日本で三番目の標高を誇る穂高岳（標高3190メートル）、童話『アルプス一万尺』の歌詞にも登場する槍ヶ岳（標高3180メートル）への登山基地にもなっている長野県の上高地は、北アルプス南部をとうとうと流れる梓川上流域に位置する景勝地です。

猛々しい山々と清流が織りなす風光明媚な景色が広がる上高地は、中部山岳国立公園の一部に属しており、国の特別名勝、特別天然記念物にも指定されています。

上高地からは、標高3190メートルの奥穂高岳（富士山、北岳に次ぎ、日本で三番目の標高を誇る）を主峰とする穂高岳連邦を臨むことがでいます。むき出しの岩肌となっている山頂は、夏でも冠雪しており、大自然の畏怖を感じ取ることができます。

穂高岳連峰、槍ヶ岳など、日本を代表する名峰への登山基地となっている上高地は、猛々しい山々が魅せる景勝地というイメージがありますが、上高地周辺は豊かな森が広がっています。平野部が広い上高地では、軽装で気軽に森林浴を楽しむことができます。

梓川は、標高1500メートルの高原、上高地の中心部をとうとうと流れる清流です。透き通る水はエメラルドグリーンに輝き、川底の石が見えるほどの美しさです。

上高地では、ブナ、シラカバ、ミズナラなど豊かな原生林が生い茂っています。標高1500メートルにもかかわらず平野部の面積が広いため、よく整備された散策路では気軽にハイキングを楽しむことができます。

鬱蒼と生い茂る上高地の原生林。天を覆うほど高く伸びた樹々の間から差し込む木漏れ日を浴びる気持ち良さは格別です。

上高地といえば、「河童橋」を想い描く方も多いのではないでしょうか。清流、梓川に架かる河童橋は、上高地のシンボルともいえる存在です。河童橋は、人が架けた人工物でありながら、上高地が魅せる豊かな大自然と見事に調和しています。

河童橋の上からは、盛夏でも冠雪している日本で3番目の標高を誇る奥穂高岳を主峰とする穂高岳連邦を臨むことができます。

国の特別名勝・特別天然記念物に指定されている上高地の中でも、大正池では、特に素晴らしい景色を臨むことができます。波一つない静かな水面が、冠雪した穂高岳連邦の岩肌を鏡のように映し、眼前に広がる眺望は、一枚の絵画のようです。

大正池には、立ち枯れとなった白樺の樹々が、水面に浮かぶように並んでいます。まるで木が白骨化したかのような立ち枯れの樹々が、大正池の幽玄閑寂とした雰囲気を引き立ててきます。

豊かな自然が広がる上高地には、数多くの野生動物が生息しています。大正池では水面を優雅に泳ぐオシドリやカモなどの水鳥の姿を見かけることができます。

しんと静かな水面、立ち込める朝霧、立ち枯れの樹々……。大正池の独特で幻想的な景観美を眺めていると、この池に引き込まれそうな畏怖の念が湧きあがってきます。かつて、登山家で作家の板倉勝宣が「山と雪の日記」の中で、大正池を「魔の池」と綴った理由が少しだけ解るかもしれません。

「田代」とは「水田」という意味で、田代池とは「水田の池」という意味を持ちます。

北アルプスの険しい山々、生い茂る深緑の原生林の中にぽっかりと空いた空洞のような田代池は、透明度の高い浅瀬の池です。私たちに馴染み深い水田のように、田代池には、どこか見る者を和ませる不思議な魅力が漂っています。

抜群の透明度を誇る田代池では、イワナなどの清流に住む淡水魚の姿を見かけることもできます。

田代池は時間帯によって刻一刻と表情を変えてゆきます。樹々の間から差し込む木漏れ日が、田代池の神々しい姿を一層と引き立てています。

年間を通じて美しい景色を見せてくれる田代池ですが、雪化粧をした田代池の美しさは格別です。氷点下でも凍結しない冬の田代池を眺めていると、映画「アナと雪の女王」のワンシーンに入り込んだような錯覚を感じます。

翡翠色の水面をした明神池は、穂高神社境内にあるの神域です。池の周囲をぐるりと取り囲む針葉樹林の樹々と、静かな水面は、どこか神秘的な雰囲気を醸し出しており、この場所が神々の住処であるかのような気分を覚えるほどです。