hoshi mitsuki(星 実樹)さんについて
「絵を描き、糸にのせてまた別の表情を生み出す」という独創的な発想で、普段見過ごしがちな日常の瞬間を切り取った刺繍作品たちを多く生み出しています。
- 寒さに負けない体を目指す!ゆらぎがちな冬のご自愛ケアキナリノ編集部
二子玉川『shed』での個展~「今日、丘の上で」のこと~
hoshi mitsukiさんはどのような刺繍作品を制作されているのでしょうか?今年2018年に世田谷 二子玉川の「Café Lisette(カフェ リゼッタ)」に隣接したスペース“ shed ”で開催された個展を少し、のぞいてみましょう。
ナチュラルな雰囲気のお花の刺繍が可愛い作品です。どことなくホッとするような素朴なチェーンステッチが美しいですね。
―と、お花や自然のモチーフはよくありそうなテーマですが、こちらはちょっと違います。人の身体の躍動感が曲線に表されている刺繍作品。ダンサーの足のようにしなやかで美しいラインに見惚れてしまいます。
このように体の一部を表現したものが多いのも、hoshi mitsukiさんの刺繍作品の特徴。可愛いだけではない、もっと生命的な何か、心のやわらかい部分に触れるような肌感覚に出会えます。
リングピロー「skin」の 制作背景について
~リングピロー「skin/生きている肌」~
大切な人の一番身近な「肌」をテーマに制作された、hoshi mitsukiさんのリングピロー「skin/生きている肌」。
感情や記憶、たくさんのことをお互いが共有してゆく中で、
目には見えなくても、その事が刻まれてゆくのは「肌」だと思う。
「skin」は、大切な人の一番身近な「肌」をテーマに制作したリングピローです。
一つ一つのステッチは刺繍とは思えないほど自由。まるで絵の具や色鉛筆で描かれた絵のように繊細で、記憶のなかに残ります。
図案の肌から本物の肌へ移ってゆくという意味合いも込めて。
そして最後は仕舞わずに絵として、記憶として、目に見える場所に残しておけるように。
生きている肌、大切な人の、今日もそこにある「肌」
1針1針、手刺繍で施される模様
薄く透けている生地に1針1針手刺繍で模様が施されており、表に出ている糸にリングを結びつけます。
最後は絵として、記憶として、目に見える場所に残せるリングピロー
リングピローとして使用した後は、大事な思い出が込められた絵として飾ることもできる、使い手のことを考えられた美しいデザイン。そんな星さんのリングピローはどのように制作されたのでしょうか?
結婚を控えた友人からのリクエストが制作のきっかけに
リングピロー「skin」の制作は、もともと結婚式を控えたhoshi mitsukiさんの友人からのリクエストがきっかけだったそうです。
既存のクッション型のリングピローは、式後はそのまましまっておくことが多いですよね。そうではなく、「ずっと使い続けながら手元に残せるものにしたい」という要望から、絵として残せるリングピローにしようという運びに。
そして理想のリングピローを形にする模索の日々が始まりました。枠や布など基盤となる仕様を友人と話し合い、そこにhoshi mitsukiさんが自由に図案を描いていきます。そこで「テーマ」として真っ先に思い浮かんだのが「肌」のことだったそうです。
hoshi mitsukiさんの言葉 「肌には、人の人生が刻まれている」
「肌には、人の人生が刻まれています。
目に見える皺やそばかす、ホクロや傷以外にも、
目には見えない細胞や熱、誰かと感覚を共有したときの記憶も刻まれているのではないかと思いました」
このような豊かな感性、そして独創的な発想から生み出されたhoshi mitsukiさんのリングピローは、どこで手に入れられるのでしょうか?
制作はオーダー制
制作はオーダー制。お会いできる方には直接お話を聞いて、図案のテーマに寄り添いながら、色味のカスタマイズをすることもあるそうです。
hoshi mitsuki(星 実樹)さんへの質問
【Q】作品づくりでこだわっているポイントを教えてください。
【A】誰かを想いながら作るものもあれば、頭の中に浮かんだ事象を自由に具現化するために作る場合もあったりします。どの作品に対しても、いつも自分に正直であることを大切にしています。
【Q】星さんの刺繍技法「チェーンステッチ」の魅力とは?
【A】紙の上とは違った表情を持つところです。
作品をつくる時はいつもスケッチなどでまずアイデアを形にします。それをわざわざ刺繍におこす理由は、ステッチの方向や厚みによって、鉛筆や色鉛筆とはまた違った表情や新しい流れが生まれるところが見たいから。単純だけれどとても魅力的な技法だと思います。
【A】それと、チェーンステッチはそのひとつひとつの輪っかの形によって表情がまったく変わるというか…
線を描く時も、色を塗るように面を埋める時も、ステッチが手と一体になる感覚なんです。
その時々の一番表現したいものが素直に生み出せる技法なのではないかと感じています。
【Q】チェーンステッチを安定させて、美しく仕上げるコツは?
【A】一定感覚で、リズムよく進める。引っ張りすぎず、緩めすぎず、布上にチェーンを置いていくような感覚で縫っています。
【Q】いつ頃から刺繍に興味を持ち始めましたか?始めたきっかけとは?
【A】専門学校時代です。元々学校でグラフィックの勉強をしていたので紙の上で描くイラストはよく描いていましたが、布の上に絵を表現する手法として「糸と針」を選んだ記憶があります。最初は授業の課題から始まって、ゼミのグループ展と刺繍作品を制作しました。
【A】赤と青の糸で縫った身体部分に表情を持たせたシリーズ「日常の表情」は卒業制作です。
この時は透けて見える裏糸が血管のようで、意図せずして、体の内部を象徴した作品に仕上がったような気がして面白かったです。
ほとんどチェーンステッチのみで作品を作っていたのですが、この制作は今につながる原点になったと思います。
【Q】影響を受けたアーティストや作家さんは?
【A】グラフィックデザイナーの山名文夫さん、野田 凪さん、マン・レイ、漫画家の高野文子さん、文筆家でもある高山なおみさんの文章や、松井啓子さんの詩集にも影響をうけました。
【Q】今後の出店予定のイベントはありますか?
【A】今後の出店はいまのところ未定ですが、個展や展示などを通して、これからも人の心に残る作品を生み出していきたいなと思っています。
最後に、キナリノ読者の皆さんに一言お願いします。
【A】これからどんな風に自身の作品が変化していくのか、自分でも分かりませんが、どこかで私の作品たちを見かけた折にはぜひじっくりゆっくり見ていただけたらうれしいです。
いかがでしたか?
何気ない日常から様々な感覚の世界へ誘ってくれるhoshi mitsukiさんの作品、いかがでしたか?実際に見てみたいという方、作品が欲しいと思われた方はぜひ、hoshi mitsukiさんのHPをチェックしてみてくださいね。
アートギャラリーやカフェなどで個展を開催されるなど、東京都内を中心にご活躍されている刺繍作家のhoshi mitsuki(星 実樹)さん。2012年より刺繍作品の制作を始められました。