伝統工芸と"ものづくり"の集まる場所へ
越前(えちぜん)といえば「越前和紙」「越前箪笥」「越前打刃物」「越前焼」、鯖江(さばえ)といえば「鯖江めがね」などなど。誰もが一度は聞いたことのある伝統工芸の数々が、福井県の丹南エリアに集まっています。
普段は穏やかな空気の流れるこの地域で一年に一度、全国からたくさんのひとが集まり、"ものづくり"への想いあふれるイベント「RENEW(リニュー)2018 」が開催されます。(10月19日~21日)
普段は穏やかな空気の流れるこの地域で一年に一度、全国からたくさんのひとが集まり、"ものづくり"への想いあふれるイベント「RENEW(リニュー)2018 」が開催されます。(10月19日~21日)
イベント公式サイト
コンセプトは「来たれ若人、ものづくりのまちへ」。
会期中、普段は立ち入ることのできない工房や工場が開放され、ものづくりの現場を間近に見ることで、作り手の思いや伝統工芸の背景を知り、体験することのできるイベントです。
2015年にスタートし、4回目を迎える今年は、鯖江、越前両市に加え越前町にもエリアを拡大。3つの市町で、過去最多となる110社の工房・企業が参加し、町全体がイベント会場となります。
会期中、普段は立ち入ることのできない工房や工場が開放され、ものづくりの現場を間近に見ることで、作り手の思いや伝統工芸の背景を知り、体験することのできるイベントです。
2015年にスタートし、4回目を迎える今年は、鯖江、越前両市に加え越前町にもエリアを拡大。3つの市町で、過去最多となる110社の工房・企業が参加し、町全体がイベント会場となります。
当日は、「工場見学」「ワークショップ」のほか、お土産ショップ「RENEWストア」やローカルフードも楽しむことができますよ。今回は、とても一日では回りきれないイベントの見どころをご紹介します。
工場見学
漆器や和紙、めがね等たくさんの工芸品を生み出してきた福井県丹南エリアには、町の中に工房や工場がたくさん並んでいます。イベント期間中は、普段なかなか足を踏み入れることのできない工房などを訪れ、ものづくりの現場を間近に体験することができますよ。
工房や工場では、ものづくりに携わる職人さんの話しや想いを聞かせてもらいながら、作業場や実演を見学できるほか、製造されている工芸品も購入することが可能です。
今回、工場見学できる46スポットのうち、「山次製紙所」の山下さんと「プラスジャック株式会社」の津田さんにお話を聞かせてもらいました。
今回、工場見学できる46スポットのうち、「山次製紙所」の山下さんと「プラスジャック株式会社」の津田さんにお話を聞かせてもらいました。
山次製紙所(やまつぎせいししょ)|越前和紙
福井県越前市にある、明治元年創業・越前和紙の手漉き(てすき)和紙を作り続ける「山次製紙所」。
創業当時は無地の和紙を製造していましたが、1950年ごろには模様の技法をつかって、質の高さだけではない華やかな和紙づくりがはじまり現在に続いています。
しかしながら、その美しい和紙は企業からの受注で作られるものが多く、一般(個人)の私たちが直接手にできる機会はほとんどありません。
創業当時は無地の和紙を製造していましたが、1950年ごろには模様の技法をつかって、質の高さだけではない華やかな和紙づくりがはじまり現在に続いています。
しかしながら、その美しい和紙は企業からの受注で作られるものが多く、一般(個人)の私たちが直接手にできる機会はほとんどありません。
出典:www.instagram.com(@yamatsugi_seishisyo)
同時に、現代の生活では洋紙が多く用いられるようになり、「和紙」は私たちの日常から離れつつあります。
そんな中、山次製紙所では『浮き紙』という独自の技法を用いて、ブランド「series(シリーズ)」を立ち上げます。ブランドを作るというのは初めての試み、その経緯について山次製紙所の山下さんにお話を聞かせてもらいました。
そんな中、山次製紙所では『浮き紙』という独自の技法を用いて、ブランド「series(シリーズ)」を立ち上げます。ブランドを作るというのは初めての試み、その経緯について山次製紙所の山下さんにお話を聞かせてもらいました。
『浮き紙』は和紙を漉く過程で凹凸をつけています。これにより、自由な立体表現を創ることができるのだそう。
もともと、この『浮き紙』は高級店の壁紙として受注していたものだとか。「高級店となると、限られた人にしかこの紙を見てもらうことはできません。ほとんど多くの方は、和紙といったら無地の白い紙を思い浮かべるでしょう?でも、和紙にはさまざまな技法や可能性があるんですね。私たちは、もっと多くの人にこの技術を見てもらいたい、和紙のさまざまな可能性を知ってもらいたいと考えました。」
さらに、和紙の仕事が少なくなっているのも現実と山下さんは加えます。「和紙というのは基本的には誰かの手が加わらないと"商品"にはならない、"素材のひとつ"なんですね。和紙づくりの想いは、なかなか消費者の方に伝えることはできません。だからこそ、これからは自分たちの仕事を、新しいかたちで"魅せる"ようにしないとダメだと思い、このブランドを立ち上げました。」
こうして『series』の第一弾、茶筒がつくられました。
こうして『series』の第一弾、茶筒がつくられました。
series(シリーズ)のアイテムは、こちらのオンラインショップで購入することができます。
出典:www.instagram.com(@yamatsugi_seishisyo)
その美しさは雑誌の表紙を飾り、未来に伝えたいアイテム『100年の日用品』というテーマの中でも紹介されました。「こうやって紹介していただくのはもちろん、『RENEW』のようなイベントに参加して直接、消費者の方と話すことができるのも、ブランドがあってこそ。」
「見本市などでも、私たちがバイヤーやメディアの方に直接お話させてもらうことによって、その方々がまた何人ものひとに伝えてくれる。私たちの仕事は"紙を漉くこと"ですが、『series』を通して自分たちの言葉で我々の仕事や想いを伝え、越前和紙の伝統を守っていきたいですね。」
出典:www.instagram.com(@yamatsugi_seishisyo)
和紙の歴史、そして未来について素人相手にも熱く語ってくださる山下さん。今までの職人さんのイメージが大きく変わりました。和紙への想いは、ここではご紹介しきれません。
山次製紙所では、イベント期間中に工場の見学はもちろん越前和紙に伝わる技法「引っ掛け」の実演を見せてもらうことができるそう。ぜひ、越前和紙の魅力と、和紙づくりの想いを感じに足を運んでみてくださいね。
山次製紙所では、イベント期間中に工場の見学はもちろん越前和紙に伝わる技法「引っ掛け」の実演を見せてもらうことができるそう。ぜひ、越前和紙の魅力と、和紙づくりの想いを感じに足を運んでみてくださいね。
見学可能日:19~21日/8時~16時
所要時間:20分程度
所要時間:20分程度
プラスジャック株式会社|鯖江めがね
世界三大めがね産地でも"質の高い"めがねを作るとして名高い福井県・鯖江市。
プラスジャック株式会社では、めがね作りはもちろん、眼鏡のフレームにつかわれる素材「植物性樹脂セルロースアセテート」とその加工に、熱い想いをこめています。
プラスジャック株式会社では、めがね作りはもちろん、眼鏡のフレームにつかわれる素材「植物性樹脂セルロースアセテート」とその加工に、熱い想いをこめています。
出典:plusjack.com
「この素材は、綿花から出来ているんですね。通常のプラスチック製品は、材料を熱で溶かしたら、金型に流し込んで作るのが一般的。でも、アセテート材は板の状態から、刃物を使って削り出します。熱をかければ曲げることもできる。手間をかけながら作っていくものなんです。」こう語ってくれたのは代表の津田さん。そのアセテート材にある、人に触れたときの"温かみ"は、めがね以外の製品作りにつながってゆきます。
プラスジャック株式会社の製品で、今注目を集めるアクセサリーブランド《effe》(エッフェ)。実はこちら、"笛"のアクセサリー。とてもキレイで可愛らしく、ひと目では「笛」とわからないほどですが…「めがね」と「笛」、一体どうしてめがね作りの会社が、笛を作ることになったのでしょうか。
それは、意外にも鯖江市防災課からの相談がはじまり。県や市で、防災のための(普通の)笛を配布したところ、ほとんどの人はカバンに閉まいこんだそう。それではいざというときに使えません。
「めがねの素材はとてもきれいなので、アクセサリーのような笛は作れないでしょうか。」
鯖江市からの相談に、津田さんは必要性を深く理解しながらも、初めての試みで、かつ笛の音が鳴る仕組みなどもわからず何度かお断りしたそうです。
「めがねの素材はとてもきれいなので、アクセサリーのような笛は作れないでしょうか。」
鯖江市からの相談に、津田さんは必要性を深く理解しながらも、初めての試みで、かつ笛の音が鳴る仕組みなどもわからず何度かお断りしたそうです。
それでも防災課の方の想いは強く、津田さんは「作るからには、人の命を助けるものとして、ちゃんとした物を作ろう」と決心。そうして生まれたのが《effe》です。見た目はもちろん、人の耳に聞こえやすい"音"にも着目し、何度も何度も試作を重ねたそう。
今回のイベント『RENEW』は、ものづくりの現場を目の前で、見て聞くことのできる貴重な機会。津田さんに工場見学の見どころを伺いました。「アセテート材の加工は、ひとつひとつの工程に技術が必要になります。例えば、セルフレームをつくる工程は160工程以上、その工程に職人の想いが込められていることを知っていただきたいですね。」
(上写真は、お子さまや男性にも使いやすいアルファベットモチーフを笛のチャームにした「effe alphabet」。2018年10月3日に発表されたグッドデザイン賞を受賞しました!)
「眼鏡は人の体の一部になるもの、人の為になるものという思いと、より良いものを作ろうという精神が福井県鯖江の職人にはあります。それを感じて頂けたら嬉しいです。」
めがねはもちろん「effe」の笛も、人に寄り添い想いをこめてつくられた製品。会場に訪れることができない方も、ぜひ、公式サイトなどをチェックしてみてくださいね。
めがねはもちろん「effe」の笛も、人に寄り添い想いをこめてつくられた製品。会場に訪れることができない方も、ぜひ、公式サイトなどをチェックしてみてくださいね。
見学可能日:19~21日/8時30分~17時30分
所要時間:30分程度
所要時間:30分程度
ワークショップ
イベント期間中は、見学だけでなくワークショップを体験することのできる工房やショップもあります。
陶芸や手芸であれば、私たちの身近なところにもスクールや教室などがありますが、伝統工芸を学べる機会は多くありませんので、とても貴重な機会になりそう。
陶芸や手芸であれば、私たちの身近なところにもスクールや教室などがありますが、伝統工芸を学べる機会は多くありませんので、とても貴重な機会になりそう。
越前漆器のKORINDOでは「うるしのブローチづくり」、漆琳堂では「蒔絵スタンプワークショップ」など、越前で有名な「漆・漆器」を体験することができます。全部で42の工房やショップで、ワークショップが楽しめるので気になるものをチェックしてみてくださいね。
RENEWストア
鯖江の観光スポットにもなっている「うるしの里会館」では、この期間に限りの特設お土産ショップ「RENEWストア」が登場。出店者のプロダクトを中心に、さまざまな工芸品が集まっています。工場見学の帰りに、気になっているアイテムをまとめて見比べてみてはいかがでしょうか。
ローカルフード
そして、「おいしい食の文化」も福井の自慢。地元の人々に愛される味から、特産品を活かした新商品まで、総合案内所 うるしの里会館前『フード横丁』を中心に、それぞれのエリア(全21社)で思う存分に福井の味を楽しむことができますよ。
『フード横丁』では、福井名物・あべかわ餅を楽しめる「大吉餅」や、「山うにたこ焼き ほやっ停」などで伝統の薬味「山うに」を味わうことができますよ。伝統工芸と同じく、どれも福井には欠かせない伝統の味。ぜひ、立ち寄ってみてくださいね。
"ものづくり"の熱い想いを感じに…
工場見学やワークショップは、予約が必要な工房・企画もあるのでお目当ての工房やお店があれば、事前チェックをお忘れなく。普段は、なかなか目にすることのできない職人の技。伝統を受け継ぐ福井県の南丹エリアで、その熱い想いに触れてみてはいかがでしょうか。
まち/ひと/しごと Localism Expo Fukui
また、10月18日(木)~21日(日)の期間、「うるしの里会館」では『RENEW』の特別企画として「まち/ひと/しごと Localism Expo Fukui」が開催されます。県内はもちろん県外からも、合わせて21の団体が集まる博覧会。これからの地域のあり方、暮らしのあり方について考えることのできる貴重な機会になりそう。ぜひ、こちらも足を運んでみてくださいね。
「まち/ひと/しごと Localism Expo Fukui」の公式サイトはこちら