日々の装いにそっと寄り添う『aya』の手刺繍
手仕事ならではのぬくもりにあふれた作品たち


刺繍作家『aya』さんの作品は、アクセサリーや布小物など、どれも毎日の普段使いにぴったりのものばかり。飾りすぎないけれど、身につけているとちょっと嬉しくなるような、手仕事ならではのあたたかみが伝わってきます。
では、これらの作品はどんなこだわりとともに作られているのでしょう?
パリで学んだオートクチュール刺繍をいかして

小さい頃から物を作ることが大好きだったというayaさん。
高校卒業後ファッションの専門学校に進み、その後はアパレルメーカーでデザインの仕事に就かれました。毎シーズンたくさんのアイテムを生産するダイナミックな物づくりは刺激的だったけれど、やがて「数は少なくても自分の手で物を作り出す仕事をしたい」と考えるようになったそうです。

アパレルメーカーを退職後は、一度暮らしてみたいと思っていたパリに行き、短期間ながら憧れのオートクチュール刺繍の学校に通って基礎を学ばれました。 帰国後、「パリで学んだ技術を活かしながら日常の中で楽しめるような物を作りたい」という思いから、手作りのブローチやバッグなどを作り始めたのが刺繍作家としてのスタートだそう。その気持ちが今もずっと変わらないからこそ、ayaさんの作品はひと針ひと針本当に丁寧に仕立てられているんですね。
作品のテーマは日常の小さな出来事や自然の風景

ayaさんの作品は、その時々、自分の琴線に触れた日々の出来事や風景の中から生まれると言います。 沖縄の海でたくさんの魚に出会った後に制作されたのが、冒頭にご紹介したお魚シリーズ、“Seaside memories”。こちらの可愛い家やお城は、バルセロナでいろいろな建築物を見た後に生まれた“Welcome to my castle”という建物モチーフのシリーズです。

またayaさんの作品は、とても優しい色彩の組み合わせで仕上げられています。これらの色はどれも、晴れた日の空や窓から見える木々など、何気ない日常の中で心に残った色から集められたものだそう。色への深いこだわりもayaさんの作品に欠かせない大切なポイントなのですが、詳しくは後ほどご紹介しますね。
『aya』の可愛い刺繍作品をご紹介します
ブレスレット ”Aran”

冬のニットの定番、縄編みのアランセーターをヒントに生まれたという、細身のブレスレット”Aran”シリーズ。組み合わされた糸の色合いがどれも爽やかで、夏の白Tシャツなどの軽装にさりげなく合わせたくなるアクセサリーですね。
イヤリング ”cotton drop”

コットンで紡ぐ宝石、”cotton drop”シリーズのイヤリングです。光沢のあるの糸のツヤを宝石に見立て、ビーズで飾った人気のアイテムで、ピアスにもできます。硬質な石の輝きとはまた違った、あたたかみのある煌めきが嬉しい手作りのジュエリーです。
ネックレス "ice bar"

色とりどりのアイスキャンディーをイメージしたネックレス"ice bar"。小さなアンティークビーズが、微妙な色合いの変化で味わいを添えてくれています。控えめなキラキラが可愛く、夏の涼しげな襟元にもおすすめです。
カードケース “Carte”

ayaさんの最近のお気に入りだというカードケースのシリーズ“Carte”。フランスの画家、クートラスが小さな長方形の板に様々な絵を描いた、まさにカルタのような “Carte”という絵画の一群から着想を得たものだそうです。
手のひらサイズのオーガニックコットンの表地にギュッと凝縮された、刺繍ならではの小さな世界がとても繊細ですね。
これからも、自分の中の景色を描いた Carte を作り続けていきたいというayaさん。次はどんな世界が見られるか楽しみです。
手作りの醍醐味が味わえるキットもあります
展示会などのイベントでは、ayaさんの図案を自分で刺繍して楽しむことができるキットも販売されています。こちらはベルギーのリネンメーカーLibeco(リベコ)の白いナプキンに刺繍で白鳥を描く"cygne"(シーニュ)。50cm角と大きめなので、ナプキンにはもちろん、かごの目隠しなどインテリアに使っても素敵です。

こちらは可愛い花束をくわえて飛び立つ鳩の図柄を刺繍していくキット、"Pigeon"(ピジョン)。持ち手がリボン結びになっているおしゃれなショルダーバッグです。バッグ自体も仕立てていくので、ソーイング好きの方にはさらに楽しめるキットになっています。
オーガニックコットンのオリジナル刺繍糸 "Sunny thread"

毎日の暮らしの中、ふと目にした自然の風景や、そこに息づくとりどりの色彩を創作活動にも活かしてきたというayaさん。
あるとき出会ったオーガニックコットンをきっかけに、もの作りと自然との関わり方を考えるうち、自分の作品に欠かすことのできない刺繍糸もオーガニックコットンで作ってみたいと思うようになったそうです。

そして2016年、オーガニックコットンに天然素材で染色したオリジナル刺繍糸、"Sunny thread"(サニースレッド)が誕生しました。ayaさんがたくさんの気持ちを込めてプロデュースした、このこだわりの刺繍糸について詳しくご紹介しましょう。
オーガニックコットンへの思い

ご自身の作家活動を続ける傍ら、様々な仕事に携わる中でオーガニックコットンに巡り合ったayaさんは、そのフワフワとあたたかい肌触りに魅了される一方、コットンが作られる背景にある様々な問題(農薬のこと、土壌汚染問題など)を知ることになりました。

そこで取り組み始めたのが、太陽の恵みをたくさん受けて健やかに育ったオーガニックコットンで、オリジナルの刺繍糸を作るプロジェクト。使う側だけでなく、コットンを作る側にも思いを馳せ、オーガニックコットンの魅力をみんなで分かち合いたいという気持ちから生まれたのが、"Sunny thread"です。
植物の鮮やかな色を染め付けたこだわりの15色

ayaさんの自然に対するアプローチをそのまま形にした"Sunny thread"は、もちろん染色も天然素材。瑞々しい鮮やかな発色が魅力のボタニカルダイという植物染料を用いた染色方法で、染のプロの方と相談しながら、再現したい色とそのイメージにあった植物をayaさん自身が丹念に選びながら作り上げていったそうです。
出来上がった15色の糸はご覧の美しさ。ご自身の制作にはもちろん、刺繍を嗜むたくさんの人に使ってもらいたいという思い、またこの糸をきっかけとして、オーガニックコットンや刺繍に興味を持つ人が増えてくれたら、という願いも詰まったスペシャルな刺繍糸なのです。
色の物語を綴ったブックレットもあります
もともと写真を撮ることが好きで、日々少しずつ撮りためていたというayaさん。"Sunny thread"の15色も、ご自身の写真や記憶の中の愛おしい景色から選ばれた色たちです。これら一色一色にまつわるそれぞれのエピソードは小さなブックレットにもなっていて、内容はwebページからも見ることができます。
色に添えられた素敵なストーリーをちょっとだけご紹介
Color # 2 【 rose in the rain of May 】

Color # 4 【 Tokyo 】

よくこんなに建てたもんだ。 怖くて、きれいな一面グレー。 」
Color # 5 【 Sunny day in May 】

Color # 8 【 a little spring on the dish 】

Color # 11 【 Beauty of June 】

Color # 12 【 Sweet and sour 】

今後予定されているイベント
『Go green market』TOKYO | 6月2日(土)、3日(日)

6月2日(土)、3日(日)に東京で行われる『Go green market』 に出展予定。こちらは、緑あふれるフローラルガーデンでたくさんのボタニカルショップやクラフトショップが集まるイベントです。
Sunny ThreadやSunny Threadを用いた作品を中心に、グリーンに似合う色々なアイテムを用意できたらと考えていらっしゃるそうですので、お近くの方はぜひお出かけ下さいね。
手作りを身につける小さな幸せ、ここにあります

絶妙な色遣いと繊細な刺繍で綴られるayaさんの作品世界は、手仕事の小物を身につけることの小さな幸せを思い出させてくれます。物が溢れるこの時代だからこそ、時間と手間と技術を注いで丁寧に作られた品物と暮らすことは、ちょっとした贅沢なのかもしれません。

また、オーガニックにこだわったふわふわの美しい糸"Sunny thread"は、刺繍を楽しんでいる多くの方に、良質な素材と出会うことの嬉しさや、素材そのものへのリスペクトを伝えてくれるのではないでしょうか。
興味を持たれた方は、ぜひayaさんの作品たちと"Sunny thread"を手に取ってみて下さいね。
ぷっくりとした丸みと、なんとも言えないほのぼのとした表情がたまらないビーズのお魚たち。どれも手に取って、指先でそっと撫でてみたくなるような可愛らしさです。