大人だからこそ読み取れる絵本からのメッセージ
子どものころ読んだ絵本をもう一度読み返してみると、こんな内容だったかと驚くことがあるものです。文を理解し経験を補足しながら絵本を読むと、新たに見えてくる作者のメッセージ。それは、子どもの頃とは全く違う絵本の世界なのかもしれません。
大人の心を癒す絵本の力
大人が絵本？と思われるかもしれません。でも少ない文章と絵で作られている絵本には、多くの「余白」が感じられます。その部分を想像することはいっときでも現実を切り離すことにつながります。また、短時間でリフレッシュしたり癒しを感じることができるため、大人にも絵本はおすすめなのです。
大人の心に優しく響くおすすめ絵本
動物の生きる姿にハッとしたいあなたへ。
大人向け児童文学の走りとなった「レオポルド・ジョヴォー」の「いつまでも、鰐」。動物の弱肉強食の世界をありのままに描きます。
シンプルでリアルな世界観は、生き抜くことの大変さをそのまま伝えてくれます。ページをめくる日ごとに違う感情に揺さぶられます。
魚の性質や種類について分かりやすく描かれています。魚といっても多くの種類や違いがあることに改めて気づかされます。
何かのはざまでもがくあなたへ。
ひとつの土地に住んでいた異なる種類の生き物が、小さなことから互いに憎しみあい諍いを始めます。近すぎるからこそ相容れない難しさを、スタイリッシュなイラストで見せてくれます。
大きいもの、小さいもの。どんなに頑張っても物理的な大きさの違いは埋められないことを改めて感じさせられます。
溢れる色にパワーをもらいたいあなたへ。
色が持つ意味、役割など普段目にする色についてイラストで解説してくれる一冊です。普段なにげなく見ている色にも意味があることを教えてくれます。
小さな赤ちゃんがリビングを冒険する様子を、多くの色を使ってカラフルに描きます。ページをめくると溢れ出る賑やかさに元気をもらえそうです。
ひと味違う有名作品を楽しみたいあなたへ。
アニメーション作家としても活躍するイタリアの画家、「ジャンルイジ・トッカフォンド」が描く「ピノッキオの冒険」。良く知られたお話も、イラストが違うと雰囲気が大きく変わります。
まるで新しい物語を読んでいるかのようにお話に没頭できそうです。
「金子國義」によるイラストが描かれた「不思議の国のアリス」。イラストがとても美しく、眺めるだけでも時間を忘れそうです。
宮澤賢治の世界を広げたいあなたへ。
「宮澤賢治」の詩作38篇に「小林敏也」による美しいイラストレーションを添えています。カバーや印刷など「絵本」全体にこだわり、世界観を作り出しています。
多くの絵本や書籍で目にしたことのある「宮澤賢治」作品ですが、イラストが違うと受ける印象も変わりそうです。
「宮澤賢治」の作品の中でも有名なもののひとつである「銀河鉄道の夜」。装丁家「司修」が絵を添えて重厚感のある雰囲気に仕上げています。新しい「宮澤賢治」の世界に触れられそうです。
大人だからこそ味わえる空気感に浸りたいあなたへ。
「和田誠」独特の余白をたっぷりと感じられる一冊。自分の気持ちを重ねながらページをめくりたくなります。
ほのぼのとして優しいイラストと穏やかな色味、絶妙なバランスのイラストが、ページをめくるたびに癒してくれそうです。
まるで自分が街を散歩しているかのような気持ちにさせてくれる一冊。その時の気持ちによって、街の見え方が変わってきそうです。
イラストレーターのマメイケダさんによる、「食べること」に特化した一冊は、食べることの喜びを純粋に感じさせてくれます。
イラストに添えられた、その時の状況や雑感に、共感できる一文がきっとあるはずです。そんな共感は、大人だからこそ、ですね。
おわりに
子どものものというイメージの強い絵本ですが、ページをめくると大人の心にも訴えてくるのがあります。ページを開くたびに違う世界を見せてくれる絵本、心の切り替えにぴったりの一冊を探してみませんか？
わかりやすい言葉と絵で多くのことを教えてくれる絵本。優しく楽しいものはもちろん、生と死を扱ったものまでテーマは多岐にわたります。子どもは絵を見てだいたいの内容を理解するのに対して、大人は字を読むことで理解しようとします。絵本への入り方が違う大人と子どもでは、同じ本を読んでも受け取りかたが違うのは自然なことです。