』と『世界ふしぎ発見』情報をもとに、香港でのお買い物ツアーがはじまります。マカオではクーラーの寒さに震えながらカジノで運試し。ソウルに行けば激辛料理に舌鼓をうち、シャネルのイヤリングを100円で買う。強烈な大阪のネオンの下でどつきあいのけんかに遭遇し、大阪人の個性について考える。アメリカやヨーロッパもいいけれど亜細亜もなかなかのものですよ。ちょっとした異世界気分を味わえます。
『鞄に本だけつめこんで』
群ようこさんが24冊の本のご紹介。その本にまつわるエピソードとともにお楽しみください。
なんてチョイスが渋い!永井荷風・志賀直哉・寺田虎彦・坂口安吾など、大正から昭和にかけての文豪ばかり。
田村俊子著『女作者』で女流作家の悲哀と不安を共感し、『三島由紀夫レター教室』で〈手紙〉の残酷さを訴え、田中英光著『オリンポスの果実』でラグビーの部員に襲撃されたトラウマを癒す。
小難しい文章でも、こんな軽快なエッセイで紹介されていれば、読んでみようかな?という気になりますね。
PART3:毎日の生活を楽しみたい人へ
『衣にちにち』
〈おばちゃん〉作家・群ようこ先生のワードローブエッセイ。
このお歳になると、着るものにもいろいろこだわりが出てきます。出かける前に悩み、通販サイトを見て悩み、猫ちゃんの爪とヨダレで悩み。大好きな和服だと大荷物を抱えて歩けない。暑さ・寒さをガードしたいけど失礼のないような服装ってどの程度なんだろう?色合いも気になるし、前とおなじアクセサリーは使えない。果たして毎日の試行錯誤の成果はいかに?服や雑貨のイラストが可愛い一冊です。
『トラブルクッキング』
『かもめ食堂』や『パンとスープとネコ日和』などを読む限り、「作者の群ようこさんって、こだわりの材料を使い、手際よく、どんなものでも美味しく作れるお料理上手さんだろうな」と思っていました。この本に出あうまでは。
食べる事はお好きそうですが、料理に関しては怨念すら感じられます。「おっしゃー!」と挑んだキッチンで、レシピをにらみつつ悪戦苦闘し、最後は「こんなはずでは・・・」で終わる一連の流れの繰り返し。それでももう一度チャレンジするのは、そこに食い意地があるから?
「がんばれー!」と声援を送るか、「ちょっと貸してごらん!」とフライパンを奪い取るか、複雑なキモチになります。
『財布のつぶやき』
金の話。お菓子の話。センスの話。言葉の話。ぶっちゃけ話がつまっています。まるで女子会に参加しているような。
だるま状態の体型を、笹団子、いや、きりたんぽにするため購入した『ビリーズブートキャンプ』14700円(送料別)。ネコからの冷たい視線を感じつつ、基本編を繰り返す。
イタリア特別製カーテンを購入。ン十万円の請求書が送られてきたショックで、「見積もりを取る」ことの大切さを実感。
「ちょっと聞いてよ~。」と言う群ようこさんの、親友気分が味わえます。
PART4:頑張る元気が欲しい人へ
『れんげ荘』
バリバリのキャリアウーマンが早期退職し、安アパートで月10万円生活!
森茉莉著『贅沢貧乏』をお手本に、お金のかからないストレスレスな生活をめざします。
れんげ荘の愉快な仲間たち、1号室:暴力割烹に努めているサイトウくん。3号室:若い時はやんちゃだったクマガイさん。奥の倉庫:職業・旅人の外国人好きコナツさん。
暇を持て余し何をしていいのかわからない不安感や、母親からの世間体攻撃に悩まされ、ミミズやカビや蚊と闘いながらも、このれんげ荘2号室をだんだん愛しく思えてくるキョウコさんなのでした。
『馬琴の嫁』
エッセイや若い女性主役の小説が多い群ようこさんですが、こちらは歴史読み物です。滝沢馬琴の息子と結婚した〈滝沢みち=曲亭琴童〉のお話。
病弱で冷たい夫、厳格な義父母。はた迷惑な実家の両親。次から次へと倒れる病人の看病をし、すぐに辞めてしまう下女(お手伝いさん)の代わりにすべての仕事を引き受け、実家の揉め事に心を悩ます日々。それでもちいさな喜びに励まされ、幸せを感じるみちなのでした。失明した馬琴のために、口述筆記で『里見八犬伝』の完成を手伝うみち。歴史に名を残すには並大抵の苦労では足りないのかもしれません。
『かもめ食堂』
小林聡美さん主演で映画化された、群ようこさんの代表作です。あなたは宝くじで一億円あたったらどうしますか?
サチエさんはなんと会社を辞めてお店を始めることにしたのです!しかもフィンランドで!目を閉じたまま地図を指さしフィンランドに行くと決めたミドリさんと機内預け荷物をなくした一人旅のマサコさん。三人で切り盛りするかもめ食堂は、フィンランドのお客様に受け入れられるのでしょうか?
自称日本通のトンミくんが熱望する「ガッチャマンの歌」。あなたは全部歌えますか?
母が残した大衆食堂を改装してオープンしたアキコさんこだわりのカフェ。修道院風の内装に大きなテーブル3つ。メニューは2種類のサンドイッチとスープのセットのみ。おしゃれ女子に大人気のお店になりました。
それでもいろいろな悩みは尽きず・・・。
気さくでよく働くアルバイト店員のしまちゃんと協力し、閉店後はねこのたろちゃんに癒されながら、アキコさんは今日も心を込めてお客様をおもてなしします。