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絵本作家以外の職を持つ著者が手がけた絵本には、それぞれ独自の色が出ます。なんといっても情報を伝えるプロであるデザイナーが手がけた絵本からは、デザインのエッセンスが読み取れそうです。
ポスターのようなキリリと締まった紙面や、意外性のある演出、洗練された装丁など、見るべきポイントも変わってきそうですね。では、さっそくデザイナーが手がけた絵本たちをみていきましょう。
「ぐるんぱのようちえん」 西内 ミナミ (著) 堀内 誠一 (絵) 福音館書店
雑誌「an・an」や「POPEYE」「BRUTUS」などのロゴデザインを手がけたことでも知られる日本を代表するグラフィックデザイナー堀内 誠一さんの絵本作品は、現在でもロングセラーとして愛されている作品が沢山あります。同作者による「たろうのおでかけ」「くろうまブランキー」など、親子(ややもすると祖父母も含めて)数世代で親しんだ方も多いのでは。
こちらの「ぐるんぱのようちえん」では、引きこもるようにして暮らしていた象のぐるんぱが社会に出て働き、自分の居場所を見つけるまでが描かれます。見開きの左側に働く様子が、右側にはしょんぼり去っていくぐるんぱの様子が描かれる、という繰り返しのパターンは、こどもにもわかりやすくストーリーを伝えてくれます。
「はいくないきもの」 谷川俊太郎 (著) 皆川明 (絵) クレヨンハウス
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ファッションデザイナーとして活躍するミナ ペルホネンの皆川 明さんが詩人・谷川俊太郎さんと共に生み出した、心に豊かなリズムを与えてくれる一冊。自由奔放な線は忘れかけていた子供心を思い出させ、それでいて見る人に新しい言葉と音・色や形の繋ぎ方を見せてくれます。
「ぬりえ の 赤ずきん、くるみ割り人形、不思議の国のアリス」 渡邉 良重 (著) 安藤 隆 (著) リトル・モア
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グラフィックはもちろん、雑貨などの商品デザイン、パッケージ、広告など多岐にわたる活躍で人気を博す渡邉 良重さんの作品は繊細ながら親しみやすく、美しさの中に生きた感情が宿っているよう。絵本作品としては「BROOCH」(内田 也哉子 (著), 渡邉 良重 (イラスト) リトル・モア)のヒット作が知られていますが、その後も新たな切り口の作品を発表し続けています。
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この作品は塗り絵をしながら楽しめる絵本。「赤ずきん」をはじめとするよく知っている名作童話であっても、素敵な線画を眺めながら、「どの色に塗ろうかな?」なんて考えていくうちに、作品に対する新たな視点が見えてくるかも。
「立体で見る 星の本」 杉浦康平(著) 北村正利(著) 福音館書店
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グラフィックデザイナー杉浦康平氏の手がけた、付属の3Dメガネで立体的に星が観察できる画期的な絵本。図象学の分野を宇宙的・観念的な側面から切り開いた研究者としての顔も併せ持つ氏ならではの研ぎ澄まされた感性が感じられます。美しいしつらえで、ずっとそばに置いておきたくなる絵本です。
「いろいろバス」 tupera tupera(著) 大日本図書
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絵本をはじめ、雑貨やアートディレクションなど様々な分野でそのデザイン力を発揮しているユニット tupera tupera。独自の世界観が楽しいイラストは明るく楽しく、それでいてどこか不思議な雰囲気。ピシッと整頓された形とレイアウト、リズムを感じる色彩には大人も惹きつけられます。
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バスに乗り込む、ユニークで意外な乗客たちに思わずくすっと笑ってしまう絵本です。
「あおくんときいろちゃん」 レオ・レオーニ (著) 藤田 圭雄 (訳) 至光社
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「スイミー」「フレデリック」などの作者として知られるレオ=レオニ氏。絵本作家として制作活動に入る前は広告代理店や新聞社でグラフィックデザイナーとして活躍していました。この「あおくんときいろちゃん」は氏のデビュー作で、抽象的な「色と形」だけのシンプルな絵柄から、感情やメッセージがじんわり伝わってくる、素敵な絵本です。
「あかいふうせん」 イエラ・マリ (著) ほるぷ出版
イエラ・マリはイタリアのデザイナー。こちらの「あかいふうせん」は字のない絵本。シンプルな絵から伝わる情報以上の斬新な感性&メッセージ性に驚かされます。シンプルを極めた素敵な表紙絵は、お部屋に飾っておきたくなる可愛らしさ。
「きりのなかのサーカス」ブルーノ・ムナーリ (著) Corraini Editore
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デザイナーを目指す人にもおすすめの絵本。穴の空いたページや透ける紙など、多彩な工夫がこらされた高クオリティの誌面は必見です!
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手がけたのは、イタリア美術家、グラフィックデザイナー、プロダクトデザイナー、教育者、研究家など絵本作家以外にも多くの肩書きを持つブルーノ・ムナーリ氏。簡潔でいて洗練された表現は、視覚だけでなくめくった時に味わえる手触りも新鮮で、新時代の絵本の幕開けを思わせます。
「家たち Le case」 河野・葵・フーバー(著) editions vigola
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日本にまだデザインという言葉が根付いていなかった時代にスウェーデンに渡り、デザイナーとして学び活躍してきた葵・フーバー・河野さん。80歳を超えた今も、心の柔らかい部分に響くデザインワークを制作し続けています。食器やファブリック、広告などを手がけてきた彼女の絵本作品は、他に「ふゆ」「あいであ」などが日本でも出版されています。
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赤い装丁が目を引くこちらの絵本は、日本語とイタリア語の両方で読めます。イラストはもちろん、洗練された文字組にも注目☆おしゃれな家、いばった家、おひめさまの家etc... 細やかでいて自由に歪んだ線描を通して、絶妙なバランス感覚で描かれます。
「Un grand jardin」 Gilles Clément (著) Vincent Gravé (イラスト) Cambourakis
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タイトル“Un Grand Jardin”はフランス語で「大きな庭」のこと。
景観デザイナーである著者のジル・クレマンは、小説家でもあり、生態学者・植物学者などとしても活躍した多才な人物です。活動範囲もパリ、南アフリカ、インドネシアなど世界中の公園を仕事場に、設計はもちろん、現場で庭師としても情熱を注ぎました。そんな彼が手がけたエネルギッシュな庭の美しさには圧倒されます。
本作でイラストを手がけたのはVincent Gravé。繊細なタッチで描き込まれた風物は、その地に足を運んでゆっくり歩きながら鑑賞しているような臨場感を演出してくれます。
「エドワードとうま」 オーレ・エクセル(絵) アン・ランド(著) 岩波書店
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スウェーデンのグラフィックデザイナー オーレ・エクセルがイラストを手がけた絵本。チョコレートのマゼッティ社のロゴ「ココアアイズ」を生み出したデザイナーとして今日でも優れたデザインで知られています。
都会に住むエドワードは自分の馬が欲しくてたまりません。都会で一緒に住んでくれるような理想の馬と出会うのですが・・・
大胆なレイアウト、美しい色彩感覚がユーモアたっぷりのストーリーをもり立てた絵本です。
「MUD BOOK」 ジョン・ケージ(著) ロイス・ロング(著) PRINCETON ARCHITECTURAL PRESS
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実験的な前衛音楽家であり思想家でもあるジョン・ケージとテキスタイルデザイナー ロイス・ロングの共作。泥遊びの楽しさがこちら側まで伝わってきて、見ているとぐいっと引き込まれる愉快な絵本。泥のパイの作り方を描きつつ、最後に「泥のパイは食べるためじゃなく、作るため、鑑賞するため、そして楽しむためのもの」という言葉が添えられ、創作が“泥遊び”に例えて表現されていたことにはっと気づかされます。
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“everythig we do is music"という言葉を残した彼の小さな作品。どこか哲学的な言葉・内容に引き込まれる絵本です。
「どうぶつのパレード」 アイノ-マイヤ・メッツォラ(著) 大日本絵画
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マリメッコのテキスタイルデザイナー、アイノーマイヤ・メッツォラ の描く賑やかな幼児向け絵本。”小さい””大きい”を遊びながら学べてちびっ子は大喜び♪鮮やかな色味や可愛らしい動物たちは大人が見ても楽しい気分になれます。ジグソーパズルのように取り外したり並べてくっつけたりできるボードタイプの絵本です。
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デザイナーの手がけた絵本は、フォルムや色がシンプルながらもその一つ一つに明確な意図を感じるという印象を抱かれた方も多いはず。めくるごとに、彼らのセンスが絵本のページからも湧き出してくるようです。いつもそばに置いて、時折ページを開きたくなるようなお気に入りの一冊を見つけてみてくださいね。
絵本作家以外の職を持つ著者が手がけた絵本には、それぞれ独自の色が出ます。なんといっても情報を伝えるプロであるデザイナーが手がけた絵本からは、デザインのエッセンスが読み取れそうです。
ポスターのようなキリリと締まった紙面や、意外性のある演出、洗練された装丁など、見るべきポイントも変わってきそうですね。では、さっそくデザイナーが手がけた絵本たちをみていきましょう。