いろいろなパンに心を奪われても、ふと気づくと毎朝食べているのは食パン……だったりしますよね。
日本人にとって最も馴染み深いパンと言える「食パン」ですが、実は日本独特の名称で、他の国ではそういった呼び方のパンは存在しません。
「食パン」の定義は「長方形の型に入れて焼き上げたパン」。日本の食パンのルーツになったと言われているイギリスパンや、フランスの「パン・ド・ミ」は食パンの一種です。

あまりに身近すぎて、これまで注目されることのなかった食パンですが、近年の「高級ブーム」により、どんどん進化を遂げています。
自分流の食べ方で楽しむのもいいけれど、「パン好き」としては、それぞれの種類の特徴を踏まえたうえで、その美味しさを存分に味わえる食べ方を知っておいて損はありません。そこで、食パンを究める楽しみ方を人気ブーランジェリーのBOUL'ANGE（ブール アンジュ）さんに教えていただきました。

様々な種類に分類することができる食パンですが、大きく分けると「角食パン」と「山型食パン」の2つに分類されます。この違いを知っておくと、自分が好きな食パンのタイプを知ることもできるはず。それぞれどんな特徴があるのかご紹介しましょう。

日本の一般的な食パンは、こちらのタイプ。プルマンブレッドと呼ばれる形です。
生地を型に入れた後フタをして焼き上げるため水分が蒸発しにくくなり、クラスト（皮）はしっとり、クラム（中身）はきめ細かく、もちもちの食感が生まれます。
日本の角食パンは、バターや卵、砂糖などが使われているものが一般的で、そのまま食べても美味しいものが多いのも特徴です。

イギリスパンに代表され、ラウンドトップと呼ばれるタイプです。
こんもりとした山型になるのは、型に入れてからフタをせずに焼かれるため。クラストはパリッとしていて、クラムはふんわりとした食感に仕上がります。
素材は「粉、塩、水、酵母」だけというものが多く、シンプルな味わい。肉や魚、野菜など、調理した食材との組み合わせがいいのが特徴です。生のままよりも、リベイクして食べるのが一般的。

様々な種類があるということは、それぞれに魅力が異なるということ。その美味しさを最大限に楽しめる「タイプ別」の食べ方をご紹介します。

小麦の美味しさを堪能できるベーシックタイプ

たかがトースト。されどトースト。
小麦の美味しさを引き出して、芳醇なバターの風味で仕上げる……“サクサクもっちり”の焼き方を伝授していただきました。

① 食パンを3cmほどの厚さに切る。
※トーストは「厚さ」がポイント。表面のカリカリ具合と、内側のもちもち感のバランスが絶妙に仕上がるのが「3cmほど」の厚さです。
※切るときは、できればブレッドナイフを使用するのがオススメ。パンがつぶれにくいうえ、なめらかな断面で切ることができるので食感がよくなります。

② バターがパンに浸みやすくするため、1.5cmぐらいの深さで十字に切り込みを入れる。
※切り込みが深いほど、バターの風味がパンに浸み込みます。

③ こんがりと焼き色がつくまでトースターで焼く。（約5分）
※トースターによって焼き時間が異なります。様子を見ながらお好みの焼き色に仕上げてください。

④ 熱いうちに、切れ込みの中心へバターをのせる。
※バターは軽く伸ばす程度でOK。無理に切れ込みに入れなくても、溶かしバターの状態になって浸み込んでいきます。

素朴な味わいと、トーストしたときのザクッとした食感が魅力

シンプルな風味と歯ごたえが特徴の山型パンは、調理パンに最適。今回ご紹介するのは、玉ねぎをきかせたチーズソースを塗ってアボカドをのせるだけで出来てしまう、簡単でお洒落な一品です。

＊ クリームチーズを室温に戻しておく。
＊ スライスした玉ねぎを食べやすい大きさに切って水にさらし、水分をしっかり切っておく。

① 室温に戻しておいたクリームチーズをボウルに入れ、ゴムベラなどでなめらかになるまで混ぜる。
② ①にマヨネーズと水切り玉ねぎを加えて混ぜ、チーズソースを作る。
③ しっかり焼き色が付くくらいトーストした食パンに、②を1枚につき作ったソースの半量程度を塗る。

④ アボカドの皮をむく。
（種に軽くあたるまで包丁を入れ、縦にぐるりと１周切れ目を入れる。両手でひねるように回して半分に割り、種からはずれた一方はそのまま皮をむく。種が残った方は、包丁の刃元を種に刺して軽くねじり、種を取ってから皮をむく。）

⑤ アボカドを3mm程度の厚さで均等にスライスし、包丁の刃にのせて寝かせるように倒す。
⑥ ③の上で、親指でアボカドを押さえながら包丁を引き抜いて、アボカドをパンにのせる。

⑦ 仕上げにレモン汁を塗り、塩とブラックペッパーを散らす。
※仕上げのレモンは風味をよくするだけでなく、アボカドが変色するのを防いでくれます。

生地に生クリームなどがたっぷり使われていて甘みがあり、生のままでも美味しいタイプ

生のままでもトーストにしても美味しいリッチなタイプ。クリームやバターなどがたっぷり使われているパンは、果物や甘いクリームとの相性が抜群です。ご紹介する水切りヨーグルトを使ったフルーツのオープンサンドは、酸味と甘さが程よく、朝ごはんにもおすすめ。

＊ 水切りヨーグルトを作っておく。
　（容器の上に重ねたザルの中に、ペーパータオルを敷いてヨーグルトを入れる。ラップをし、半量程度〈100ml→50ml〉になるまで冷蔵庫で一晩置いておく。）

① 水切りヨーグルトをホイッパーなどで混ぜ、なめらかにする。
② ボウルに生クリームとグラニュー糖を入れ、十分立てにする（角が立った状態から更に泡立て、もたっとする状態）。
③ ②のボウルへ①の水切りヨーグルトを加え、均等になるまで混ぜる。

④ 食パンの表面に、ヨーグルトクリームを1枚につき大さじ3程度塗る。
⑤ 皮をむいて5mm程度にスライスしたフルーツを隙間なく並べる。
※食パンの耳からはみ出すようにして並べるのが、仕上がりを美しくするポイント。

⑥ よく切れる包丁（あればブレッドナイフ）で、前後に小刻みに動かすようにして耳を切る。
⑦ 斜め半分に切り、お好みでハチミツをかける。
※包丁を温め、包丁を入れるごとに汚れをふく事がキレイに切るコツ。　

高級食パンブームによって、より美味しさを追求する商品やパン屋さんが増えています。素材や発酵の具合、焼き方にこだわり、丹精込めて作られた食パンは、それぞれに魅力が異なるもの。気分に合わせてパンを選び、そのパンの美味しさを生かした食べ方で味わう……。これまでよりも“味わい深く”食パンを楽しんでみてはいかがですか。