■『モヤモヤそうだんクリニック』池谷裕二／ヨシタケシンスケ（NHK出版）

脳研究者・池谷裕二と絵本作家・ヨシタケシンスケが、256名の子どもから寄せられた疑問・質問に科学とユーモアで答えます！“遊んでいる時間はとても短く感じるのに、勉強の時間はとても長く感じます”、“やってきたことが身につくまでの時間ってどのくらいですか？”。分かる、分かるよ、その気持ち！子どものストレートな質問に、先生達が丁寧に分かりやすく、イラストを交えて答えます。子どもと読むのはもちろん、大人が読んでもスーッと視界が晴れて気持ちが落ち着く1冊です。

■『科学的に元気になる方法集めました』堀田秀吾（文響社）

まず表紙をめくって最初に目に入る、見返しの1文を紹介します。「本書で紹介する習慣は 世界中の研究を エビデンスにしています」。そう、この本に書いてあることは、すべて科学的に根拠アリと証明されたことなのです。なんて心強いんでしょう！しかも、誰でも、どんな環境でも実戦できることを重視して選ばれた方法ばかり。作者も実際に実践して効果を実感しているという38個の方法が、科学の視点を交えつつ分かりやすく解説されています。心を乱されるしくみと対処方法がセットで説明されており、素直にやってみようと思えるテキストです。

■『大人のための「困った感情」のトリセツ』水島広子（PHP研究所）

取説形式がとにかく素晴らしい！書き方のおかげで、持て余していた感情も、一歩引いた目線で客観的に見られる気がします。気持ちが揺れるのは仕方がないことと受け入れた上で、ではこんなときはどう対処すればよいのか？が具体的に説明されています。感情的になることに罪悪感を感じるのではなく、生まれた感情をどう扱うかが大切なんですね！こういうこと、学校で教えて欲しかったなぁ。

■『ぐるぐる考えてしまう心のクセのなおし方』清水栄司（大和書房）

自分の考え方のクセについて、考えてみたことがありますか？考え方にクセがあるなんて、そんな発想自体がなかったという人が多いのではないでしょうか。この本は、ネガティブになってしまう原因である「３つの考え方のクセ」について解説し、具体的にどう改善していけば生きやすくなるのかを教えてくれます。漠然とした不安を抱きやすい人、必要以上に周りの目が気になってしまう人におすすめです。

■『丁寧な暮らしをする餓鬼』塵芥居士（KADOKAWA)

骨張った手足、ぽっこり出たお腹、とがった牙……。常に飢えと乾きに苦しみ、決して満たされることのない者の象徴である「餓鬼」ですが、この本の主人公“ガッキー”は一味も二味も違います。ちまちまとビニール袋を三角に折り並べるガッキー。台風に備え庭を整えるガッキー。好物はデニッシュのガッキー（餓鬼は食物を摂ると火になって消えてしまうのでは？！）。無表情に淡々と丁寧な暮らしをする姿がなんともシュール！ガッキーも丁寧な暮らしも、なんだかちょっと滑稽で、そして可愛く見えて来るから不思議です。日々の暮らしに頑張りすぎて疲れた時、ぶしゅっと心のガスを抜いてくれる脱力の1冊です。

■『間違う力』高野秀行（KADOKAWA)

探検家であり作家である高野秀行の、「とにかくやってみた」爆笑半生記です。インスピレーションに従って一か八かの選択をするも、ばっちり選択を間違えて不法入国で捕まったり。得体の知れない食物を食べ、案の定強烈な腹痛に襲われたり。三途の川を渡りかけたりしながらも、並外れた精神力と行動力で失敗をも肯定し次に進んでいく作者の姿はとにかくエネルギッシュ。破天荒で、それでいて本人はいたって真剣なところが面白い！呆れて、笑って、元気が出る1冊です。誰の人生にも、絶対的な“間違い”なんて存在しないのかも。

■『どうやらオレたち、いずれ死ぬっつーじゃないですか』みうらじゅん／リリー・フランキー（扶桑社）

力の抜けた大人な二人の対談集です。語り口はソフトで軽妙、ふざけていてもうるさくない絶妙の塩梅で、まるで心地良いBGMを聞いているかのよう。それでいて、落ち着いた流れを壊さずにふいに現れる人間論にはハッとさせられます。不安や嫉妬、やりがい、親子関係、生きていれば無縁ではいられないしがらみに、向き合うのではなく寄り添う生き方を教えてもらえた気がします。肩に力が入っているなと思ったら、取り出して何度も開きたくなる本です。

■『たまには、やすんだら？ナマケモノさんが教えてくれる世界一かわいいマインドフルネス』TonMak 著、押切もえ 監・訳（飛鳥新社）

マインドフルネスを知っていますか？過去や未来のことを考えて不安になったりネガティブになったりする状態から抜け出し、“今”に心を向けた状態を「マインドフルネス」と呼びます。本書は、かわいいナマケモノさんの物語を読むだけで自然とマインドフルネスの基本理念に触れられる入門書となっています。とはいえ、さあやるぞ！と気負う必要はありません。絵本のように気軽に開いてみてください。不思議でかわいいナマケモノさんがあなたを癒してくれますよ。

■『スーツケースの半分は』近藤史恵（祥伝社）

フリーマケットで手に入れた青い革のスーツケース。日々の暮らしに漠然とした不安を覚えていた真美は、きれいなスーツケースに背中を押されるように一人旅に出かけます。憧れていたけれどこれまで踏み切れなかった行動でした。この旅行をきっかけに真美の心境は明るく変化し、青いスーツケースは“幸運のスーツケース”と呼ばれるようになりました。やがてスーツケースは友人達の手から手へとリレーされ、行く先々で持ち主に幸運を運んできます。それぞれみんな旅に出るには理由があり、旅を通して自分と向き合い、新しい未来へと帰ってくる。自分の力で前に進もうとする姿に、胸がじんわり熱くなります。そして、最後に明かされる青いスーツケース自身の物語とは……！静かな感動が涙を誘います。

■『青い鳥』重松清（新潮社）

悩みを抱える中高生と、よりそう吃音の国語教師の交流を描く連作短編集です。村内先生には吃音があり、雄弁に語る先生ではありません。しかしだからこそ、生徒をしっかり見て、良く考え、大切なことだけを話します。中高生が苦しむ姿が細やかに描かれる場面ではこちらまで息苦しくなるほどですが、悩む彼らのそばに村内先生が居て良かった！心からそう思い、安堵の涙が流れます。大人になっても、悩む時心細い時、近くにこんな人が居てくれたらどんなに心強いことでしょう。心の中に村内先生の気配を感じるだけで、明日から少し生きやすくなる気がします。

■『ペンギン鉄道　なくしもの係』名取佐和子（幻冬舎）

電車での忘れ物を保管する遺失物保管所、通称「なくしもの係」。そこにいるのはイケメン駅員と、なぜかペンギン。なくしもの係には、老若男女様々な人が訪れます。共通しているのは、みんな“大切な物を探している”こと。不安を抱えた人々に、優しい駅員と可愛いペンギンが丁寧に対応します！癒しキャラの駅員さんとかわいいペンギンのコンビ、それだけでもほっこりするのに、更に落とし物に込められた人々の想いに涙がポロリ。読み終わる頃には、人間っていいな、人生捨てたもんじゃないな、と暖かい気持ちになれる1冊です。癒し系の表紙に偽りなしですよ！

■『大事なことほど小声でささやく』森沢明夫（幻冬舎）

疲れている時、気持ちが沈みがちな時に開きたくなる短編集です。夜な夜なスポーツジム仲間が集まるスナックの名物ママはマッチョなオカマのゴンママ。いつも愉快な仲間達ですが、みなそれぞれに不安や悩みを抱えています。一人一人の悩みに親身になって向き合うゴンママのアドバイスは、的確で、優しくて、包容力たっぷり。こちらも読みながら一緒にハラハラしたり、涙が出たり。なによりこの本が素敵だなと思うのは、ゴンママ自身も不安に揺れ動く気持ちを持っている所です。それにしても、悩める人生がテーマのわりにカラッとしているのは、やはり“筋トレ仲間”という設定が効いていますね。お見事！みんな色々あるけれど、笑い合い穏やかに今日も夜が更けていきます。

■『1週間に1つずつ　心がバテない食薬習慣』大久保愛（ディスカヴァー・トゥエンティワン）

この本のブレないスタンスは、「心がバテるのはほとんどが栄養と季節の影響、あなたの人間性のせいではない」というものです。心が疲れている時は、ネガティブな気持ちそのものに罪悪感を覚えがち。しかしこの本は、イライラするのもモヤモヤするのもあなたのせいじゃない！とハッキリ言ってくれるので、弱っている時でも安心してページを開くことができます。月ごとに気候の特徴、出やすい不調、対処法がまとめられているので、まずは疲れを感じたらその日のページを読んでみて。1週間ごとに食べると効く食材が載っていて、自主的に何かする気力がない時にも始めやすい親切設計です。

■『1日1つで今より良くなる　ゆる薬膳。365日』池田陽子（ジェイティビィパブリッシング）

体調は良くしたいけれど、ストイックに生活改善する気力はない……。そんな人におすすめの1冊です。スーパーなどで手に入る食材で簡単に取り組める「ゆる薬膳」を、1日1コラムで紹介してくれます。ちょっと調子が悪いなと思ったら、その日のページを開いてみましょう。読みやすく分かりやすく書かれているので、疲れている時でもサッと読むことができるのも嬉しいポイント。お酒やグルメが大好きだけど薬膳で痩せたという作者の、体験に基づく美容&ダイエットのコツも必読です。

■『つぶやき養生』櫻井大典（幻冬舎）

3代続く漢方堂の店主がTwitterでつぶやく養生情報が話題となり、1冊の本になりました。低気圧、冷え、倦怠感……、いつもなんとなく不調という人に向けたアドバイスを、月ごとに章立てて読みやすくまとめています。「冷たいものの定義は、『体温より冷たいもの』です」、「不眠で薬を飲もうか迷っている人は、まずスクワットを10回やってみてください」など、まるで物知りの友達がアドバイスしてくれているみたい！大きく読みやすい文字、シンプルな短文、疲れている時にはそんなところにもホッと癒されます。

■『心と体のもやもやがスーッと消える食事術』工藤孝文（文藝春秋）

まずは1ページ目で心をグッとつかまれました。「我慢ゼロ、何をどれだけ食べても基本的にはOK」と明記されているではありませんか！食事法と聞くと管理・節制・我慢、とハードルが高く感じてしまいますが、この本では「○○しなさい」は全くありません。だからといって、ただ優しくしてくれるだけでもありません。「衝動的に甘いものを食べてしまうのは肩こりが原因かも？」など、思いもよらないアプローチで専門家ならではのアドバイスをしてくれるのです。病院では治らなかったあなたの不調を改善したい！そんな著者の誠意と情熱が伝わってきて、読むだけで勇気づけられる1冊です。

■『世界のかわいい村と街』（パイ インターナショナル）

現実から一瞬で連れ去ってくれる、とにかく可愛い写真集です。絵本の世界に迷い込んだような美しい風景が次々と現れ、ページをめくるたびにどんどん引き込まれてしまいます。この家にも、街にも、生活している人がいるなんて不思議だなあ！説明文は最小限、目立たないように隅に添えられていて世界観を邪魔しません。部屋にいながら、様々な国の空気を吸ったみたいにリフレッシュできますよ。

■『必死すぎるネコ』沖昌之（辰巳出版）

表紙とタイトルだけで、すでにクスッときませんか？本書は、猫写真家・沖昌之が3年半かけて撮りためた20万枚以上の中から厳選した、ジワジワくる猫の写真集です。本人たちは（たぶん）いたって真面目、なのにそこはかとなく間が抜けていて……。“ネコをかぶっていない”素の可愛さが満喫できる1冊です。分かっていても、何回見ても、面白い！

■『夏は幻　Iska作品集』Iska（KADOKAWA)

SNSで話題の写真家・Iskaによる、初の写真集です。どこかで見たような風景が、Iskaの手にかかればどれも特別に見えてきます。まるで記憶の中の風景を写真に写しとって見せられているような不思議な感覚。ノスタルジーをくすぐる風景の数々を眺めるうちに、日々の雑事が遠ざかり、自分だけの時間を過ごすことができる写真集です。

■『宙の名前』林完次（角川書店）

美しい写真と夜空にまつわる言葉をいっぱいに詰め込んだ写真集です。月の呼び名や星座にまつわるエピソード、夜空を詠んだ和歌も多数収録されています。ただ知識として解説を加えるのではなく、写真に見合った美しい言葉を選んで添えられており、写真と言葉が互いに共鳴し引き立てあっているよう。引き込まれるような夜空を眺め、情緒ある言葉の音を楽しんでいるうちに、心の中が静かに凪いでいくのを感じます。