主人公が作中で旅や放浪をしながら、さまざまな出来事に遭遇したり変化していくさまを描いた映画
①人との出会いや、つながりに心あたたまる映画
『リトル・ミス・サンシャイン』(2006)
家族全員に何かしらの問題があって、それでも、家族の愛によって「だめでもいいんだ」「負けたっていいんだ」と思える映画。家族全員がオリーブのことを大好きなんだなぁと、見ていて愛おしくなる。途中ハチャメチャな出来事がたくさんあり、笑えて、ほっこりして、そして感動します。おじいちゃんとオリーブが話をしているシーンの、おじいちゃんの言葉が胸に刺さります。そして、オリーブが本当にかわいい!かわいくて、強い。
『イントゥ・ザ・ワイルド』(2007)
1992年、夏。アメリカ最北部アラスカ州の荒野に捨てられた古いバスの中で、一人の若者の遺体が発見された。遺体のそばには、小説や日記帳。若者の名は、クリストファー・マッカンドレス、24歳。クリスはなぜ旅に出たのか?なぜ死んだのか?という謎は、全米のニュースになり、ノンフィクション作家のジョン・クラカワーが追跡取材を重ねて書いた作品、『荒野へ』を原作としたロードムービー。
「Happiness is only real when shared.」「幸福は誰かと分かち合ってこそ、現実のものとなる。」彼が死ぬ前に残した、この言葉がとても印象的でした。クリスが旅に出た理由はなんだったのか?最後のシーンで、なんとなく、分かった気がします。クリスが旅で出会う人々とのシーンが暖かくて、涙が止まりませんでした。〈人生とは何なのか〉そんなことを考えたことがある人には、ぜひ見て欲しい作品。
『ストレイト・ストーリー』(1999)
アイオワ州ローレンスに住む老人、アルヴィン。ある日、音信不通だった兄が脳卒中で倒れたとの知らせが入る。杖なしでは歩けないアルヴィンは、時速8kmの芝刈り機に乗って、560km離れたウィスコンシン州まで兄に会いに行く。1994年に「ニューヨーク・タイムズ」に掲載された実話をもとにした作品。
「あれで俺に会いに来たのか?」「そうだよ」再開のシーンでは、最初と最後にしか出てこない兄の、圧倒的な存在感に涙が止まりません。旅の途中で出会う人々とのやりとりに、笑えて、ほっこりします。紅葉の壮大な風景や、星空のシーンも美しい。〈ストレイト・ストーリー〉名前のとおり、真っ直ぐな作品です。
『ビフォア・サンライズ 恋人までの距離』(1995)
ジェシーとセリーヌは、ユーロトレインの車内で出会った瞬間に惹かれはじめる。ウィーンで途中下車したふたり。14時間だけ、街を散歩し、語り合う。楽しそうに話す二人だが、別れのときはもう迫ってきて…。
限られた時間しか一緒に過ごせない、ラブストーリー。「今のいつでもSNSで繋がれる時代ではできない恋愛だな〜」と憧れを抱いてしまう。ただただ二人で、ウィーンの街並みを歩くだけの映画だが、その中にぎゅっと面白さが詰まっている。この9年後の『ビフォア・サンセット』と、さらに9年後の『ビフォア・ミッドナイト』もあるので、ぜひあわせて観て欲しい作品。実際に歳を重ねてから撮影をしているのもすごい。
『シェフ三ツ星フードトラック始めました』(2014)
ロサンゼルスにある一流レストランの総料理長カールは、オーナーと対立し突然店を辞めてしまう。そんな時、マイアミで絶品のサンドイッチと出逢う。その美味しさを人々に伝えるために、移動販売をはじめることに。譲り受けたボロボロのフードトラックで、究極のサンドイッチをつくりながら売る旅がスタートした。
とにかく、キューバサンドイッチが食べたくなる!出てくるごはんが全部美味しそう。息子とマーティンのトリオのチームワークが最高。美味しいご飯と、音楽と、トーストをかじる音と…人生の素晴らしさと、ハッピーが詰まった作品。見ていて幸せを感じるロードムービー。
②うきうきわくわく、すぐに旅に出たくなる映画
『グッバイ、サマー』(2015)
画家を目指す、14歳の少年ダニエル。中学生になっても女の子のような見た目で、クラスメイトから馬鹿にされていた。そんなある日、ダニエルのクラスに変わり者の転校生、テオがやってくる。周囲から浮いた存在のダニエルとテオは意気投合し、親友になっていく。うんざりするような毎日から脱出するため、ふたりはスクラップを集めて夢の車をつくり、夏休みに旅に出る計画を考えつく…。
男の子のロマンが詰まっているような映画。「わたしも幼い頃、ダンボールで自分だけの秘密基地とか作るの好きだったなぁ〜」と、あの頃のあのワクワクを思い出させてくれた。二人が美しくて、見ているだけでも癒される。この夏の思い出を、大人になって二人が再開したときに、「あの夏に俺らさぁ…」って語り合ってほしい。青春のワクワクを思い出したい方におすすめのロードムービー。
『モーターサイクル・ダイアリーズ』(2004)
有名な革命家、チェ・ゲバラの旅行記『チェ・ゲバラモーターサイクル南米旅行日記』をもとに映画化された実話のロードムービー。若きゲバラが旅の途中で様々な国の人々、苦しい生活をしている人々と出会い、医師の道を捨てて革命家への道を志すきっかけになった旅…。
若い青年が、旅の途中で様々な人々と出逢い、貧しさや格差で苦しんでいる人々をみて、顔つきが変わっていくのがわかる。革命家チェ・ゲバラはこうして生まれたのか。この映画を観る前に〈キューバ革命〉についてすこし調べてから観るべきだったなぁと思います。チェ・ゲバラの人柄に惹かれる。ネットも何もない時代の旅だからこそ、感じるものや学ぶことが多かったのかもしれない。現代ではなかなか出来ない旅だからこそ、こういう旅に憧れる。
『奇跡の2000マイル』(2013)
うまくいかない人生に変化を求め、オーストラリアの中央部アリス・スプリングスから海を目指して2700kmもの砂漠を、4頭のラクダと愛犬とともに、たった一人で踏波したロビン。自伝を基にした、実話の物語。
とにかく、ロビンの強さとたくましさに惚れ惚れします。わたしがロビンと同じ24歳のときに、こんな冒険が出来ただろうか。映像に出てくる、広大な砂漠に自然の美しさと神々しさを感じます。旅の中で出会う人々と交流し、一生の宝物になるような経験を積んでいくロビン。これが実話だということが本当に衝撃です。エンドロールに流れてくる、実際の写真に心を打たれます。「今の自分じゃだめだ」と感じている人には、響くものがある映画だと思います。
『LIFE!』(2013)
LIFE誌の写真管理部門で働いているウォルター。自分の人生が同じことの繰り返しだと感じているウォルターは、空想の世界に入り込みます。空想の中では、上司と激しくバトルしたり、冒険家になったり、変幻自在。現実社会では、ただただ平凡な日々が流れていく…。そんな時、LIFEの最終号の表紙をかざる写真がどうしても見つからない事件が起こります。撮影した写真家は、消息不明。ウォルターは、写真家を探すために現実世界でも大冒険に出ることに…!
旅の中で、今まで経験したこのない様々な体験をしていくうちに、平凡な日常を送っていたウォルターが、だんだんと自分の人生に自信を持っていく姿が印象的。最初の一歩がどれだけ大事なのか。外の世界に飛び込んで、自分の目でみて、肌で感じて。自分で体験するって、本当に大切なことだなと感じる。最後のシーンは涙…。努力してくれているところを、誰かが見ていてくれる、認めてくれるってやっぱり嬉しい。様々な国の景色も、ほんとうに圧巻です!
『ダージリン急行』(2007)
長男のフランシス、次男のピーター、三男のジャック。疎遠だった彼ら三兄弟は、フランシスの提案でインド北西部を走るダージリン急行に乗り合わせる。旅の目的は、父の死をきっかけに絶縁状態だった兄弟の絆を取り戻すこと。それぞれ問題を抱える三兄弟は、すぐに衝突してしまうが…。インドの秘境をともに旅する、三兄弟の物語。
ウェスアンダーソンのこの世界観!狭い車内にぎゅうぎゅうに座る三人、父の形見のたくさんのカバン、インドの電車の車内。映像のすべてが可愛い。バラバラな三人が、旅を通して同じ景色を見つめるたび、心を通わせるようになっていく姿にほっこりします。あー、やっぱり電車の旅っていいなぁ。メイキング映像も最高です。3兄弟と一緒に旅している気分を味わってみてくださいね。
③きれいな景色と空気感に癒される、邦画ロードムービー
『しあわせのパン』(2011)
北海道の洞爺湖のほとりにある小さな町。そんな小さな町に、パンカフェ『マーニ』が開店した。季節の食材を使った焼きたてのパン、美味しいコーヒー。いろいろな悲しみを持ったお客さんが、パン屋の夫婦の暖かい心でしあわせな気持ちを取り戻していく…。小さなパンカフェ、マーニと夫婦、常連客との心温まる物語。
パンが焼けるチリチリという音、コーヒーを注いだときの湯気、カフェに差し込む朝日。そして、北海道の広大な大自然。見ているだけで、疲れがすっと抜けていくような、とても癒される映画です。ここに住みたい!ここで暮らしたい!カンパーニュが食べたい!!と本当にそう思います。予告編だけでも、本当にほっこり心が温まります。北海道の大自然と、穏やかな映像に癒されてくださいね。
『百万円と苦虫女』(2008)
短大を卒業したものの、就職出来ずに仕方なくアルバイトをしている、鈴子。どうにかしてこの生活から抜け出そうと考えている中、ひょんな事件に巻き込まれてしまう。「100万円貯めたら、この家を出て行きます!」と家族に宣言。海へ、山へ、町へ。100万円が貯まるたびに、別の場所へ。いろんな人と出会いながら、自分の生き方を見つけていく、21才の鈴子の物語。
「自分探しみたいなことですか?」「いや、むしろ探したくないんです。探さなくたって、嫌でもここにいますから」と呟く鈴子のセリフが、じんわり胸に残ります。「自立する」ということの難しさ、厳しさ、うまくいかないもどかしさ。いろんな町を転々とし、そこで出会う新しい人たちとのやりとりも面白い。それぞれの街の風景や綺麗な景色・季節感も味わえる映画です。沁みる人には、きっと沁み込む映画。
『めがね』(2007)
『かもめ食堂』のスタッフが再集結したヒューマンドラマ。海辺の小さな宿を訪れたタエコは、マイペースな島の人々に振り回されながらも、日常で忘れてしまっていたものを取り戻していく…。
与論島のエメラルドブルーの海と、白い砂浜、そして食卓に並ぶ美味しそうな料理。眺めているだけで癒される、気持ちをゆるめられる、そんな映画。「旅は思いつきで始まるが、永遠には続かない」悩みや悪い状況だって、永遠には続かないよなぁと、気がラクになる映画です。この海を眺めながら、ぼーっと過ごしたい。
『ジ、エクストリーム、スキヤキ』(2013)
大学を卒業し、気づけば15年が過ぎ、無為に過ごしてしまっていた洞口。人生を諦めて死のうとするも死にきれず、疎遠になっていた大川を訪ねる。ふたりは大河の同棲相手・楓と洞口の元恋人の京子を巻き込み、海へ行くことに。目的地へ着き、海を目の前にした4人の胸の内に様々な思いが去来する…。
洞口と大河の会話が妙に可笑しくて、最高に面白い。映画を観ているはずなのに、ふたりは実際にそこにいて、一緒に海へドライブへ行き、温泉につかり、スキヤキを食べる。その中に自分も混ざっているような感覚になる。友達とゆるっと近場に旅に出たくなる、そんな映画。みんなで外でスキヤキを食べるシーンが、最高に好きです。
『ぼくのおじさん』(2016)
雪男のおじさんは、30歳を過ぎているのに居候している毎日。お小遣いはくれないし、宿題もみてくれない、人に自慢できるところなんてひとつもない。そんなおじさんが、お見合いで恋をしたエリーに会うために懸賞でハワイに行くと言いだして…。
雪男くんの視点でみた、おじさんの観察日記みたいな映画。平和でのんびり見ることができます。だらしないけど、憎めない、そんなおじさんと雪男のハワイへの二人旅。二人のやりとりがかわいくて、ほのぼのします。そしてハワイの海と空と夕日がとても美しいです。
全米美少女コンテストで地区代表に選ばれたオリーブ。家族と一緒にミニバスでカリフォルニアの会場を目指すが、道中で様々ないざこざが起き…。問題だらけの家族がおくる、アカデミー賞4部門ノミネートのロードムービー。