時には「大学」のアカデミック空間で、知的好奇心を刺激しませんか
出典: 社会人になって、学問から遠ざかっているという方も多いのでは?そこで、今回は、純粋な知的好奇心を呼び覚ましてくれるような、アカデミックな休日の過ごし方をご提案*
今回は、真理の探求に情熱を注ぐ者たちの学びの場、「大学」が手がける美術館・博物館を取り上げます。
出典: 大学が手がけているとあって、歴史的価値の高い貴重な資料、社会貢献に繋がる情報が勢ぞろい。研究者や学者、芸術家などの活動拠点でもあるため、レベルの高い、アカデミックな空気を堪能できますよ。
出典: なかには建物自体、歴史的価値が高かったり、世界的建築家が手がけたりしている、見ごたえ十分の施設も。
社会人生活に慣れた今、あえて大学の空気に触れて、学生時代の情熱を思い出すような経験を楽しんではいかがでしょう。
圧倒的なコレクション数を誇る、国立大ならではのアート展示
出典: 国立西洋美術館、国立科学博物館など、日本屈指のアートスポットが集う東京・上野公園。その公園に隣接しているのが、国立の「東京藝術大学」。
その前身は官立の旧制専門学校「東京美術学校」と「東京音楽学校」であり、日本で最も歴史ある芸術分野の最高学府と謳われています。
出典: 「東京藝術大学大学」の美術学部構内にあるのが、こちらの「東京藝術大学大学美術館」です。
約29,000件という日本有数のコレクションを形成。その内訳は東京美術学校以来のコレクション、歴代卒業生の作品、研究のための資料など、多岐にわたります。
出典: 展示スペース、そして収蔵や研究管理の施設も入っています。さらにはカフェテリア、ミュージアムショップ、画材店もあり、お土産選びを楽しむことができます。
出典: 毎年「藝大コレクション」というコレクション展示を行うほか、定期的に、この美術館でしか実現できなさそうな企画を実施。
展示は基本、鑑賞料金がかかりますが、過去には、このような明治時代の工芸品を紹介したりと、面白い企画が盛りだくさん。昨年は創立130周年記念特別展として、宮内庁のプライベートコレクションを集めた、皇居外初公開の作品展示「皇室の彩(いろどり)」を開催。大きな反響を呼びました。
出典:www.flickr.com(@midorisyu) ちなみに建物を設計したのは、本大学の名誉教授でもある建築家・六角鬼丈氏。展示スペースをつなぐ螺旋階段の美しさも必見です。
出典: ミュージアムカフェは、ホテルオークラが運営。ホットケーキなど、どのメニューも本格的な味わいで、鑑賞後の余韻に、上質な気持ちで浸れそうです。
日本の古き良き伝統の工芸品、そして刑罰の歴史も紹介
出典: 御茶ノ水駅そばに凛とたつ、地上23階、地下3階のリバティタワーがランドマーク的存在になっている「明治大学」。
出典: 隣接しているアカデミーコモン地下1階に、「明治大学博物館」があります。
特別展示室では、国内外の工芸文化や考古学について学べる企画を、定期的に実施。こちらは数百円の鑑賞料金がかかる場合が多いです。
出典: 一方で、常設は無料で楽しめます。広々とした空間に「商品」「刑事」「考古」の3部門で構成された展示室が設けられており、充実の内容!
出典: 「商品」の部門では、陶磁器、漆器、染色、友禅、木工品など…。古くから受け継がれる職人技によって伝統工芸品ができるまでの工程を紹介するコーナーが設けられています。
出典: 染色では、工程によって染め具合がわかるサンプルを展示していたりと、写真ではなく本物が使用されているのがわかりやすくて、嬉しいですね。
出典: この博物館で有名なのが、リアル感あふれる「刑事」部門。このようなギロチンの実物大模型など、江戸時代の捕者具や諸外国の拷問・処刑具などを展示していることが大きな特徴です。
昔の人は、どのような罪で、どのように裁かれていたのか――。自分の倫理観に問いかけながら、見てみてくださいね。
出典: そのほか大学史展示室も。昔の授業や学生寮の体験・再現コーナーなど、こちらはリラックスして楽しめますよ◎
シェイクスピア時代の劇場の雰囲気を放つ、演劇専門博物館
出典: 早稲田大学構内にある「坪内博士記念演劇博物館(通称エンパク)」は日本で唯一、演劇を専門的に扱う博物館。雑誌『早稲田文学』の成立にも貢献した英文学者・坪内逍遥(つぼうちしょうよう)博士の記念館も備えています。入場は無料です。
出典: 外観、内観ともに、クラシカルな雰囲気が素敵ですね。坪内博士の発案により、エリザベス朝時代、16世紀イギリスの劇場「フォーチュン座」を模してつくられたそう。
出典: こちらはエンパクの貴賓室として作られ、坪内博士の書斎としても使用されていたという、二階の「逍遥記念室」。
出典: 天井には坪内博士の干支であり、博士が好きだったという「羊」があしらわれています。かわいい魅力を発見できるのも、なんだか楽しいですね。
東洋美術、近代美術、考古学など、貴重な歴史的資料の宝庫
出典: エンパクと同じく、早稲田大学の構内にあるのが、こちらの「會津八一(あいづやいち)記念博物館」。日本の歌人・美術史家・書家…と、卓越した才能で活躍し、早稲田大学文学部教授を務めた會津八一氏を記念してつくられた博物館です。
會津氏所有のコレクションをはじめ、戦前より行われた考古学の発掘資料、寄贈された近現代の美術作品など…貴重な歴史的資料を用いた企画展示が楽しめますよ。
出典: 早稲田大学では2番目に古い鉄筋コンクリート建築物で、早稲田大学出身の建築家・今井兼次氏のデビュー作でもあります。
今井氏は日本にガウディを紹介した人としても知られており、細やかな装飾など、ガウディっぽいエッセンスを見つけられるのも魅力。建築好きな方も、ぜひ訪れてみてくださいね。
幕末から紡がれる学習院大学の歴史と、伝統に親しめる場所
出典: 起源は、幕末の京都に設けられた公家の教育機関にあたり、皇族方が通われていたことでも知られている、歴史深い「学習院大学」。目白駅から歩いてすぐのところにあります。
出典: その構内の北別館にあるのが、「大学史料館」です。
中世以来続く公家・地下官人、近世~近代にかけての大名・華族や大名家家臣や幕臣、また村の名主家史料、そして現代にいたるまで…。あらゆる関係者の史料の整理・保存と公開を行うことを目的としており、総件数はなんと、14万件にのぼります。
出典: おすすめは、史料館展示室で行われている展覧会。宮中文化に関係する企画が多く、日本ならではの文化の美しさに触れられるのが魅力です。
ちなみに施設は明治42年に図書館として建造された建物の一部で、現在は登録有形文化財に登録されています。歴史的建築もあわせて楽しんでくださいね。
レトロモダンな意匠に込められた、設計者の想いを味わう
出典: 学習院大学と同じく、目白駅が最寄りの「日本女子大学」。
出典: 「成瀬記念館」は日本女子大学の正門を入って左側に建つ、赤煉瓦のロマネスク調の建物。本大学の創立者・成瀬仁蔵(なるせじんぞう)の教学の理念と学園の歴史を明らかにし、広く女子教育の進展に寄与することを願って設立されました。
そのような見ごたえのある常設展示と、定期的に内容を変える企画型の展示を行っています。
出典: 2階へあがる際に見える丸いステンドグラスが、なんともお洒落。
成瀬氏と日本女子大学に対する深い理解と愛情を持つ建築家・浦辺鎮太郎氏によって設計されたそうです。
そのほかにも階段、階段の手摺子、窓上のひさしまで、いたるところの意匠に、素敵なこだわりが感じられますよ*
出典: 「駒澤大学」といえば箱根駅伝で有名ですが、実は「禅」の研究に力を入れており、禅の思想を追求する研究所も備えています。
出典: 常設展示室では「禅の世界」を紐解く企画を楽しめるほか、企画展や、駒澤大学の歴史に触れられるコーナーも。ときには禅の体験イベントも行っており、「禅」を見て、知って、実践して…と、濃い時間が過ごせそうです。
東大が企画する人類進化の歴史に触れて、ミライを見つめる。
出典: 偏差値の頂点を極める「東京大学」。本郷キャンパスのシンボルとなっている赤門、あなたも学生気分でくぐってみませんか*
出典: 本郷キャンパス内にある「東京大学総合研究博物館」は無料で入館できますよ。考古学・人類学関係の標本資料などが豊富に揃っています。最高水準のアカデミックな空気に触れてみてはいかがでしょう。
東京大学 総合研究博物館 小石川分館 @小石川植物園
出典: 東京大学 総合研究博物館の「本郷本館」に続いて、こちらは「小石川分館」。白山駅から歩いて15分ほど。東京大学大学院理学系研究科の管轄にある「小石川植物園」の敷地内にあります。
旧東京医学校本館の建物を使用した建物で、建築好きの心もくすぐるはず。建築ミュージアムとして“アーキテクチャ”の視点での企画展示を行っています。
出典: 日本にとどまらず、世界各地の動物の剥製や標本、暮らしの道具などが展示されていますよ。珍品や、驚くほどの年代物も。きっと宝探し感覚で、ワクワクしながら過ごせるはず♪
出典: 隣接する「小石川植物園」でも、ぜひ散策を楽しんでみてください。東京大学が植物学の研究・教育活動を目的に管理しており、近代植物学発祥の地としても名高い植物園です。面積は48,880坪、台地、傾斜地、低地、泉水地などの地形を利用して様々な植物が配置されています。
出典: なかでもチェックしてほしいのが、「ニュートンのリンゴ」。
そう、物理学者・ニュートンが「万有引力の法則」を発見するきっかけとなったと言われる、あのリンゴです。その有名なリンゴの木が接ぎ木して増やされ、昭和39年、日本にイギリスから贈られたものが、ここに植樹されました。
あなたもこの木の前に立てば、すばらしいアイデアや発見を得られるかもしれませんよ。
出典: 敷地内にある、木造平屋建の洋館「柴田記念館」にも立ち寄ってみては。植物生理学者で東大教授の柴田桂太氏の業績をたたえる施設で、もともとは研究室として使用されていました。柴田博士が植物の研究に注いだ、ひたむきな情熱を感じ取ってみてくださいね。
お出かけの際は、事前にHPで開館情報をご確認ください。現在公開時間は土曜、日曜、祝日の10:30~16:00となっています。
JPタワー学術文化総合ミュージアム インターメディアテク @丸の内
出典: 場所は変わって、にぎやかな東京駅のそば、丸の内エリアへ。旧東京中央郵便局の歴史ある建物の一部を保存・再生し建築された、大型な商業施設「KITTE(キッテ)」のなかに、東京大学が手がける博物館「インターメディアテク」があります。
出典: 東京大学と日本郵便による共同運営で、入場無料。それなのに2、3階のフロアを有した広々空間で、アカデミック企画を満喫できますよ。
出典: 常設として、東京大学コレクションを楽しめます。どんな時代の、どんな動物たちの生きぬいた姿に触れられるのか――。「KITTE」でお買い物の際は、ぜひこちらにも寄ってみてくださいね。近くに「三菱一号館美術館」もあるので、はしごしても楽しめそう♪
渋谷駅から10分ほど歩いたところにある「國學院大學」。日本の徳性、国柄の究明を目的とした、神道(皇道)教化による神職養成機関という、珍しい、皇典講究所を母体とする大学です。
併設されているのが、こちらの「國學院大學博物館」。入場無料ですよ。
出典: 「神道」「考古」「校史」の三本柱の展示となっており、「神道」ゾーンでは、日本各地の神社の祭りや、信仰の歴史に焦点を当てた展示が目白押し。実物大のレプリカや音声、映像などを交えて、体感しながら学べるようになっています。
こちらは「考古」のゾーン。考古学の遺物が豊富に展示され、その精神性まで探ろうとする丁寧な研究成果に触れることができます。
縄文時代の土偶のほか、火焔型土器などもたくさん。間近に見ると、デザインのなかに、今もなお色あせない、不朽の美しさを感じることができます。
出典: お釈迦様の世界を垣間見ることも。古代中国など、他国からの文化の影響を感じ取れますよ。
出典: 心がほっこりするような馬の埴輪もあり、色んな発見に出会えます。ぜひ気軽に訪れてみていただきたい場所です。
出典: 「國學院大學博物館」から徒歩5分ほど。あわせて立ち寄ってみていただきたいのが、「実践女子大学」の中にある「香雪記念資料館」です。入館する際は、右手側の看守室のほうへ行って、手続きをしてくださいね。
出典: 「香雪記念資料館」の香雪とは、学祖・下田歌子の号に由来して名づけられたそうです。ややこじんまりしていますが、女性の文化活動を顕彰するような、様々な啓蒙的展覧会を定期的に開催。また、下田歌子記念室で常設展示を楽しめます。
女性の視点での、日本美術史に親しんでみませんか。
日本を代表する建築家、藤本壮介氏設計による“書物の森”
出典: 最後に、東京の小平市にある「武蔵野美術大学」を取り上げたいと思います。絵画・版画・陶芸・彫刻など…あらゆる芸術にまつわる学びの場であり、世界的アーティストや芸能人を多数輩出しています。
出典: その敷地内にある「武蔵野美術大学 美術館・図書館」は、その名の通り美術館と図書館を併設。建築家の藤本壮介氏が設計を担当し、“書物の森”というコンセプトのもと、渦巻き型の書架の壁をもつ図書館を生み出しました。
外観はこのように、陽の光を美しく反射する壁面ガラスが印象的です。
出典: 美術作品やデザイン資料、貴重書など、多岐に渡る貴重な研究資料をコレクションとして有するほか、デザインの本質に迫る、洗練性に満ちた企画展示を行っています。
ぜひ展示とともに、藤本壮介氏が手がける建築美、個性的な学生でにぎやかな、美大ならではの雰囲気を、あわせて満喫してみてはいかがでしょう。
出典: いかがでしたでしょうか。大学の素敵な空間を訪れれば、きっとあなたが学生時代に抱いていた、学ぶ情熱が呼び起こされるかもしれません*
無料のところが多いので、気軽にふらっと寄ってくださいね♪
国立西洋美術館、国立科学博物館など、日本屈指のアートスポットが集う東京・上野公園。その公園に隣接しているのが、国立の「東京藝術大学」。
その前身は官立の旧制専門学校「東京美術学校」と「東京音楽学校」であり、日本で最も歴史ある芸術分野の最高学府と謳われています。