古くて新しいはんてんの魅力
宮田織物
宮田織物は大正二年、久留米絣(くるめかすり)の産地、筑後市で誕生しました。平成二十五年四月には創業百周年を迎えた老舗企業です。久留米絣の生産から始まり、今では時代に合わせたテキスタイルや洋服なども手掛けています。
宮田織物では糸選びから布地のデザイン、織りまで全てを自社で行っています。着る人のことを考え、木綿の風合いを活かした布地。それが久留米絣の伝統を受け継いだ「和木綿(わもめん)」です。
デザインを考え、経糸や横糸を丁寧に織機にかけ、ひとつの布地を織りあげるまでには沢山の工程と人の手がかけられています。その丁寧な仕事があってこそ、美しく着心地の良い和木綿が誕生するのです。
経糸と横糸の織りなす、絶妙な色合いと文様が和のテキスタイルの魅力です。宮田織物では年間約50柄近くの新しい布地を考案しています。古くからの文様を再構築し、新しいものへと挑戦する。飽くなき進化が豊かな織物を生み出しているのです。
そんな宮田織物が昭和40年からこだわりを持って作り続けているのが、綿入れはんてんです。綿を入れ、閉じる作業はすべて手作業。着る人の着やすさ、温かさにこだわり続け、愛用者も多い正に伝統の防寒着です。
ふんわり、あったか「はんてん」と暮らす
温かさのひみつ
宮田織物のはんてんは、中わたが違います。使っているのは混紡わた(綿80%・ポリエステル20%)・綿100%わた・真わた(絹100%)の3種類。はんてんの厚みや体へのフィット感などの違いから選ぶことが出来ます。
綿入れは手作業です。袖や襟など綿を二重で重ねる部分は特に丁寧に、厚さを削ぎながら馴染ませていきます。綿が動かないように縫い留める「とじ」の作業も一枚一枚手で行われています。その手仕事が着心地に繋がるんです。
多彩なデザイン
和木綿の生地で作られるはんてんのデザインは多彩です。こちらは帆風(ばんふう)はんてん。帆風とは船の進行方向に向かって吹く、追い風のこと。船の帆をイメージする縁起の良い意味のある三角柄の連なりが動きのあるデザインです。
小夜千鳥(さよちどり)はんてんは、すっきりとした魅せる縦縞柄。一見ランダムな縞模様の配置がおしゃれです。スラブ糸を織り込んだ柔らかな生地は体に柔らかく馴染みますよ。裏地にも『和木綿 麻の葉』を使用していて、ちらりと覗く様子も素敵です。
和モダン「山並みはんてん」
山並みはんてんに使用される表地は、シャトル織機と呼ばれる旧型の機械で織られています。横糸をゆっくり潜らせていくシャトル織機だから生み出せる優しい手触りの生地。たくさんは織れませんが、それだけこだわった布地なのです。
和モダン「淡雪ロングポンチョ」
kasumi yakko HANTEN
半袖タイプのはんてん「やっこ」は、宮田織物のオリジナルです。本来の綿入れはんてんは長袖ですが、家事などあれこれ用事を済ませる際には邪魔になってしまうことも。そこで半袖にすることで動きやすく、肩までの温かさを損ねない理想的な形に仕上げました。
ぱっと羽織れて、活動的。冬の家事などには嬉しい一枚です。形もややすっきりと作られていて、どんなスタイルにも合わせやすくなっています。
いいものを長く傍に。
はんてんはお布団のように天日干ししてお手入れすれば、ふっくら感が戻り長く愛用できます。沢山の人の手と思いの籠ったはんてん、ずっと傍に置いて大事にしたいアイテムになりそうですね。
「はんてん」と言えば、何を思い浮かべるでしょうか? 懐かしいお祖母ちゃんやお祖父ちゃんの姿や、田舎の風景を思う人もいるかもしれません。日常余り見かけなくなった「はんてん」ですが、たっぷり綿の入った優しい温かさで今再び注目されています。きちんと手入れをすれば長く使え、体にも馴染んでいく……そんな伝統と新しさを織り交ぜた魅力的なはんてんとそのメーカーをご紹介します。