基礎から一歩すすんで。中級者向けの画材とおすすめポイントなど
パステルのポイント
パステル+モノタイプ
印象派の巨匠ドガの描いたバレリーナ。
モノタイプと呼ばれる版画と絵画の中間のような技術を使って刷りあげた上にパステルで色付けした作品。柔らかな風合いと絶妙な色味に魅せられます。
パステル+水彩絵の具
こちらは写真を転写した画面に水彩絵の具とパステルで彩色を施した作品。柔らかな風合いを得意とする水彩絵の具とパステルは相性の良い組み合わせです。
パステルやクレヨンで描いた作品は、パステル用のフィキサチーフ(定着液)を仕上げにかけることでパステルがピシッとその場に固定されます。その際スプレーが画面と近すぎたりすると水彩絵の具が流れてしまうことも…。フィキサチーフを吹き付ける際は離れたところから数度に分けてふわっと吹き付けるようにしましょう。
岩絵具のポイント
制作に入る前の段階で、絵の具の準備に手がかかる日本画ですが、ある程度手間をカットする便利なアイテムもあります。
本来は膠を砕いてからぬるま湯で溶かして絵の具を接着する膠水を作りますが、「日本画用膠液」という商品が売られています。これを使うと簡単に始めることができます。
絵の具についても、本来は「天然岩絵具」と呼ばれる鉱石など岩を乳鉢で砕き、すりつぶして使いますが、「新岩絵具」などと呼ばれるすでにすりつぶされた人工の日本画用絵の具も販売されています。値段が天然よりも安価なので初めてならこちらで。
カルチャースクールや画材屋さんなどの一日体験ワークショップで初心者向けの画題からはじめてみるのもおすすめです。
インクのポイント
インク+マーカー
流性のたかくしっかりとした濃さを持つインクは細く繊細な線を描くのにぴったり。
硬質な線も、鼓動を感じるような揺らぎのある線も書き分けられるので描き手の意図を繊細に反映してくれる画材です。
Gペン、スプーンペン、カリグラフィー用などペン先を選んで使い分けるのも楽しいですよ。
こちらの作品ではグレーのマーカーで面を塗り、モノトーンでまとめることでより立体感の感じられる作品に仕上げています。さっと使えるマーカーは細かく色面を分けるようなイラストでも慣れると短時間で仕上げられます。
組み合わせて使うと、表現力が上がる画材について
油絵の具+オイルバー
水彩絵の具+マスキング液
水彩絵の具の弱点は、一度描いて乾いてしまうと描き直しが難しいこと。白い不透明絵具で消すこともできますが、その上に色を載せると周囲と違う質感になってしまいます。メラミンスポンジなどで絵肌を削って消す方法もありますが、完璧に消えるものではありません。
そこであらかじめ白く抜いておきたいところをマスクするアイテムとして、マスキング液というアイテムがあります。
使い方は簡単!液を白く残したいところに塗って乾かすだけ。乾いたあと、絵の具を塗るとそこだけ色が乗らなくなります。
塗り終わった後は専用のゴムを使えば難なくマスクが剥がれます(消しゴムなどでも代用可能ですが、マスキング液専用のゴムを使う方がベター)。背景を味のあるグラデーションにしたい場合や細かい白抜きを施したい場合に便利です。
けばだった紙や薄い紙には不向きです。また、瓶に入ったものの他、ペンシル状の容器に入っていてそのまま使える商品も販売されています。
マスキング液自体は水彩以外にもアクリル絵の具などとも併用も可能ですが、アクリル絵の具の場合は厚みによって予期せぬはみ出しが生じる可能性があるため注意が必要です。
練習にぴったり!白以外の下地に描くデッサン
色付きの紙+チョーク
紙の色と画材の色の調和を目指したデッサンとして18世紀ロココ時代のフランスで流行った技法が「トロワクレヨン(3つのクレヨン)」です。ベージュやグレーなど白以外の紙に、白・黒・茶褐色のチョークを使うことが多かったようです。二色で行う場合はドゥークレヨン(2つのクレヨン)と呼ばれているそう。
通常白い紙に描く場合は影(色の濃い部分)を書き重ねて表現しますが、白を用いることで明るい部分を描く描写に意識が向けられます。現在でもデッサンの一貫として美術系の授業で取り組まれることが多い技法です。写真ではピンクの紙に描いていますが、グレーやベージュの紙での制作が多いかと思います。
特に光の描写が必須になる油絵やアクリルガッシュなど不透明技法の練習にもぴったりのデッサン画なのです。
ミクスドメディアの技術をマスター!
アクリル絵の具は紙や木に限らず様々な物体に塗ることができます。ガラスの上に繊細な線を施したり、金属や石、陶器などに着色もOK、紙をコラージュしたり、ラメや砂つぶのような装飾を加えることも可能です。
写真はモザイクのようにタイルを配し、クラッキングメディウムでひび割れを施した作品。
※絵の具の濃さや塗るものの表面によって塗りにくいものもあります。また、状況によってひび割れたり色味が変化する可能性もあるので、テストをしてから塗るのが望ましいです。
定着力を強めるメディウムなどもあるので、メーカーのインフォメーションもチェックすると良いでしょう。
ミクスドメディア作品にはメディウムが便利
色の元である顔料と、それをつなぎとめる接着剤が合わせたものが、一般的に使われている絵の具の中身です。
アクリル絵具は顔料と樹脂メディウムから出来ています。
この接着剤のことをメディウムと言い、そもそもは絵の具の構成要素のことを指していました。現在画材屋さんなどで売られている代表的なメディウムはアクリル絵の具のメディウムになります。
下地によく用いられるジェッソ、透明感を演出したり、波とか水しぶきの表現を作るグロスポリマーメディウム、ゴツゴツとした質感を作れるセラミックスタッコなどが様々な特徴を備えたメディウムがあります。面白いメディウムとしては、胡粉(※)の質感を再現した胡粉ジェッソや、乾きを遅らせるリターディングメディウムなどもあります。
作品に合わせてメディウムを活用すると制作の幅が広がります。写真(この記事のために著者撮影)は、セラミックスタッコを薄く塗って下地を作ってからイエローで着彩したイラストボードです。
(※)胡粉とは貝殻からつくられる日本画の白色絵具のこと。最近では“胡粉ネイル”で知名度を上げていますね。
コラージュでいろいろな表現に挑戦!
紙や写真などを一つの画面に組み合わせて配置した作品をコラージュと言います。ピカソやブラックが始めた技法「パピエ・コレ」から発展したものと言われており、自分自身で描いた造形以外のものを貼り付けるなど、斬新なものでした。
その後立体的にコラージュするアッサンブラージュに発展します。
アクリル絵の具+メディウム+ペーパーコラージュ
現代でもコラージュ技法は様々な場面で広く使用されています。スクラップブッキングなど写真を用いたプライベートなアルバム作りにもオススメです。
こちらはパーツや写真、メディウムなどを使って1枚のオリジナル作品に仕上げるキット。こうしたコラージュの際にもアクリル絵の具とメディウムは相性が良くおすすめ。色を塗ったり文字を描き入れたりするのにはアクリル絵の具がぴったり。画面にテクスチャーという凹凸をつけるのにはメディウムを使います。凸凹をつけた後に茶系の絵の具でかすれを加えてエイジング加工したり、レンガ調の背景をリアルに表現したりと作品としての仕上がりがグレードアップします。モデリングペーストやメディウムを使えばビーズなどちょっとした立体物を埋め込むこともできます。
画材独自の素材感を生かした作品づくりを
メディウム+アクリル絵の具
こちらはアクリル絵の具ならでは質感を生かした作品。そのまま時を止めたような表現。昔の人に見たらさぞ驚くことでしょう。こちらはポーリングメディウムと赤色のアクリル絵の具を混ぜて使っているようですね。ポーリングメディウムは水飴のように伸びて、他の色と混ざりにくくなる変り種メディウム。
絵の具やメディウムの中には混ぜることで変色したり、ひび割れたり、化学反応を起こして予期せぬ結果をもたらす組み合わせもあります。今までに聞いたことのないような組み合わせを試す際は、よく調べてから試すようにしましょう。
枠だって自分好みに♪シェイプドキャンバスについて
絵画は四角いものばかりではありません。
シェイプドキャンバスと呼ばれる技法は、キャンバスの形を自由に作り上げることで新たな絵画を形作る試みでした。
新しいお気に入りの画材が見つかりますように...
クレヨンから始めた人も、水彩絵の具、油絵、コピックから始めた人も、それぞれの最初の画材の思い出があるかと思います。
新しい画材にチャレンジして、より深く制作の時間を楽しんでみませんか?
画材を変えれば、塗る順番などの手順のほか、筆から伝わる感触も異なってきます。それぞれの画材の特徴をしっかり抑えることで、制作の際、表現の幅を広げることができます。
何より、新しい画材に触れておっかなびっくりに描き始め、どんどん意のままに描けるようになるプロセスは、少しの戸惑いはあるものの新鮮な感動を味わえますよ。