リプロダクト家具（ジェネリック家具）を知ろう
リプロダクト家具は、この意匠権をはじめとする「権利の登録期間が過ぎた」＝「ライセンスの効力が切れた」デザイナーズ家具を、本来の権利者以外が制作した家具です。デザイナーの意匠を取り入れつつ、ライセンス料がかからないこと、材料費や設計費などをコストカットして、お求めやすい価格帯を実現しています。しかしながら、本来ならば無垢の1つの材で表現されている部分が合成木材になっているなど、品質が損なわれているケースもあるので良く吟味してから購入しましょう。
＜メリット＞
本物とそっくりのデザインの家具がリーズナブルな価格で手に入ること。サイズをより使いやすく改良したり、素材をより環境に優しいものに変更している事例も。
＜デメリット＞
デザイナーの細かな意図が反映されていなかったり、品質の面で本物より劣ることも。保証期間が短かったり、無いこともあります。
正規のライセンス家具を守る企業姿勢から学べること
1949年にハンス J. ウェグナーがデザインしたYチェアは、日本国内における立体商標をライセンスをカール・ハンセン＆サンジャパンが保持しています。意匠権が切れた現在も、商標権によって保護されています。従って、Yチェアのリプロダクト家具は存在しません。企業がデザイナーの設計意図を正しく後世に伝える手段として権利を保持した例です。
こうした正しい情報を把握しておくのも、違法なリプロダクト家具（つまりは模倣品）を掴まない為のポイントになるでしょう。
長い歳月を経たデザイナーズ家具でも、正規のライセンスを持った商品や、当時の設計意図や製法を正しく伝える努力を続ける作り手企業が多数あります。
イームズのシェルチェアも手がけるハーマン・ミラー社や、多くのデザイナーズチェアを流通するヴィトラ社など、製造権・流通権などを保持する企業の製品であれば、正規のデザイナーズ家具を安心して入手できるでしょう。
寒さに負けない体を目指す！ゆらぎがちな冬のご自愛ケアキナリノ編集部
人気のリプロダクト家具、集めました（一部正規品も併せてご紹介）
<正規ライセンス＞のシェルチェア（イームズ）
アメリカ・ミッドセンチュリーのどこか未来的な雰囲気を伝えるイームズのシェルチェア。チャールズ＆レイ・イームズ夫妻によって生み出された現代でも多くの人に親しまれる椅子です。
こちらはハーマン・ミラー社の正規ライセンス品。
<リプロダクト＞のシェルチェア（イームズ）
イームズのシェルチェアは特にリプロダクト品が多い人気のデザイナーズチェアです。
こちらはアーム部分がない「サイドシェル」で、木製の脚を使用した「ドゥエルレッグベース」というタイプのリプロダクト。
肘掛部分がある「アームシェル」タイプのシェルチェアです。レッグは「エッフェルベース」と呼ばれるもの。エッフェル塔を思わせる繊細なメタルレッグを採用しています。シェルチェアだけでも、様々なタイプのリプロダクト品が販売されていますね。
「ロッカーベース」と呼ばれるこちらの脚はロッキングタイプのリプロダクト。ゆったりとしたくつろぎ時間を満喫できそう。
＜リプロダクト＞のイームズ・デスクチェア
デスクワークがはかどりそうな機能美を感じさせる、イームズを代表するデスクチェアのリプロダクト。
＜リプロダクト＞のイームズ・オーガニックチェア
チャールズイームズ＆エーロ・サーリネンの手による「オーガニックチェア」のリプロダクト。有機的な曲線が美しく、パッチワークの張地も可愛らしい、座るのが楽しくなる椅子ですね。
建築界の巨匠が描いた家具をリプロダクトで
＜リプロダクト＞の LC2ソファ（ル・コルビュジェ）
近代建築の巨匠ル・コルビュジェの手がけたソファ「LC2」のリプロダクト。メタルの質感がソファにモダンなアクセントを添えてくれます。
＜リプロダクト＞のバルセロナ・チェア（ミース・ファン・デル・ローエ）
建築界の巨匠ミース・ファン・デル・ローエがバルセロナ万博の為にデザインした椅子のリプロダクト。モダンデザインの傑作として歴史に残る一品。
＜正規ライセンス＞のスタンダードチェア（ジャン・プルーヴェ）
建築家・デザイナーのジャン・プルーヴェが手がけた名作椅子「スタンダード・チェア」は、シンプルモダンな佇まいの中に柔らかな木の感触や座る人への細かな気遣いが感じられます。
こちらはvitra社の正規ライセンス品。
＜リプロダクト＞のスタンダードチェア（ジャン・プルーヴェ）
こちらはリプロダクトのスタンダードチェア。写真からでは違いが分かりませんね。
＜正規ライセンス＞のパントンチェア（ヴァーナー・パントン）
未来的な形・色彩がひかる建築家ヴァーナー・パントン。形の面白さがインテリアにアクセントを与えてくれる「パントンチェア」が人気です。こちらはvitra社の正規ライセンス品。
＜リプロダクト＞のパントンチェア（ヴァーナー・パントン）
こちらは同じくパントンチェアのリプロダクト。リプロダクト品だから、後ろに体重をかけたらばきっと壊れてしまうのでは？と思われるかもしれませんが、全然問題なく使えているそう。
＜正規ライセンス＞のプラットフォームベンチ（ジョージ・ネルソン）
モダンデザインの象徴、プラットフォームベンチは、ベンチやローテーブルとして暮らしのシーンに合わせて様々な役割を果たします。すっきりと無駄のない直線的なラインからは、建築家であり編集者でもあるジョージ・ネルソンの誠実なデザインへのこだわりが伝わってくるよう。座面は空気と光が通るよう間隔が設けられ、時間と共に変化する光と影のコントラストが楽しめます。和風のお部屋にもしっくり馴染みますね。
＜リプロダクト＞のプラットフォームベンチ（ジョージ・ネルソン）
こちらはプラットフォームベンチのリプロダクト品。サイズ・レッグの色など正規品との違いもありますが、美しい木の直線が目を引きますね。
＜リプロダクト＞のコーヒーテーブル（イサム・ノグチ）
まるで抽象画のような曲線が目を引くイサム・ノグチのコーヒーテーブルのリプロダクト品。イサム・ノグチらしい独特の雰囲気は既製品では見つけられないオリジナリティを感じさせてくれます。洋室・和室のどちらにも合わせやすいのが嬉しいですね。
デザイナーの思いを感じながらリプロダクト家具を日常に取り入れる
確かにリプロダクト品は、製作者によりその度合いは様々ですが、見た目だけを似せて作り、強度や質感・座り心地はまるで似つかないということも。とはいえ、デザイナーが作品に込めた意匠のいいとこ取りができ、手が届かない高品質のデザイナーズチェアを気軽に楽しめるのがリプロダクトの長所です。また、生産中止になってしまったものや限定生産されたもの、もう出会えない家具たちを蘇らせる意図をもってリプロダクトとして生産される意義深いものも。
そんな気軽に使えるリプロダクト家具は、巨匠がデザインに託したエッセンスを少しでも日常に取り入れるための架け橋でもあるのです。リプロダクト品の良い面と悪い面をよく理解し、上手に活用していただければうれしいです。
雑貨類もリプロダクトされています。画像はジョージ・ネルソンのサンバーストクロックのリプロダクト品。一つ取り入れるだけでお部屋をグッとおしゃれに彩ってくれますね。
「リプロダクト家具」という商品を家具屋さんで見かけたことはありませんか？
リプロダクト家具は、意匠権をはじめとする権利が切れたデザイナーズ家具を真似て制作された家具のことを指し、「ジェネリック家具」とも呼ばれます。通常、制作されたデザインは意匠権等を登録することでその権利を保護されており、正規ライセンスの保持者とライセンスを受けた者以外がそのデザインを制作すると権利を侵害したと見なされます。
意匠権は国によって守られる期間や条件も様々ですが、主に5年〜25年とされることが多いようです。日本では設定登録から20年とされています。また、意匠権以外にも商標権（家具の場合は特に立体商標権）を登録する家具もあります。この場合は登録の更新が可能な為、権利者が望む限り権利の行使が可能になるのだそう。