大人の心に染みる「冬の映画」
泳ぎすぎた夜(2017)
雪が降り積もった青森で暮らしている一家。漁業市場で働く父親がいつものように朝早くから準備をして仕事に行った。その物音で起きてしまった息子は眠れなくなり、魚の絵を描く。その後、家族と一緒に朝ごはんを食べ学校に行くために家を出た。しかし、学校には行かずに父親のいる漁業市場を目指して歩き出し――。
映画の舞台と同じ青森で暮らしている少年役の古川鳳羅くんにとって演技は初挑戦。音楽イベントで無邪気にはしゃぐ鳳羅くんを見て、監督達が声をかけて出演が決まったんだそう。家族役はなんと本物の家族というのもこの作品のポイント。少年の自由で豊かな演技は必見です。
NOEL(2004)
スーザン・サランドンやペネロペ・クルスなど豪華キャストが共演したクリスマス映画「NOEL」。クリスマス・イヴのニューヨークに繰り広げられる人間ドラマです。一般的なクリスマス映画の明るさや派手さはありませんが、クリスマスに起こる小さな奇跡を温かく描いています。
クリスマス・イヴのニューヨーク、仕事と母親の看病の日々で自分のことは後回しのローズ、ニーナは婚約者のマイクの嫉妬と束縛に悩んでいた。カフェの店員アーティは店に来たマイクに変な行動をして――。
幸せな人ばかり登場する映画とは違い、それぞれ悩みや孤独を抱えつつもがきながら生きる人々の姿に共感する人も多いはず。心温まる大人のクリスマス映画です。
リトル・フォレスト冬・春(2015)
橋本愛主演の「リトル・フォレスト冬・春」は、五十嵐大介の同名コミックを映画化した作品です。春夏秋冬の4部作で、冬・春は後篇になっています。都会から故郷へ戻り、自給自足の生活を送る女性の姿を丁寧に描いています。
都会に馴染めず故郷の村に戻ったいち子。自給自足の生活を送り、自分で収穫した食材を使って料理するという穏やかな日々を過ごしていた。ある日、家に一通の手紙が届く。その手紙は5年前、いち子を一人置いて家を出た母からだった――。
“生きるために食べる。食べるために作る”というキャッチフレーズの通り、映画にはいろいろな料理が登場します。人気フードディレクター・野村友里主宰のeatripが料理を担当しているため、どれも本当に美味しそう。春夏秋冬の美しい風景やいち子の丁寧な生活にも注目です。
冬時間のパリ(2018)
フランスの名匠として知られるオリビエ・アサイヤス監督が描く「冬時間のパリ」。冬のパリの出版業界を舞台にした大人のラブストーリーです。
作家のレオナールに不倫を描いた本を書きたいと相談されるも、彼の作風は古いと感じていた編集者のアラン。しかし、アランの妻・セレナはなぜか気に入っていた。実はレオナールとセレナは不倫中で、アランも部下と不倫していた――。
“時の流れとともに、変わりゆくもの、変わらないものーそれは何?”が映画のキャッチフレーズ。綺麗事だけではない夫婦の関係をリアルに、時にコミカルに描いています。2組の夫婦の関係、愛の行方は必見です。2019年12月20日(金)ロードショー。
メニルモンタン 2つの秋と3つの冬(2013)
「メニルモンタン 2つの秋と3つの冬」は、パリの素敵な男女が恋する映画ではなく“ばっとしない大人たち”の等身大の恋をリアルに描いています。冴えない主人公を演じるのは「女っ気なし」で人気のヴァンサン・マケーニュ。2013年トリノ国際映画祭審査員特別賞を受賞したラブストーリーです。
美術大学を卒業したアルマンは就職できずに何も起こらない冴えない日々を送っていた。誕生日に「仕事に就く、運動をする、禁煙する」ことを決意。ある日、ジョギング中に出会ったアメリを好きになってしまい――。
映画に登場する人々が語りかけるシーンなど、演出がユニークなのもこの作品の魅力。普通の人の日常を切り取ったゆるさと優しさを感じられる映画です。
「若き詩人」のダミアン・マニベルと「息を殺して」の五十嵐耕平の共同監督作品「泳ぎすぎた夜」。ほぼセリフがなく、少年のドキュメンタリーを見ているような静かで美しい映画です。大人にはない子供ならではの感性に触れ、心がじんわりと温まります。