#インスタとわたし
【連載】#インスタとわたし
vol.2 –山本写真機店・山本陽介さん(@yamacameのカバー画像

#インスタとわたし
vol.2 –山本写真機店・山本陽介さん(@yamacame)

写真:yansuKIM  協力:Instagram

写真や動画を通じて世界中の人々とつながることのできる人気SNS「インスタグラム」。使い始めたことで新たな交流が生まれたり、暮らしが変化したりという人も少なくありません。この連載では、注目のインスタグラマーさんに、何を想いどんな発信しているのかお話を伺っていきます。今回は「#ヤマプリ」という独自のハッシュタグを生み出し、フィルム写真をじわじわ再熱させている山本写真機店(ヤマカメ)。インスタを通じて全国からプリントの依頼が殺到するまでの軌跡、そして「まちの写真屋さん」としての想いを伺ってきました。

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2017年07月14日作成

「#ヤマプリ」で投稿される、瑞々しくやさしい写真たち

何気ない日常のなかには、たくさんの美しい瞬間や、数年後には思い出に変わる尊い時間があふれています。
そんな一瞬を切り取って保存できるのが、写真。ここ数年は、手軽に撮れるデジタルに移り変わり、すっかり私たちの身近なものになりました。

写真・動画などのビジュアルに特化したSNS・インスタグラムには、それぞれの目線で切り取った日常の写真が投稿されています。
いま写真好きの間で話題のハッシュタグ「#ヤマプリ」をのぞいてみると、そこに並ぶのは、瑞々しく、透明感あふれる写真たち。穏やかな日々の風景を映し出した写真は「そうだ。世界はこんなにも美しく、やさしかった」と、忘れかけていたものを思い出させてくれるようです。
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#ヤマプリ • Instagram
どこか懐かしさを感じる写真たちはすべて、フィルムで撮影されたもの。山口県のとある写真店でプリントした人たちが、ハッシュタグをつけて投稿しています。

このハッシュタグとともに美しいプリントが広まり、ちいさな「まちの写真屋さん」には、今や全国のフィルムカメラ愛好家からプリントの注文が入るようになりました。あらためてフィルム写真の魅力に気づき、カメラをはじめる人も増えているといいます。
今回は、ちいさな町のちいさな写真店がインスタグラムを通じて巻き起こしたストーリーを追いました。

「まちの写真屋さん」山本写真機店(ヤマカメ)のインスタグラム

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どんどん写真を撮ることが手軽なものになっていく一方、気がつくと「まちの写真屋さん」や「フィルム写真」は、いつの間にか懐かしいものになりました。

そんな時代に写真屋さんを営む山本写真機店の店主・山本陽介さんのインスタグラムには、子どもの成長の記録、家族や友人の笑顔がいっぱい。見ているとこちらまで顔がほころんでくるような、あたたかい写真たちです。
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「記念写真っていいな」って
思ってもらえるような発信を
――山本さんのインスタはご家族の写真も多いですが、投稿する際に決めているテーマやルールはありますか?

僕は”作品”よりも”記録”が好きなので、「記念写真っていいな」と思ってもらえるものにしたいんです。「写真撮ってプリントして、アルバムに入れないと残らないよ」とか、フィルムカメラで育った僕ら世代だから撮れる写真、そして写真屋さんだから出せるメッセージを意識してます。
ただ、今の若い世代にはストレートに言ってもピンとこないと思うので、そこは今の時代にあった発信ができるように考えてます。「僕もやってみよう」って思ってもらえるように。
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――インスタグラムをはじめたきっかけは?

最初はフェイスブックでイベントの集客をしていて、それなりに上手く使えていたと思います。ただ、お客さんのトレンドがインスタに移ってきている気がして、2年前の正月からはじめました。


――はじめてみて良かったことはありますか?

僕らみたいな小売店にとってインターネットの世界って敵なんですよ(笑)それこそネットショップが出てきたころは、どうしてもこういう店は金額で対応できなくなったり……。
そんななか、アナログな店がはじめて持てた“デジタル”ってSNSじゃないかと。デジタルツールを商売につなげられるのが魅力だなって思うんです。みんながインターネットで情報収集する時代に、小売店が自ら発信していけるっていうのがいいですよね。
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――山本さんのフォロワーはすごい数ですが、増えたのはどんなことがきっかけでしたか?

うちのお客さんのひとり、写真家の濱田英明さんがきっかけです。僕がインスタ歴2ヶ月でフォロワーが150人くらいだったころ、濱田さんに「『いいね!』が100までいかなくて」って話をしたんです。そしたら、濱田さんがインスタに僕を撮った写真をアップして「He developed and scanned this photo for me. (この写真はヤマカメにプリントしてもらいました)」ってコメント入れてくれて。その日のうちに何百人か僕のインスタのフォロワーが増えたんですよ。
そこから半年くらい投稿写真に「developed and scanned by @yamacame.」って入れてくれて。それで、2,3千人くらいになりましたね(笑)
(濱田さんのインスタグラム投稿)

(濱田さんのインスタグラム投稿)

Hideaki Hamada(@hamadahideaki)
山本さんのフォロワー増のきっかけとなった、写真家・濱田英明さんのインスタグラム。
――フォロワーが増えたことで、投稿内容など気をつけるようになったことはありますか?

僕は自分のインスタのフォロワー数が、今でも疑問なんです。濱田さんの影響だったり、写真屋さんだからって理由だったり、自分の実力以外でフォロワーが増えているのは自覚していて。
だから投稿の内容も、例えばフィルムの知識みたいな写真屋さんじゃないと教えられないこと、写真屋さんだからこそ発信できることをやっていきたいなと。
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――独自のハッシュタグ「#ヤマプリ」は、すっかりフィルムカメラ愛好家の間で有名ですが、浸透していくまではどんな過程があったのですか?

最初はお客さんがインスタグラムに投稿する際、このハッシュタグをつけてくれて、そこから広まりました。特にカメラが上手な人が投稿してくれると「この写真を素敵にプリントしてるのは、この写真屋さんなんだ」となる。それが、どんどん広まった理由ですかね。
僕もがっかりされないように頑張りましたし、それが少しずつ実を結んで大きくなっていった感じです。みんなのおかげなんです。
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――インスタをはじめたことで、なにか変化はありましたか?

一番変わったのは、本当に忙しくなって。県外からフィルムプリントの注文が郵送で届くので、とにかく1日中フィルムをスキャンしてます(笑)
あとは、インスタグラムを通じての、人とのつながりは増えましたね。先日お店がリニューアルして5周年のパーティーがあったんですけど、そのときも京都や三重、大阪など県外からたくさんお客さんが来てくれました。
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ちいさな「まちの写真屋さん」が思うこと

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――リニューアル5周年を迎えましたが、歴史ある写真屋さんをリニューアルするときに考えたことなどはありますか?

去年でちょうど創業70年なんですけど、これからどうしたら、あと3,40年続けていけるかすごく考えて。でも結局、答えは昔の写真屋さんにあったんです。
写真屋さんじゃないと出せないプリントの美しさがあって、「写真屋さん」っていうのに誇りを持ってやっていた時代。それを現代風にもう一回アレンジしたらイケるかもと思ったんです。

あとは「まちの写真屋さん」っていうのを、すごく意識しました。人と人とのつながりですよね。今店内にいる子連れのお客さんたちも、まだ独身だったころにお店の写真教室でつながった友だちなんですよ。
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――写真屋さんとしてのこだわりは?

ちょっと前は青っぽい写真が流行ったり、ハイキー(明るめ)の写真だったり……写真にも流行りがありますが、うちがずっと思っているのは「10年後に見てもキレイな色」。時代性に沿うように仕上げてはいるけど、あくまでも標準プリントの域からはみ出ないような感じが好きです。


――なるほど。写真にも流行があるんですね!

今インスタとかでは、ちょっと後ろ向きで撮るようなニュアンス写真が流行ってるんですけど。僕個人の考えでは、あとあとアルバム見開いて「面白いやん」って思うのは、こっち向いて笑ってる写真だったりするから。そういう写真も撮って、アルバムを作ってほしいという想いが強いんです。
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「人生を記録しよう」
身近な人を撮る大切さ
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――記念写真が好き、そして主催の「おもしろ写真教室 cheeeese!!」のテーマも”人生を記録しよう”ですよね。その想いはどこから?

僕は昔から、友だちや奥さんを撮るのが好きで。でもカメラ好きの常連のおじいちゃん達からは「なんで友だちばっかり撮るんか」とダメ出しの嵐だったんですよ。僕が思う「写真」と「写真を趣味にすること」は、なにか違うのかなって悩んだ時期がありました。
でも、その常連さんの奥さんが亡くなったとき「遺影用に」って持ってきた写真が、集合写真だったんです。それが、ものすごいショックで。写真好きな人なのに、奥さんの写真がないっていうのが。それでやっぱり「身近な人を撮ろうよ」っていう想いをちゃんと伝えていこうと思ったんです。
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――山本写真機店は写真館でもありますよね。どんな人が、どういったタイミングで撮りに来られるんですか?

うちの写真教室の生徒さんだった人たちが、結婚して、子どもができて、お宮参りの写真撮らせてもらったり……そんな付き合いも続いています。うちに来る人は、節目節目の人生のイベント以外でも、普通に家族写真を撮ってもらいたいって人も多いですね。
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――これからの写真屋さん、そしてヤマカメについて聞かせてください

写真館は別として、フィルム写真とか写真屋さんって、たぶんもう僕の代でなくなっていくと思ってるんです。でも、みんな(今のお客さん)がうちのお客さんでいてくれて、おじいちゃんおばあちゃんになっていくまでは、この店やれるかなって。だから、プリントと写真教室と写真館、この3つは、ずっと続けていけたらいいですね。
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最後に――ズバリ、山本さんにとってインスタグラムとは?

写真屋としての願いを伝えるツール

“現在の山本写真機店を取り巻くさまざまな状況のきっかけであり、写真業界のみならず小売店が持つことのできる最高の情報発信ツールだと思っています。
「人生の記録として、写真を撮ってプリントしてアルバムに収めてほしい」
写真屋として唯一願うこのことを、これからも楽しく家族の写真とともに伝えていけたらうれしいです。”
「山本さんにとってのインスタグラム」を写真で表現していただいたのがこちらの一枚。

「山本さんにとってのインスタグラム」を写真で表現していただいたのがこちらの一枚。

取材でお話を伺っている間も、お客さんがやってきては和気あいあいと談笑し、店内に笑い声が響いていた山本写真機店。そこには、地域に馴染む「まちの写真屋さん」の姿がありました。


なんとなく過ごしているこの日々は、年月が経てば、思い出に変わります。
「あたりまえの日常」が、いつのまにか「懐かしいもの」になっていた。そう気付くのは何十年も経ってから。

だから、今。
大切な人との日々を写真に残そう。アルバムにしよう。
家族の記念写真がならぶ山本写真機店のインスタは、そんなメッセージで、今日もまた、カメラを手にしたいと思う人を増やし続けています。
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Yousuke Yamamoto (@yamacame)
山本写真機店(ヤマカメ)さんのインスタグラムはこちら。
(取材・文/西岡真実)

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