秋の夜長に、心があたたまる本を
そんな秋の夜長には、あたたかい飲み物と、こころがあたたまる一冊なんてピッタリでは。読書の秋、ほっこり楽しんでみましょう。
今回は、読んだ後に心があたたまっているような、秋にぴったりの本をさまざまなジャンルから集めてみました。少しずつ読めるものや一気に読みたいもの、気分に合わせて選んでみてください。それでは紹介していきます。
ドリアン助川/「あん」
生きる気力をなくした小さなどら焼き店の店主と、そこにやってきた手の不自由な女性から始まる物語。生きるということを考えさせられる、深いストーリーですが、雰囲気がそのまま伝わってくる読みやすい文章に、どんどん引き込まれていきます。優しく切ない、読み終わった後も胸に残る一冊です。
この小説は2015年5月に河瀬直美監督、樹木希林さん・永瀬正敏さんといったキャストで映画化され、カンヌ国際映画祭に出品された事でも話題になりました。小説を読むと、味のある俳優さんたちのつくる「あん」も観てみたくなります。
瀬尾まいこ/「幸福な食卓」
ほんわかとした文章と、それだけではないストーリーで人気のある瀬尾まいこさんが、家族について描いた「幸福な食卓」。タイトルからのイメージを裏切る『父さんは今日で父さんをやめようと思う』という宣言から始まる物語は、少し変わった家族たちを中心に進んでいきます。
西加奈子/「漁港の肉子ちゃん」
ちょっと元気を出したい人におすすめなのが、今話題の作家、西加奈子さんの「漁港の肉子ちゃん」。太っていて不細工、どこまでもマイペースな圧倒的キャラクターの肉子ちゃんと、小学生のその娘の日々を描いています。
冒頭からアクの強さを発揮する肉子ちゃん。初めのうちはストレートな個性に苦笑いしてしまいますが、最後にはそんな肉子ちゃんが羨ましくなっているかも。西加奈子さんのに圧倒的な肯定に、勇気づけられます。
よしもとばなな/「イルカ」
よしもとばななさん自身が妊娠・出産の後に書いた「イルカ」。妊娠を考えていなかった33歳の女性小説家キミコが、妊娠・出産するまでのストーリー。他の作家とはちょっと違うばななさん独特の視点で、赤ちゃんが生まれるということの不思議や、力強さを教えてくれます。自分が妊娠・出産の経験をしたら、また読み返してみたくなる一冊です。
長編をじっくり読みたい方にはこちらもおすすめ、よしもとばななさんの「王国」シリーズです。おばあちゃんと山で薬草作りをしていた女の子が山を降りる事を余儀なくされ… 描かれているのは現実世界ですが、ファンタジックな雰囲気と、とても魅力的な登場人物たち。大切なことが詰まった、ずっと持っておきたい本です。
大宮エリー/「思いを伝えるということ」
脚本家・エッセイスト・ラジオパーソナリティーなどいろいろな顔を持つ大宮エリーさんの初めての詩と短編集。渋谷パルコなどで開催された、「思いを伝えるということ」展をもとに文庫化されました。
思いを伝える相手の事、思っている自分の事、その時々でいろんな部分にはっとさせられます。切ないとき、苦しいとき、誰かを好きになったとき、手に取りたくなる一冊です。
ぷぷっと笑いたい時にはこちらがおすすめ。大宮エリーさんの「生きるコント」。職業のみならずプライベートでも様々な体験をしている大宮エリーさんの実生活からなるエッセイです。驚くようなエピソードについつい声をだして笑ってしまうので、電車では読まないことをおすすめします。
松谷みよ子/「アカネちゃんのなみだの海」
松谷みよこさん自身の体験をもとに書かれたというこのシリーズは、児童文学ではめずらしく、離婚や死というテーマにも触れています。小さい頃は、野菜が遊びに来たりオオカミと話したり、不思議で楽しい童話として読んでいたこの作品。大人になった今読むと、また考えさせられることがたくさんあります。
阿部了・阿部直美/「おべんとうの時間」
お弁当好きが高じて、日本全国でお弁当と食べる人のポートレートを撮るようになったという阿部了さんと、共にお弁当の旅にでるうちに文章を書くようになったという妻・直美さんの夫婦によるお弁当の本。どのお弁当もとても美味しそうで、作った人の顔がみえるような気がします。お母さんが作ってくれたお弁当がまた食べたくなる本です。
この本の元となっているのは、全日空機内誌「翼の王国」の連載。これが楽しみで全日空を選ぶという人もいるほどの人気。お弁当への想いは、子どもも大人も誰もがもっているものなんですね。
益田ミリ/「泣き虫チエ子さん」
最後に、心あたたまる漫画を紹介します。「すーちゃん」シリーズなど、女子の等身大のつぶやきを描いてくれる人気の作家益田ミリさんが、今度はほっこり夫婦の日常から女子の気持ちを描いた「泣き虫チエ子さん」。
ほっこりしたイラストで描かれた二人の日常は、自分て面倒くさいなあと思うようなことも、日常のちいさな幸せの一つなのかもしれないと、思わせてくれる作品です。
いかがでしたか?
ちょっと心細い気持ちも、本の世界にいるうちにどこかへいってしまうかも。秋の長い夜のお供に、参考にしてみてください。
急に日が暮れるのが早くなって、秋の空気になってきましたね。こんな季節は少し心細くなります。そういう時はまっすぐ家に帰って、あたたかい飲み物を飲みながらゆっくり過ごしたいですね。