今人気のイングリッシュガーデン(英国式庭園)とは?
あるがままの自然を愛する「風景式庭園」のこと
ガーデニングは大きく、英国式・フランス式・イタリア式の3つに分けられます。18世紀頃に英国式のスタイルが確立するまでは、イタリア式やフランス式が主流でした。英国式の黎明期に、「絵画のような理想的な庭を作ろう」という動きがあり、そこで提唱されたのが「風景式庭園」というスタイル。それまでは直線で整備された区画や左右対称のレイアウトなど整形式庭園が多く広まっていました。それに対し、“あるがままの自然の優美さをもっと楽しもう”という意図から発展したのが英国式の風景式庭園(自然式庭園)だったのです。
伝統的な日本庭園もまた風景式庭園のスタイルをとります。その後、東洋風の風物の流行に伴い中国風の仮山を取り入れたり、エキゾチックな四阿が取り入れられるなど、時代ごとに変遷しつつ英国式庭園は世界中で愛されてきました。
伝統的な日本庭園もまた風景式庭園のスタイルをとります。その後、東洋風の風物の流行に伴い中国風の仮山を取り入れたり、エキゾチックな四阿が取り入れられるなど、時代ごとに変遷しつつ英国式庭園は世界中で愛されてきました。
イギリス式庭園(English garden, English park)は、西洋風の庭園の様式のひとつ。狭義では、平面幾何学式庭園(フランス式庭園)に対して自然の景観美を追求した、広大な苑池から構成されるイギリス風景式庭園を指す。この意味のほかに、19世紀のイギリスで認識されるようになったコテージガーデン(en:Cottage garden)などの園芸様式を含めて用いることもあり、現代日本において家庭園芸(ガーデニング)用語として使われる「イングリッシュガーデン」は、この流れを汲む。
田舎風(コテージガーデン)を現代風に楽しむのが人気
また、1870年代のイングランドでは田舎の風景が庭で楽しめるコテージガーデンが流行し、素朴なコテージの壁にクレマチスをはわせたり、傍らに農具を配置するなどよりナチュラルで牧歌的なスタイルが好まれるようになりました。最近日本で人気のイングリッシュガーデンはこのスタイルの影響を大きく受けています。ナチュラルな雰囲気のコテージガーデンは見ているだけで心が和みます。
こんな可愛らしい小屋(コテージ)はナチュラルテイストのイングリッシュガーデン にぴったり。農具や肥料、乾燥させる球根や野菜などをしまうのにも重宝します。
散策して楽しむのに適したイングリッシュガーデンでは、小道の途中にベンチを設置するスタイルも人気です。お庭散歩の途中でほっとひと息!腰を落ち着けてゆったりとした時間を楽しめます。
また、エレガントな雰囲気のガーデンファニチャーで楽しむアフタヌーンティーも、英国スタイルに浸れるポイントのひとつ。
また、エレガントな雰囲気のガーデンファニチャーで楽しむアフタヌーンティーも、英国スタイルに浸れるポイントのひとつ。
自宅の小さな庭や狭い庭でも作れる!
現代では庭園のような広大な土地をもつガーデンではなく、自宅の小さな庭を英国式庭園のスタイルに基づいてレイアウトする方式が親しまれています。バラをあしらったり、ハーブを多く取り入れるスタイルは特に人気があるようです。
小道をレンガ、小石や木材チップでカバーしたり、ジョウロや車輪など農家風アクセサリーを設置すると、よりナチュラルコテージガーデンの雰囲気が演出できますね。
小道をレンガ、小石や木材チップでカバーしたり、ジョウロや車輪など農家風アクセサリーを設置すると、よりナチュラルコテージガーデンの雰囲気が演出できますね。
イングリッシュガーデンの作り方
レイアウトは「ボーダーガーデン」を参考に
基本的に自由な発想で(相性の悪い植物が隣り合わせにならないように注意しつつ)好きな植物を植えていいとされていますが、英国式庭園の代表的なスタイルのひとつである「ボーダーガーデン」の作り方は押さえておきたいところ。
ボーダーガーデンとは、背の高い植物を奥に、低い植物を手前に配して立体感を出した区画づくりのことで、お庭をより広く感じることができます。寄せ植えなどのプランターでも同じように楽しみながらレイアウトできますよ。
ボーダーガーデンとは、背の高い植物を奥に、低い植物を手前に配して立体感を出した区画づくりのことで、お庭をより広く感じることができます。寄せ植えなどのプランターでも同じように楽しみながらレイアウトできますよ。
植物の配置は日当たりや色彩も意識して
日光は植物にとって、欠かせないもの。一日の中で、または季節による日の当たり方の変化をチェックした上で、植物それぞれの日当たり具合の好みも考慮しつつ、それぞれに合った場所に植栽しましょう。
その際、花の咲く時期にも注意して植物を選ぶと良いでしょう。カラフルにしたり、青+白でまとめたり、暖色で統一したりと色彩設計(カラースキーム)がポイントになります。
その際、花の咲く時期にも注意して植物を選ぶと良いでしょう。カラフルにしたり、青+白でまとめたり、暖色で統一したりと色彩設計(カラースキーム)がポイントになります。
さらに、お庭の中で一番目立たせたいところ、ガーデン用語で言いかえれば「フォーカルポイント」なるスポットを決めて、シンボルツリーなどの印象に残るものを置くとよりデザインが引き締まりますよ。
植物の選び方もポイント
一年草・二年草・多年草・宿根草の違いを知ろう
植物はタネを植えてその年に花が咲くもの、次の年まで待つもの、毎年咲くものなど様々です。大まかにまとめると、
・一年草(一年生植物):発芽してから一年以内に花が咲き、タネになり枯れるもの。毎年タネをまく必要があります。アサガオやひまわりなど。
・二年草(二年生植物):上記の一年草のサイクルに二年かかるもの。休眠して越冬するものが多いです。アメリカナデシコ、ツキミソウなど。
・多年草(多年生植物):個体として何年も生育する植物です。冬の間地上部が枯れて根っこのみが生き続ける宿根草もこのグループ。ユリやダリアのような球根植物の他、パンジーやビオラ、芝桜やマーガレットなどもこの仲間。
翌年どこで作業が必要になるかを考えながらレイアウトすると良いでしょう。写真は一年草のネモフィラ。
・一年草(一年生植物):発芽してから一年以内に花が咲き、タネになり枯れるもの。毎年タネをまく必要があります。アサガオやひまわりなど。
・二年草(二年生植物):上記の一年草のサイクルに二年かかるもの。休眠して越冬するものが多いです。アメリカナデシコ、ツキミソウなど。
・多年草(多年生植物):個体として何年も生育する植物です。冬の間地上部が枯れて根っこのみが生き続ける宿根草もこのグループ。ユリやダリアのような球根植物の他、パンジーやビオラ、芝桜やマーガレットなどもこの仲間。
翌年どこで作業が必要になるかを考えながらレイアウトすると良いでしょう。写真は一年草のネモフィラ。
庭木を植えるなら「常緑低木」がおすすめ
庭木を植えて楽しみたい方には、常緑低木がおすすめ。常緑低木とは文字通り、一年を通して緑の葉を絶やさない高さが概ね2m以内の木をさします。種類によって高さは多少異なるので、それぞれの樹高をチェックしてお庭に合うものを選ぶと良いでしょう。
常緑低木のメリットは1年中いつでも景観を楽しめることです。また、花を付ける木ならその香りも楽しめますので、それぞれの木の特徴をおさえて好みに合うものを選びましょう。洋風のお庭によく似合うシルバープリペットや、幻想的な紫の花が咲くウエストリンギア、ポプリや料理に使えるブルーベリーやローズマリーなど、個性豊かな種類があります。
常緑低木のメリットは1年中いつでも景観を楽しめることです。また、花を付ける木ならその香りも楽しめますので、それぞれの木の特徴をおさえて好みに合うものを選びましょう。洋風のお庭によく似合うシルバープリペットや、幻想的な紫の花が咲くウエストリンギア、ポプリや料理に使えるブルーベリーやローズマリーなど、個性豊かな種類があります。
見た目もおしゃれな「グランドカバー」で土を覆う
グランドカバーは、お庭の地面を覆うことを意味したガーデン用語で、土の上を這うように広がって育つ植物が活躍してくれます。クローバーが地面にたくさん咲いている様子は見覚えがある方も多いのではないでしょうか。メリットは、土がむき出しにならないことでお庭に柔らかな印象を与えてくれることと、雑草が生えるのを防いだり、土の乾燥を防ぐ効果もあるんです。
イングリッシュガーデンでは、植物の高低差をつけるとより立体的な美しさを引き出せますが、一番低い部分にグランドカバーを施すことで、他の植物の見栄えがアップすることも。種類は、クローバーの他、クラピア、アジュガ、タイム(クリーピングタイム)、芝桜、多肉植物などさまざま。花を楽しめる種類も多いので、他の植物との相性で選ぶのも良いですね。
イングリッシュガーデンでは、植物の高低差をつけるとより立体的な美しさを引き出せますが、一番低い部分にグランドカバーを施すことで、他の植物の見栄えがアップすることも。種類は、クローバーの他、クラピア、アジュガ、タイム(クリーピングタイム)、芝桜、多肉植物などさまざま。花を楽しめる種類も多いので、他の植物との相性で選ぶのも良いですね。
フェンスなどの「エクステリア」はナチュラル素材を意識
お庭には、フェンスや広いところなら通路などもあるかと思います。イングリッシュガーデンでは、これらのエクステリアもナチュラル素材を意識して選ぶとより雰囲気を楽しめるでしょう。素材としては、木材や石、レンガなどがあります。植物を入れる鉢や、テーブル、椅子などの素材もチェックして、お庭全体になじむ物をチョイスしましょう。
雰囲気作りに役立つアンティークオーナメント
また、エクステリアはデザインなどもお庭にマッチするものを選ぶのがコツ。アンティーク調のガーデンライトやオーナメントなどを取り入れるとより英国風の雰囲気を楽しむことができますよ。本格的なアンティークは値段も張りますので予算に合わせて掘り出し物を見つけてみてください。例えばリーズナブルに手に入るアンティーク加工されたアイテムを取り入れたり、市販品をアンティーク風に自身でペイントするのもひとつの方法です。
レンガを並べるだけで花壇も作れる!?
レンガは土の上に敷いて道を作るなど、ナチュラルなガーデンづくりに活躍する素材です。こちらは、レンガで花壇を作る方法を解説した動画。レンガはただ作りたいサイズに合わせて並べて積み重ねていくだけなのでとっても簡単。防草シートを敷くなどポイントを押さえて作っていけば、お庭のワンポイントとして見栄えのする花壇ができあがります。
ガーデンショップで花苗セットを買う方法も♪
イングリッシュガーデンにおすすめの植物
バラ
イングリッシュガーデンと言えばバラ、と言われるくらい人気の花。アーチやオベリスクに絡ませた立体的な仕立ても人気です。様々な園芸品種が販売されていますので、色・香り・大きさや花の形などお気に入りを探して育てる楽しさもあります。バラの品種は、大きくオールドローズ(古代バラ)とモダンローズ(現代バラ)に分類されます。
オールドローズ
明確な線引きはないものの、広義には原種のワイルドローズから、モダンローズの「ラ・フランス」が開発されるまでの品種をさします。オールドローズにも様々な咲き方・色・大きさの品種がありますが、一季咲きが多く、四季咲き性のものは少ないようです。アンティーク・ローズとも呼ばれ、優雅な花姿と芳醇な香りを放つのが特徴です。
モダンローズ
1867年に作出された「ラ・フランス」という品種がモダンローズの第一号とされています。このバラは冬以外に花を咲かせる四季咲き性で、大変な人気があったようです。これ以降ますます様々なバラの品種開発が進み、中でも1969年に発表された写真の「イングリッシュローズ」という品種は、オールドローズとモダンローズの良いところを併せ持つ秀逸なバラとされ、現在でもバラ愛好者たちから不動の人気を集めています。
大輪のバラが乱れ咲く小道はロマンチック。シルクのような滑らかな花弁を飾る朝露にうっとりします。
ラベンダー
ナチュラルスタイルのイングリッシュガーデンにはハーブも人気です。ラベンダーは香りもよく、上手に育てるとかなり大きな株にもなります。
ミント類
手をかけなくともあっという間に増える繁殖力の強いミント類は、育てるのがとても楽しい一方、増えすぎてお隣の庭を侵略することも。お庭のスペースやご近所の環境に注意しつつ育てたいところです。
写真のペパーミントは葉をぎゅっと指で潰すだけで爽やかな香りが広がります。ハーブティーにも◎
写真のペパーミントは葉をぎゅっと指で潰すだけで爽やかな香りが広がります。ハーブティーにも◎
クレマチス
つる性のクレマチスはフェンスやオベリスクに這わせることで高さのある見せ方が可能。窓にかかるように壁に這わせると、まるで海外の児童文学に出てくるような素朴で美しい世界観を楽しめます。
ルピナス
可憐でボリューミーな花が素敵なルピナス。葉っぱの形もユニークです。高さがあるのでボーダーガーデンの奥側を彩るのにぴったり。もともとは多年草ですが、暑さに弱い植物のため寒冷地以外では一年草として生育することが多いそう。涼しい山の中の土地などでは自生することもあり、適した土地では手間いらずなのも嬉しいポイント。
パンジー
園芸品種の多彩さで目を引くパンジーとビオラ。毎年新品種が発表され、日本各地で様々なパンジー・ビオラを見ることができます。背が低いのでボーダーガーデンでは手前に植えたり、寄せ植えを作って各所に配置するなど花が映える見せ方をしてあげたいお花です。
アイビー
アイビーは壁などにつたわせる他、グランドカバーとしても使えて育てやすい植物です。一方で、育ちすぎてお隣との境界に侵入することも。切り戻して樹形を整えるなど注意しましょう。また、日陰でも育てやすいですが、斑入りの場合は斑が目立たなくなることもしばしば。陽に当ててあげることで模様も綺麗に出るようになるそう。
定番の宿根草「ギボウシ」
おお振りの葉っぱが楽しいギボウシ。斑入りのものも人気です。海外で品種改良が進み何百という種類がありますが、元々は日本にも自生している宿根草です。耐陰性があるため、半日陰でもよく育ちます。ユリの仲間で、ユリほど大きくないですが可憐な花姿も見せてくれます。
洋風の常緑低木「シルバープリペット」
シルバープリペットは、イングリッシュガーデンにとっても似合う常緑低木です。初夏になると白い小さな花をたくさん咲かせて甘い香りを楽しめるのも魅力。枝を伸ばす力が強いので、剪定も行いやすく生垣に合わせて適度に整えたい方にもおすすめです。日当たりの良い場所を選んで育てましょう。
【お出かけ編】イングリッシュガーデンを体感してみるのも◎
「イングリッシュガーデン」は日本でも人気が高く、美しい庭園を満喫できるスポットも各所にあります。まずは実際に足を運んでみて、本格的なイングリッシュガーデンの雰囲気を体感してみると、お庭づくりへのモチベーションも高まり、より楽しめるでしょう。
横浜イングリッシュガーデン(神奈川県)
「横浜イングリッシュガーデン」は、5つのテーマに分かれたお庭があります。ワイン・レッドやパープルのバラが主役、白いバラが主役など、色合いごとの美しさを楽しめます。年間を通して季節のお花が咲き、季節ごとのディスプレイも行われるので、その時々の景観を満喫しましょう。
公式サイトはこちらです。
蓼科高原 バラクラ イングリッシュガーデン(長野県)
「蓼科高原 バラクラ イングリッシュガーデン」は、1990年に誕生して以来、愛され続けています。設計からガーデナーまで全てを英国人専門家が手掛けた、日本初の本格的なイングリッシュガーデンです。植物は5000種類以上のコレクションがあるなど種類豊富。イングリッシュガーデンを象徴するオールドローズなどのバラ以外にも、紫色のチューリップや見事なダリアなど四季折々の植物に出会えます。小鳥のさえずりに癒される人も続出なのだそう。
公式サイトはこちらです。
KINGSWELL(キングスウェル)の英国式庭園(山梨県)
「英国The N.G.S.」公認のイングリッシュガーデンで、長さ14mのローズウォークなど設備も本格的です。周囲よりも低い位置につくることでガーデン内にバラの香りを留められる「沈床式フォーマルガーデン」など、さまざまな技術に出会うことができます。まるで海外に迷い込んだような雰囲気の中、ゆったり散策しながら四季折々の彩を楽しめるガーデンです。
公式サイトはこちらです。
イギリスの庭園愛好家の知恵を自宅のお庭に取り入れて
イングリッシュガーデンには、植物を楽しむたくさんの魅力が隠れています。自宅のお庭にイングリッシュガーデンのポイントを取り入れて、植物の自然な美しさを満喫してみましょう。自分だけの癒し空間をお庭に作って、毎日の生活をさらにリフレッシュできたら素敵ですね♪
植物選びに悩んだときには、ガーデンショップで花苗のセットを買う方法もありますよ。イングリッシュガーデンにお似合いの花セットを選べば、数種類の植物を一度に購入できて便利。例えばこちらは、常緑樹のシマトネリコに宿根草のリナリア、レンガにも似合う常緑のつる植物アイビーなど、バランスの良い苗が組み合わさっています。