Prolog / パリとプロバンスを愛し幸福の絵画をクリエイトする画家
クチュールは、パリやペリグーの街中を散策しながら、たくさんのスケッチを残しています。
ダニエル・クチュールのプロフィール
クチュールはパリ郊外の街、ムーランで生まれ育ちました。パリ国立応用美術学校に入学し、卒業後はパリを拠点にグラフィック、広告や舞台装置など商業デザインの世界で活躍しました。テキスタイルデザイナーだった夫人と共に支え合いながら、デザインと絵画制作を両立させ、やがて画家へと転身し、その地位を確立していきました。
青い画集・・・2003年に出版されたクチュールの画集です。青に白のロゴが印象的です。都会であるパリは、彼のデザインワークスペース。一方、ペリグーは心身ともに解放されるアートスペースなのです。フランス人なら誰もが憧れる都会と田舎を行き来するライフスタイル「ピエタテール」を実践したクリエイターなのです。
画集には美しい油彩の他、パリのオペラ座や様々な風景、人物などを粘蜜な線画で描いたものもあります。
クチュールは2004〜2011年にかけて札幌、東京、神戸と3度来日しました。そして2011年、東日本大震災直後の5月にも来日しています。フランス政府の勧告により日本から本国に召還した大半のフランス人たち。そんな中、約束通り来日した彼は、誠実で大変な親日家でもありました。
東日本大震災直後の来日展でのエピソード
ダニエル・クチュールの作品ギャラリー
夢見るアネモネ
「アネモネ」・・・短く太い茎に可憐な花の可愛さとブルーの丸い花瓶がとても印象的なアネモネ。中でも、パッチリとした赤いアネモネがインパクトを与えています。
「花柄のテーブルクロスとアネモネ」・・・・青い小花模様の丸テーブルとアネモネのブーケがバランス良く、まるでこちらを見て微笑んでいるように見えますね!
歓びのブーケ
「ブーケパナッシェ」・・・色彩豊かなクチュールの作品では、彼のサインにいつも注目してしまいます。どの場所に配置するか、とても重要な要素です。それはまるで美しいデザインスカーフの刺繍のワンポイントのように、作品全体に彩りを添えます。デザイナーとしてのセンスが光りますね。
「キンセンカのあるブーケ」・・・青い背景に金色のキンセンカ。そしてキンセンカ色の花瓶とテーブルクロス。その取り合わせがキレイですね!
「ジャセントの鉢」・・・ジャセントとはヒヤシンスのこと。そばには、ジュリアンでしょうか?大小仲良く肩を並べる様子がなんだかユーモラスで楽しいですね。
「黄色を背景のブーケ」・・・まるで金の屏風の前にあしらわれれた美しい盛り花のようですね。クチュールの世界観には時おり東洋的なニュアンスを感じますね。
「青を基調のブーケと本」・・・青と白のコントラストが静かな美しさと優しさに満ちて、心の平安を感じます。
「マーガレットと絵筆」・・・クチュールのアトリエの隅には、いつもこのような幸福の花束が飾られていたのかもしれませんね!クチュールの画家としての自信に溢れた、充実した人生を感じさせるブーケです。
「バラ」・・・そっと優しく囁くように、心を和ませてくれる優しい白いバラ。その清らかさが新たな希望を与えてくれます。
「野ばらとジローフル」・・花を引き立てる真紅の背景が華やかなブーケです。強い生命力とエネルギーを感じますね!見ているだけで元気になれます。
「青を基調のサクラ草」・・・白・ピンク・紫・オレンジの4色のサクラソ草。愛らしくぷっくりと厚みのある葉と花びらがキュートですね!
「ひまわり」・・・太陽の花、輝くひまわり。背景には糸杉のある田園風景。大きなひまわりは主役になれる存在感です。ゴッホへのオマージュのようです。
PARIS
「オペラ通り」・・・オペラ通りには、老舗カフェやブランドショップが建ち並びます。特にメトロ(地下鉄)のオペラ座駅前では、待ち合わせる人たちでいつもいっぱい。そんなパリの風景を、クチュールは親しみを込めて描いています。
「秋」・・・やわらかに溶け込む秋の森の風景です。クチュールの描く森は優しく豊かな色合いに満ちています。
「ノートルダムの岸辺」・・・セーヌ川の対岸からノートルダム寺院を望む景観を優しい色合いで描いたパリの風景。
南フランスの風景
「ブリオンの城」・・・しっとりと落ち着いた色調で描かれた葡萄畑から望むシャトー。
「入り江」・・・風光明媚な南フランスの海を取り巻く、こうした風景をクチュールは多く描きました。北に位置し太陽の少ないパリの暮らしが長かった彼にとって、南フランスの光と風に包まれながらキャンバスに向かう時間は、きっと至福の時間だったことでしょう。
「窓の外の地中海」・・・明るく澄み切った空と青い海。降り注ぐ太陽と風を感じる窓辺です。木漏れ日を浴びる幸せな時間が流れます。
「ブルーの輝き」・・・赤い屋根が可愛らしい港町ののどかな風景と街並み。心にしみこんでいくようなブルーの海と白いボート、赤い屋根のコントラストがとっても素敵ですね!そこに暮らす人々の営みも一緒に描写されています。
「花咲くマントン」・・・マントンはイタリアとの国境にある静かな美しい街。手前にはパームツリーと咲きこぼれる花々、そして停泊した白いボート。海岸の向こうには灯台が見えるとてもロマンチックな風景です。
猫とあそぶ時間
「猫と金魚」・・・猫と金魚鉢、この取り合わせが、なんだかユーモラスでかわいい題材です。
「ソファの猫」・・・とっても気持ちよさそうに、クッションに顔をうずめる猫。そんな猫に向けるクチュールの優しい眼差しを感じるシーンです。
「子供部屋の子猫」・・・思わず「かわいい!」と叫びたくなります。子供部屋のピンクチェストの引き出しの中は、かわいいお人形が飛び出すおもちゃ箱。それを上から覗くいたずら好きな子猫。楽しい構図です。
「アネモネ」は幸福の花
アネモネの花言葉・・・赤いアネモネは「君を愛す」・白は「真実・期待・希望」・ピンクは「待望」・青は「信じて待つ」・紫は「あなたを信じて待つ」。そんなアネモネの語源はギリシア語で「風」を意味する( anemos )から。ギリシア神話で美少年アドニスが流した血からアネモネが生まれたとする素敵な伝説がありますよ!
幸せいっぱいアネモネのモチーフ
Epilog
クチュールの幸福に溢れる色彩の世界を楽しんでいただけたでしょうか?パリ滞在時にデザインの仕事を通して出会った私の大切な友人でもあるクチュール氏。その時に贈られた青い画集とメッセージは、クチュール夫妻との交流や、その楽しい思い出と共に今も私の大切な宝物です。彼の人生観への共鳴と尊敬、そして憧れを抱きつつ、ご紹介できたことを嬉しく思います。
クチュールが長く過ごしたパリのアパルトマンの窓からはエッフェル塔が見えました。白を基調にした明るいインテリア。デザイナーらしく機能的でシンプルな仕事部屋にはキャンバスと油絵の具の匂い。週末はアトリエのあるペリグーに出かけ、壁のペンキ塗り。そして、そこにはアネモネの花を愛し、キャンバスに向かう画家の姿がありました。クチュールの幸せ色に溢れる絵画の世界に浸ってみませんか?