出かける予定ゼロの日は、マンガで至福のおこもりデー
①今だからこそ!少女の頃夢中になった王道少女漫画を今こそ
大和和紀『源氏物語 あさきゆめみし』(講談社)
一条ゆかり『有閑倶楽部』(集英社)
名門中の名門、聖プレジデント学園。名家の子息令嬢が通う聖プレジデント学園の名物が、個性派集団の生徒会「有閑倶楽部」!。ある者は容姿端麗、ある者は頭脳明晰、ハイスペックながらも一癖も二癖もある6人が、事件を起こしたり解決したり。
自家用ジェットに大使館とスケールの大きな舞台で堂々と立ち回る6人の活躍がとにかく爽快で、今読んでも全く古さを感じさせない面白さ!それぞれ違った魅力を持つ6人が集まることで倍増する魅力の虜になった人も多いはず。勢いのある展開と、ハチャメチャながら、主人公たちの育ちのよさを思わせる上品さのさじ加減が絶妙です。
佐々木倫子『動物のお医者さん』(白泉社)
このマンガでハスキー犬を知ったという人、多いのではないでしょうか。獣医を目指し大学に通うハムテルと愛犬チョビ、研究室のメンバーと動物たちのほのぼのコメディ。チョビの表情、セリフ(?)がとにかく可愛い!今読んでも色あせることのない面白さ・可愛さで、ページをめくる手が止まらないこと請け合いです。
日渡早紀『ぼくの地球を守って』(白泉社)
連載当時、“ぼく地球(タマ)”の愛称で多くの熱烈なファンを生み出した『ぼくの地球を守って』。物語は、東京の高校に転校してきた亜梨子がクラスメイトが交わすムーン・ドリームという不思議な夢の話を耳にしたことから始まります。自分が見た夢も同じ夢だったのではと気が付いた亜梨子は、クラスメイトと共に夢に出てきた”他のメンバー”を探し始め…。前世の記憶を持つ7人の男女が現代の日本と前世の記憶を行き来しつつ、物語は展開していきます。徐々に明かされる前世の記憶、複雑になる現実での人間関係…、登場人物たちの細やかな心情描写が胸に迫る壮大な作品は、大人になった今でもいろいろな想いを引き出してくれます。
②日常系マンガで自分とは違う人生を慈しむ
宇仁田ゆみ『うさぎドロップ。』(祥伝社)
主人公ダイキチは30歳独身、亡くなった祖父には隠し子がいた!ダイキチは親戚にうとまれ施設に入れられそうになった6歳のりんを引き取り、ふたりの共同生活が始まります。初めてで突然の子育てに、不器用ながら全力で向き合うダイキチと、そんな境遇の中明るく健気に振舞うりんちゃんの姿にほっこり、ほろり。うまくいくことばかりではない現実の厳しさに共感したり、それでも二人の気持ちが通じ合う瞬間にニンマリしたり。当たり前の毎日を送ることって実は大変で、そして尊い、そんな気持ちにさせてくれるマンガです。
日暮キノコ『喰う寝るふたり 住む二人』(徳間書店)
交際10年、同棲8年、恋人以上夫婦未満のカップルの同棲生活が、等身大にコメディタッチを交えて描かれます。彼女目線と彼氏目線、それぞれの視点で描かれた同じストーリー2話が1セットの構成が新鮮!「ああ、分かる〜」「えっ、そんな風に思ってるの?」と、同じ話でも共感したり驚いたりしながら楽しめます。長く付き合っても一緒に暮らしても、それでも男と女はすれ違ってしまうのだなと、肩の力を抜いて読むことができるマンガです。
入江喜和『たそがれたかこ』(講談社)
たかこはバツイチの45歳、高齢の母とふたりで暮らしています。自転車で社員食堂のパートに通い、家ではマイペースな母に振り回される日々。側から見ればそれほど不幸にも見えない境遇かもしれないけれど、得体の知れない重苦しい生き辛さを抱えて生きています。そんなたかこの心に明るい光を届けたのが、若いミュージシャン光一、そして行きつけの店vivaに集う常連達でした。夫の元で離れて暮らす娘の拒食症、自分自身でも持て余す自分の気持ち、元々人付き合いが苦手なたかこが、心の中の光をかき集めてよりどころにしながら、なんとか前に進んでいこうとする姿に励まされ勇気づけられます。
いけだたかし『34歳無職さん』(KADOKAWA/メディアファクトリー)
主人公は、会社の倒産で職を失った34歳女性、仮に無職さんと呼びましょう。なんと、主人公でありながら、名前すら語られていないのです。会社が無くなった無職さんは、どうせならと1年間仕事をしないことを選びます。大きな事件や面白い出来事など何も起きない、淡々とした日常がまるで現実の時間のようにゆっくりと描かれます。マンガなのに音が少ないというのもおかしな感じがしますが、無職さんの部屋は音が少なく静かで、読み進めるにつれその静けさに安らぎを感じている自分に気がつきます。そんな平凡な日常でも、無職さんは人間らしく悩んだり、喜んだり、一生懸命生きています。1年間もあれば積もるものがあるもので、読み終えたあとには無職さんの1年間を共に経験したような不思議な読後感が広がります。
③ガンバレ、女の子!そのひたむきさが胸を打つ
いくえみ綾『カズン』(祥伝社)
ぷにぷに二の腕、かじり掛けの板チョコ。どこか上の空の表情まで、アレレなんだか親近感!こんな女の子、これまで少女漫画の表紙に居たでしょうか。ちょっぴり太めのぼんちゃんは、普通の高校を普通に卒業して進路はひとまずアルバイト。そんなぼんちゃんが、恋に落ちて変わり始めます。はじめての恋、はじめてのダイエット、はじめてのお化粧…。素直にひたむきに、素敵な女性への階段を少しずつ登り始めたぼんちゃんを、応援せずにはいられません。果たしてはじめての恋の行方は…?ぼんちゃんは幸せになれるのか!?素朴でピュアな女の子の、恋と成長の物語です。
東村アキコ『かくかくしかじか』(集英社)
自分は天才だと思い込み、このまま美大に進学して漫画家になれると信じる高校生・明子。そんな明子は友達の紹介で訪れた絵画教室で、講師である画家の日髙先生と衝撃の出会いを果たします。竹刀片手に罵倒を繰り返すその指導に、「絵を描くって楽しいことじゃないの?」と反発していた明子も、次第に絵に真剣に向き合うようになり、日髙先生のただ厳しいだけではない面に気がついていきます。大学入試、美大進学、そして漫画家へと、苦しい時代を8年間も二人三脚で支えてくれた日髙先生への想いを軸に、時にコミカルに時に感動的に描かれる、漫画家・東村アキコの自伝的ストーリー。名作です。
谷川史子『清々と』(少年画報社)
憧れかなって名門お嬢様高校に入学した清(さや)の成長が眩しい、正統派乙女の成長物語。憧れの名門女子校に通い始めたものの、周りは本当のお嬢様ばかり。育ちや振る舞いが良いだけでなく、将来のことを真剣に考えていたり自分の考えをしっかり持っていたりするクラスメイトに、清は自分が場違いなような気後れを感じてしまいます。そんな清も、分け隔てなく接してくれる級友たち、親身になってくれる先生、心地いい居場所である家族に囲まれて、持ち前の素直さと明るさで日々成長していきます。谷川史子の瑞々しくピュアな絵柄と相まって、心洗われる爽やかさが溢れる作品です。
池辺葵『プリンセスメゾン』(小学館)
「一人で家を購入する独身女性」と言われると、どんな人を思い浮かべるでしょうか?このマンガの主人公・沼越さんは、居酒屋で働きながら“自分だけの理想の持ち家”を探しています。いつも通っている不動産屋さんに「鋼鉄の心臓」と評されるほどマイペースで動じない沼越さん。節約も、残業も、家を買うためなら辛くありません。そんな自分の幸せをまっすぐに探し求める沼越さんを、不動産屋のスタッフさんたちも暖かくサポートします。普通の日常から何気ない瞬間に溢れ出す優しさ、寂しさ、暖かさ、そんな些細な煌めきを丁寧にすくいとったような作品です。自分の毎日も「それでいいんだよ」と誰かに優しく背中を押もらえるような、暖かな物語です。
④運命の恋を見届けよう
紡木たく『瞬きもせず』(集英社)
山口県を舞台に、高校生の揺れ動く気持ちと切ない恋愛を描いた『瞬きもせず』。田舎の風景と全編を通して使われる山口弁に素朴な暖かさを感じたり、反面都会への憧れや田舎ならではの閉塞感に息苦しさを感じたり、読み手の気持ちも揺れ動きます。そんなどこか不安定さを感じる中、恋をし、進路に悩み、人間関係に苦しむ主人公・かよ子。切なくて、眩しくて、心に染みる恋の物語です。
秋★枝『恋は光』(集英社)
恋する女性の“キラキラ”が実際の光として目に見える大学生・西條と、3人の女の子の恋物語。恋する女性が光って見える西條は、偶然となりの席に座った東雲の「恋というものを知りたい」という言葉に恋に落ちます。東雲と仲良くなりたい西條が提案したのが、交換日記。不思議な2人の交換日記に、やがて西條に思いを寄せる北代、他人の彼氏ばかり好きになる宿木の2人が加わります。複雑になる人間関係、すれ違う恋心…。3人のヒロインがそれぞれ違って魅力的で、みんなの恋にやきもきしてしまいます。西條の、ヒロインたちの、恋の結末が知りたくて、読み始めたら止まらなくなりますよ!
大島弓子『綿の国星』(白泉社)
いつかは人間になれると信じる“チビ猫”の目を通して描かれる、ちょっとファンタジーな人間世界の物語。チビ猫の視線で描かれる人々は暖かくてキラキラしていて、チビ猫も擬人化して描かれてはいるものの、読者にはやはり人間にはなれない切なさが見え隠れします。中でも、チビ猫が命の恩人時夫に向けるまっすぐな恋心は、叶わないと分かっていてもなお応援したくなってしまいます。手に入らなくても諦められない、叶わなくても大切な想いがある、そんな恋の切なさを思い出させてくれる作品です。
逢坂えみこ『永遠の野原』(集英社)
父を亡くし、母は再婚、漫画家である姉と二人暮らしの二太郎は、高校2年生。父のこと、母のこと、半年前に死んだ愛犬カキのこと、色々なことが積み重なって前に進めない二太郎の元に、子犬のみかんがやって来ます。父さんが死んだら新しい義父さん、カキが死んだら新しい犬、と反発する二太郎でしたが、みかんとの絆が生まれるにつれ次第に前に向いて進み始めます。そうして動き始めた二太郎の青春。二太郎、ひとめぼれの相手マリコさん、親友・太、姉・一姫、それぞれの恋愛を通して二太郎の成長が描かれます。迷いながら傷つきながら、それでも想わずにいられない人々とのかけがえのない日々がここにあります。この作品に出てくる人は誰もが誠実で、真剣に人と向き合う人ばかり。手元に置いてふとした時に何度も読みたくなる作品です。
⑤明日へのモチベーションUP!ちょっと変わったお仕事漫画
岩岡ヒサエ『土星マンション』(小学館)
環境破壊が進み地上には住めなくなった地球。地上35,000mに建造されたコロニー“リングシステム”では、全ての人類が“上層・中層・下層”の3つの階層に分類されて暮らしています。その下層の住人ミツは16歳、窓拭きの仕事をしています。宇宙空間に出てリングシステムの窓の曇りを取る窓拭きの仕事は危険で、同じ仕事をしていたミツの父も5年前に行方不明になりました。そんなミツが仕事の師匠、仲間、地域の仲間、仕事の依頼主たちとの出会いを通して仕事への誇りや自信を獲得し、成長していく物語です。SFな設定ではありますが、働くとはどういうことか、という普遍的なテーマが色濃い作品です。
よしながふみ『西洋骨董洋菓子店』(白泉社)
住宅街の片隅で、深夜にひっそりと営業する洋菓子店「アンティーク」。そこで働くのは、それぞれ胸に傷を抱えた4人の男性。恋愛あり、事件ありと人間関係を軸にストーリーは進んでいきますが、それにしても出てくるお菓子の美味しそうなこと!こんなお店が本当にあればいいのに、と思ってしまうほど素敵なお菓子&お店なのです。寄せ集めで集まった4人が、色々と問題がありながらも結びつきを強くしていけるのは「アンティークが大切」という強い気持ちが共通しているから。共に働く素晴らしさを教えてくれる作品です。
久米田康治『かくしごと』(講談社)
漫画家・後藤可久士は1人娘の姫ちゃんにぞっこん!姫ちゃんに嫌われることを何よりも恐れる後藤先生は、姫ちゃんには自分が漫画家であることを隠しています。なぜなら、後藤先生の描く漫画はちょっとお下品だからなんです…。朝はスーツを着て“会社に出勤“(途中で着替えて仕事場へ!)、プロダクションスタッフも巻き込んで事態はかえってややこしいことに!?過保護すぎるパパとおしゃまな女の子の、トラブルだらけの2人暮らしがなんともおかしく、そして働くって大変だな、職業に貴賎はないなとしみじみ附に落ちるのでした。
埜納タオ『夜明けの図書館』(双葉社)
図書館には日々難問が持ち込まれます。「文化祭でみんながアッと驚くレシピを知りたい」「光る影の正体が知りたい」そんな難問に立ち向かう新人司書が主人公のこの作品は、図書館のレファレンス・サービスに光を当てた珍しいマンガです。新人司書ひなこが緊張したり失敗したりしながらも一生懸命仕事をする姿は、読んでいて応援したくなります。3年間も就職浪人をして、念願の“本と人を繋ぐ仕事”に就いたひなこ。仕事へのひたむきな気持ちに、「明日もがんばろう!」と勇気づけられます。
光源氏の幼少期から死までを追う、濃密で切ない恋愛絵巻です。誰もが一度は目にしたことがあるであろう『源氏物語』の世界を、生き生きと色彩豊かに描きます。原作では大勢の女性達と一括りで捉えがちな源氏を取り巻く女性達も、それぞれ個性豊かで生きた人間の喜び・悲しみに溢れています。プレイボーイで有名な光源氏も、それだけではない人間的な魅力が存分に表現されています。『源氏物語』に夢中になった方にも、これから読んでみたいと思っている方にも、もちろん上質な恋愛マンガを読みたい方にもおすすめです。