世界最古の薬局『サンタ・マリア・ノヴェッラ』
今回ご紹介する世界最古の薬局『サンタ・マリア・ノヴェッラ(Offtina Profumo Farmaceutica di Santa Maria Novella)』は、そんな中世の面影を色濃く残すフィレンツェにあります。
自然のハーブや草花を原料としたサンタ・マリア・ノヴェッラの製品は、フィレンツェの繁栄を築いたメディチ家をはじめ、多くのヨーロッパ貴族からも愛されてきました。
400年以上にも及ぶ長い歴史の中で、現在も創業当時の伝統的なレシピを守り、上質で美しい“香りのプロダクト”を提案し続けています。
今回はフィレンツェを代表する老舗ブランド『サンタ・マリア・ノヴェッラ』の歴史とともに、世界中の人々を魅了する素敵なアイテムをご紹介します。
『サンタ・マリア・ノヴェッラ』創業400年の歴史
修道院から生まれた“香りのプロダクト”
歴史あるフィレンツェの街の一角に、静かに佇む『サンタ・マリア・ノヴェッラ薬局』。その起源は古く、13世紀にフィレンツェに移住してきたドミニコ修道会の僧たちが、自ら育てた薬草を使い、人々を癒すための薬剤や鎮痛剤を調合したことが始まりと言われています。
世界最古の薬局として知られるサンタ・マリア・ノヴェッラの歴史は、1216年に創設されたドミニコ修道院と共にあるといっても過言ではありません。清貧と学究で知られるドミニコ修道会は、また聖ベネディクトの教えの通り、救済も大きな教義のひとつとして掲げています。事実ドミニコ修道院の内部には看病のための専用の部屋がもうけられ、庭園にはハーブが栽培されるのが常でした。
世界中の女性を魅了する“王妃の水”
16世紀にメディチ家の娘であるカテリーナ・ディ・メディチが、フランスのアンリ2世に嫁ぐ際に調合された「アックア・デッラ・レジーナ(王妃の水)」は、現在のオーデコロンの原点と言われる歴史的名香です。現在は「サンタ・マリア・ノヴェッラ(Santa Maria Novella)」に名前を変え、時代を超えて今もなお世界中の女性を魅了し続けています。
ちなみにオーデコロンという名称は、旅商人のジョヴァンニオ・パオロ・フェメニスが、旅の途中に立ち寄ったサンタ・マリア・ノヴェッラ教会で修道尼より手に入れたといわれる「王妃の水」のレシピとともに、1725年にコローニア(ケルン)市に居を構えて生産を始め、この地名から「アックア・ディ・コローニア(イタリア語/Aqua di colonia)」(仏語オーデコロン/Eau de Cologne )と名付けたのが由来とされています。
さらにこのオーデコロン「王妃の水」は、フェメニスの後継者であるジャン・マリア・ファリーナにその秘伝のレシピがわたり製造が続けられ、「7年戦争」の間ケルンに宿営していたフランス軍が、その後母国でこの香りを広めることになりました。
サンタ・マリア・ノヴェッラの香りは、当時フランスで使用されていた香水よりも繊細で軽やかだったためセンセーションを引き起こしたといわれています。
18世紀にはヨーロッパのみならずインドや中国にも輸出され、サンタ・マリア・ノヴェッラの製品は世界中へと広がっていきました。現在は香水や石鹸、スキンケア商品など、何百種類にも及ぶ数多くのアイテムを手掛けています。自然の薬草の香りと効能を最大限に引き出したサンタ・マリア・ノヴェッラの製品は、“癒しの芸術品”とも称され、世界中のセレブリティからも支持されています。
時代を超えて受け継がれる“秘伝のレシピ”
13世紀にフィレンツェの修道院から生まれた、サンタ・マリア・ノヴェッラの様々なプロダクト。800年の時を経た現在でも、修道士たちが作り上げてきた手法を受け継ぎ、当時のレシピに基づいて生産されています。こちらの写真は、フィレンツェ本店内のミュージアムにあるレシピブックです。手書きで記されたひとつひとつの文字から、サンタ・マリア・ノヴェッラの歴史の重みが伝わってきます。
サンタ・マリア・ノヴェッラの製品は本店から3㎞ほど離れた工場で、自然に育てられたハーブや草花を原料に用いて生産されています。こちらの写真のハーブガーデンや工場、本店内にあるミュージアムは予約制で見学も可能です。工場内では最先端の設備を導入していますが、タボレッタなど一部の製品は、現在でもひとつひとつ手作業で製造を行っています。
かつてメディチ家やヨーロッパの王侯貴族からも愛されてきた数々の“癒しの芸術品”は、時代を経てもなお輝きを放ち、世界中の人々を魅了し続けています。
ここからは、創業当時のレシピに基づいて作り出されるオーデコロンや石鹸、ボディケア商品など、『サンタ・マリア・ノヴェッラ』を代表する素敵なアイテムをご紹介します。
日常を優雅に彩る『サンタ・マリア・ノヴェッラ』の癒しの芸術品
オーデコロン
“香りの芸術”と称され、世界中のセレブリティからも愛されるサンタ・マリア・ノヴェッラの「オーデコロン」。先ほどご紹介した“王妃の水(サンタ・マリア・ノヴェッラ)”をはじめ、約40種類以上ものフレグランスを取り揃えています。ローザやポプリなど天然香料をベースとした上品な香りが、毎日の暮らしを優雅に彩ります。
1533年に誕生した“王妃の水”は、ベルガモットを主としたシトラスの爽やかな香りが特徴です。16世紀にカテリーナ王妃によってフランスに持ち込まれた際には、ブルボン王朝の貴婦人たちの間で大流行したそうです。ブランドを代表する歴史的名香は、時代を超えて今もなお世界中の女性を魅了し続けています。
ハーブウォーター
ドミニコ修道会の“癒しの思想”を現代に伝える「ハーブウォーター」も、サンタ・マリア・ノヴェッラを代表する人気アイテムのひとつです。リネンウォーターや軽いフレグランス、ボディの保湿といった様々な使い方で、心と体をリフレッシュしてくれます。シンプルで洗練されたボトルは、お部屋に置いておくだけでも絵になる美しさです。
こちらは現存する最古のレシピで作られている「ローズウォーター」です。1381年には既に発売されており、ペストがヨーロッパで流行した際には家の殺菌にも使われました。また、当時はワインを薄めたり、薬を飲む際の水代わりにも使用されていたそうです。上品な香りと爽やかな使用感が特徴のローズウォーターは、現在も世界中のファンから愛され続けているロングセラー商品です。
ポプリ
17世紀の半ば頃に誕生した「ポプリ」は、独特のスパイシーで上品な香りが特徴です。現在でもフィレンツェ近郊の丘に生育する草花や木の実、葉や花びらなどをブレンドし、独自の製法でじっくりと熟成させて作られています。
ブランドロゴの刺繍を施したポプリ入りのシルクサシェは、クローゼットやトランクにも使用でき、大切な方への贈り物にもぜひおすすめです。
こちらはハードワックス製の「タボレッタ」。香りをつけたロウを型に流し込んでハーブやスパイスで装飾し、ひとつひとつ手作業で丁寧に仕上げて作られています。クローゼットの中に吊るしたり、お部屋に飾ったりと、暮らしの中の様々なシーンで楽しむことができますよ。
スペシャルソープ
昔ながらの製法で丁寧に作られている「スペシャルソープ」は、ふんわりと広がる上品な香りと、優しい使い心地が特徴です。
フローラル系の香りを楽しめるフレグランスソープや、植物性オイルをベースにしたメンズソープ、保湿クリームが配合されたヴェルティーナソープなど。原材料と製法にこだわった上質な石鹸がラインナップされています。
ボディトリートメント
伝統的なレシピに基づいて作られる「ボディトリートメント」も、サンタ・マリア・ノヴェッラの人気アイテムのひとつです。ボディパウダーやボディオイル、ボディクリームなど、上質な使い心地を実感できる魅力的なアイテムを豊富に取り揃えています。植物成分が配合されたこちらの「ボディミルク」は、なめらかなテクスチャーのクリームミルクがしっとりとした瑞々しいお肌へと導いてくれますよ。
オーデコロンとのコーディネートも楽しめる「タルボリーナ」は、上質な原料を使用して作られた最高品質のボディパウダーです。キメ細かいパウダーがお肌をなめらかに整えて、上品な香りが全身を優しく包み込んでくれます。フィレンツェの伝統的な花柄がデザインされたパッケージは、インテリアとしてお部屋に飾っておくだけでも素敵ですよ。ザクロやガーデニア、アイリスなど5種類のフレグランスの中から、ぜひお気に入りの香りを選んでみてはいかがでしょうか。
タブレット&リキュール
1614年に初代薬局長のアンジョロ・マルキッシによってレシピが考案された、お口のリフレッシュ用タブレット「パスティッケ」。サンタ・マリア・ノヴェッラの代表的なアイテムとして、長年愛され続けているロングセラー商品です。ペパーミントやサンタマリア草など、代表的なハーブのエッセンシャルオイルを用いて作られています。コンパクトな丸い缶に入っているので、お出かけや旅行の携帯にも便利ですよ。
昔ながらの伝統的なレシピで作られている「リキュール」も、サンタ・マリア・ノヴェッラの歴史に欠かせない重要なアイテムです。歴代の薬局長が記したレシピを今も大切に受け継ぎ、健康に良いとされているハーブや草花を原料に使用しています。伝統的な製法で作り出される貴重なリキュールは、身体のケアやお休み前のナイトキャップにもおすすめです。
男性におすすめの“香りのギフト”
約40種類のフレグランスがラインナップされているオーデコロンは、男女兼用で使用できるものが多く、こちらの「Eva(エヴァ)」と名付けられた香水もそのひとつです。“グレン・チェックのように、男性も女性もユニセックスに身につけられる”―2002年のピッティ・ウオモ(Pitti Uomo=フィレンツェで開催されるメンズファッションのイベント)で、「Eva」はこのように発表されました。カラブリア・ベルガモットとシチリアレモンをアクセントにした、清々しく爽やかな香りが特徴です。シンプルで美しいパッケージのオーデコロンは、男性へのギフトにもぜひおすすめですよ。
こちらのアイテムはシトラスが爽やかに香るノンアルコールエマルジョン(左)と、ラベンダーやザクロなど7種類の香りをブレンドしたアフターシェーブローション(右)。男性の身だしなみに欠かせない「メンズグルーミング」のプロダクトも、古くからヨーロッパの王侯貴族をはじめ、世界中のセレブリティに愛⽤されてきました。気品漂う香りと美しいデザインのボトルが、何気ない日常を優雅に演出してくれます。
特別な贈り物には、ぜひ「ギフトボックス」を。
こちらは創業当時のサンタ・マリア・ノヴェッラ教会の版画がプリントされた「ギフトボックス」。クラシカルな装飾を施した美しいデザインが、“世界最古の薬局”と言われるサンタ・マリア・ノヴェッラの長い歴史を感じさせます。アイテムに合わせて自由にコーディネートできるので、大切な方への贈り物にぜひおすすめです。
本店の魅力を伝える『サンタ・マリア・ノヴェッラ銀座』
1612年にフィレンツェで誕生して以来、およそ400年以上もの歴史を誇る『サンタ・マリア・ノヴェッラ薬局』。現在ではフィレンツェ本店をはじめ、世界各国で製品を販売しています。こちらは国内旗艦店として、2014年5月にリニューアルオープンした「サンタ・マリア・ノヴェッラ銀座」です。オーデコロンを筆頭に、スペシャルソープやボディケア用品など、ブランドを代表するアイテムをフルラインナップで展開しています。銀座を訪れた際には、ぜひお店に足を運んでみてはいかがでしょうか。
「香りの芸術」で毎日の暮らしをより美しく、豊かに。
オーデコロンの原点と言われる「王妃の水」をはじめ、石鹸やボディケア用品、ハーブウォーターなど。
ルネサンス時代の“香りの文化”を現在に伝える一つ一つの製品は、約800年の時を経た今でも、修道士が作り上げた当時のレシピに基づいて製造されています。
メディチ家やヨーロッパの貴族、名だたる名士たちからも愛用されてきた『サンタ・マリア・ノヴェッラ』のプロダクト。
何気ない日常を優雅に彩る数々の“香りの芸術品”は、日々の暮らしをより美しく、豊かに演出してくれます。
ルネサンスを象徴する壮麗な大聖堂、オレンジ色の屋根が続く古い街並み、アルノ川にかかるポンテ・ヴェッキオ…。
今もなお中世以来の美しい景観を守り続け、“花の都”と称されるイタリアの古都「フィレンツェ」。
街の中心部は「フィレンツェ歴史地区」としてユネスコの世界遺産に登録され、世界中から多くの観光客が訪れます。
かつて商業や金融業の中心地として栄えたフィレンツェには、レオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ、ボッティチェリなど偉大な芸術家たちが集まり、中世にはルネサンス文化の中心地としても発展しました。