ゴルド
ゴルドの中心部となっている丘の頂の広場は、大勢の可能客で賑わっています。その一方で、一歩村の路地に入り込むと広場の賑わいが嘘のようにしんと静まり返っています。石畳が敷かれた細い路地には、石造りの古い家々が軒を連ねています。ここを散策していると、村が築かれた11世紀頃に迷い込んだかのような錯覚を感じます。
古き良き時代の風情を残す入り組んだ急勾配の坂道は、まるで迷路のようです。石畳の小路を上り、下り、曲がり……と繰り返していると、地図を見ていても自分が居る場所が分からなくなるような不思議な感覚を覚えます。
村の頂上に向かうときは、時折後ろを振り返ってみましょう。抜けるるような青空、崖にへばりつくように建てられた石造りの古い家々、豊かな緑が広がるプロヴァンス地方の田園風景が融和した景色は絶景そのものです。
石畳が敷かれた細い路地を登りきると、ゴルドの頂に到着します。ここは古城がそびえ立ち、村の中心となっており、多くの観光客で賑わっています。
セナンク修道院
セナンク修道院は、ゴルドから約4キロメートル離れた深い谷に佇むカトリック系の修道院です。1148年に創建されたセナンク修道院では、修道士たちが祈りと労働だけを行うという禁欲的な生活を送っています。
セナンク修道院の前は一面のラベンダー畑となっています。四季を通じて美しい姿を見せてくれるセナンク修道院ですが、ラベンダーが開花する6月から7月上旬にかけての美しさは格別です。重厚感あふれる石造りの修道院、大地に敷かれたラベンダーの絨毯、深い谷に生い茂る緑の樹々が織りなす風景はまるで一枚の絵画のようです。
アーチ状の柱で支えられた回廊に囲まれた中庭も質素な佇まいをしています。しかし、壮麗な装飾が施されていないセナンク修道院からは、建物そのものの美しさが訪れる人々を魅了し、中世から悠久の時を経て守り続けられている修道士たちの厳しい生活を今に伝えています。
ボリーの村
ゴルドから少し郊外へ行くと「ボリー」と呼ばれる石造りの建物を見かけることができます。コンクリート、モルタル、漆喰といったつなぎを一切使わずに石だけを積み上げて造られたボリーの歴史は古く、新石器時代から伝わる独特の建築方法で造られています。
家々や村を取り囲む石垣は驚くほど緻密に積み上げられています。プロヴァンス地方で吹く地方風、ミストラルが吹き荒れても、豪雨にあっても崩れないよう、丁寧に積みあげられた石垣からは、新石器時代の建築技術の高さを今に物語っています。
ボリーの村では、内部に入ることができます。せっかくなのでボリーの中に入ってみましょう。内部からも骨組みや支柱は無く、外から見た構造と全く同じです。壁、天井、扉の枠……、ボリーを造る建築材料はすべてこの地方で採取された石のみです。
村の中には、大小様々なボリーがあります。大きなボリーは人が居住していたもの、家畜小屋として使われてきたボリー、ワイン倉庫となっていた小さめのボリー、穀物の備蓄倉庫として使われていたボリーなどを見ながら、かつてこの地で暮らしていた人々の生活がどのようなものであったのか、想いを馳せてみてはいかがでしょうか。
ルシヨン
ルシヨンは、ゴルドから約12キロメートル離れた小高い丘の上に築かれた可愛らしいピンク色をした村です。この村の家はすべて、黄色塗料の原材料となる黄土、オークル造られています。
ルシヨンを訪れたら村はずれまで足を延ばしてみましょう。そこにはオークルの採取場跡があります。大きく削られた崖は、黄色、オレンジ色、ピンク色が入り混じったグラデーションとなっており、周囲の緑の樹々が色鮮やかな崖の美しさを引き立てています。
ルシヨンの魅力は可愛らしい家々、オークルの採取跡だけではありません。ここは、陽射しや天気、時間帯によって少しずつ村の色が変わっていきます。時間に余裕があれば同じ場所から時間帯を変えて村を遠望してみたり、場所を変えて村の全景を見比べてみるのも楽しいですよ。
小高く盛り上がった丘の頂にそびえ立つ古城を中心として、丘全体が村となっているゴルドはプロヴァンス地方のあちらこちらに点在する美しい村の中でも屈指の人気を誇ります。丘の上の古城を頂点として、崖にへばりつくように石造りの家々が急勾配の坂道に裾野状に広がっています。遠望で眺めるゴルドは、まるで堅固な城塞都市のようです。