主人公たちの愛おしい日常をのぞいてみませんか?
PART1:何気ない生活の中に愛がある
こうの史代『長い道』
オジロマコト『猫のお寺の知恩さん』
16歳の源くんは、高校進学のため遠い親戚のボロイお寺に居候することに。そこにいたのは3つ年上の知恩(ちおん)さん。小さい時に遊びに来て以来の再会でしたが、美しく成長しちゃった知恩ねーちゃんとの生活に、どきどきしちゃう源くんなのでした。
都会生活に慣れている人の田舎暮らしはなかなか大変です。ましてやお寺。何か出てきそうと思いきや猫が6匹も。美女と同居は高校生男子にとっては嬉しい反面、気が休まらぬという感じですね。知恩さんの明るくておちゃめな性格と、それでいてさっぱりした雰囲気が素敵です。
たかぎなおこ『ひとりぐらしも何年め?』
〈ひとりぐらし〉の楽しい毎日。ふと気が付くと、今住んでる部屋は10年目に突入。上京したての頃に比べてちょっぴり大人になりました。というより老いてしまいました。脂っこいものが苦手になったし、カタカナが覚えられなくなったしね。でも、まだまだ新しいことにチャレンジしたい、そんなお年頃。
人間ドックや断捨離やシェアオフィス。新しい体験にドキドキしたり、楽しんだり、目まぐるしい日常生活です。最新刊が『お互い40代婚』。ひとりぐらしシリーズもこれで終了ですね。たかぎなおこさんおめでとう!
PART2:素敵な食卓
小山愛子『舞妓さんちのまかないさん』
京都・花街。美しく咲く舞妓さんたちのおうちを〈屋形〉といいます。
舞妓さんに憧れて青森から京都へやってきたキヨさん16歳。今は訳あってまかないさんをしています。舞妓さんのおさななじみすーちゃんと、屋形に住む舞妓さんたちの日々のお食事を担当。みんなが元気にお座敷に上がれるように一生懸命働いています。
舞妓さんの暮らしと、キヨさんのつくる毎日のごはん。煌びやかな舞台であるお座敷と、キヨさんの素朴であたたかい料理。二つの対照的な日常が、どちらもキラキラしていますね。キヨさんの料理を作る手際の良さが必見です。
オカヤイヅミ『いのまま』
独り暮らしのいいところは、好きな時に好きなものを食べれること。食事の時間なんか決めず、おなかがすいたら食べたいものを食べればいいじゃない?それが大人の醍醐味です。題名は意のまま?胃のまま? 私の思う通り、胃の思う通りに食事したい!あんかけ焼きそばにはじまり、豆乳白玉ぜんざいまで15品!食べ物にまつわるエッセイ風の漫画です。
読み終わったら、何か食べたくなる一冊。深夜に読むのはご用心!
益田ミリ『沢村さん家のそろそろごはんですヨ』
高齢の夫婦と40代の娘。平均年齢60歳の沢村さん家。三人のちょっとだけ食べ物にまつわるほんわかエッセイ漫画です。落書き風の線だけの絵なのに、どうして表情が生き生きして見えるんでしょう?思わず共感して「うん。うん。そうなんだよね!」と本に向かってうなずいている自分がいます。娘・ヒトミさんの会社でのエピソードや、お母さんの井戸端会議もおもしろい。家族同士が仲良しで、お互いを思いやっている姿が素敵です。〈一緒にいられる時間〉が大切ということを家族全員がわかっているからこその心地よさです。
PART3:年の重ね方を考える
おざわゆき『傘寿まり子』
傘寿とは、傘の字が八十にみえることから80歳を意味します。まり子さんは80歳。孤独死・認知症・ゴミ屋敷などのリアルな問題に直面し、それを悩みながらも乗り越えるお話。諦めないのがすごいです。いつまでも自分を信じて前向きなまり子さん。家出してネットカフェの住人になったり、恋愛したり、サイトを作ったりと行動力ありすぎですが、私も将来、こういう〈傘寿〉になりたいですね。高齢化社会の対策として、総理大臣に進呈したい一冊です。
矢部太郎『大家さんと僕』
ご存知カラテカの矢部太郎氏の漫画。木造二階建て一軒家の二階部分を借りた矢部くん。一階に住む大家さんはご高齢の素敵なご婦人。「ごきげんよう」とあいさつし、伊勢丹でほとんどすべての買い物をし、自宅の部屋は絵画であふれ、貧乏芸人の矢部くんには未知の世界の住人でしたが・・・。
妙に近い距離感に戸惑いながらも、昔の話や戦争の話にジーンとし、ゆっくりと時間をかけて丁寧に暮らす大家さんをちょっとうらやましく思う矢部くん。彼が大家さんを優しく見守っている姿には感動すらおぼえます。本当に大家さんが大好きなんですね。
鶴谷香央理『メタモルフォーゼの縁側』
75歳・未亡人で書道教室を営んでいる市野井さん。ある日本屋で出会ったのは、アルバイトの女子高生うららちゃんと、BLコミックス(!)の美少年たちの恋愛模様にドキドキしてしまう市野井さんなのです。
BLオタクなのに語り合える同志がいないうららちゃんの初めてのBL友達。漫画について語り合ったり、貸し借りしあったり、一緒にコミケに行ったり。年の差なんて何のその!内向的・消極的な女子高生とやりたいことは何でもやる(でも、できないことはしない)おばあちゃんのコンビが楽しい。いくつになっても「好きなものは好きだ!」と言えるのは、素敵なことですね。
PART4:あなたの街の素敵な人たち
塩川桐子 『差配さん』
江戸時代、いろんな悩みや困りごとをかかえる人間たち。世の中の道理はわかっている。どうにもならないことはどうしようもないさ。なんとかみんなで助け合って今日を生きていくのさ。叱られたことは二度としねえ。いやがられることはなるべくしねえ。これが人との間でうまく生きていくコツってもんだ。
日本画風の絵が情緒ある、江戸の町の物語。冒頭のおっかさんがあまりにヒドイと思いましたが、最後まで読んで「ああ。なるほどねえ。」と納得。もう一度読みかえしたくなる漫画です。
山本さほ『岡崎に捧ぐ』
著者と親友の岡崎さんの友情物語。小学生の時の日常生活ってどの世代にとっても懐かしいですね。流行ってた遊び、クラスのこと、同級生とそのおうち事情。岡崎さんのご家庭もものすごいですが、小学生の著者にとってはうらやましい自由人の住処。親にがみがみ言われないというだけで、そこは天国ですが、今ならその時の岡崎さんの寂しさが理解できる。
二人の友情はまだまだ続きます。いろんな思いを乗り越えて、大人になっても一緒にいたい人、それが親友です。著者のゲーム愛がそこかしこに光っています。ゲーマーにとってはもっと面白い作品かも。
コナリミサト『凪のお暇』
自分の気持ちを押し殺し、文句も言わずまわりの空気を読むことに一生懸命だった凪ちゃんがついに倒れた!「私さえ我慢すればそれでうまくいってたのに。」そして彼女のとった行動が徹底しています。仕事を辞め、彼氏と別れ、ボロアパートへ引っ越し貯金100万円での節約生活。サラサラ髪好きの元カレのために伸ばしていたストレートの髪も切り、天然パーマの自分をとりもどす。
うらやましいほどの潔さ。新しい環境で出会った人たちも魅力的です。人間っていつでも変わることができるんですね。今年、TVドラマ化されたことでも話題になりました。
PART5:素敵な日常は「住む場所」からはじまる。
ゆるりまい『わたしのウチには、なんにもない。 「物を捨てたい病」を発症し、今現在に至ります』
数年前から大ブームとなった、物を持たない「ミニマリスト」。試してみた方はいらっしゃいますか?いらないものを捨てるということが、なんと難しいことか!ついつい心の中のもったいないお化けがでてきてしまって、ゴミ箱に放り込む手が止まります。そういう人におすすめなのがこの漫画。
ゴミ屋敷出身の著者が「物を捨てたい病」に冒され、家族の無理解に苦しみながら、本当に落ち着くすっきりした我が家を手に入れるまでの実話。地震によって我が家が「凶器」となる恐怖。もの捨てることを嫌う認知症のおばあちゃん。さまざまな苦難を乗り越え、「なんにもない」空間をやっと手に入れ、(おばあちゃん含め家族の理解も得られて)現在に至ります。著者のこだわりのお住いの写真つき。お片付けのヒントがあちこちに隠されている本です。
池辺葵『プリンセスメゾン』
私の理想のおうちはどこにあるの?20代独身女性が都内でマンション購入に奔走するお話です。
マンションの見学会に参加する彼女は、どこか寂し気で頼りなさそうで。でも、質問はスルドイ!真剣に前向きに検討しているのです。自分だけの夢の住まいを手に入れるために。
居酒屋で働き、少ない給料をマンション購入のため貯金>休日はマンションギャラリーの常連となりいろいろな物件を見て歩く日々。彼女のこだわりや条件に見合った家は見つかるのでしょうか?マンション購入を考えている方、いろんなアドバイスがもらえます。
マキヒロチ『吉祥寺だけが住みたい街ですか?』
吉祥寺にある重田不動産のオーナー・重田富子・都子姉妹。容貌もさることながら体型も瓜ふたつの双子です。吉祥寺にマイホームを探しに来たお客様にベストなおうちをご紹介します。アンニュイな雰囲気とため口のなれなれしさ+押しの強さに圧倒。でもお客様のこと瞬時に理解して、その人が心の底で望んでいたような家を紹介する技術はすばらしい。
人気のエリア吉祥寺に憧れる人はたくさんいますが、それ以外の地域の素晴らしいところをふたりが紹介してくれます。東京で家探しをされている方は、一度、重田不動産へお越しください。
明日からの日常が少しだけ輝いてみえるかも。
どの漫画もオリジナルな世界観で、日々の疲れを忘れさせてくれます。読み終えた後、眠る前にあなたの日常を考えてみてください。今読んだ漫画のように愛すべき部分がたくさんあるでしょう?明日から続く日常もあなた自身で大切にしてあげてくださいね。おやすみなさい。
異例のヒットを記録したアニメ映画『この世界の片隅に』の原作者・こうの史代さんの作品です。夫・壮介の間抜けた鬼畜っぷりと、妻・道のほんわかしたおっとり加減が絶妙です。酔っぱらうとすぐ物をあげてしまうお父さん(妻の父)と、酔っぱらうとすぐ物を盗ってくるお父さん(夫の父)が、酔っぱらって決めた二人の結婚、いわゆる交際0日結婚です。妻のおおらかさがいい加減でダメ男な夫をふんわり包み込んでる感じ。ほのぼの夫婦の日常ですが、「え。それってヤバいんじゃないの?」という場面でもほのぼのしちゃってるので、どうなるのか心配しつつ、あっという間に読み終えてしまいます。