限りある資源を大切にする取り組みが世界で語られるようになり、自然と人間の在り方も再考の段階に入っています。

滋賀県の近江八幡。名神高速道路八日市ICから約40分ほどの距離にあるラ コリーナ近江八幡は和・洋菓子のショップをメインに自社農園のキャンディーファーム、本社、飲食店、マルシェ、専門ショップ、パンショップなどが集められたもの。建築家の藤森照信さんが手がける草で覆われた屋根がユニークな建物は、和菓子の「たねや」と洋菓子の「クラブハリエ」のメインショップです。

素材にもこだわる藤森さんは、山で一本一本、木を選定されたそう。メインショップの内装やテーブル、照明など細かなところまで藤森さんのこだわりがつまっています。

鉄筋コンクリートなどの技術を上手に組み入れながら、見る人の目に映る部分には自然の素材を使い、存在感のある建築に仕上げています。まさに自然と文明の融合がバランスよく考えられている建物であるといえます。

熱海を代表する観光地、アカオローズ＆ハーブガーデンの一角に2017年にオープンしたこちらのカフェ。COEDA HOUSE（コエダハウス ）は、海抜150mという高台に建ち、椅子に座るとどこまでも続く青い海と空の絶景を眺めることができ、心が躍ります。全面ガラス張りの美しい建物は、隈研吾さんの設計として話題になりました。

内部も隈研吾さんのこだわりが詰まっています。「大きな木の下に人々が集う建築」というコンセプトのもと、1500本ものアラスカヒノキを組み上げた木組みが中央に据えられています。鏡で作られた家具は、自然と木の質感を映し出し、ナチュラルに存在しています。

一杯のコーヒーを静かに味わうひととき。その時間を大自然に抱かれつつ、快適な椅子とテーブルを使って感じられるなんて、とてもすごいことですよね。海好きなら一度は訪れてみたい至福の時間を過ごせるカフェです。

全面に焼き煉瓦を積み上げた西欧教会風の建物は、重厚感があって木々のグリーンによく映えています。お日様を受けて、濃淡を見せる煉瓦が美しいですね。こぢんまりとしていますが、その佇まいは人の心に深い印象を残します。

兵庫県芦屋市、阪急神戸本線、芦屋川駅から徒歩10分ほどの距離にあるのは、ヨドコウ迎賓館です。1918年（大正7年）に山邑家別邸としてフランク・ロイド・ライトが設計した建物です。フランク・ロイド・ライトは、旧帝国ホテル、自由学園明日館などを設計したことでも知られ、世界三大建築家の一人としても有名です。

1974年には国の重要指定文化財にも指定されたヨドコウ迎賓館。緩やかな傾斜の丘に、階段状に建てられたこちらの建物は、幾何学模様の彫刻が入った大谷石や植物をモチーフにした美しい飾り銅板など様々なところに、自然の世界観を取り入れています。

建物の中と外が緩やかに結びつき、お日様の光や月明かり、星空などが効果的に演出されるお部屋は、見ていて飽きることがありません。バルコニーからは、美しい山並みと海を眺めることができ、素晴らしい立地を余すところなく活用しています。

香川県高松市と岡山県に挟まれた瀬戸内海に浮かぶ豊島の中にある豊島（てしま）美術館。アーティスト、内藤礼さんと建築家、西沢立衛さんの手による実にユニークな美術館です。建物内部には内藤礼さんの「母型」という作品だけが展示されています。

まるで大きな水滴のような形の建物は、柱が一本もないコンクリート・シェル構造になっています。天井に二カ所、ぽっかりと開けられた口からは、豊島の自然と音や風、光が取り込まれています。存在自体が特別な空間です。心に迫るものをそれぞれが感じとることができる、そんな空間なんです。

自然に寄り添い、自然と共に育まれていく。これからの時代に必要な気づきをきっかけに、本当に大切なものは何なのかと、今一度立ち止まってみんなで考えていきたいですね。今回ご紹介した建物は、すべて日本国内にあります。機会を見つけて、ぜひ、訪れてみてくださいね。