いつまでも色褪せない感動がある本
幸せな王子
にんぎょひめ
純粋な恋って瑞々しくてとても美しい。だけど純粋でいられるのは、手が届かない相手だからこそ。恋が成就すれば、少しずつ愛の形が変わっていくことを大人は知っています。人魚姫はあまりに有名なお話だけど、時間を経て改めて読んで見ると、忘れていた大切な感覚が蘇ってくるような感じがするから不思議。いわさきちひろが描く絵が淡く繊細に人魚姫の悲しさを映し出します。
ビロードのうさぎ
ビロードのうさぎは、坊やが1番大切にしているぬいぐるみ。うさぎは自分が坊やのお気に入りであることに喜びを感じ、ぬいぐるみ以上の存在であることを信じている。そうして、坊やといろんな時間を過ごしてきたけれど...。いつまでも一緒にいたいと願ううさぎの想いがあまりに切ない。でも、まっすぐな想いが予期せぬ形で実を結ぶことだってあるかもしれませんよね。
ちいさなあなたへ
ちいさなあなたが生まれて、時が経ち、あなたは段々大きくなって、心も体も成長する。私はその成長を楽しみに、共に喜び共に悲しみ、どんな時も味方でいる...。母と子の永遠の繋がりを温かい目線で描く本書は、命が連綿と続いていくことの尊さをそっと伝えてくれます。
人生について、世界について...考えさせられる絵本
おおきな木
世代を超えて読み継がれるシェル・シルヴァスタインの名作「おおきな木」。村上春樹の新訳の魅力もあって、ファンを増やしています。テンポよく進むお話の中で、少年と少年を見守るりんごの木の関係性が次第に変わっていきます。少年を自分に置き換えてみたり、または木を誰かに置き換えてみたり、読み方次第で物語の受け止め方が変わるはず。物語の最後、少年と木はどこに落ち着くのでしょうか?
ちいさいおうち
のどかな田舎に建つ小さな家。心穏やかに美しい自然を愛でながら年月を過ごしていたけれど、都市開発で徐々に周りの景色は変わっていく。けれど、変わらずそこに家はあって...。人が文明や社会の進化に飲み込まれ、物質的な豊かさを求め続けるがゆえに、見失いがちになるもの。さて、自分にとって変わらない価値を持つものとは何でしょう?絵や物語の流れに合わせて文字の配置が変わるなど、デザインも秀逸。子どもだけでなく大人も繰り返し読みたくなるバージニア・リー・バートンの名作絵本です。
アナベルとふしぎなけいと
ある日、1人の少女が拾った小さな箱。中にあったのは色とりどりのきれいな毛糸。少女はその毛糸を使って、街の人々にセーターを編み続け、奇跡を起こしていく。モノクロの世界が次第にカラフルに変わっていく様がとてもきれいです。なぜ、彼女のもとに不思議な毛糸が届いたのか?哲学的に問いかけてくるような奥深い本です。
へいわとせんそう
絵本を開くと左ページにへいわな〇〇、右ページにせんそうの〇〇。一目瞭然の分かりやすさで、2つの対比する光景が迫ってきます。谷川俊太郎の端的な言葉とNoritakeのシンプルな絵の組み合わせが見事。平和や戦争について雄弁に語るより、ずっと真を突いている感じがします。
六にんの男たち
なぜ人間は戦争をするのか?という根源的な問いについて、この絵本は簡潔な文章とリズミカルな絵でとても分かりやすく解説します。世の中を良い方向へ変えていくには、愚かさを知り向き合うことも大切だと気付かされます。
独特の世界観に夢中になる!シュールな絵本
うろんな客
ある晩、館にやってきた珍妙な客。カギ鼻がユニークな顔に出っ張ったお腹。なんだか憎めない姿だけど怪しくて、やることなすこと困らせることばかり。でも一家は追い出すこともなく共存して...。ダークなテーマを表現することが多いエドワード・ゴーリーですが、この絵本は、軽快な短文表現が面白くテンポ良く読むことができます。
せかいいちのねこ
ファンタジックな世界観が人気のヒグチユウコの絵本。物語の中ではいろんな猫が登場しますが、実に個性豊かです。キャラクターの表情が細部まで丁寧に描かれていて、読んでいるうちにどんどん感情移入してしまいそう。主人公であるぬいぐるみのニャンコが「本物」になりたくて旅を続ける様がいじらしく愛おしい。でも、本物になるのは、きっと誰にとっても簡単じゃないですよね。
眠りに誘う絵本
こんとん
混沌/渾沌(こんとん)の語源となった中国の神話に登場する怪物。その得体の知れなさ、分からなさは、いろんな噂を寄せ集めても解消されない。だんだん読んでいる方もぼんやりしてくるような..なんとも不思議な気分になります。読了後にはきっと、程よく頭が緩んでリラックスしていると思いますよ。
月夜の森で
夜の森の動物たちを緻密な切り絵で表現した絵本。暗闇から立ち現れる動物たちがとてもリアル。文章は少ないけれど、美しい切り絵を眺めているだけで、夜の森に包まれているような感覚になれます。
クレーの絵本
パウル・クレーの絵と谷川俊太郎の詩。贅沢なコラボレーションで生まれた絵本。温かで優しい色合いの絵に癒され、美しい詩のリズムは心地よく胸に響きます。ただぼんやり眺めるだけで、穏やかな気持ちになれそうです。
オスカー・ワイルドの不朽の名作「幸せな王子」を清川あさみの繊細なテキスタイルで表現した絵本。訳文も見事で、オリジナルの世界観を忠実に伝えてくれます。様々なバックグラウンドを持つ人々、日々街の様子を眺めながら恵まれない人のことを思い心を傷める王子、王子の美しさに夢中になり献身的に尽くすツバメ...緻密に描かれたキャラクターが読者をお話の世界へどんどん深く引き込んでいきます。何度読んでも涙なしでは終われない。本当の愛の力強さが心に沁みます。