写真:小豆島カメラ(牧浦さん)
写真:小豆島カメラ(三村さん)
小豆島にはこれからの生き方があるような気がした
バッチリッポーズを決めてくれた7人の小豆島カメラメンバー。左から坊野さん、三村さん、太田さん、黒島さん、牧浦さん、古川さん、大川さん
島の印象をこう話すMOTOKOさん。
MOTOKOさんと、名古屋から小豆島に移住し現在は現地の小豆島カメラ7人のメンバーである三村ひかりさん。小豆島カメラはこのふたりの出会いから動き出しました。
2012年の年明け頃、三村さんがまだ名古屋に住んでいた時にMOTOKOさんに送ったFBのリクエストでつながったふたり。「時々投稿を見ていて写真がうまいなと思っていた」というMOTOKOさんと「写真を通して社会的な活動をしているMOTOKOさんにすごく憧れていた」という三村さんの交流は、三村さんがその後すぐ小豆島へ移住したことをきっかけに、より親密なものになっていきました。
エンターテイメント、コマーシャル業界の第一線で活躍しながら、2008年頃から滋賀県の農家さんたちをアートやデザインの力を使って元気にする活動「田園ドリームプロジェクト」をスタートしたMOTOKOさん。この頃から芽生えていた「写真を撮ってお金を単純にいただくのではなく、本当に写真が役立つことをして社会に返していきたい」という気持ちは、自然と小豆島という土地への興味に変わっていきました。
その後、ある雑誌の取材で小豆島の巻頭特集を担当することになったMOTOKOさんは再び小豆島へ。撮影で訪れた小豆島女子遍路の現場で会った女性たちがカメラを首から提げていた様子から「地域×カメラ」の組み合わせを思いつきます。
M:「巷にカメラ女子はたくさんいるけど、ただおしゃれで持っているのとは違う、目的を持った意識の強い女性たちのように感じました。例えば私が2泊3日で取材にいくより、彼女たちが島の魅力を毎日発信するほうがより多くの人に伝わると思いました。それで、CMS(PHaT PHOTOの発行元)の方に『いま、カメラ女子が流行っているけれど、これからはローカルなカメラ女子が注目されると思うから何か一緒にやりませんか?』とお声掛けしました。そして、同じようにいくつかのカメラ会社さんにプレゼンした中でオリンパスさんが興味を持ってくれたんです」
オリンパス菅野さん(以下:M):「小豆島に初めて行くことになった時、MOTOKOさん、竹中さん、三村さんが迎えてくれました。朝一から最終フェリーまで滞在した時間の中で島のことがみんな好きでそれを写真で伝えたいという熱い思いが伝わってきました。何ができるのかその時には手探りのままスタートしましたが、SNSなどでよく見かける“俺の写真、カッコイイだろ!とアピールする写真”とはまた違う、カメラの原点に触れる何かができるんじゃないかと思ったんです」
こうして活動をはじめる基盤はできました。次は島に暮らし撮影を実際に行うメンバーを見つける番です。
菅野さんが初めて小豆島に訪れた時の写真 写真:小豆島カメラ
メンバーが決まるまでの間、MOTOKOさんは黒沢明監督の「七人の侍」を何度も観ながらイメージを膨らませていたのだそう。「映画のように、7人それぞれに役割がちゃんとあるんです」とMOTOKOさん。そうして、この年の12月、小豆島カメラは誕生しました。
左からPHaT PHOTOの竹中さん、オリンパスの菅野さん、写真家のMOTOKOさん。「MOTOKOさんは未来のイメージを描いてくれる人で、菅野さんは技術サポートとやりたいことを叶える力を持っている人。私は実働部隊として動くのがメインでオリンパスさんと一緒に企画を考えたり、写真を専門とした出版社として何ができるのかというのを考えています」と竹中さん
MOTOKOさんが瀬戸内国際芸術祭で撮影した「小豆島の顔の写真集」と雑誌PHaT PHOTO三村さん一家を特集した号
写真を撮っていったら、本当にまちが変わった
M:「小豆島カメラは『見たい・食べたい・会いたい』というのをコンセプトにしていますが、会いたい人がいるだけで、その旅行は単なる観光ではない特別なものになる。だからこそ何より『会いたい』を作らなければと思いました。そのためにも彼女たちの『暮らし』を見せてほしかった。その土地に住んでいるからこそ見える風景がある。それは私には撮れない写真、東京のプロカメラマンにはできないから」
写真:小豆島カメラ(黒島さん)
写真:小豆島カメラ(三村さん)
写真:小豆島カメラ(古川さん)
写真:小豆島カメラ(坊野さん)
M:「私たちの中で一番厳しい批評家だと思っている三村さんの旦那さんが『あいつらがいい写真を撮っていったら本当にまちが前よりも明るくなったし、まちの見えかたも変わった』って言ってくれたんです。写真を撮れば撮るほど、笑顔になって、人が集まって、どんどん地元が元気になる。みんなでやるってすごい。私はただカメラ女子を作りたかったわけではなくて、楽しくやっていくことで地域がどう変わっていくのかなっていうことを試してみたかったんです」
菅:「一番大切なのは、地元の人がどれだけやる気になるかということ。地域を盛り上げるという話になると東京から来て、打ち上げ花火を上げてそれだけ、というイメージで取られることが多いのですが、我々がいる時だけじゃなくて、いなくなっても盛り上がっていかなければ意味がないと思うんです」
小豆島カメラから始まった、まちの変化。島の中で繰り返される日々の営みの中で、今ゆっくりとその変化の芽は育っています。
M:「小豆島カメラは実際に撮影している7人の女性以外にも、町やメーカー、出版社など支えている人たちがたくさんいます。この『いろんな人たちでやっているよ』という在り方みたいなものがミラクルを起こしていると思うんです」
絶妙なバランスで集まった小豆島カメラの7人
お話を伺ったのは土庄町肥土山地区にある三村さんが営むカフェHOMEMAKERS。まず驚いたのはそこに集まったメンバーの仲の良さ。テーブルの上では常に笑い声が響いていました。
三村さん(以下:三):「さらに住んでいる地域もバラバラなんです。小豆島は島と言っても大きくて、集落によって雰囲気が全然違います。それぞれの場所で暮らしているから撮れるものがあるので、この7人はすごくバランスがいいなって思います」
海、山、文化、伝統、産業と多くの資源を持つ豊かな島、小豆島。偏った視点では島の魅力は伝えきれません。レンズを通し、何を見て、何を感じ、シャッターを押すのか。7人の間にある「違い」が小豆島カメラの写真に深みを与えているのです。
島の人と一時間くらい話して写真を撮らせてもらったり
写真:小豆島カメラ(太田さん)
写真:小豆島カメラ(牧浦さん)
太田さん(以下:太):「私はワイワイしていて、楽しそうになっているところを一歩下がって撮ってる。どっちかというと、自分のテンションが上がったときじゃないと、いいなと思うものが撮れない。だから自分も楽しい気持ちでいる時に撮るようにしています」
太田さんとは反対に古川さんだったら、人物よりも風景を撮る方が得意だし、大川さんは音楽ライブが好きだから自然とそういう写真が多くなる。大変なことがあっても、自分の「好き」と「得意」を活かしながら撮影した写真の数々には、それぞれの個性が宿っています。
写真:小豆島カメラ(古川さん)
写真:小豆島カメラ(大川さん)
同じ方向を見て活動する仲間がいることが嬉しい
7人が色違いで持っているカメラストラップは高松市を拠点に活動しているFURIKAKEさんのもの。小豆島カメラのロゴ、オリジナルのTシャツはMOTOKOさんの知人であるイラストレーターCHO-CHAN(チョーチャン)さんがデザイン
三:「たぶん一緒にやってなくても、どこかで知り合っていたと思うんですけど、活動をしていく中で仲良くなれた。私、30代になって移住して、こんな仲間ができるなんて思ってなかった。ただの友達じゃなくて、同じ方向を見て、活動をしているっていうのがまたいいなって」
黒島さん(以下:黒):「MOTOKOさんはいろんな地域や団体と関わっているけど、ここみたいに仲良しな集まりはないって言っていました。本当に雰囲気がいい」
カメラを持てばどこでも撮影モードになってしまいます
太:「絶対にひとりじゃできなかったことができる。7人いるから誰かが動けなくても他の人が助けることができる。チームで撮影するのもおもしろい!」
牧:「それが長く続いている秘訣かも。ひとりで背負わなくていい。負担を分担できるのがいいよね」
黒:「それに、がんばってもここまでが限界、というのを個人だと決めちゃうけど、小豆島カメラの場合は、MOTOKOさん、オリンパス、PHaT PHOTOがいて、私たちを動かしてくれるから、気が付いたら限界を乗り越えているんです」
坊野さん:「MOTOKOさんたちは島外から客観的に見て私たちのお尻を叩いてくれる存在です」
東京でサポートする人たちと、島で実際に動く人たちと。その両者がお互いに尊敬し合い、支えあえる関係を築けたこと、そして何よりこの7人が集ったことが小豆島カメラに起きた最初の奇跡なのかもしれません。
趣味の写真じゃなくて、メッセージを伝えたい
黒:「そもそも小豆島カメラは趣味の写真を撮る集まりではなくて、きちんと社会にメッセージがあって発信しています。私たちは『見たい・食べたい・会いたい』をベースに写真を撮っているので、写真を見てそんな風に思ってくれる人が広がっていったら嬉しいです」
三:「『なんか小豆島っておもしろそうだよね』って思ってもらえるような写真をこれからも撮り続けていきたいです」
小豆島という場所が誰かの特別な場所になる。そのきっかけは1枚の写真があれば充分なのかもしれません。1枚1枚、7人それぞれのメッセージが込められた小豆島カメラの写真であればなおさらです。これからも7人の笑顔から生まれる写真たちが、島と外をつなげていくことでしょう。
写真:小豆島カメラ(大川さん)