いくつ知ってる?緑もえる季節にそっと葉を落とす、日本の常緑樹『常磐木』

いくつ知ってる?緑もえる季節にそっと葉を落とす、日本の常緑樹『常磐木』

四季を通して青々と茂る「常緑樹」。日本では古くから永遠の若さの象徴『常磐木(ときわぎ)』として親しまれてきましたが、植物ですから、四季とともに成長しています。冬を越した春、新芽へのバトンタッチを終えて、または、秋の鮮やかな紅葉にまぎれて、古い葉を静かに落とし、常盤木にも世代交代が行われていること、ご存じでしたか? 2018年05月16日作成

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1年じゅう緑を湛える常緑樹。
スギ木立と常緑樹の深い緑が山門に格調と落ち着きを与え、アジサイを際立たせています。栃木県栃木市・大中寺山門。
出典:

スギ木立と常緑樹の深い緑が山門に格調と落ち着きを与え、アジサイを際立たせています。栃木県栃木市・大中寺山門。

常緑樹【常磐木/ときわぎ)】にも世代交代=落葉があります

【常磐木落葉/ときわぎおちば】

落葉のタイプは大きく分けて2つ。

➀4~6月にかけて、新葉と入れ替わりに落葉する木
②春から秋にかけて、少しずつ入れ替わる木
常緑広葉樹のクスノキは➀のタイプ。冬を越した葉は春に赤や黄色に姿を変え、落ちていきます。
出典:

常緑広葉樹のクスノキは➀のタイプ。冬を越した葉は春に赤や黄色に姿を変え、落ちていきます。

常緑樹の葉の寿命はさまざまだけど、1年以上はあるんだ。
新しい葉が出てからいっせいに落葉したり、
少しずつ落として新しい葉と交代すれば、
年中緑の葉は絶えないんだよ。
出典:森で遊ぼっ!
“初夏”の季語=【常磐木落葉】
いくつ知ってる?緑もえる季節にそっと葉を落とす、日本の常緑樹『常磐木』
出典:
「常磐木落葉(ときわぎおちば)」は、初夏の季語。
常磐木とは、松や杉、楠などの常緑樹のことで、四国村にたくさんある楠の下も、この時期になると赤や茶色の落葉でいっぱいです。
冬に休眠状態になる落葉樹と違って、常緑樹は1年中みずみずしい葉っぱを保持するために、新芽が萌えてきたら古い葉っぱを落とします。
季節外れの落葉ですが、これも常緑樹が自然の中で生きていくために身につけた知恵なんですね(^^)
出典:四国村
常磐木落葉(ときわぎおちば、ときはぎおちば) 
初夏 – 季語と歳時記
森で遊ぼっ!
常緑樹が落葉するメカニズムがわかりやすく解説されています

【常磐木落葉】の木々は|常緑広葉樹

クスノキ(樟)

日本の巨木トップ10のうち、8本までがクスノキだそう。“トトロの住みか”としても知られていますね。
春の盛りに、新緑に生まれ変わったクスノキ(樹齢600年~800年)。
出典:

春の盛りに、新緑に生まれ変わったクスノキ(樹齢600年~800年)。

春、1週間くらいの間に、赤や黄色に染まった古い葉が落ち、新しい葉にとって代わられます。
出典:

春、1週間くらいの間に、赤や黄色に染まった古い葉が落ち、新しい葉にとって代わられます。

暖かい雨上がりの朝クスノキの落葉始まる! 雨上がりの早朝です。
車のまだ居ない駐車場にクスノキの赤い落ち葉がハラハラと舞い降りています。
樹を見上げると赤い葉が沢山。初夏に向かって選手交代が始まりました。
出典: phixさん|🍀GreenSnap(グリーンスナップ)
新芽は赤く、紅葉した古い葉と見間違えそうですが…
出典:

新芽は赤く、紅葉した古い葉と見間違えそうですが…

やがて花が咲き、葉は新緑へと変化していきます。
出典:

やがて花が咲き、葉は新緑へと変化していきます。

世代交代を見届けて…クスノキの落ち葉。
いくつ知ってる?緑もえる季節にそっと葉を落とす、日本の常緑樹『常磐木』
出典:
クスノキ
Wikipedia

シイ(椎)

日本の照葉樹林を代表するブナ科シイ属の常緑広葉樹。
おいしいドングリのなる木として、シイタケのほだ木として。最近では腐葉土の原料としても人気です。
いくつ知ってる?緑もえる季節にそっと葉を落とす、日本の常緑樹『常磐木』
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日本にはブナ科シイ属に属する種はツブラジイ(コジイ)とスダジイ(イタジイ)が知られて
います。ツブラジイは関東以西、スダジイは福島県および佐渡島以南に分布します。
 いずれの種も常緑性(じょうりょくせい)(一年中緑色の葉をつけている)で、大きなものは
高さ25m、直径1.5mにもなります。葉は厚くて、縁が滑らかで、裏面は毛が密生するため
金色に見えます。
出典:椎(しい) - 万葉の生きものたち
石川県の金沢市「しいのき迎賓館」(旧石川県庁)前にある一対の『堂形のシイノキ』(スダジイ)。どちらも根の周囲が10m前後、高さは10mあまり。国の天然記念物に指定されています。
出典:

石川県の金沢市「しいのき迎賓館」(旧石川県庁)前にある一対の『堂形のシイノキ』(スダジイ)。どちらも根の周囲が10m前後、高さは10mあまり。国の天然記念物に指定されています。

5月は、開花と新芽でシイノキが最も明るく輝く時期。周囲には落葉がいっぱい。
出典:

5月は、開花と新芽でシイノキが最も明るく輝く時期。周囲には落葉がいっぱい。

黒みがかった幹、鬱蒼とした葉が重厚な雰囲気。大木になり、各地で神社の“ご神木”、史跡の“シンボルツリー”とされています。
画像は樹齢1000年といわれるシイだそう。
ドングリがなる木として、シイタケのほだ木として。最近では落ち葉が腐葉土に最適とされていることでも知られます。
出典:

画像は樹齢1000年といわれるシイだそう。
ドングリがなる木として、シイタケのほだ木として。最近では落ち葉が腐葉土に最適とされていることでも知られます。

新緑はライトグリーンで季節を経るに従って葉の緑が濃くなる。葉の裏側は年間を通じて
黄色に近く、街路から見上げると木全体が黄色く見えるのが特徴。
出典:スダジイ - 庭木図鑑 植木ペディア
2月。日当たりのいい林の中で、昨年に落ちた実から双葉を出したシイ。
出典:

2月。日当たりのいい林の中で、昨年に落ちた実から双葉を出したシイ。

シイノキ
国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所

カシ(樫)

前出のシイと並んで、“ご神木”“鎮守の森”、ドングリのなる木として親しまれてきたブナ科の常緑広葉樹。
20近い市町村のシンボルマークに指定されています。
画像はシラカシ。このほか、漢方茶の原料となるウラジロガシ、高級な炭に使われるウバメガシ、堅い木材として造船に使われるアカガシなど、カシの仲間は数多くあります。
出典:

画像はシラカシ。このほか、漢方茶の原料となるウラジロガシ、高級な炭に使われるウバメガシ、堅い木材として造船に使われるアカガシなど、カシの仲間は数多くあります。

1年じゅう美しい木洩れ日が楽しめるのも常緑樹だからこそ♪
出典:

1年じゅう美しい木洩れ日が楽しめるのも常緑樹だからこそ♪

かしの木を眺めながら ホッと一息☕️ お気に入りのファストフード店にて😅
出典: しもしもさん|🍀GreenSnap(グリーンスナップ)
カシノキの投稿画像 by しもしもさん|🍀GreenSnap(グリーンスナップ)
5月。熊本県山都町にある目丸山のアカガシ。根元には落ち葉がいっぱい。
出典:

5月。熊本県山都町にある目丸山のアカガシ。根元には落ち葉がいっぱい。

11月でも葉は青々。アラカシ(ブナ科コナラ属)のドングリ。
出典:

11月でも葉は青々。アラカシ(ブナ科コナラ属)のドングリ。

4月。カシの落葉の中で、見つけたドングリをついばむアオバト。
出典:

4月。カシの落葉の中で、見つけたドングリをついばむアオバト。

カシ - Wikipedia

秋にも春にも葉を落とします。「常緑針葉樹」

 スギやヒノキ、モミやマツ類などの常緑針葉樹ももちろん、葉は交代します。
彼らの交代の時期は秋、したがって秋に落葉します。この時期、彼らの樹冠(じゅかん:枝葉の層)をよく見ると、茶色い枯れ葉が沢山ついています。
出典:森林雑学研究室

スギ(杉)

真冬も青々とした木立が雪の重みをしっかり受け止めています。日本三大美林の一つ・秋田杉。
出典:

真冬も青々とした木立が雪の重みをしっかり受け止めています。日本三大美林の一つ・秋田杉。

こちらも日本三大美林の1つ・吉野杉(奈良県吉野市)の8月。(撮影:筆者)

こちらも日本三大美林の1つ・吉野杉(奈良県吉野市)の8月。(撮影:筆者)

ずっと緑を保ち続けているわけではありません。
11月下旬には、葉の一部が黄葉して・・・
出典:

11月下旬には、葉の一部が黄葉して・・・

落葉していきます。
出典:

落葉していきます。

いくつ知ってる?緑もえる季節にそっと葉を落とす、日本の常緑樹『常磐木』
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冬だからこそ、
冬にしか見れない杉の葉一面の山道^^

一歩一歩、歩くたびフワッフワッっと僕の足を跳ね返す位弾力ある杉の枯葉達。
気持ちは枯れてないんだね。
出典:冬紅葉ノ絨毯 by nyao  写真共有サイト:PHOTOHITO
世界遺産・鹿児島県屋久島。屋久杉の新緑と落葉。
出典:

世界遺産・鹿児島県屋久島。屋久杉の新緑と落葉。

スギ - Wikipedia

マツ(松)

マツ科の常緑針葉樹。アカマツ・クロマツ・ゴヨウマツ・ハイマツなどの仲間が。
日本では神の寄る神聖な木としてだけではなく、節操や長寿を象徴する木として尊ばれており、
門松の風習や松竹梅の筆頭としてもその尊厳を表しています。
出典:松について | 竹下木材有限会社
画像は茨城県水戸市・偕楽園。青々とした葉と風格あるフォルムの松が、梅の花を引き立てて。和の美ですね♪
出典:

画像は茨城県水戸市・偕楽園。青々とした葉と風格あるフォルムの松が、梅の花を引き立てて。和の美ですね♪

冬枯れのお正月に…
門松の緑とセンリョウの赤い実のコントラストが鮮やか。
出典:

門松の緑とセンリョウの赤い実のコントラストが鮮やか。

春の新芽の頃、前年の秋に落ちなかった古い青葉が落ちることもあります。
いくつ知ってる?緑もえる季節にそっと葉を落とす、日本の常緑樹『常磐木』
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本格的な落葉は秋から冬にかけて。
いくつ知ってる?緑もえる季節にそっと葉を落とす、日本の常緑樹『常磐木』
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12月下旬、たっぷりと積もった松の落ち葉。

初冬を表す季語「敷落葉(しきまつば)」は。茶の湯の世界では・・・ 
出典:

12月下旬、たっぷりと積もった松の落ち葉。

初冬を表す季語「敷落葉(しきまつば)」は。茶の湯の世界では・・・ 

茶の湯では11月には風炉から炉に替え、茶庭や露地には枯れた松葉を一面に敷き詰める。これは
霜で苔が傷むのを防ぐためと、茶庭の風情を侘びた景にするためである。芝生を用いない
日本庭園独自の冬の装いである。
出典:淡交社:茶の湯の銘大百科
敷松葉の具体的な画像はこちら。
敷松葉
ろばの家具や
松について
竹下木材有限会社

ヒノキ(檜・桧)

ヒノキ科ヒノキ属の常緑針葉樹。法隆寺や薬師寺をはじめ、独特な芳香と耐久性で知られ、古くから神社・仏閣の建材として使われてきました。最高品質の浴槽として、お風呂好き垂涎の的でもあります。
ヒノキ科の常緑針葉樹。まっすぐに育てられた木曽ヒノキたち。
出典:

ヒノキ科の常緑針葉樹。まっすぐに育てられた木曽ヒノキたち。

樹齢800年だそう。宮崎県椎葉村「大久保のヒノキ」。
出典:

樹齢800年だそう。宮崎県椎葉村「大久保のヒノキ」。

11月半ばの京都・常照皇寺参道。紅葉したサクラに混じって、ヒノキも落葉していますが…見分けがつきません。
いくつ知ってる?緑もえる季節にそっと葉を落とす、日本の常緑樹『常磐木』
出典:
一部が落葉します。
11月ごろ、古い葉が赤くなり…
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11月ごろ、古い葉が赤くなり…

12月。根元に積もったヒノキの落ち葉。
出典:

12月。根元に積もったヒノキの落ち葉。

常緑針葉樹の葉は、秋から冬にかけて古いものから順に枯れて
落葉するんだ。そのおよその年齢は木の種類によって違って、アカ
マツは2年、ヒノキは6年、シラベは7年が多いといわれているんだよ。
出典:森で遊ぼっ!
春の新芽と花。この時期、スギと同じように、年を越した青い葉が落葉することもあります。
出典:

春の新芽と花。この時期、スギと同じように、年を越した青い葉が落葉することもあります。

檜・桧(ヒノキ・ひのき)
森林・林業学習館

【常磐木落葉】ではないけれど。                春に落葉する常緑樹たち

ツバキ(椿)

葉は、落花の後に散ります。いっぺんに散るわけではないので、気づかないことも。
出典:

葉は、落花の後に散ります。いっぺんに散るわけではないので、気づかないことも。

椿の木自身が古葉を落として適正な葉数になろうと対応している途中です。
出典:椿の育て方 春は古葉が入れ替わる時期。 » 椿心 佐藤椿園 
ツバキとは
みんなの趣味の園芸 NHK出版

キンモクセイ【金木犀】

市町村がシンボルとしている花木のうち、全国9位の人気だそう。
いくつ知ってる?緑もえる季節にそっと葉を落とす、日本の常緑樹『常磐木』
出典:
秋の深まりをはなやかな香りとちいさくも鮮やかな黄色の花で知らせてくれます。
真冬も濃い緑の葉を茂らせていますが、春の落葉に気づく人は少ないようです。
出典:

秋の深まりをはなやかな香りとちいさくも鮮やかな黄色の花で知らせてくれます。
真冬も濃い緑の葉を茂らせていますが、春の落葉に気づく人は少ないようです。

赤い新芽がみずみずしい緑色に変化するころ、冬の寒さに耐えた古い葉は、“春の嵐”に吹かれて落ちていきます。
出典:

赤い新芽がみずみずしい緑色に変化するころ、冬の寒さに耐えた古い葉は、“春の嵐”に吹かれて落ちていきます。

キンモクセイとは
みんなの趣味の園芸 NHK出版

おしまいに

落葉樹のように花や紅葉が注目されることは少ないけれど、厳しい冬にも緑を湛える常緑樹=『常磐木』の存在は、日本の自然に不可欠なものの一つ。よく見ると、その緑は同じトーンのままではありません。
春のクスノキは透明感のある新緑をまといながら根元にたくさんの葉を落としますし、秋に紅葉して落葉、さらには新芽の頃にも葉を落とすスギやマツもあります。
春の終わりから初夏にかけては、『常磐木落葉』を目の当たりにできる年に一度の機会。お散歩や旅の途上に見つけたら、常磐木たちの一生に思いを馳せてみてはいかがでしょうか?
イチョウの黄葉とクスノキの濃い緑色の葉が鮮やかなコントラスト。
出典:

イチョウの黄葉とクスノキの濃い緑色の葉が鮮やかなコントラスト。

参考サイト:
常緑樹は、なぜ緑を保っているのか
森林・林業 学習館
季語と歳時記
きごさい歳時記
秋と春の落葉の違い
みんなのひろば | 日本植物生理学会
常緑樹の落葉について
みんなのひろば | 日本植物生理学会
“常磐木:ときわぎ”の例文
ふりがな文庫

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