読む人の感性を育てる、文字のない絵本
文字のない絵本の楽しみ方
子供の読み聞かせに使うなら、一緒にお話を作るのがおすすめです。大人よりもずっと頭の柔らかい子供たち、とんでもなく楽しいお話を聞かせてくれるでしょう。「何をしているのかな?」「どこに行くのかな?」と一緒に想像して、楽しい時間を過ごしてくださいね。
さあ、想像力を働かせて…「文字のない絵本」7選
ストーリー性のある「絵探し絵本」|ぼくのねこはどこ?
ヘンリー・コール/岩崎書店
街の中へ出て行ってしまった飼い猫を、男の子が探すお話です。街の風景は白と黒、そして空の淡い青。限られた色彩で描かれた絵がとても印象的。街の様子は細部まで描きこまれ、見るたびに新しい発見がありそうです。
大切な猫を一生懸命さがす男の子をよそに、街中の冒険を楽しむ猫。2人のギャップにはクスッと笑ってしまいます。さて、男の子は無事に猫と出会えるでしょうか? どこに男の子と猫がいるのか、見つけ出すのも楽しい絵本です。
初めての絵本にもおすすめ|じのないえほん
ディック・ブルーナ/福音館書店
ウサギのミッフィーの作者、ディック・ブルーナによる「じのないえほん」。ブルーナらしい、あたたかみのある手描きのラインや色使いがかわいい絵本です。
男の子が朝起きて、歯みがきをして積み木で遊んで…そんなシーンの絵を見ながら、お話を仕立てて楽しむ絵本。赤ちゃんが好むはっきりした色彩で、0歳児から楽しめます。出産やお誕生日のお祝いにもおすすめです。
文字のない絵本の代表作│アンジュール ある犬の物語
ガブリエル・バーン/ブックローン出版
「アンジュール」は、文字のない絵本の代表作ともいえる作品。車の窓から投げ捨てられた犬のさすらう姿を、太い鉛筆を使ったデッサンで描いています。その絵はシンプルなのに圧倒的。荒々しいようでいて繊細。犬の動きや表情から、驚きや焦り、悲しみや孤独感が痛いほど伝わります。
鉛筆1本で描いているのに、犬の走るスピード感までが感じとれるのが驚き。“文字がないのに”ではなく、“文字がないからこそ”言葉を話さない犬の感情をここまで読み取れるのかもしれません。
悲しいストーリーですが、最後には少し希望が見えて、何度も読み直したくなる絵本です。
あたたかい手描きのトリックアート|ふしぎなえ
安野光雅/福音館書店
「ふしぎなえ」は、海外でも人気の絵本作家、安野光雅さんのデビュー作。いわゆる「トリックアート」の絵本ですが、手描きの絵のあたたかさが魅力です。細かく計算されたトリックアートを描きながら、ユーモアあふれる仕掛けもあちこちに。
安野さんは、1人でも多くの子供にふしぎな世界を感じてもらいたいと、この本の制作にあたったそう。子供だけでなく大人までもが、ふしぎな世界にハマってしまうでしょう。出版は40年以上前なのに、色褪せない楽しい絵本です。
やさしい絵で伝える深いメッセージ|なぜ あらそうの?
ニコライ・ポポフ/BL出版
1本の美しい花をもった1匹のカエル。そこへネズミがやってきて花を奪い取りました。2匹のカエルが花を奪い返しにやってきて……参加者が増えるにつれ、どんどん状況は悪くなります。
兄弟ゲンカや友だちとのイザコザも、原因はこんなことかもしれません。もしかすると戦争だって、はじまりはこんなに些細かも? 大人の私たちも考えさせられる深い絵本。文字が書かれてないからこそ、静かに胸に染みこみます。
海外旅行へ行ったつもりになれる|旅の絵本
安野光雅/福音館書店
旅の絵本シリーズはほかに9冊あり、イタリア編やスペイン編、日本編も出版されています。じっくり読んでいると、それぞれの国を旅をしている気分に。海外旅行に行きにくい今、おすすめの絵本です。
まるでセピア色の映画のよう|アライバル
ショーン・タン/河出書房新社
幼い娘との別れのシーン、ぼんやりデッキにたたずむシーン。コマ撮りの写真のように並ぶ緻密な絵が静かにストーリーを紡ぎます。読み終わると、まるで良質な映画を見終わったような気分。少し苦みを感じる大人の絵本です。
文字のない絵本の魅力のひとつは、絵のすばらしさです。登場する人物や動物の感情、そして物語の流れを、1文字も使わずに読者に伝えるその画力。1ページ1ページがアート級の絵といえるのではないでしょうか。
その絵を堪能するためにおすすめなのは、あえて物語を想像しない楽しみ方。ときには画集をながめるように、ゆっくりページをめくってみませんか?