「工藝」は日常を豊かにする、美しい生活雑貨
「工藝」を深く知るための、15のキーワード
1.「工藝」に関する言葉や歴史から知る
「工藝」という漢字を読み解くと?

工藝は「ハンドメイド」の生活雑貨

工藝そのものの起源は、石器時代や縄文時代にまでさかのぼることができます。もちろんその頃工藝という言葉はありませんでしたが、生活のために石器を作り、土器を作っていたのは、当時生きていた人々の「手」でした。漢字に表れているように、工藝は今も昔も人の手で作られる、ひとつとして同じものがない「ハンドメイド」の生活雑貨です。
日本美術の歴史を作ってきた「美術工芸品」

古墳~奈良時代には、お寺や仏像を作り、自分たちの生活雑貨を確保するために、朝廷や貴族が技術者を集めて工藝を作らせるようになりました。作ることに専念できたおかげで、さまざまな技術が発展。この頃から近代に至るまでの工藝の中には、「美術工芸品」に登録されているものもあります。一般的には伝統的な工藝や骨とう品、美術品などを示す言葉としても使われる「美術工芸品」ですが、法律上は建物を除く学術的価値の高い文化財全般のこと。日本の歴史を作り、日本美術の発展に貢献した工藝も、その中に含まれています。
現代まで伝統と品質を保ってきた「伝統的工芸品」
機能性とその中の美に着目した「民藝」
2.実際にどんな工藝があるかを知る
食卓を彩り、支えてくれる「陶芸」
時間をかけて育て、なじませる「漆芸」
繊細な色合いや素材の質感が楽しい「染織」
お部屋が温かく、ナチュラルな印象に「木竹工」
暮らしに美しい輝きをもたらす「ガラス工芸」
<書籍>工藝をもっと知りたい方に
■『日本伝統工芸 鑑賞の手引』日本工芸会(芸艸堂)
より詳しく工藝について知りたいなら、本でじっくり学ぶのもおすすめです。本書では、工藝を陶芸・染織・漆芸・金工・木竹工・人形・その他の7ジャンルに分けて、どんな素材を使ってどのように作るのかを解説。技法や用語からカラー写真を使って説明しており、索引も付いているので、工藝初心者の方もゼロから学ぶことができます。
3.「工藝」を日常に取り入れる魅力から知る
工藝をもっと知りたくなる「地域性」
歴史や季節を感じる「デザイン」
素材の質感を楽しむものもある一方で、工藝では「デザイン」が施されることも。日本で古くから使われてきたデザインは、菊や竜胆を描いて秋を表す「秋草文様」、子供の成長を願う「麻の葉柄」、吉祥の印のひとつ「松喰鶴文」など、ひとつひとつに意味があります。どんな意味を持つのかを知れば、工藝をながめるだけで季節や歴史を楽しむことができ、今過ごしているひと時も大切なものに感じられるはずです。
「工」はもともと、のみなどの工具を表す象形文字。そこから作ること、作った人も示すようになりました。一方「藝」は人が草木を植える姿を表す漢字で、上手に育てることを意味しましたが、転じて優れた技術や技能という意味に。その2つを組み合わせて、素晴らしい技術で作ること、作ったもの自体のことを言うようになりました。普段使う「工芸」と漢字が異なるのは、戦後より書きやすい「芸」(本来は全く関係のない、「草を刈る」という意味の漢字)を当てたことから。そういうわけで、今回の記事では本来の漢字が入った「工藝」を使っています。