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北欧の絵本と聞くと、まずはアンデルセンを思い浮かべる方が多いかもしれません。
デンマークで生まれ育ったアンデルセンは、幼いころから想像力豊かな少年だったそうです。アンデルセンが書いた数々の作品は、「親指姫」「マッチ売りの少女」「人魚姫」など、創作童話と呼ばれるもので、どれも夢に溢れています。
こんなふうに絵本や児童文学を読み解いていくと、作家の生まれ育った国の社会背景や生活、家族像などに触れることができ、私たちとは異なる日常感覚に新鮮味を覚えたりするでしょう。その土地の雰囲気を楽しみ、時には旅をしているように作品を楽しむことができます。
皆さんも北欧の魅力をたっぷりと味わいながらそのライフスタイルに親しんでみませんか?
北欧の社会やライフスタイルに触れられる”絵本たち”
『あたし、ねむれないの』 カイ=ベックマン(作)、ペール=ベックマン(絵)、やまのうちきよこ(訳)出版社:偕成社
この作品は、スウェーデンのカイ=ベックマンとペール=ベックマンという夫婦が描いたお話しです。
なかなか眠りにつくことができない少女リーセンは、大好きなお人形やぬいぐるみなどを次々とベッドに持ち込みます。ところがベッドが一杯になってしまった時、おもちゃたちはリーセンの頑張りをよそに先に寝てしまいます。さて困ったリーセン、どうしましょう…?
スウェーデンの温かい家庭と親子の絆をちょっとだけ覗き見したような気持ちになれる絵本。お子さんだけでなく、大人にも就寝前に読んでほっこりしていただきたい作品です。
あたし、ねむれないの (世界の絵本)
1,320円〜(税込)
※価格等が異なる場合がございます。最新の情報は各サイトをご参照ください。
『うちってやっぱりなんかへん?』トーリル・コーヴェ(作、青木順子(訳)出版社:偕成社
こちらは、ノルウェー出身のアニメーション監督の作品です。みんなと同じく「ふつう」でありたいと願う少女が、次第に「変わっていてもかまわない、他人のことは気にしなくていい、みんなと同じじゃなくていい」と気付いていく過程が描かれています。
注目したいのはノルウェー人の暮らしぶり。この作品は一般的な家庭とされる「お隣さん」と作者の自宅を比較するように描いていて、そのライフスタイルを自然と想像させてくれます。サマーコテージに欠かせないヨット、徴兵制、離婚率の高い社会、そしてマリメッコのファブリックを使ったインテリアやお洋服などなど。舞台となっている60年代から半世紀以上が経ち、今や幸福度ランキング上位常連国になったノルウェーの素地となる暮らしが作品から浮かび上がってくるのも見所のひとつです。
うちってやっぱりなんかへん?
1,650円〜(税込)
※価格等が異なる場合がございます。最新の情報は各サイトをご参照ください。
世界中で大人気の北欧キャラクターやロングセラーの絵本
『つきのぼうや』イブ・スパング・オルセン(作・絵)、やまのうちきよこ(訳)出版社:福音館書店
デンマークの作家イブ・スパング・オルセンによるロングセラー作品。
ある夜、お月さまは池に映る月を見つけます。「あのお月さまとお友達になりたい」と思ったお月さまは、月のぼうやに連れてきて欲しいと頼みます。月のぼうやはお空からカゴをパラシュート代わりにして、すぅーっと降りていきますが…。
何より目を引くのがこの細長い絵本の形状です。ストーリーや絵だけではなく、本の形状も生かしてお話の世界観が表現されているのでより惹き付けられます。
この作品では、空と地上、地上と海底の距離感、月のぼうやの降りていくスピード感などが、細長いキャンパスの中での絵の配置や登場人物の視線などを通して、臨場感たっぷりに伝わってきます。また同じ画面に月のぼうやが複数描かれているページでは、読者の視線が自然に下へ下へと降りていき、アニメーションのような動きの効果も楽しめます。
さて、月のぼうやがお月さまのために持ち帰った新しいお友だちとは何だったのでしょうか…?
お月さまは新しいお友達にとても満足して、おしゃべりをしたくなるとそれを手にするのだそう♪
『BABY COLOUR BOOK』Lisa Larson(リサ・ラーソン)
出典: リサ・ラーソンは、88歳を迎える現在も精力的に制作に取り組み続けていらっしゃるスウェーデンの陶芸家であり、デザイナーです。スウェーデンの陶器ブランドのGustavsberg(グスタフスベリ)に勤務していた時に発表した「小さな動物園」や「ABC少女」などのシリーズで人気を博しました。
リサ・ラーソンの代表作と言えば、日本でも人気の「マイキー」ですよね。長い胴が白と赤の縞々模様になっていて、チラッとこちらを見てニヤリとしているような表情が印象的な猫のキャラクターは、名を知らずとも見たことがある人は多いと思います。
出典: 『BABY COLOUR BOOK』は、リサ・ラーソンの初めての絵本で、デザイナーでもある娘のヨハンナとのコラボレーションで実現しました。リサ・ラーソンの主たる活躍の場である陶器の世界とは異なり、絵本では平面の紙に絵を表現していますが、リサ・ラーソンらしい柔らかなフォルムとこちらを見つめる愛らしい表情は変わらず健在です。
スウェーデン語、日本語、英語で色を紹介していて、国際色豊かに仕上がっているのも楽しいですね。ちょっと疲れた夜には、本書を開いて眺めているだけで癒されるような作品です。
さてさて、「ムーミン」や「ニルスのふしぎな旅」などの作品が大好きだったり、それらの映画やアニメーション番組を見て育ったという方もいるのではないかと思います。これらはすべて北欧で生まれた児童文学なんです。本だけでも楽しめますが、映像作品と重ね合わせるとさらに物語の世界に親しむことができます。
北欧の児童文学作品に共通して描かれているのは、厳しく美しい自然とその中で生きる無垢な子供たち、そしてささやかな日常と冒険。そして子どもたちの豊かな成長を願う想い、自然との共栄、生きることの意味などさまざまなメッセージが込められています。
ユーモアと温もりによって、私たちの心にそっと寄り添ってくれる北欧児童文学には、どのような世界が広がっているのでしょうか?一つひとつ見ていきましょう♪
『オンネリとアンネリのおうち』マリヤッタ・クレンニエミ(作)、マイヤ・カルマ(絵)、渡部翠 (訳)出版社:福音館書店
フィンランドのマリヤッタ・クレンニエミが書いた『オンネリとアンネリのおうち』は、思いがけないプレゼントのように家を買うことになり、子どもたちだけの生活を始めた二人の少女と周囲の大人たちとの交流を描いています。
オンネリとアンネリは「正直者にあげます」と書かれた手紙とお金の入った封筒を拾ったことをきっかけに、バラの木夫人から家を買います。その家はまるで二人だけのために用意されたかのようなカラフルでメルヘンチックな内装で、二人の世界観にぴったりの可愛らしいお洋服や寝具まで用意されていました。
そんな二人の周囲に現れるのは、気難しい隣人と魔法が使える不思議な姉妹、そして優しく見守ってくれるお巡りさん、と個性豊かな面々。二人はケーキ作りをしたり小鳥を育てたりして楽しい日々を過ごしますが、ある日、隣人の家に泥棒が入り…。
両親が多忙すぎて、十分に面倒を見てもらってはいないけれど、そんなことはまったく意に介さず彼女たちは新しい生活を最大限に楽しみます。二人の素敵なお家と夢のような生活ぶりに、憧れを抱く読者さんも多いことでしょう。
この作品は続編『オンネリとアンネリのふゆ』も邦訳されていて、いずれも実写の映画作品も公開されています。さらに映画作品は第3弾となる『オンネリとアンネリのひみつのさくせん』も2019年5月に公開されていますので、一緒に楽しんでみるのはいかがでしょうか。
『ニルスのふしぎな旅(1)』 ラーゲルレーヴ(作)、香川鉄蔵、香川節(訳)出版社:偕成社
『ニルスのふしぎな旅』は、本書ができるまでのいきさつがとても興味深い作品です。
19世紀末のスウェーデンは産業革命が進んだものの、失われつつあった「スウェーデンらしさ」への回帰意識から子供たちの教育に関心が高まった時期でもありました。学校現場では、子供たちがスウェーデンの地理を正しく楽しく学べる教材への期待感が高まり、当時注目を集めていた女性小説家のセルマ・ラーゲルレーヴにその執筆が委ねられます。というのも、セルマは教師をしていた経験があったからです。
セルマは知恵を絞り、自ら取材に足を運び資料を収集しました。と同時にスウェーデンの歴史や地理を教えるアプローチ方法を随分と悩んだそうです。ある日、セルマは動物を擬人化するというヒントを得、また幼い頃に聞いた伝説を思い出し、鳥と共にスウェーデン各地を旅するストーリーを思いつきます。
そして主人公が妖精の魔法により身体を小さくされてしまう…というとっておきのアイデアが付け加えられ、本書の骨格が出来上がりました。
空を飛んで自国を旅するなんて、子どもたちにとってはこんなに夢があって楽しい地理の授業はないでしょうね。本書は全部で55章にも及ぶ作品ですが、100年以上が経過した今でも色あせることなく親しまれています。
さて『ニルスの不思議な旅』は、食べることと寝ることが好きで趣味が悪戯というとんでもない少年が主人公です。ある日、妖精トムスの怒りを買って身体を小さくされてしまったニルスは、ガチョウのモルテンの首に乗ってガンの群れと共に北に向かう旅に出ます。
スウェーデン各地の地理や歴史、産業などのあらましと共に綴られていくのは、ニルスの前に立ちはだかる数々の困難。それはセルマが子どもたちに語りかけ、丁寧に説きたかった、生きていくために忘れてはならない教訓の数々でした。友情、チームワーク、人間のエゴ、親子関係、自然や動物との共存、環境保全など、そのテーマは多岐に渡り、セルマの教師経験が活かされ、未来を担う子どもたちへの深い愛情が手に取るように伝わってきます。
そして本書では何度も“友情”を扱った場面が登場します。セルマが子どもたちに語りかけたかった数々のメッセージの中で、友達との交流は最も重要で、大切にしたいテーマであったことが伺い知れます。セルマが『ニルスのふしぎな旅』に吹き込んだ魂は、今もスウェーデンの子どもたち、そして世界の子どもたちを魅了し続けています。
ニルスのふしぎな旅〈1〉[全訳版] (偕成社文庫)
880円〜(税込)
※価格等が異なる場合がございます。最新の情報は各サイトをご参照ください。
『長くつ下のピッピ』リンドグレーン(作)、下村隆一(訳)出版社:偕成社
そばかすだらけのお顔にニンジン色のおさげ髪の女の子と言えば、日本でもおなじみの『長くつ下のピッピ』。本書が出版されたのは、第二次世界大戦が終戦を迎えた1945年。スウェーデンは中立国でしたが、フィンランドへの物資の供給や物流の滞りによる物資不足のほか、手紙まで検閲されるといった決して明るい時代ではありませんでした。戦争が終わり、まさに本書のような痛快なストーリーを子どもならずともスウェーデン国民の多くが待ちかまえていたことは言うまでもありません。
作者は、アストリット・リンドグレーンというスウェーデンを代表する児童文学作家です。
リンドグレーンの長女カーリンが肺炎にかかった時に、『長くつ下のピッピ』のお話が聞きたいとリクエストを受け、即興で聞かせたお話が本書の原案となり、4年後に出版されました。
ピッピは9歳の女の子。草がぼうぼうに生えた庭付きの「ごたごた荘」と名づけられた古屋敷にたった一人で住んでいます。船長のお父さんは海難に合い行方不明、お母さんはすでに亡くなっているからです。でもピッピは一人ぼっちではありません。ピッピには一頭の馬と仲良しのオナガザルのニルソンさんがいつも一緒です。
ピッピの生意気な物言いと飛び抜けたお行儀の悪さは、読者を物語に惹きつける鍵の一つ。数々の奇想天外な行動は私たちを驚かせ笑いを誘いますが、当時のスウェーデンでは教育上良くないという声も少なくなかったようです。それでも子供たちにとっては、達者な物言いや人並み外れた運動神経で大人たちを打ち負かすピッピが英雄に見えないわけがありませんよね。
それにピッピっておてんばなだけじゃなく、とても正義感が強くて優しくて、一人の無垢な少女であることも魅力です。火事で取り残された子どもたちを救うために知恵を絞り、堂々と助け出したり、友人のトミーとアニカを見送りながら海賊になると宣言する姿は、とにかく真っすぐな生き方が爽快で、多くの方が心を打たれるのではないでしょうか。
破天荒にも見えるストーリーを支えているのは、大人がいつしか忘れてしまう、ピッピの飾ることのない子どもらしさであることは言うまでもありません。
長くつ下のピッピ (偕成社文庫)
880円〜(税込)
※価格等が異なる場合がございます。最新の情報は各サイトをご参照ください。
トーベ・ヤンソンの人気児童文学といえば、やっぱり『ムーミン』
出典: ムーミン・トロール。
日本ではその名を聞いただけで北欧を連想するくらい知名度の高いキャラクターですね。
トロールとは伝説の妖精のことで、ムーミン・トロールはフィンランドの作家トーベ・ヤンソンが作ったキャラクターであることは皆さんもご存知かと思います。
ムーミン・トロールと個性的な仲間達がムーミン谷で繰り広げるムーミンシリーズは、『楽しいムーミン一家』や『ムーミン谷の彗星』を中心に児童書、絵本、小説などで楽しむことができる他、アニメーション作品、映画などにも幅広く展開されています。
出典: この作品は、豊かな自然はもちろん、世の中の不条理や自然の脅威、生きていく事の難しさまでデフォルメされることなく描かれているところも人気の秘密となっています。子どもの頃に読んだ印象と大人になって読み返した時のギャップが大きい作品ともいえるかもしれません。私たちは自分たちの成長に合わせてムーミン谷の仲間たちと一緒に驚いたり、悲しんだり、喜んだりして物語の全てを共有し、親近感を感じでいるのではないでしょうか。
そしてトーベが描いた絵はアート性が高くグラフィカル。挿絵に多い細かな点描のモノクロ画は、物語の世界観を見事に体現しています。またアニメーション作品では可愛らしく味のあるキャラクターが数多く描かれ、その人気を牽引しています。
北欧の絵本と児童文学を読み解いて、豊かな時間をお過ごし下さい♪
北欧各国は、北ゲルマン系民族やウラル系民族など複数の民族が居住している他、言語や習慣、国民性も各国で異なりますが、近隣諸国と刺激を与え合い、それが良いシナジー効果を生み、それぞれの豊かな文化を育んできました。
それは絵本や児童書においても同様です。たくさんの豊かな作品が生まれた背景には、神話や伝説を互いに大切に語り継ぎ、経済や社会状況などの影響を受けながらも、子どもたちへ良質の作品を届けようとする北欧の人々の熱い想いが反映されているといっていいでしょう。
出典: そして北欧から生まれた絵本や児童文学は、今や日本だけでなく世界各国へ伝播し、世界中の子どもたちが想像の翼を拡げる一助となっています。絵本や児童書は読みこむほどに味わいも深まり、新しい発見があるものです。ぜひ北欧作家の作品に触れることで北欧に触れ、親しむ機会になれば幸いです。
北欧の絵本と聞くと、まずはアンデルセンを思い浮かべる方が多いかもしれません。
デンマークで生まれ育ったアンデルセンは、幼いころから想像力豊かな少年だったそうです。アンデルセンが書いた数々の作品は、「親指姫」「マッチ売りの少女」「人魚姫」など、創作童話と呼ばれるもので、どれも夢に溢れています。